書籍

HALS

用手補助腹腔鏡下手術の実際(DVD付)

編集 : HALS研究会
ISBN : 978-4-524-26618-0
発行年月 : 2014年10月
判型 : A4
ページ数 : 272

在庫あり

定価14,040円(本体13,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

HALS(用手補助腹腔鏡下手術)の実践的知識をまとめた日本初のHALS手技解説書。胸部(肺・食道)、上部・下部消化管、肝胆膵脾、泌尿器の部位別の構成で、適用となる主要な疾患を網羅した。手術のポイントや、必要器具、手技の実際や、HALSの特徴であるポートとハンドアシストの配置、術者の左手の状態を豊富なイラストを用いて解説。主要な術式の解説動画を盛り込んだDVD付。

総論
 A.HALSとは
 B.セットアップと基本手技
  1.HALSで使用する器具
  2.胃手術の基本
   a.セットアップ
   b.胃腫瘍性病変に対するHALS
  3.大腸手術の基本
   a.右半結腸切除術
   b.横行結腸切除術
   c.左半結腸切除術
   d.S状結腸切除術/前方切除術(RS)
   e.低位前方切除術
   f.マイルズ手術
 C.左手の使い方
  1.胃、膵臓、脾臓(上腹部操作)
  2.大腸切除−SPORTSテクニック
各論
胸部
 A.肺
  1.用手補助胸腔鏡下手術による肺楔状切除術
 B.食道
  1.用手補助胸腔鏡下食道癌手術
  2.食道癌に対する用手補助腹腔鏡下胃管作製術
腹部
 A.胃
  1.幽門側胃切除(HALDG)、幽門保存胃切除(HALPPG)
  2.胃全摘術(HALTG)
  3.噴門側胃切除(HALPG)
  4.GISTに対するHALS
 B.大腸
  1.右側結腸癌手術
  2.左側大腸癌完全閉塞症例に対する二期的HALS
   a.二期的HALSによる下行結腸切除術
   b.二期的HALSによるS状結腸切除術
  3.盲腸〜上部直腸癌手術
   a.右側結腸の場合
   b.左側結腸の場合
   c.S状結腸、上部直腸の場合
  4.下部直腸癌手術(男子性機能温存術を中心に)
  5.クローン病
   a.回盲部切除術
   b.大腸亜全摘術
  6.潰瘍性大腸炎
   a.大腸全摘術
   b.結腸全摘術
   c.大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術
 C.肝胆膵脾
  1.肝切除術
   a.肝右葉病変に対する肝切除術
   b.肝左葉転移に対する肝切除術
  2.腹腔鏡下胆嚢摘出術困難例
  3.巨脾に対する脾臓摘出術
  4.膵体尾部切除術
   a.脾合併切除
   b.脾温存
  5.肝硬変合併脾機能亢進症に対する脾臓摘出術
 D.泌尿器
  1.膀胱全摘術
  2.腰部斜切開創手術を応用した根治的腎摘除術
  3.生体腎移植ドナー手術における腎摘出
索引
付録DVDについて

HALS(hand-assisted laparoscopic surgery)の歴史と変遷については「総論」で詳述されているので省略するが、年代に登場したlaparoscopic surgeryの応用として、いろいろな施設で行われていたと推測される。ちなみに私自身の鏡視下手術のErsteはHALSによる前方切除術であった。
 HALSはPneumoSleeveやHand Port Systemの出現をきっかけとして、その後短期間に急速な普及を遂げた。周知のように本邦ではpure laparoscopic surgeryが主流となり、HALSの適応は一部に限られた。一方、欧米では小切開創から腹腔内に片手を挿入するハイブリッド腹腔鏡下手術、いわゆるHALSが現在もなお継続して普及している。HALSでは手が邪魔して視野を悪くするなどの短所がある反面、触診できる、強い牽引力を得ることができる、ポート数を減らせるなどの利点もある。しかもpure LACS(laparoscopy-assisted colorectal surgery)では、円滑なカメラ操作を含め習熟した外科医が3人以上必要で、非効率的かつ手術時間が長すぎるために、麻酔科医や手術室、および外科スタッフの確保が問題視され、近年HALSが見直されてきている。
 HALS研究会(HALS research group)は2010年に発足し、その年の6月に第1回HALS グループミーティングを企画した後、現在までに第4回まで開催し、賛同メンバーも徐々に増え、活発化しつつある。今回本書の刊行を企画したのは、このような研究会活動の盛り上がりとともに、将来的に再認識されるであろうHALSの基本事項をおさえておくことが一つの大きな目的である。それに加えて、さまざまな学会や研究会で、「HALSを行いたいが、ポート位置や手の刺入切開部の位置すらわからないし、そもそもHALSに関する参考書がない」との若手外科医の不満を多く耳にし、このような熱い要望に応える義務感のような思いもあった。確かに書店ではHALSに関するまとまったテキストはあまり見かけない。
 このようにHALSはまだ確立されたものではなく、試行錯誤を積み重ねている途上と言えるが、鏡視下手術の技術普及の過程で安全性、確実性に関して十分すぎるほどの配慮を行ったうえで、グループミーティングを通じて標準化されつつあるのが現状である。したがって、編集執筆にあたっては、実際にHALSを多数経験しているHALS研究会世話人のskillfulな外科医を核とし、板橋道朗、松田年、向井正哉を編集主幹に、山名哲郎、石坂和博には「各論」の執筆で参画してもらった。各項目の執筆担当は、彼らを中心としたHALS研究会のアクティブメンバーを中心に選ばせていただいた。
 「総論」としてHALSの歴史や今後の展望、セットアップや器具の紹介、そして最も大切な左手の使い方にページを割いた。「各論」としては食道、胃、大腸、肝胆膵脾などの消化器疾患のみならず、呼吸器疾患や泌尿器疾患のHALSも加えた。全体的なコンセプトとしては、手術手技書なので図や写真を駆使して、ビジュアル的な要素を重視したテキストにするようにした。イラストレーターの坂根潤氏には執筆者の細かい要望に応えてもらうために何度も描き直してもらうことになり、誠に申し訳なく思っている。さらにDVD付録として左手の使い方(胃・腸)、肺楔状切除術、下部直腸癌手術、脾臓摘出術、膀胱全摘術、根治的腎摘除術など約1時間のvideo動画を付録とした。是非イメージトレーニングに役立てていただきたい。
 執筆者は全員第一線で活躍中の現役外科医である。超多忙な臨床業務の合間をぬって、限られた時間内に執筆する形になったので、まだまだ未完成な点、力不足のところも多々あろうかと思う。しかし、読者の方々にはHALSの現状をご理解、ご寛容のうえ、宜しければご意見、ご指摘をお寄せいただきたいと願っている。本書をHALSのさらなる発展に活かすことができれば、望外の喜びである。

