書籍

みんなで学ぶパーキンソン病

患者さんとともに歩む診療をめざして

共著 : 柏原健一/武田篤/前田哲也
ISBN : 978-4-524-26831-3
発行年月 : 2013年5月
判型 : B5
ページ数 : 138

在庫あり

定価3,024円(本体2,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

パーキンソン病の全体像を、正しい知識の普及を目的に第一人者が分かりやすく解説。症状や具体的な治療、リハビリテーションの実際、病状が進んだときの対処法などを中心に、最新の知識も交えて学ぶことができる。専門家でなくとも理解できるよう工夫され、患者さんによく聞かれるQ&Aも掲載。医療スタッフだけでなく、患者・家族にも是非一読してほしい一冊。

口絵 主なパーキンソン病治療薬一覧
第I章 まずパーキンソン病のことを知ろう
 1.パーキンソン病とはどういう病気か
  A.歴史
  B.どのような症状が出るのか
  C.病気の経過と最近の問題
  D.なぜ発症するのか
 2.パーキンソン病はどのように診断するのか
  A.診断の進め方
  B.どのような検査をするのか
  C.重症度はどのように決めるのか
 3.パーキンソン病と間違えやすい他の病気とのみわけ方
  A.神経変性疾患
  B.脳血管障害
  C.薬剤性パーキンソニズム
  D.正常圧水頭症
  E.その他
第II章 パーキンソン病の症状と対処法
 1.運動症状
  A.運動症状とはどういうものか
  B.パーキンソン病治療薬によって誘発される運動合併症
  C.運動症状はどのように治療するのか
 2.精神症状・認知機能障害
  A.幻覚・妄想
  B.うつ
  C.意欲減退(アパシー)
  D.認知機能障害
  E.衝動制御障害
 3.自律神経症状
  A.消化器症状
  B.排尿障害
  C.心血管機能障害
  D.発汗障害
  E.流涎(よだれ)
  F.末梢循環障害
  G.性機能障害
 4.その他の非運動症状
  A.睡眠障害
  B.疲労
  C.感覚障害
  D.体重減少
  E.下腿浮腫
 5.合併身体疾患
  A.骨折
  B.誤嚥性肺炎
  C.薬剤による身体合併症
第III章 パーキンソン病の治療
 1.運動症状の治療の基本的な流れ
  A.運動症状で受診するのは…
  B.まず、どのような治療を行うのか
  C.薬物療法の流れ
  D.薬物療法以外の治療法には何があるか
  E.パーキンソン病の治療で覚えておきたいこと
 2.薬物治療
  A.薬の種類と実際の治療法
  B.主な副作用と対処法
 3.外科的治療
  A.手術の方法、術後の注意点
  B.外科的治療選択のタイミング
 4.非運動症状の治療
  A.精神症状(幻覚・妄想)はどう治療するのか
  B.うつはどう治療するのか
  C.認知機能障害はどう治療するのか
  D.自律神経症状はどう治療するのか
  E.疼痛(痛み)はどう治療するのか
第IV章 パーキンソン病のリハビリテーション
  A.リハビリテーションにはどういうものがあるのか
  B.なぜリハビリテーションが重要なのか
  C.リハビリテーションの実際とポイント
  D.日常生活上の注意点
  E.自宅でできるリハビリテーション
第V章 病状が進んだ時に気をつけること
 1.認知症はいつ、どのように発症するか
 2.転倒しないようにするにはどうしたらよいか
 3.急に動けなくなったらどうしたらよいか
 4.夜眠れない、昼間寝過ぎになったら
 5.誤嚥の対処法と肺炎予防
 6.褥瘡を防ぐための工夫と対処法
 7.栄養管理と胃瘻のタイミング
第VI章 患者をサポートする環境づくり
 1.家族の協力、介護の工夫
 2.住環境の整備
 3.かかりつけ医と専門医(病診連携)の役割
 4.パーキンソン病と医療福祉制度
 5.専門施設の種類と選び方
第VII章 これからのパーキンソン病診療
  A.診断法の進歩
  B.治療法の進歩
付録1 全国パーキンソン病友の会(JPDA)
付録2 日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ)
付録3 「パーキンソン病治療ガイドライン2011」について
付録4 患者・家族の声からわかる“困る”症状:アンケート結果より
索引
患者さんによく聞かれるQ&A
 Q1 急に動けなくなることがあります.どうしたらよいですか?
 Q2 腰が曲がって困ります.よい対処法はないですか?
 Q3 積極的に運動すべきでしょうか?
 Q4 便秘と頻尿の対処法を教えてください.
 Q5 よだれのために外出できません.どうしたらよいですか?
 Q6 毎日症状が違うのはどうしてですか?季節によっても変わりますか?
 Q7 食欲はあるのですが、すぐ満腹になって食事がとれません.どうしたらよいですか?
 Q8 肩や腰が痛む時、よい治療方法はないでしょうか?
 Q9 下肢がしびれたり、痛んで困ります.よい対処法を教えてください.
 Q10 薬を飲むと眠くなります.何かよい方法はありますか?
 Q11 むし歯になりやすくて困ります.予防する方法はありますか?
 Q12 薬を飲み込みにくいのですが、どうしたらよいですか?
 Q13 病気と前向きにつき合うにはどうすればよいですか?
 Q14 進行すると通院できなくなるのではないかと不安です.かかりつけ医を持つべきでしょうか?
 Q15 食事の時間がまちまちですが、内服時間は食後のままでよいでしょうか?
 Q16 薬はお茶やコーヒーで飲んではいけませんか?
 Q17 風邪薬を飲んだ時はパーキンソン病の薬の服薬時間をずらしたほうがよいですか?
 Q18 薬を飲み忘れた時はどうしたらよいですか?
 Q19 車の運転を止めなくてはいけませんか?
 Q20 人が集まる行事やお祝いの場面に、無事に参加できるような薬はないでしょうか?
 Q21 他の病気で手術をすることは可能ですか?薬はどうしたらよいですか?
 Q22 文字が小さくなり書きにくいのですが、なにかよい方法を教えてください.
 Q23 すくみ足や突進(加速歩行)の対処方法を教えてください.
 Q24 パーキンソン病によい食べ物はありますか?お酒はいけませんか?八升豆は?
 Q25 低タンパク食がよいと聞きましたが、本当ですか?
 Q26 健康食品やサプリメントは有効ですか?
 Q27 患者の家族ですが、どの程度患者に手を貸したらよいのでしょうか?

パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで頻度の高い神経変性疾患です。手が振えたり、動きが遅く小さくなり、転びやすくなる運動の病気と考えられてきました。近年、さまざまな治療法の開発により症状が改善し、患者さんの寿命は一般人口のそれと変わらないくらいになりました。一方で病気とともに生活する期間が長くなった結果、すくみ、転倒、嚥下障害、腰曲がりなど、薬が効きにくい運動障害への対策も重要視されるようになりました。また、物忘れ、うつ、幻覚、不眠、腰痛、流涎、便秘、頻尿、むくみ、肺炎、骨折など、運動以外のさまざまな身体、精神の症状や合併症が増え、その対策にも配慮が必要です。いまや、パーキンソン病は全身病です。症状の組み合わせは患者さんごとに異なり、治療も教科書どおりにはうまく反応しないことがしばしばです。
 幸い、パーキンソン病の知識は日々新しくなり、治療法、治療薬の選択肢も拡がっています。情報もインターネット、書籍、講演会などで手軽に得ることができるようになりました。問題は、一人ひとりの患者さんにとって本当はどの知識が重要で必要なのかという理解がついていかないことです。知るほどにかえって不安になるとの声も耳にします。患者さんに対応する医療・介護関係者にとっても状況は同じです。患者さんがより豊かな人生を楽しんでいくためには、患者さん本人の「やる気、前向き志向」と、それを支え合うみんなのチームワークが不可欠です。そして患者さんのみならず、ご家族、それを支える全員がパーキンソン病の正しい全体像を把握しておくことが大切です。暗闇を手探りで歩くよりも、明るい太陽の下で生活するほうが安全で彩り豊かですね。
 私どもは、パーキンソン病患者さんの診療に日々かかわっています。この病気の知識普及に向けて勉強会を開く仲間でもあります。よりよい理解を得られる方法を話し合う中で、最新の情報をまとめ、患者さんとその生活を支えるみんなに知識を伝えられる本を作ろうとの案が出されたのが、本書のきっかけです。その後、南江堂スタッフの励ましを得て一定の形となり、“みんなで学ぶ本”として世に送り出すことができました。本書では、パーキンソン病の全体像を症状、治療を中心に最新知識を交えて解説し、専門家でなくとも理解できるよう工夫しました。家庭、介護、臨床の現場で役立てられるよう、病気の知識のみならず利用可能な社会資源や信頼できる情報源についても記載しています。本書が患者さん、ご家族、それを支える医療・介護関係者“みんな”の正しい理解と生き生きとした生活、明日への希望につながれば幸いです。

