書籍

単孔式内視鏡手術

基本テクニックとその応用

監修 : 単孔式内視鏡手術研究会
編集 : 木村泰三/森俊幸/岡島正純
ISBN : 978-4-524-26465-0
発行年月 : 2012年10月
判型 : A4
ページ数 : 252

在庫あり

定価12,960円(本体12,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

原則として1ヵ所の皮膚切開(主に臍部)から手術を行う単孔式内視鏡手術について、スムーズな手術操作や術野確保の工夫、新たに単孔式手術を導入するにあたっての前臨床トレーニングや、実際の手術症例も多数提示。また、より手術創を少なく、小さくする“reduced-port surgery”の理念に沿い、補助的に細径トロッカー等を用いた手技も解説。単孔式手術を代表とする低侵襲手術手技の最先端が視覚的に理解できる。

総論
I.歴史
 (1)単孔式内視鏡手術の始まり
 (2)手術器具類の開発
 (3)単孔式内視鏡手術の各臓器への導入
 (4)現状の評価
II.Terminology
 (1)単孔式内視鏡手術とは
 (2)単孔式内視鏡手術の英語表記
 (3)パラレル法(boxing style) とクロス法(criss cross technique)
III.特徴
 (1)eye-hand coordination の確保
 (2)利点
 (3)欠点
 (4)適応疾患
IV.経済性
 (1)導入時の施設負担の費用
 (2)手術にかかる費用
 (3)低コストを目指すために
V.機器とセットアップ
 (1)アクセスポート
 (2)トロッカー
 (3)鉗子
 (4)サポート器具
 (5)スコープ
VI.臍の解剖
 (1)臍の発生
 (2)臍の位置
 (3)臍の支持組織と血流
 (4)臍の外観
 (5)手術創としての臍の利用
VII.アプローチ法
 (1)単孔式内視鏡手術の特性
 (2)干渉への対処法
 (3)鉗子ベクトルへの対処法
 (4)アクセスポートの種類と特徴
VIII.術野展開の基本
 (1)内視鏡外科手術における術野展開の基本
 (2)単孔式内視鏡手術における注意点
 (3)術野面の形成におけるポイント
 (4)単孔式内視鏡手術におけるmove the ground
 (5)右手(利き手)の鉗子の操作空間の確保
IX.デバイス操作の基本
 (1)デバイス形状による技術の分類
 (2)術野展開とデバイス配置の基本パターン
 (3)デバイスの基本操作(3ステップ法)
 (4)安全に操作をするために
X.導入と前臨床トレーニング
 (1)単孔式内視鏡手術の特徴
 (2)トレーニング法のポイント
 (3)トレーニングの実際
 (4)臨床における通常の腹腔鏡下手術からの移行
XI.縫合と結紮
 (1)multi-channel port 法での(可変湾曲型鉗子を用いた)縫合・結紮
 (2)multiple trocar 法での(ストレート型鉗子同士で行う)縫合・結紮
XII.補助デバイスの活用
 (1)デバイスの特徴
 (2)手技の実際
 (3)手術成績
XIII.海外の動向
 (1)アンケート対象
 (2)アンケート内容
 (3)アンケートの回答
 (4)結果のまとめ

