書籍

膵がん・胆道がん薬物療法ハンドブック

編集 : 古瀬純司/奥坂拓志
ISBN : 978-4-524-26759-0
発行年月 : 2014年7月
判型 : 新書
ページ数 : 220

在庫あり

定価4,320円(本体4,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

近年著しい進歩をとげている膵がん・胆道がんの薬物療法のエッセンスをまとめたハンドブック。新薬をふくめた最新の薬物療法を第一人者らが簡潔に解説。各レジメンの項目では、「(1)レジメン(2)検査実施時期とその指標(3)主な副作用と発現時期の目安」が一覧できる図を掲載。また、主な有害事象とその対策から緩和治療まで網羅。現場ですぐに使える構成となっており“即”実践につながる一冊。

I章 総論
 1.膵がん治療のアルゴリズム
 2.膵がん薬物療法の概要と今後の展望
 3.胆道がん治療のアルゴリズムと外科手術の位置づけ
 4.胆道がん薬物療法の概要と今後の展望
 5.膵神経内分泌腫瘍の総説
II章 薬物療法の実践
A.膵がん・胆道がん共通のレジメン
 1.gemcitabine単独療法
 2.S-1単独療法
 3.gemcitabine+S-1併用療法
B.膵がん独自のレジメン
 4.gemcitabine+erlotinib併用療法
 5.FOLFIRINOX療法
 6.gemcitabine+nab-paclitaxel併用療法
 7.化学放射線療法
C.胆道がん独自のレジメン
 8.gemcitabine+cisplatin併用療法
D.膵神経内分泌腫瘍のレジメン
 9.everolimus単独療法
 10.sunitinib単独療法
 11.octreotide単独療法
 12.streptozocin単独療法
 13.cisplatin+etoposide併用療法
 14.cisplatin+irinotecan併用療法
III章 主な有害事象に対する対策
 1.消化器毒性(悪心・嘔吐、下痢)
 2.骨髄抑制
 3.発熱性好中球減少症
 4.間質性肺炎
 5.皮膚障害
 6.肝障害(B型肝炎の再活性化を含む)
 7.腎障害
 8.末梢神経障害
IV章 膵がん・胆道がんの緩和治療
 1.閉塞性黄疸への対応と薬物療法中の注意点
 2.消化管閉塞(十二指腸閉塞)への対応
 3.疼痛に対する薬物療法
 4.骨転移に対する薬物療法
 5.高インスリン血性低血糖症に対する薬物療法
V章 膵がん・胆道がんのチーム医療
 膵がん・胆道がん教室
付録
 1.体表面積算定表:DuBoisの式
 2.クレアチニン・クリアランス(Ccr)計算式
 3.膵がん・胆道がん治療に使用する抗がん薬一覧
索引

膵・胆道がんは消化器がんのなかでも極めて予後不良な疾患であり、薬物療法が重要な役割を果たしています。1990年代後半、切除不能膵がんに対するgemcitabineと5-FUによる第III相試験の結果、gemcitabineが初めて膵がんの標準治療薬として確立し、膵・胆道がんの薬物療法の大きな第一歩となりました。それ以降、さまざまな新しい薬剤や併用療法が次々と試みられてきましたが、gemcitabine単独療法を超える治療法は出てきませんでした。
 そのようななかで、この数年、膵がんではgemcitabine+erlotinib併用療法、FOLFIRINOX療法、gemcitabine+nab-paclitaxel併用療法がgemcitabine単独療法に比べ、有意に生存期間を延長するという結果が海外から報告されました。日本でも経口フッ化ピリミジン系薬S-1の有効性が報告され、特に膵がん術後補助療法ではgemcitabineの成績を大きく上回るという結果が世界に発信されました。胆道がんにおいても第III相試験によりgemcitabine+cisplatin併用療法の有用性が証明され、世界の標準治療として確立しています。
 このような臨床試験の結果を踏まえ、膵・胆道がんの日常診療は大きく変わってきています。われわれ医療者はgemcitabine単独療法の時代から多様化の時代に適切に対応していく必要があります。それぞれの治療法の特徴を理解し、個々の患者さんの状態に応じて、最も適切な治療法を選択し、確実に治療を進めることが求められています。
 今回、私たちはFOLFIRINOX療法やgemcitabine+nab-paclitaxel併用療法という、強力である反面、副作用も強い新しい治療法が出揃ったのを機に、膵がんと胆道がんの治療について薬物療法を中心として本書をまとめました。
 本書では、膵・胆道がん治療のアルゴリズムから、膵・胆道がんで用いられる薬物療法の実践、副作用に対する注意点と対策、緩和治療、さらにはチーム医療についてもそれぞれの専門家にまとめていただきました。膵・胆道がん治療の全体像の理解はもちろん、実際の診療でどうすればよいか、困ったときの対応など、日常診療の診察室やベッドサイドで活用していただけると確信しています。
 がん治療を進めていくうえで、患者さんとご家族が安心して治療を進めていただけるよう、われわれ医療者も常に新しい情報をつかんでいく必要があります。本書が膵・胆道がん診療の最前線で日々患者さんと向き合う医療関係者にとって少しでも役立つことができれば、作成に携わった私たちにとって望外の喜びです。

