書籍

アトピー性皮膚炎診療が楽しくなる!

Q&Aで考える実践治療

: 竹原和彦
ISBN : 978-4-524-26482-7
発行年月 : 2011年4月
判型 : B5
ページ数 : 212

在庫あり

定価4,104円(本体3,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

アトピー性皮膚炎診療に豊かな経験を持つ著者が実臨床から学んだ実践的な内容をクイズ(Q&A)形式でまとめるユーモラスな一冊。初診の対応、再診の対応、ステロイド外用薬、ネオーラル、プロトピック、抗ヒスタミン薬、保湿薬・その他の治療薬、合併症、生活指導、その他の合計10のテーマから100のQを設け、考えながら楽しく学べる。

A 初診の対応
B 再診の対応
C ステロイド外用薬
D ネオーラル
E プロトピック
F 抗ヒスタミン薬
G 保湿薬、その他の治療薬
H 合併症
I 生活指導
J その他

アトピー性皮膚炎の治療に関する医療関係者向けの本を単著で書くのはこれが3冊目である。1冊目は「アトピー性皮膚炎診療実践マニュアル」(2000年9月、文光堂)、2冊目は「アトピー性皮膚炎診療100のポイントー治療ガイドラインに基づく標準治療の実践のために」(2002年6月、南江堂)である。
 上梓より約10年を経て、改めてじっくりとこの2冊を読み返してみる機会があった。そして2冊の自著を読み返してみると「一体この本は誰が書いたのだろうか?」というほどの不思議な感じを覚えた。
 良く言えば「若い」「熱い」「力強い」などともいえるが、率直には「堅い」「息苦しい」「力の空回り」と感じたのだ。この10年の間に自分の何が変わったのだろうか?単に私が歳をとっただけでも無いだろう、何が自分の考え方を変えたのか、自問自答の日々が続いた。そして約1ヵ月考え続け、ようやく1つの回答にたどり着いた。
 10年前の私は患者を診察しながらも様々な敵と戦っていたのだ。アトピービジネス、脱ステロイド療法、ステロイド・バッシングのメディア報道……。患者の向こう側に存在する別の敵と戦いながら、診療していたのである。すなわち、目の前にいる患者を「暗黒面」から取り返そうと「熱くなって」戦っていたのだ。
 しかし約10年の歴史を経て、アトピービジネスや脱ステロイド療法は衰退し、メディアの論調もかつてほどには異常なもので無くなった。もはや、現在の私は診察室の中で戦っていないのである。
 私が現在行っている診療は、ただひたすらシンプルで楽しく、分かりやすいものとなっている。アトピー性皮膚炎患者に対して、心理学者のように心理分析をし、推理小説の探偵のごとく謎解きをし、青春小説の熱血高校教師のように喜怒哀楽を共にし、テレビドラマのやたら物分かりのよいお父さんのごとく愛想のいい励ましの言葉をかける。限られた短い診療時間内で、これまでに獲得してきた技術を駆使し、患者と伴に実りある治療結果を目指して診療しているのである。
 そしてアトピー性皮膚炎治療について、徹底して患者サイドに立って考え直してみると、これまで常識とされていた治療の数多くが必ずしも正しくないことに気付いたのである。ガイドライン全盛の世の中であるが、臨床のがちんこの現場ではガイドラインは必ずしも有用でない。正直に告白すると、最近は各種アトピー性皮膚炎の診療ガイドラインを細部にわたって真剣に読んではいないのだ。アトピー性皮膚炎診療においては患者と心と心で向かい合うことの方がより重要であり、無味乾燥なガイドラインは無用の長物だと思うからだ。
 ちょうどそのようなことを考えていた時期に、以前アトピー性皮膚炎の単著の本を出版した時の担当編集者であった南江堂の大野隆之氏に会う機会があり、話の流れで新しい本の企画を相談することになった。これまでとは違う自然体で診療している今の自分のアトピー性皮膚炎診療について再度著書として世に出したいと思い、私の方から打診してみたのだ。その後、大野氏より私の構想に則した本を出版していただけるとのありがたい回答をいただいた。
 以前の2冊の本はアトピー性皮膚炎診療に関する網羅的な本であったが、今回は網羅的では無く、書きたいことだけを書こうと思った。そして、診療のポイントを絞り、思い切ってクイズ形式のQ&Aで読み易いものとし、回答は5択の選択とした。自称落語のような本である。一部ブラックユーモアも含まれている。
 とはいえ、治療、生活指導、患者対応などについての私自身の人生をかけて作り上げてきた渾身のアトピー性皮膚炎治療学をこの本の中で記述した。それらが皮膚科医の一般常識とは異なっていたとしても、患者のために良いのだと心の底から信じて私自身が行っているスーパーウルトラ実践治療法なのだ。なお、この本ではガイドラインや一部の教科書を除いて一切文献の引用をしないこととした。その理由はこの本を読んでいただければ分かっていただけると思う。
 もしこの本を読んだ人が、竹原の回答は間違いである、自分であれば別のものを正解とすると考えたとしても、それはそれで構わない。アトピー性皮膚炎の治療について、読者が今までとは異なる角度で考え直すチャンスとなれば、それでこの本の使命は果たせると思うからだ。
 私の本業は、膠原病・強皮症である。いろいろな事情により約15年前からアトピー性皮膚炎の診療にも積極的に従事し、日本皮膚科学会の理事としてもアトピー性皮膚炎に関する社会的活動を長年に亘って行ってきた。また、この約15年間、半端でない数のアトピー性皮膚炎患者を診療してきた。
 初診で私を希望した患者は、初診後もすべて私自身がフォローする。北陸以外の遠隔地からの患者でも、患者が転医を希望しない限りずっと私が担当する。学校が休みの時は1週間に200人以上診察する。
 その結果、果てしなく多くのことを患者から学んできたように思う。文献では学べない実践治療学である。学問的専門が、アトピー性皮膚炎ではないからこそ学べた実践治療学とも言える。そして、最近ではどんなに患者が多くても、診療が苦痛ではなくなった。金沢大学に赴任した当初のアトピー性皮膚炎診療は凄くプレッシャーのかかるものであったが、いつしかアトピー性皮膚炎の診療を心の底から楽しいと思えるようになった(膠原病・強皮症の診療が楽しくないわけではない、念のために書いておく)。
 そして、次世代の医療を支える若い医師、医療関係者(幅広く、薬剤師さん、看護師さん、MR君達、学校の養護の先生などなど、そしてひいては患者さんも含む)にアトピー性皮膚炎診療の楽しさを伝えるための本を世に出したいと思った。
 アトピー性皮膚炎の診療を「楽しい」と感じながら診療している医療関係者にはこの本は必要ない。しかし「辛い」「苦しい」「煩わしい」「鬱陶しい」と感じている医療関係者には是非読んでもらいたい。
 ひょっとして、明日からあなたの診療が「楽しく」なるかもしれないから……。
 そして、あなたの「楽しさ」は患者の「幸せ」へとなるかもしれないから……。
2010年12月
金沢大学大学院医学系研究科皮膚科学教室
竹原和彦
追記:
 こんなことを書くと山崎豊子の小説のあとがきのようだが、この本の中で症例として紹介されている事例は、すべて実在のものではない。実際の臨床の現場でこれまで遭遇してきたものに、ほぼ該当する事例を創作したのである。もし、実在の人物と類似していてもそれは偶然であると、山崎豊子風に書いておく。また、患者の職業やその他の背景もイメージの湧くままに設定したものであり、それ以上の意味は無い。
 この本で使用した臨床写真は学術・教育に利用することもあるという了解のもと撮らせて頂いたもののうち、症例のイメージに近いものを使わせて頂いた。ご協力を快諾頂いた患者さんとその家族のみなさんに深謝したい。
 また、薬剤については臨場感を出すため金沢大学病院で採用、使用されているものを商品名で記述した。

