書籍

骨粗鬆症治療薬の選択と使用法

骨折の連鎖を防ぐために

編集 : 萩野浩
ISBN : 978-4-524-26617-3
発行年月 : 2014年9月
判型 : A5
ページ数 : 210

在庫あり

定価3,996円(本体3,700円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

脆弱性骨折発生後の二次骨折に対する予防的な骨粗鬆症薬物治療について、術後早期薬物療法開始のキーマンとなる整形外科医の視点から簡潔にまとめた。組成や作用機序などの薬剤の基礎的な記述は最小限にとどめ、実際の使用法に焦点を当てている。単独の薬物療法のみならず、手術を念頭に置いた処方設計、周術期管理の実際、ドミノ骨折予防の考えかたについても解説した。

I.骨粗鬆症の定義と診断
 骨粗鬆症の定義
 骨粗鬆症の症状・特徴
 椎体骨折、大腿骨近位部骨折の特徴
 骨折危険因子
 骨粗鬆症診断のための診察手順と『原発性骨粗鬆症の診断基準』
 男性骨粗鬆症
 鑑別疾患:続発性骨粗鬆症の診断
 骨粗鬆症患者に対する総合的・包括的アプローチと薬物治療開始基準
II.臨床像
 病歴の取り方
 骨粗鬆症を疑わせる身体所見
III.他疾患と間違えないために
 関節リウマチ
 生活習慣病関連骨粗鬆症
 ステロイド性骨粗鬆症
IV.治療
A 開始基準
 わが国の『原発性骨粗鬆症の診断基準』
 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版』における薬物治療開始基準
 最近の新たな知見
 既存脆弱性骨折の骨折種による新規骨折リスクの違い
 『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』における薬物治療開始基準
B 治療薬の特長
 1.ビスホスホネート薬
  臨床効果
  多彩な投薬方法
  ビスホスホネート薬治療の対象
  投与にあたっての注意
  ビスホスホネート薬の治療効果評価
  長期使用例での休薬
 2.SERM
  脆弱性骨折の発生とその連鎖
  選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)による骨折の連鎖防止効果
  他剤からSERMへの切り替え
  骨折の連鎖防止のためのSERMの選択
 3.テリパラチド
  骨代謝に対する影響
  骨微細構造改善と骨量増加効果
  骨折予防効果
  テリパラチド使用後の薬物治療
  その他の効果
  テリパラチドの適応
 4.活性型ビタミンD3薬
  天然型ビタミンDと活性型ビタミンD3薬
  活性型ビタミンD3薬の骨密度増加効果
  活性型ビタミンD3薬の骨折抑制効果
  活性型ビタミンD3薬の転倒予防効果
  薬剤選択の基準
  他剤との併用効果
  活性型ビタミンD3薬の使用法と注意点
 5.カルシトニン薬
  ガイドラインにおけるカルシトニン薬の位置づけ
  骨粗鬆症の疼痛とカルシトニン薬の鎮痛効果
  疼痛改善以外の効果
  カルシトニン薬の骨への効果
  カルシトニン薬の社会的有用性
  補足
 6.抗RANKL抗体
  適応・禁忌・投与法
  使用時の注意点
C 治療薬の使い分け
 骨粗鬆症治療薬の分類
 ガイドラインの推奨グレードとエビデンス
 薬剤の使い分け
V.治療効果判定をどうするか
 治療効果判定の必要性
 治療効果判定の方法
 日常臨床における治療効果判定の実際
VI.有害事象への対応
A ビスホスホネート薬
 顎骨壊死
 非定型大腿骨骨折
 急性期反応
 上部消化管障害
B その他の薬剤
 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
 テリパラチド
 活性型ビタミンD3薬
VII.薬物療法に加える治療
A 運動療法
 骨密度維持・増加
 脊柱後弯進行予防
 転倒予防
 運動療法の阻害因子としての変形性膝関節症への対策
B 食事療法
 骨粗鬆症に関わる栄養因子
 骨粗鬆症栄養指導の実際
 実際の症例:拒食症
VIII.ケーススタディー
 1.閉経後早期の骨粗鬆症例
 2.骨折を有しない高齢者の骨粗鬆症例
 3.多数回繰り返す骨粗鬆症性椎体骨折症例
 4.関節リウマチ例
 5.大腿骨近位部骨折術後の症例
  大腿骨転子部骨折
  大腿骨頚部骨折
  骨粗鬆症と大腿骨近位部骨折
 6.橈骨遠位端骨折、上腕骨近位端骨折(外科頚骨折)後の症例
  橈骨遠位端骨折
  上腕骨近位端骨折
 7.椎体形成術後の症例
  ビスホスホネート薬と顎骨壊死
 8.人工関節置換術後の症例
  人工股関節置換術後の症例
  人工膝関節置換術後の症例
  人工関節置換術と骨粗鬆症
 9.妊娠・出産後の骨粗鬆症例
 10.ステロイド服用症例
  ステロイド服用と骨粗鬆症
 11.腎不全例
 12.肝障害例
 13.原発性副甲状腺機能亢進症例
  pHPTの治療
 14.疼痛のコントロールを要する症例
  骨折と疼痛
IX.ドミノ骨折防止
 骨粗鬆症治療薬処方の実態
 骨粗鬆症治療薬の投与法
X.施設による骨粗鬆症患者への対応の違い
 骨粗鬆症治療継続の必要性
 大腿骨近位部骨折地域連携パス
 二次骨折予防の概念
 海外での取り組み
 急性期病院の骨粗鬆症診療
 回復期病院の現状
 老健・療養型病院の現状
 維持期かかりつけ医の対応
索引