2013年5月
著者を代表して
柏原健一

パーキンソン病は全国で患者数15〜18万人と推定される、アルツハイマー病に次いで頻度の高い、高齢者に多い神経変性疾患である。主な症状はドパミン神経の変性脱落に伴う、無動・寡動、振戦などの「運動症状」であり、経過はさまざまであるが、通常10年以上の長い経過のなかで徐々に進行し、日常生活に介助が必要になる。また最近の研究で、うつ・幻覚などの精神症状、便秘・起立性低血圧などの自律神経症状、疼痛、認知症などの「非運動症状」も高頻度に合併することが認識されるようになった。運動症状に対しては、ドパミン補充療法をはじめとするさまざまな薬物療法以外に手術、リハビリテーションなどの非薬物療法も有効であり、非運動症状に対する治療も進んでいる。
 このような複雑なパーキンソン病の病態を正確に把握し、多種類の治療法のうち、ベストの治療を選択することは専門家にとっても容易でない。また、専門医が大きな治療方針を決定するにしても、日常起こってくるこまごまとした心配事や問題に対応するためには、かかりつけの非専門医、メディカルスタッフ、介護者、そして患者本人ができるだけパーキンソン病の病態と治療法に関する正確で最新の知識をもっていることが望ましく、療養生活の大きな助けになる。わが国のパーキンソン病患者会での専門家による患者・家族向けの講演会や、日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ)主催の教育研修会はその点で貴重な役割を果たしている。しかし、これらに加えて、患者や患者の日常生活を支える人々=「みんな」が困ったり悩んだりしたときにいつでも参照でき、繰り返し読むことができる、最新の知見がわかりやすく書かれた書物があれば、どんなによいだろうと思ってきた。本書はそのような要望に力強く応えてくれる、書名のとおり、「みんなで学ぶ」パーキンソン病の入門書である。
 著者の柏原健一氏、武田 篤氏、前田哲也氏はわが国を代表するパーキンソン病診療・研究の専門家であり、どの先生も、難しいことをたいへんわかりやすくお話しされる講演上手なことで定評がある。また、患者会や教育研修会での啓蒙活動に熱心に取り組まれてきた先生方でもある。本書はそのような先生方の持ち味がいかんなく発揮され、パーキンソン病を理解するうえで必須の知見・情報が、最新のものも含め、これ以上は望めないというほどわかりやすく、しかも正確に紹介されている。具体的には、パーキンソン病の疾患概念、症状、治療法、看護・介護、支援制度、患者会・学会、そして、未来の展望にいたるまで、重要な話題がもれなく取り上げられており、随所に親しみやすいイラストやわかりやすい図表、急所を突くQ&A、簡明な症例と処方例を配することで理解を助け、知識を深めるよう、親切な工夫がされている。
 本書を書棚に揃えられることを、パーキンソン病患者、患者を支える方々、そしてパーキンソン病の教育に携わる教員に強くお勧めする。また、すべての優れた入門書がそうであるように、本書は専門家が短時間に知識を確認・整理するうえでも非常に役立つであろう。本書が広く読まれ、わが国におけるパーキンソン病の知識の普及と診療レベルの向上に貢献することを心よりお祈りする。

臨床雑誌内科113巻6号(2014年6月増大号)より転載
評者●京都大学大学院医学研究科臨床神経学教授 高橋良輔