書籍

国立障害者リハビリテーションセンター社会復帰をめざす高次脳機能障害リハビリテーション

編集 : 飛松好子/浦上裕子
ISBN : 978-4-524-26496-4
発行年月 : 2016年11月
判型 : B5
ページ数 : 318

在庫あり

定価4,968円(本体4,600円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

平成13年度から16年度まで、国立障害者リハビリテーションセンターを中心に全国13施設で実施したモデル事業の成果(報告書)を基盤に高次脳機能障害の医学的専門知識、障害の評価とアプローチ、職種別の役割、社会生活を支援する制度やサービスなどを臨床的視点から平易に解説。同センターのリハビリスタッフを執筆陣とし、現時点での高次脳機能障害リハの最も信頼性の高い臨床テキストをめざした。

第1章 高次脳機能障害とは
 A.定義
 B.原因
 C.疫学(年間の発症数/国内の現状)
 D.医学的診断
第2章 症状
 A.意識
 B.記憶障害
 C.注意障害
 D.遂行機能障害
 E.社会的行動障害
 F.失語・失行・失認
第3章 評価
 A.尺度と使い方
  1.記憶障害
  2.注意障害
  3.遂行機能障害
  4.社会的行動障害
  5.失語・失行・失認
第4章 合併症とその管理
 A.中枢性運動障害
 B.てんかん
第5章 リハビリテーション(回復期)
 A.リハビリテーションプログラム
 B.機能回復訓練の実際
  1.作業療法
  2.言語療法
  3.心理療法
  4.看護
  5.理学療法
  6.リハビリテーション体育−評価とメニュー
 C.薬物療法
第6章 退院にむけて
 A.家族指導
 B.家族学習会
 C.環境調整
 D.車の運転
 E.生活訓練・就労支援への移行
 F.職業リハビリテーションへの移行
第7章 慢性期の生活障害の支援・社会生活への介入
 A.高次脳機能評価入院の実績から
 B.高次脳機能専門外来の役割・地域との連携
第8章 生活を支える社会資源・法制度
 A.関連する法令と障害認定
  1.障害者基本法
  2.精神保健福祉法
  3.障害者総合支援法
  4.介護保険法
  5.障害認定
  6.成年後見制度
 B.意見書の書き方−精神障害者保健福祉手帳
第9章 地域の支援体制
 A.地域の支援体制
 B.地域生活に関する支援の相談窓口
 C.就労・職場復帰に関する支援機関および相談窓口
 D.高次脳機能障害に関する相談窓口
第10章 小児の高次脳機能障害
 A.小児の高次脳機能障害
第11章 症例提示
 A.脳外傷に対する復職を目標としたリハビリテーションチームアプローチ
 B.重複する障害を合併する例
索引

序文

 高次脳機能障害は外傷や疾病により認知機能の障害をきたした状態である。国立障害者リハビリテーションセンター病院、自立支援局においても、受傷後、発症後の医学的リハビリテーション、社会復帰にむけた生活自立訓練、就労移行支援を行ってきた。
 国立障害者リハビリテーションセンター病院には1990年代後半から少しずつ交通事故による頭部外傷後遺症患者が入院してくるようになったが、当時は高次脳機能障害という概念も、診断基準もなく、リハビリテーションの手法も確立していなかった。
 私が初めて受け持った患者さんは、若い男性だった。事故後1ヵ月半ほどで「もう治療は終わった」といわれて脳神経外科から転院してきた方で整形外科医からの紹介だった。運動機能はほぼ問題なかったが、意識清明とはいえず、かといって意識障害があるともいえず発動性の低下した状態だった。幸いなことに患者さんは自然回復に沿って食事をとるようになり、ADLは自立した。失調は残ったが、職業リハビリテーションに移行した。
 その後モデル事業が行われ、診断基準やリハビリテーションの手法がだんだん確立された。病院から自立支援局の社会的リハビリテーションへと移行し、受傷後の医学的リハビリテーションから社会的リハビリテーションを経て、社会復帰までを一連のものとしてとらえた高次脳機能障害のリハビリテーションをチームで取り組んできたが、そろそろこの取り組みをまとめる時期がきたと思われたので本書を皆で分担執筆した。
 本書では小児の高次脳機能障害や高次脳機能障害者の自動車運転など、現在的な課題にも触れられている。また、十分な情報、診断、リハビリテーションの手法が確立していなかった時期に受傷され、社会で適応障害を起こしている方々に入院していただき、高次脳機能障害を評価し、その後の生活に対する助言を行い、地域へとつなげる「評価入院」についても触れられている。
 高次脳機能障害のリハビリテーションに関する成書は多いが、本書の特徴は、リハビリテーションの入口から社会復帰までが一連の流れとして書かれていることと、現場の専門職が具体的に何をしたらよいのかがわかるように書かれていることである。
 本書を通じて1人でも多くの高次脳機能障害者のリハビリテーションが円滑にすすみ、社会復帰へとつながることを願っている。