2014年9月
東京女子医科大学第二外科
HALS研究会代表世話人 亀岡信悟

 HALS(用手補助腹腔鏡下手術)とは片手を腹腔内に入れて行う腹腔鏡手術で、本書はHALSに関するはじめての本格的な指導書である。代表的な術式の細かい手術シーンをイラスト化してわかりやすく解説してある。さらにDVDもついており、即戦力として役に立つことは間違いない。しかし、HALSという手術をどのように考えるかは外科全体の大きな問題であり、それによって本書の価値は大きくかわってしまう。
 外科学とは挑戦の学問であり、一方では究極の実学でもある。近年、複数の施設で腹腔鏡手術の安全性を疑問視させるような事例があった。難易度の高い腹腔鏡手術に挑戦することは将来の患者への福音かもしれないが、その過程で現在の患者に犠牲を出しては何の価値もない。HALSは片手が腹腔内に入っているので、確実に完全腹腔鏡手術よりも安全かつ容易である。一方で低侵襲やテクニックという点では、開腹なのか腹腔鏡なのか、中途半端でどっちつかずという印象はぬぐえない。確かに、HALS(用手補助)がなくても完全腹腔鏡でほとんどの手術は完遂できる。しかし完全腹腔鏡へのこだわりのために外科医が過剰なストレスを感じたり、患者を危険にさらしていないか、外科医は常に自問しなければならない。また、HALSのほうがやりにくいというのは詭弁である。HALSは実学である以上、場面によって完全腹腔鏡と用手補助を使い分けたり、創から直視操作をしたり、一番行いやすい方法を採用する手術である。用手補助のみにとことんこだわるということはありえない。
 腹腔鏡手術の全貌がみえてきた現在、逆にHALSが見直されている。筆者も食道癌手術の胃管作成はHALSで行っている。大きな理由は、再建臓器である胃を鉗子でつかむことにより微細な血管に損傷をきたしているのではないかと危惧するからである。完全腹腔鏡でできなくはないが、やはりHALSよりは時間と神経を使う手術になる。完全腹腔鏡という技術的な達成感よりも、患者のリスクと外科医の負担を減らしたほうがよいと思っていることがもう一つの理由である。食道癌手術は7〜8時間に及び、術後合併症のリスクが高く、リンパ節再発のリスクも高い。その中でわずか2〜3cmの傷の大きさの違いはあまりにも小さい(完全腹腔鏡でも体外胃管作成のため5cm程度の切開は必須である)。その集中力と時間を胸部や頸部の操作にもっと注ぎたいと思っている。
 これから外科医は減少する時代になり、少人数で多くの手術をこなさなければならなくなるであろう。ダ・ビンチがポルシェで、腹腔鏡がベンツならば、HALSはトヨタである。もちろん夢はポルシェであるが、現実はトヨタが一番、手術もそんな時代がきそうな気がする。少しでもHALSに興味をもった先生方に強くすすめる必読の書である。

胸部外科68巻5号(2015年5月号)より転載
評者●大阪大学消化器外科教授 土岐祐一郎