教科書

看護学テキストNiCE

医療安全

多職種でつくる患者安全をめざして

編集 : 山内豊明/荒井有美
ISBN : 978-4-524-26817-7
発行年月 : 2015年3月
判型 : B5
ページ数 : 232

在庫あり

定価2,700円(本体2,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

看護基礎教育で重視されている「医療安全」について、初学者が基本的な考え方を理解し、実践の場で活用できるようになることを目的としたテキスト。とりわけチームでつくる患者安全を意識し、多職種による編集・執筆でより臨場感のある内容となっている。事例を豊富に取り入れ、安全な看護実践を行うための方法を具体的に理解できるように構成した。

はじめに
編集にあたって
第I章 医療安全を学ぶ意義
 1.医療安全を学ぶにあたって
  A.医療安全?−「医療の安全」ではなく「医療を安全に」
  B.リスクとクライシス
  C.ヒューマンエラー
  D.事例から学ぶ
  E.医療事故防止のためには
第II章 医療安全の基本
 A.患者安全とは何か(トピック1)
 B.ヒューマンファクターの重要性(トピック2)
 C.システムの複雑さ(トピック3)
 D.チームの一員としての行動(トピック4)
 E.エラーからの学習(トピック5)
 F.リスクの管理(トピック6)
 G.品質改善の手法(トピック7)
 H.患者との協働(トピック8)
 I.感染制御(トピック9)
 J.手術の安全(トピック10)
 K.投薬の安全(トピック11)
第III章 個人・チーム・組織としての医療安全
 1.個人としての医療安全への取り組み
  A.基本的考え方
  B.人間の情報処理プロセスに基づく対策
  C.医療の専門家としての自覚をもつ
 2.多職種連携およびチームによる医療安全への取り組み
  A.連携不足による事故事例−なぜ医療安全において連携が必要か
  B.連携すべき多職種−保健医療福祉分野で働く職種
  C.連携と医療安全
  D.チームトレーニング−連携において医療安全を推進するために
  E.チーム志向への学びと実践
 3.チームのなかの医療安全(1)呼吸療法サポートチーム(RST)
  A.酸素投与しながらの搬送
  B.人工気道のカフ圧管理
  C.人工呼吸器装着時の緊急事態
 4.チームのなかの医療安全(2)栄養サポートチーム(NST)
  A.栄養サポートチーム
  B.経鼻栄養法における安全な実施
 5.チームのなかの医療安全(3)感染対策チーム(ICT)
  A.アウトブレイク
  B.職業感染
 6.チームのなかの医療安全(4)ラピッドレスポンスチーム(RRT)
  A.患者に起こった不測の事態に対応するチーム
  B.予期せぬ死亡とは?
  C.ラピッドレスポンスシステムの4つの構成要素
  D.RRTの要請方法と要請基準−いつ,RRTを呼べばよいのか?
  E.RRTが要請されてからの流れ
  F.RRSのなかの看護師
  G.RRTスタッフに求められる能力
  H.RRTスタッフの医療行為とノンテクニカルスキル
  I.RRSと医療安全
  J.RRTとRRSに期待されること
 7.医療機関における医療安全への取り組み
  A.医療機関としての目標設定
  B.医療安全管理に携わる人員の配置
  C.医療安全管理のための組織体制の整備
  D.医療安全管理に関する指針,マニュアル類の整備
  E.医療安全に関する施設内報告制度の整備
  F.重大事故発生時の組織的対応
  G.職員の教育・研修体制の整備
  H.適切な労働環境と労務管理
 8.地域における医療安全への取り組み
  A.病院と診療所の連携と患者の診療情報の共有
  B.病院間での患者情報のつなぎ方
 9.全国的な医療安全への取り組み−医療事故情報収集等事業
  A.医療事故情報収集等事業の目的
  B.医療事故を報告することの意義
  C.医療事故を報告している医療機関
  D.事業に参加している医療機関数と報告件数
  E.成果
第IV章 事例から学ぶ医療安全
 1.薬剤
  A.PTP包装シートの誤飲
  B.インスリン製剤に関するインシデント
  C.口頭指示による薬剤量間違い
  D.持参薬の不十分な確認
  E.血管外漏出
 2.輸血
  A.誤った患者への輸血
 3.治療・処置
  A.グリセリン浣腸実施に伴う直腸穿孔
  B.酸素流量の未確認
 4.医療機器・医療材料の使用・管理
  A.輸液ポンプ等の流量の確認忘れ
  B.「スタンバイ」にした人工呼吸器の開始忘れ
 5.ドレーン・チューブ類の使用・管理
  A.間違ったカテーテル・ドレーンへの接続
  B.体位変換時の気管内挿管・気管切開カニューレの偶発的な抜去
  C.スピーチカニューレの使用方法の間違いによる窒息
 6.検査
  A.MRI検査室への磁性体の持ち込み,MRI撮像時の熱傷
  B.血糖測定器の使用上の注意−血糖測定器への指定外の試薬の取り付け
 7.療養上の世話
  A.熱傷
  B.転倒・転落
 8.誤認
  A.手術部位の左右の取り違え
  B.患者取り違え
索引

はじめに

 文明とは記憶の蓄積であるといえましょう。個人個人がその場その場で経験したことがひとつも継承されることがなければ、常に刹那的な営みに終始してしまいます。そうなれば、人類は何万年経ってもそれ以前となんら変わらないことになります。
 人類が文明をもつことができたのは、経験を伝承することができたからです。個人の営みを伝承するためには、まずそれを可視化することです。可視化するにはジェスチャーや視線を交わすなど、さまざまな方法もありますが、なかでももっとも有効な手法が言語化です。事象を文字などの言語情報に置き換えることができれば、時空を超えてそれを共有でき、情報を蓄積していくことが可能になります。つまり他者の経験を知識として使うことが可能になるのです。他者の経験知を形式知にすることが文明の礎となるのです。
 「他山の石」「人のふり見て我がふり直せ」という諺があります。事故やヒヤリ・ハットは、たまたま誰かの眼前に生じた事象でしょうが、それらを消えてしまう刹那のものとはせず、人類の共有財産にすることから始まります。これが「なぜ医療事故やヒヤリ・ハット事例に報告というしくみが大切なのか」という理由なのです。そのためにも、いつ(when)、どこで(where)、何が(what)、誰に(who)起こったのかを報告(report)するしくみが不可欠です。
 報告の際に気をつけたいことは、「なぜ(why)」を当事者に求めない姿勢です。理由がわかっていたならば、その事象は事故ではなく故意ということになります。しかし、事故やヒヤリ・ハット事例は細心の注意をはらっていながら遭遇してしまった出来事のはずです。ですから、whyについては非罰的に他人が皆で知恵を出し合って解明していくものです。そのためにも、まずは先人の経験や事例をていねいにひもとくことが大切です。
 このようなことから本書では事例から学ぶことを目指して展開しています。
 まず第I章では医療安全についての概略をとらえてもらうことをねらっています。
 続く第II章で医療安全の根本にある原理について理解を深めましょう。
 第III章では、実際の医療提供は各個人・チーム・組織の営みとしてなされていますが、さまざまなチーム編成や規模別にみた組織としての取り組みを学べるように構成しました。
 そして、第IV章ではそれまで学んだ知識を統合して、具体的な事例について原理原則を演繹的に用いて考えて学ぶように構成しました。
 先人たちの経験を糧に、よりよき医療者となるよう本書をひもといて学んでもらえましたら望外の喜びです。どうぞよき学びを。

2015年2月
山内豊明