2016年11月
飛松好子

 高次脳機能障害は外傷や疾病により認知機能の障害をきたした状態である。本誌『整形外科』で、「なぜ高次脳機能障害の書籍の紹介をするのか」、と思われる読者の方たちもおられると思うが、リハビリテーション(リハ)に携わる医師はもちろん、整形外科医が診療する当該患者には交通事故による外傷、特に高エネルギー外傷の患者が含まれるために、運動器の多発外傷を伴うことも少なくない。高次脳機能障害は整形外科的な手術的治療が必要な急性期が過ぎて回復期となり、本格的にリハを開始する時期となって問題が顕在化することもあるために注意を要する。
 本書は、国立障害者リハビリテーションセンターで高次脳機能障害者のリハに携わっておられる飛松好子総長、浦上裕子医師の編集による。執筆も同施設の医師、臨床心理士、言語聴覚士、理学療法士、看護師などの専門職種が分担しており、受傷後の医学的リハから社会的リハを経て社会復帰までを一連のものとしてとらえ、高次脳機能障害のリハに実際にかかわったチームによる。書籍はB5判、300ページ余であるが、高次脳機能障害の基礎からリハの実際まで網羅され、高次脳機能障害が専門でない読者にとっても、わかりやすくまとめられている。
 内容について概説すると、第1章の「高次脳機能障害とは」では、定義、原因、疫学、医学的診断について、高次脳機能障害に関する基礎的な知識について図や画像が多用され、理解しやすい。第2章の「症状」では、意識、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害、失語・失行、失認について記載されている。整形外科医にとっては馴染みの薄い言葉であるが、具体的な症状がわかりやすく記載されており、患者の状態が理解できるように工夫されている。第3章「評価」では、第2章にあげた症状についての評価尺度とその使用方法について、具体的に記載されている。
 第4章「合併症とその管理」として、高次脳機能障害を主病として考えた際の特徴的で主な合併症である中枢性運動障害、てんかんについて記載され、第5章「リハビリテーション(回復期)」では、冒頭でリハの定義、国際生活機能分類(ICF)について述べ、タイムスケジュールに続いて、機能回復訓練の実際として作業療法、言語療法、心理療法、看護、理学療法などについて高次脳機能障害に携わる多職種の具体的な職務と具体的なリハプログラムの内容が記載されている。
 第6章では「退院にむけて」ということで、家庭指導、家族学習会、環境調整、車の運転、生活訓練・就労支援への移行、職業リハへの移行について、第7章「慢性期の生活障害の支援」では、高次脳機能評価入院の実績から専門外来の役割、地域との連携について記載されている。続いて、退院に際して重要な要素となる第8章「生活を支える社会資源・法制度」では、関連する法令と障害認定、意見書の書き方(精神障害者保健福祉手帳)について、特に在宅に向けた社会資源の有効活用という観点から、必要な書類とその作成方法が示されている。第9章「地域の支援体制」では、地域の支援体制、地域生活に関する支援の相談窓口、就労・職場復帰に関する支援機関および相談窓口、高次脳機能障害について記載され、退院から在宅まで調整の道筋が示されている。
 第10章では「小児の高次脳機能障害」について記載され、小児ならではの高次脳機能障害の症状とともに、その対応について記載され、第11章では実際の「症例提示」が示されている。各章ごとに参考文献が記載されており、さらに知識を深める際に有用である。
 高次脳機能障害と、そのリハの基礎から実践までがこの一冊に集約されており、リハを担当する医師はもちろんであるが、リハ医療や医療連携を実践する多職種の医療従事者にとって、臨床現場で必要かつ有用な内容が網羅されており、ぜひ診察室におきたい一冊である。

臨床雑誌整形外科68巻6号(2017年6月号)より転載
評者●久留米大学整形外科主任教授 志波直人