書籍

リハビリテーションスタッフのための整形外科手術動画集(DVD付)

一歩進んだ術後リハのために

監修 : 伊藤恵康
編集 : 齋藤正史/岩部昌平/宮本梓
ISBN : 978-4-524-26877-1
発行年月 : 2016年3月
判型 : A4
ページ数 : 168(DVD動画97分収録)

在庫あり

定価7,020円(本体6,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

代表的な運動器疾患・障害に対する手術動画を、「患者にどのような侵襲が加わったか」を理解できるようリハビリテーションスタッフの目線で解説。骨・関節・軟部組織への処置や人工関節・固定材料の使用、創部の縫合法などを理解し、より安全で的確な術後リハのプログラム立案・実施に役立つ一冊。DVDに収録の手術動画と豊富なカラー写真・イラストでわかりやすくまとめている。

【第1部】上肢の手術
 [肩関節]
  鏡視下腱板修復術(ARCR)
 [肘関節]
  尺側側副靱帯(UCL)再建術
  骨軟骨柱移植術
 [前腕]
  橈骨遠位端骨折に対する観血的骨接合術
【第2部】下肢の手術
 [股関節]
  人工股関節全置換術(THA)
   1.後方アプローチ
   2.前方アプローチ(DAA)
 [膝関節]
  人工膝関節全置換術(TKA)
  前十字靱帯(ACL)再建術(BTB,ハムストリング腱移植)
  半月板切除・縫合術
  膝蓋骨骨折に対する観血的骨接合術
 [足関節]足関節果部骨折に対する観血的骨接合術
【第3部】体幹の手術
 [腰椎]
  棘突起縦割式椎弓切除術
  経皮的内視鏡下腰椎椎間板切除術(PELD)
索引

序文

 整形外科疾患の治療において手術を要する患者は多いが、患者の社会復帰には手術のみでなく、術前・術後の入念に計画されたリハビリテーションが必要なことはいうまでもない。近年流行のクリティカルパスのとおりの画一的なリハビリテーションでは、TV コマーシャルのマッサージチェアと大差はない。担当する患者が、どのような病態で、どういう手術進入路でどういう手術が行われたか、リハビリテーションスタッフがぜひとも知りたいことだと思う。骨折手術では術後の固定性がどうか、人工関節置換手術では関節の安定性を保護するため、術中に剥離した筋・腱の機能回復をどうするか、また脊椎・脊髄の手術後には剥離した傍脊柱筋の範囲、切除した椎弓・関節突起とインストゥルメンテーションの範囲、固定性などを理解してリハビリテーションを進めて行かなければならない。肩、肘、膝の腱・靱帯の修復・再建術では再建部の修復を妨げずに関節可動域を改善し、筋力の強化、ADLの確立までどのように指導するか、スポーツ復帰時の注意点の指導など、実際の手術を見なければ実感として理解しにくいところがあると思われる。しかし、現実にはどの医療施設でも様々な手術を見ることは困難であろう。
 多様な手術が行われるようになったこの時代に、南江堂から本書の企画をいただいた。まさに時宜を得た企画であったため、当院の各専門分野の医師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、手術室看護師のスタッフが力を合わせて、ようやくここに上梓することができた。とくに中心となって、それこそ心血を注いで本書の完成に尽力して下さった宮本梓PTには感謝の言葉もない。
 本書には日常取り扱う代表的な手術法を選び、ハイビジョンカメラで撮影したDVDを添付した。書籍には手術の流れから、術中写真、模式図も加え、理解しやすいように努めた。本書がPT、OT、看護師の諸氏のみならず、新進気鋭の整形外科の諸先生にも日常診療でお役に立てていただければ、上梓に携わったスタッフ一同にとって、この上もない幸せである。

2016年3月
慶友整形外科病院
伊藤恵康

 平均寿命が延び少子化がすすむ本邦は、2007年に高齢化率が21%を超え超高齢社会へと突入した。そのような中、健康寿命延伸への期待や健康志向の広がりから、運動器疾患への関心は以前にもまして高まっている。その治療戦略は日進月歩の進化を続け、特に手術的治療においては低侵襲化による日常・社会生活への早期復帰に向けて、先端テクノロジーの導入や手技の改良が行われてきた。術後のリハビリテーション(リハ)は手術成績を左右する重要な要因の一つであり、手術手技の変化に伴って進化し、新たなリハプログラムもまた科学的根拠に基づいて処方・実施される必要がある。リハに携わるスタッフには、機能解剖やバイオメカニクスに関する基礎知識に加え、手術術式のコンセプトやキーポイント、長所、短所など多岐にわたる項目を十分理解していることが望まれる。もちろん「百聞は一見に如かず」であり、実際の手術を見学することが最良の方法といえるかもしれないが、日々業務に忙殺されるリハ医療の現場で、多種多様の手術を網羅して見学する機会が得られるリハスタッフは限りなく皆無に近いと思われる。
 そのような背景をふまえ出版された本書では、何といってもタイトルに添えられた「リハビリテーションスタッフのための」の一言が目を引く。そもそも外科医のために書かれた手術解説書は巷に溢れているが、それらとは一線を画した異なる視点からの本書は、前述した時代の流れと現状を汲んだタイムリーな発想によるものといえる。対象とした疾患・手術も変性疾患から外傷、スポーツ傷害まで、日常診療で遭遇頻度の高いものを中心に幅広く取り上げられており、多くの施設に有益な情報が提供できるよう配慮されている。
 各項では、慶友整形外科病院の豊富な症例の中から代表症例が提示され、術式選択のポイントとなる患者背景、身体所見、画像所見が解説されている。当該分野のエキスパートによる手術手技の解説では、ステップごとに鮮明な術中写真が提示されており、視覚イメージとして記憶に残り、臨床現場での再想起を容易に可能としている。さらにハイビジョンカメラによる術中ビデオを閲覧することで、活字のみでは表現できない手技の細部や手術室の臨場感まで伝わってくる。術後リハプロトコルに相当する後療法はあえてシンプルな記載にとどめ、リハプログラムをすすめるうえで分岐点となるような項目は、FAQとして一問一答形式で記載されている。これらの工夫により本書は単なる手術解説書の枠にとどまらず、術者とリハスタッフとの間で行われるべき情報共有のための指南書ともいえる一面も併せ持っている。
 昨今はクリニカルパスの導入も相まって、頻度の高い疾患や手術術式ではリハプロトコルが設定されている施設が大半を占め、ともすると画一的なリハ医療が提供されがちな面がある。プロトコルは患者や担当看護師がリハの進行過程を理解するには便利であるが、あくまでも目安であり、時間軸を中心にリハのステップアップを決定していくのはナンセンスである。同じ疾患でも個々の症例によって手術術式の詳細が異なるように、リハプログラムもテーラーメイドであり、その処方・実施に際しては治療内容の細部にわたる多くの情報収集が不可欠である。手術手技の工夫には、術後成績を少しでも向上させたいと思う術者の熱意やメッセージが込められている。手術記録からそれらを読み取り、最適なリハプログラムを立案し、予想される問題へのトラブルシューティングを事前に準備しておく、そのようなまさに「一歩進んだ」術後リハの提供を本書は提案している。運動器疾患のリハに携わりワンランクアップをめざすリハスタッフには、ぜひとも一読してほしいと願う一冊である。

臨床雑誌整形外科67巻10号(2016年9月号)より転載
評者●弘前大学リハビリテーション医学教授 津田英一