一読、とにかくおもしろい。読んでいて楽しい。私のような凡俗の輩には堅苦しい医学書を読むのは苦痛以外の何物でもないが、この本は違う。面倒な参考文献などは一切ないし、今はやりのEBMもガイドラインもまるで無視、いうなれば「竹原キョージュの独断と偏見で綴るアトピー治療痛快エッセイ」というような本である。感心したり、笑ったり、しみじみしたり、時には怒ったりしながら、読み終わるとアトピー性皮膚炎治療の勉強になっているというのだから、実におトクな本である。
 1980年代後半からアトピー性皮膚炎治療の現場は混乱した。小児科から始まった厳格食物除去療法、一部の皮膚科医が提唱した脱ステロイド療法、外用ステロイドの副作用を過剰に喧伝するメディアの存在などを背景に、医療不信に陥ってさまよう患者が急増した。そのような不幸な患者の財布をターゲットにして、高額の代替療法(水治療、温泉療法、各種健康食品などのあやしい治療)を提供するアトピービジネスが勃興、1990年代後半にはその混乱は頂点を迎えた。情けないことに、多くの皮膚科医が従来のステロイド外用薬を中心とした治療に自信を失いかけていた時期でもあった。
 このような、医師にとっても患者にとっても不幸な状態を正すべく敢然と立ち上がったのが、本書の著者、金沢大学皮膚科竹原和彦教授である。まず日本皮膚科学会を通じて、アトピービジネスによる健康被害の実態調査を行い、その実態を新聞、テレビ、雑誌、一般向け書籍などを通じて広く国民に知らせた。皮膚科医に対しては自信をもってステロイドを使おうと呼びかける一方、困っている患者に対しては、金沢大学皮膚科を中心としてメール、ファックスなどで患者相談を受け付けた。まさに八面六臂の大活躍であった。今日アトピービジネスは衰退し、アトピー治療の現場は落ち着きを取り戻しているが、これは竹原教授の活躍に負うところが大きい。当時、アトピービジネスからのいやがらせや、訴訟をちらつかせた脅しなどもあったようだが、「正義は勝つ」と信じ自らの信念を貫き通す姿勢には、大いに共感したものである。
 竹原教授の真骨頂は、このような学会やメディアを通じた「派手」な活動を行う一方、医師として患者を治療するという地道な活動にも多くの時間を割いていることである。アトピー治療の有名人である竹原教授の下には全国から患者が集まる。おそらく日本で一番多くのアトピー患者を診察しているのではないだろうか。たくさんの患者を診れば、それだけいろいろな患者と出会う。本書から、それらひと癖もふた癖もある患者を前にして奮闘する竹原教授の姿をうかがい知ることができる。
 「Q&Aで考える実践治療」の副題が示すとおり、本書は100のケース・スタディからなっている。まず症例呈示があり、その下に、とるべき選択肢が示される。そしてページをめくると、その解答と解説がある。同じ皮膚炎をもつ患者でも、患者の性格、生活背景、疾患についての理解度、治療意欲などにより、最適な治療法は異なってくる。自分だったらどのようにするか、考えながら読んでみると楽しい。解説には疾患についての説明や患者指導の方法、処方のコツなど、アトピー治療の実際が細かに書かれている。机上の空論ではなく、すべて自分の経験をもとに書かれているので、その内容はきわめて実践的である。アトピー性皮膚炎の治療に携わるすべての医師、看護師に勧めたい。
評者● 相馬良直
臨床雑誌内科108巻5号(2011年11月号)より転載