各論
I.胆道
1 現状と展望
 (1)単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術の手技と器具
 (2)アウトカム、エビデンスと問題点
 (3)今後の展望
2 ケースファイル:単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術
 (A)経済性を考慮した方法
 (B)multiple trocar法
 (C)multi-channel port法
 (D)患者の体型に応じた方法一鉗子の選択とスコープの位置
 (E)蛍光胆道検索を併用した方法
 (F)スポンジチューブ法とmulti-channel port法
II.上部消化管
1 現状と展望
 (1)現状
 (2)適応例
 (3)今後の展望
2 ケースファイル:上部消化管
 (A)単孔式腹腔鏡下胃部分切除術
 (B)単孔式腹腔鏡下Heller and Dor手術
 (C)胃食道逆流症と食道裂孔ヘルニアに対する単孔式腹腔鏡下噴門形成術
III.下部消化管
1 現状と展望
 (1)単孔式内視鏡手術の台頭
 (2)国内外の現状
 (3)適応
 (4)今後の展望
2 ケースファイル:下部消化管
 (A)S状結腸切除術と回盲部切除術一通常の腹腔鏡下手術との違い
 (B)大腸癌に対するS状結腸切除術一手術プロセスごとのポイン卜
IV.虫垂
  ケースファイル:単孔式腹腔鏡下虫垂切除術
 (A)multiple trocar法
 (B)multi-channel port法
V.肝・膵・脾
  ケースファイル:肝・膵・脾の単孔式腹腔鏡下手術
 (A)単孔式腹腔鏡下肝嚢胞天蓋切除術
 (B)単孔式腹腔鏡下膵・脾手術
VI.鼠径部
1 現状と展望
 (1)海外の現状
 (2)園内の現状
 (3)今後の展望
2 ケースファイル:単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術
 (A)単孔式TAPP (経腹腔的到達法)
 (B)単孔式STEP (腹腔前腔到達法)
VII.肥満外科
1 現状と展望
 (1)肥満外科と単孔式内視鏡手術
 (2)手術手技別の状況
 (3)単孔式肥満外科手術の難しさ
2 ケースファイル:単孔式腹腔鏡下肥満外科手術の実際
VIII.小児外科
  ケースファイル:小児外科領域における単孔式内視鏡手術
 (A)小児外鼠径ヘルニア
 (B)胃瘻部からの噴門形成術(脳性麻痺児)
IX.泌尿器科、産科・婦人科
1 ケースファイル:泌尿器科領域における単孔式内視鏡手術
 (A)腎摘除術・腎盂形成術
 (B)根治的腎摘除術一左賢を中心に
2 ケースファイル:産科・婦人科領域における単孔式内視鏡手術
 (A)体内結紮や剥離・牽引操作に適した臍部アクセスシステム
 (B)産科・婦人科における単孔式による各種術式
X.needlescopic surgery
1 定義と歴史
 (1)定義
 (2)歴史
 (3)低侵襲性手術の追求とneedlescopic surgery
 (4)今後の展望
2 ケースファイル:needlescopic surgery の実際
 (A)細経鉗子・内視鏡を用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術
 (B)細径鉗子を用いた腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術

