書籍

プライマリケア医のための抗菌薬マスター講座

: 岩田健太郎
ISBN : 978-4-524-26471-1
発行年月 : 2011年2月
判型 : A5
ページ数 : 142

在庫あり

定価3,024円(本体2,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

Medical ASAHIの好評連載「プライマリケア医のための抗菌薬マスター講座」を書籍化。プライマリケア医にむけて、抗菌薬の使い方と選び方を系統薬ごとに明確かつ軽妙に解説。各章は、気軽に読めるコンパクトな構成で、読み進めるうちに自然に抗菌薬の的確な使い方とその根拠が身につく。内科、外科など領域を問わず必読の一冊。

第1回 抗菌薬を学びなおしてみませんか?
第2回 抗菌薬使用の大原則〈Part1〉
第3回 抗菌薬使用の大原則〈Part2〉
第4回 ペニシリンを制するもの、感染症を制す〈ペニシリンPart1〉
第5回 ペニシリンを制するもの、感染症を制す〈ペニシリンPart2〉
第6回 ペニシリンを制するもの、感染症を制す〈ペニシリンPart3〉
第7回 ペニシリンを制するもの、感染症を制す〈ペニシリンPart4〉
第8回 使いやすいがゆえに間違える、セファロスポリンの難しさ〈セファロスポリンPart1〉
第9回 使いやすいがゆえに間違える、セファロスポリンの難しさ〈セファロスポリンPart2〉
第10回 マクロライドを使いこなそう!
第11回 使いこなそう、ST合剤−ワンランク上の感染症診療へ〈ST合剤Part1〉
第12回 使いこなそう、ST合剤−ワンランク上の感染症診療へ〈ST合剤Part2〉
第13回 とても便利なテトラサイクリン系
第14回 ニューキノロンにご用心〈キノロンPart1〉
第15回 ニューキノロンにご用心〈キノロンPart2〉
第16回 番外編 ある日、ある外来で
第17回 外来診療に幅が出るクリンダマイシンの使い方
第18回 使わないけど、学ぶ理由があるカルバペネム
第19回 番外編 CRPでよく受ける質問
第20回 番外編 よく受ける読者からの質問
第21回 始まりの終わり、終わりの始まり

医者になってある程度年月が経つと、勉強をするのがおっくうになってきます。むろん、自分の専門分野においては常にカッティングエッジな、最新の情報を得ています。けれど、自分の専門領域じゃあないんだけど、けれども使う薬についてはなかなか勉強する時間も、意欲もつくれないのが人情というものでしょう。僕にとっては、そうですね。たとえば抗けいれん薬とか、抗不整脈薬とかがそれに当たります。使っているんだけど、使い方をよく理解しているってわけでもない。
 抗菌薬は、内科医も外科医も使います。小児科医も産婦人科医も使います。いわゆるメジャーな科も、マイナーな科も使います。精神科医だって抗菌薬と無縁ではありません。統合失調症の方が糖尿病になり、食事制限ができないので血糖値が上がり、そのため感染症になる……なんてよくある話です。およそ臨床医である以上、抗菌薬や感染症と無縁でいることは非常に困難なのです。抗菌薬くらい専門領域を越えて利用されている薬はビタミン剤くらいなものなのです。
 ビタミン剤はよほど間違った使い方をしなければ患者さんに害を及ぼしませんが、抗菌薬はビタミン剤に比べるとずっと種類は多いし、副作用も多様です。耐性菌というやっかいなものが出現することもあります。近年、多剤耐性アシネトバクターとか、多剤耐性緑膿菌とかが世間を騒がせるようになっています。外来診療の現場でもマクロライド耐性菌や市中獲得型のMRSA などが増えています。「俺は開業医だから耐性菌は関係ないよ」というわけにはいきません。目の前の、「今の」患者さんを治療するのも大切ですが、明日の、そして10年後の患者さんもちゃんと治療できなくてはなりません。
 本書はもうある程度キャリアを積んでいるベテランの先生方が「寝っ転がって」読めるようにつくりました。各章は短く、15分程度で読むことができます。1日15分、20日前後で読破できます。どうぞ気楽にページを繰ってみてください。
 「毎日いつも同じ抗菌薬」よりは、「目の前の患者さんに一番ピッタリ合っている抗菌薬」を選ぶ喜びが生まれます。退屈な外来がとてもエキサイティングで楽しくなります(こういうところは漢方薬にも似ていますね)。明日からの診療がもっと楽しくなるように、ぜひ本書をご活用ください。
2011年1月 美しい冬の関西にて
岩田健太郎