2014年6月
古瀬純司
奥坂拓志

 厚生労働省の人口動態統計によると2012年における膵悪性新生物による死亡数は2万9,916人であり,悪性新生物による全死亡数36万963人に占める割合は8.3%であった.膵悪性新生物による死亡数の順位は,肺,胃,大腸,肝臓に次いで第5位である.一方,胆嚢およびその他の胆道の悪性新生物による死亡数は1万8,209人とされ,全悪性新生物の死亡数に占める割合は5.0%,死亡数の順位は膵臓に次いで第7位となっている.いずれも近年急速に増加しており,膵がんは過去30年間で男女とも約3倍,胆道がんも同様の増加傾向がみられる.「がん・統計白書2012」によると,部位別5年相対生存率は胆嚢・胆管がんが約20%,膵がんは6%前後に留まり,すべての悪性腫瘍のなかで最下位を占めている.まさに,われわれ臨床医が全力で取り組まなければいけない難敵である.
 gemcitabine(GEM)が1997年に登場し,膵がんに対する画期的な治療薬として注目を集めたが,その後,GEM単剤を超える治療法がなかなか現れなかった.近年,遠隔転移例においてGEM+erlotinib(GE)療法がGEM単独に対する優越性を示し,新しいレジメンとして登場した.それを契機に,2011年にはGEM単独療法に比べハザード比0.57を示した強力なFOLFIRINOX療法が紹介され,2013年にはGEM+nab-paclitaxelがGEM単独療法に対し,有意な生存期間の延長と,ハザード比0.72を示す新たな治療法として注目されている.切除不能胆道がんにおいてもGEM単独療法に比べて,GEM+cisplatin(CDDP)併用療法(GC療法)に有意な生存期間の延長が確認され,標準療法として確立されるなど新たな展開がみられる.その他,2011年にはmTOR阻害薬であるeverolimusに神経内分泌腫瘍の適応が追加となり,続いて2012年には受容体チロシンキナーゼの選択的阻害薬sunitinibにも神経内分泌腫瘍が認可され,高い治療効果が認められている.
 このように,膵がん・胆道がんの薬物療法はここ数年の間に大きな展開がみられている.きわめて悪性度の高い両がんに対する治療選択が広がる一方,臨床医には,適切な治療法を的確かつ迅速に患者さんへ提供する責務が求められている.
 このたび南江堂から「膵がん・胆道がん 薬物療法ハンドブック」が上梓されたが,まことによいタイミングで,われわれが求めていた解説書が現れたと実感している.がんの薬物療法に関する解説書は一般に分厚く,難解なイメージがつきものであるが,本書は画期的である.白衣のポケットに入るコンパクトなサイズに,膵がん・胆道がんの最新の薬物療法がポイントを押さえて要領よく記載されており,きわめて読みやすい.多忙を究める臨床医には誠にありがたいハンドブックである.とくにレジメンがそれぞれの薬物療法の解説の冒頭にやさしい図で示されており,治療法の全容が一目瞭然に理解できる.レジメンの内容はもとより,休薬の規定,減量・中止の基準と方法,投与開始前の対応・投与中の対応,治療成績,レジメンの注意点・確認点,患者への指導ポイント,主な副作用と対策など,医療現場で臨床医が求める知りたい情報が過不足なく簡潔に記載されている.本邦における膵がん・胆道がん薬物療法のトップランナーである古瀬純司先生と奥坂拓志先生の目が行き届いた実践書と評価している.本書は,難治がんである膵がん・胆道がんと戦うすべての医療者にとって必携のハンドブックである.

臨床雑誌内科115巻6号(2015年6月増大号)より転載
評者●東北大学大学院消化器病態学教授 下瀬川徹