ドミノ骨折の防止は世界的なムーブメントとなっている。脆弱性骨折の既往があると、加齢や骨量減少の程度にかかわらず骨折リスクが上昇するため、骨折が骨折を呼ぶこととなり、「骨折の連鎖」、「ドミノ骨折」と称される。そこで脆弱性骨折例では骨折の連鎖を防止する必要がある。骨折リスクが高いと骨粗鬆症治療薬による骨折抑制の効率が良好であるため、脆弱性骨折例は薬物療法のよい適応となる。また、骨折を経験している症例は骨折による疼痛や機能障害を経験している、すなわち痛い目を見ているために、骨折の予防である骨粗鬆症治療の受け入れがよい。このような背景から、脆弱性骨折の治療をしたら漏らさず骨折リスクを評価し適切な薬物治療を開始すべきであると、ドミノ骨折防止のキャンペーンが国内外で繰り広げられるに至っている。国際骨粗鬆症財団(IOF)やFragility Fracture Network(FFN)ではドミノ骨折の防止をその活動の中心に据えている。
 近年の骨粗鬆症治療薬は長足の進歩を遂げた。2001年に窒素含有ビスホスホネートがわが国に導入されて以来、大規模臨床試験による骨折抑制効果が証明された治療薬の開発が相次いでいる。その作用機序は骨吸収抑制を主とするもの、骨形成促進を主とするもの、その両者の作用を有するものなど多岐にわたる。投与の頻度も1日1回から、月に1回、6ヵ月に1回、また投与経路も経口製剤のほか、静脈内注射製剤、皮下注射製剤と選択肢が広がっている。選択肢が広がったのは臨床医にとって喜ばしい一方、その選択に迷うことが多くなっている。本書は、現在、第一線で骨粗鬆症治療の診療にあたっておられる先生方にご執筆いただいた。骨粗鬆症治療薬について解説いただくと同時に、新しい診断基準や薬物治療開始基準についても、改訂の目的や意義を含めて示していただいた。さらに、本書では臨床現場で治療に迷う実例を14のケーススタディーとしてまとめていただいた。
 わが国ではいまだ骨粗鬆症、なかでも脆弱性骨折例に対する適切な診断・治療がなされていないのが現状であり、本書がその改善の一助となれば幸いである。“Stop at One(最初の骨折を最後の骨折にする)”は患者にとっては願いであり、整形外科医をはじめとする医療者にとっては責務である。

2014年8月
萩野浩

 まもなく超高齢社会を迎えるわが国において,高齢者の骨折予防は喫緊の課題である.幸いにも,この20年間に骨折予防効果が科学的に実証された骨粗鬆症治療薬が次々と開発され,臨床応用されるにいたっている.しかしながら,治療を受けている骨粗鬆症患者は全体の20%程度にとどまり,なかんずく,大腿骨近位部骨折の受傷者の治療率ですら同定度の低さであることが問題となっている.この問題を解決するにあたっては広く英知を結集する必要があり,手頃な道しるべとなるハンドブックが望まれていたところに,本書「骨粗鬆症治療薬の選択と使用法:骨折の連鎖を防ぐために」が出版された.
 本書の編者である萩野 浩先生は優れた整形外科医であると同時に,骨粗鬆症による骨折の疫学的研究および治療薬の開発でわが国を代表する研究者である.本書を構想するにあたっての萩野先生の思いは,何よりも高齢者における骨折の予防,とりわけ大腿骨近位部骨折を減らすことであり,そのためにも,適切な治療薬を必要な患者に届ける方策を具体的かつ広範囲に伝えたいという点に集約されるであろう.本書の体裁は,既存のガイドラインに従いつつも,教科書やガイドラインでは目配りが不十分になりがちな,実践的な問題に対しても,具体例をあげて詳細に解説するハンドブックとなっている.振り返って反省点のある症例や,複雑な病態で多くの選択肢がありうる症例も呈示されており,診療に携わる医師に対して唯一の解答を与えるというよりも,具体的かつ現実的な方策を思考過程とともに提示する実践的内容となっていることに,本書の優れた特徴の一端が表れている.
 骨粗鬆症は代謝性疾患であり,骨折という事象を除けば,ある意味,整形外科領域では異質な病態である.それは生活習慣病として,血圧やコレステロールの管理と同様に,本来は内科医が診るべき病態であるとさえいえるものである.本書は,病態としては整形外科の先生方に馴染みにくい骨粗鬆症の診療における,骨折予防を目指した長い旅路の道しるべであり水先案内人である.それを第一線の整形外科医(数名内科の先生も含むが)である執筆陣が,「骨折の連鎖を防ぐ」という志をひとつにしつつも,各自の考え方(哲学?)に従い,闊達に執筆されているところが大きな特徴であり,読み応えのある部分である.ところどころ,自由闊達すぎて筆が滑っている箇所も散見されるが,いずれも著者の熱い思いが沸き上がっている部分でもあり,賢明な読者諸兄諸姉の判断に委ねておけば問題ないと思われる.
 EBMを構築するエビデンスを参照しても,実際の診療には不十分であることが多い.そこでは,理にかなった考え方に基づいた選択と実践が必要であり,骨粗鬆症診療の領域でそれに十分に応えられる軽装の書物として本書は大いに役立つであろう.整形外科のみならず内科の先生方にもぜひ手にとっていただき,超高齢社会に備えていただければと願ってやまない.

臨床雑誌内科115巻6号(2015年6月増大号)より転載
評者●虎の門病院内分泌センター 竹内靖博