わかりやすい、深すぎない、長すぎない
 「君たち研修医には、本も机もいらない。ベッドがありさえすればいい」といわれた沖縄県立中部病院での初期研修中に、筆者が唯一読んだ『ワシントンマニュアル』(メディカル・サイエンス・インターナショナル刊)の中で、今も鮮明に覚えているのが、抗菌薬についてまとめて書かれてあった数ページである。当時の沖縄県立中部病院には、青木真先生や本書の著者である岩田健太郎先生の師匠である喜舎場朝和先生がおられ、Gram染色や血液培養をせずに抗菌薬の注射投与を行うと叱られるという毎日であった。時間がない、眠い、しかし抗菌薬の勉強をしないわけにはいかない、という厳しい環境で、数ページに抗菌薬のことがまとめられた『ワシントンマニュアル』だけが頼りであった。その数ページを何回も何回も読み、線を引き、その数ページだけが早くぼろぼろになった。
 医師になった最初の1〜2年にこのような洗礼を受けることができたのは、今では幸運であったと思う。当時のほとんどの医師、すなわち、今、第一線で開業しておられる医師たちや指導医として研修医を指導しなくてはならない立場の医師たちは、そういう機会に恵まれなかったはずである。そうした状況にある多くの第一線の先生方は、最近、青木真先生や岩田健太郎先生の影響で若い医師たちが感染症に関心をもち、抗菌薬の選択や使い方に厳しい目を向け始めていることに少なからず脅威を感じておられるはずである。自分が習ってこなかった感染症への考え方や抗菌薬の選択・使用法に関して、現場で間違うと、面と向かって(あるいは陰で)研修医たちから非難される時代になりつつあるからである。
 そういう第一線の先生方向けに著者がわかりやすく、読みやすい抗菌薬の選択・使用法について本を書かれた。文字どおり、かゆいところに手が届く内容で、以下の三つの特徴がある。
 まず第一に、著者独特のわかりやすい言葉、文章で書かれてるので、読み疲れない。第二に、深すぎない。ともすれば専門家が自らの専門分野に関して本を書くとどうしても深くなりがちで、その専門領域の門外漢には読みづらく、読み始めても睡眠薬代わりになり、あえなく途中で討ち死に、あるいは、買ってはみたが本棚に「積ん読」というパターンは少なくないであろう。本書は大丈夫である。第三に、全体が21回の講座形式になっていて、それぞれが長くないのである。このため、本書は必ず読み通せる。筆者の経験では、読み通せた本には愛着が湧き、以後折に触れ、何回も開くようになり、繰り返し読み、知識として残るものである。
 第一線で開業しておられる先生方、研修医の視線が気になる指導医の先生方、あるいは感染症に強い指導医がおられない施設で研修中の初期研修医、専門研修医の先生方にもおすすめの絶品である。
評者● 寺澤秀一
臨床雑誌外科73巻10号(2011年10月号)より転載

この度、南江堂から岩田健太郎教授が執筆した『プライマリケア医のための抗菌薬マスター講座』という著書が上梓された。「寝っ転がって」読めると序文に書いてあるように、本文130ページ程度の著書でもあり、2日間で読破することができた。
 私は米国帰りの感染症医を、セフェム系抗菌薬と同様に世代分類することにしている。第一世代は、本書にも出てくる喜舎場朝和先生であり、グラム染色を頑なに行い、またペニシリンを中心に狭域の抗菌薬を選択するという治療理念(著者の示したnarrow in beautiful)の実践者であった。第二世代は、喜舎場先生のお弟子さん(必然的に沖縄県立中部病院で研修した医師となる)であり、若いころに沖縄県立中部病院でグラム染色を叩き込まれたために、グラム染色を重要に考える。青木眞先生や岩田健太郎先生(沖縄県立中部病院在籍は短期間であるものの精神は受け継いでいる)はこの世代にあたると考えている。
 それ以降の世代は、米国のみで感染症を学んだ医師が多いように思う。その特色として、血液培養は勧めるものの、グラム染色の有用性を強調する医師は少なくなったと感じているし、Sanfordガイドに従って、broadな抗菌薬を選択する傾向にあると感じている。本書で引用されている文献は3つのみであるが、岩田教授ご自身が執筆されたClin Infect Dis 39:1742、2004は必読であろう。確かに古きよき米国の医療は、本家の米国では滅びたように思われる。しかしガラパゴスであった沖縄県立中部病院では生き残ったのである。ちなみに私の勤務する琉球大学大学院感染症・呼吸器・消化器内科学講座も日本一、グラム染色を実施する内科学教室であると自負している
 本書は、第二世代の岩田健太郎先生が、自身の幅広い経験を織り込みながら、読者が楽しく学べるように工夫されている。また随所に症例が紹介され、実践的な感染症の診療を学べるとともに、各論的に抗菌薬について、わかりやすく学ぶことが可能であり、プライマリケア医には、抗菌薬の入門書としての役割を果たすものと確信する。
 さて、感染症学も日々進歩している。岩田教授がご指摘になっているように、これまでわが国においては海外に比して、evidenceの乏しい抗菌薬治療が行われてきたことも事実である。しかしながら、世界中で幅広く使用されている多くの抗菌薬がmade in Japanであり、わが国独自の臨床経験があることも認識しておく必要がある。新規抗菌薬の開発が期待できない現段階において、今後、どのような感染症学を展開していけるのか、真剣に考える時期が来ているものと感じている。感染症学が学問である以上、プラクティカルな知識のみならず学問の王道という道があるのも事実であろう。若い岩田健太郎先生が、感染症学の王道を歩むことを心から期待したい。
 寝っ転がりながら、また楽しみながらこの一冊に目を通すことにより、短時間で、抗菌薬治療の基本が理解できるので、医療従事者すべての人々に推薦できる良書である。
評者● 藤田次郎
臨床雑誌内科107巻6号(2011年6月号)より転載