索引

内視鏡外科手術の孔(ポート)の数を減少させ手術器具を細径化しようとする試み(reduced port surgeryと最近では呼ばれるようになった)は、内視鏡外科手術が導入されて間もなく始まったが、なかなか一般に広まることはなかった。その理由はいくつかあるが、第一に内視鏡外科手術の最大の弱点であるとされた手術の難度(リスク)を増加させる危惧があったからであろう。すなわち、内視鏡外科手術を容易に安全に行うためには、視野において鮮明な画像を確保し、テクニックにおいてtriangular formationを確保することが基本であるが、孔を減らし、器械器具を細くすることは、これらを困難にする。また、内視鏡外科手術は適応拡大の方向に向かったが、そのためには、孔の数を増加させ手術器具を太くする必要があった。
 それが一転して2008年頃から、reduced port surgeryの究極の形といえる単孔式内視鏡手術が米国において注目を集め、次代の内視鏡外科手術の標準になるのではないかとさえいわれるようになった。そのきっかけとなったのは、NOTES(natural orifice translumenal endoscopic surgery)の出現であろう。NOTESは皮膚に創を残さず痛みもない究極の低侵襲手術として登場してきたが、種々の克服すべき難題を抱えており、臨床で一般的に行われるにはまだ程遠い。そこで単孔式内視鏡手術が、すぐに臨床において実現できるものとして注目された。また、細径でも明るく鮮明な画像を提供できる光学器械が開発され、屈曲できる鉗子や手術テクニックが開発されたことにより、単孔式内視鏡手術でも鮮明な画像下に、triangular formationを確保した手術が可能になったことも大きかった。
 本邦においても、2009年には単孔式内視鏡手術研究会(TANKO研究会、代表世話人:岡島正純、森俊幸)が立ち上げられ、2010年2月20日には第1回研究会(徳村弘実会長)が開催された。胆嚢摘出術から始まった単孔式内視鏡手術であるが、その後、たちまち、虫垂切除術、大腸切除術、ヘルニア手術などにおいても行われるようになり、さらには、脾臓摘出術、Nissen手術から、胃切除術、直腸切除術に至るまで、あらゆる内視鏡外科手術の領域で行われ始めた。
 こうした流れの一方、新たに本法に取り組もうとする外科医は、次のことを忘れないでいただきたい。まず、本法ではっきりしている利点は整容性のみであるということ、また、手技は従来法に比べて難度が増すということである。よって、単孔式内視鏡手術は、従来法内視鏡外科手術の熟練者が行うべき手術である。また、本法を行うものは、まだ不確かな利点(痛みの軽減、侵襲の低下)などを強調して従来法との差別化を図ることは避けるべきである。悪性疾患の手術においては、根治性を少しでも損ねるおそれがあれば、本法を施行すべきではない。単孔式手術に困難や危険を感じれば、ためらうことなく孔の増設や、従来法内視鏡外科手術への移行を行うべきである。
 本書では、本邦における単孔式内視鏡手術の先駆者たちが、歴史、用語、特徴、海外の動向、器械器具、アプローチ法、術野展開、トレーニング法、縫合・結紮から、各術式を安全に行うためのコツに至るまで、単孔式内視鏡手術を詳しく解説してくれた。各術式やさまざまなテクニックの解説には、図や写真がふんだんに用いられており、非常にわかりやすいものとなっている。本書は、現時点において、最良の著者による最高の教科書であり、単孔式内視鏡手術を目指す外科医の必読の書であると自負している。

2012年8月
単孔式内視鏡手術研究会顧問
富士宮市立病院名誉院長
木村泰三

患者が手術に期待するものは、(1)確実性と安全性、(2)できるだけ少ない疼痛、(3)できるだけ小さな傷であろう。術者が求めるものも安全で確実な手術である。この安全で確実な手術を行うために外科医は日々、外科解剖を視認できる能力と器機を含めた手術操作(手術野の展開も含めて)の技量を高める努力をしているわけである。患者の求める(2)と(3)の要求に応えるべく開発されたのが腹腔鏡手術であるが、外科解剖の視認性を向上させ、とどまることのない光学系の進歩はより高い視認性を可能にしている。そして、さらなる「できるだけ少ない疼痛」と「できるだけ小さな傷」に応えるべく開発されたのが「単孔式内視鏡手術」や「needlescopic surgery」であり、究極はnatural orifice translumenal endoscopic surgery(NOTES)であろうか。
 本書は単孔式内視鏡手術の先駆者により書かれた、「単孔式内視鏡手術」の教科書である。総論として単孔式手術の歴史、用語、さまざまな器機の使用方法、基本操作、海外の動向が解説され、各論では各臓器別(あるいは疾患別)に現状と展望、そして「ケースファイル」として具体的な症例での手術操作・手順が詳細に記述されている。読者が自分の興味ある章から読み始めることができるよう、また各章ごとに最新の文献も引用され自己学習の助けになるよう、細やかな配慮がされており、企画された方々のたいへんな労力が推察される。豊富な写真やイラスト、的確な解説に、単孔式内視鏡手術経験のない筆者でも、器具さえそろえば今日からできるのでないかと錯覚してしまう。しかし、「編集の序」に述べられている木村泰三先生の警鐘を忘れてはならない。単孔式内視鏡手術は従来の内視鏡手術より難度の高い手術であることを。従来の腹腔鏡手術の習得と同様に、単孔式内視鏡手術を習得するためには、熟練者の手術を見学することから始まり、直接あるいは間接的に指導を受けつつ、その予習・復習に本書を有効に利用することが大切であろう。
 本書中にも記載されているように、器機の開発と改良、経験の蓄積により、単孔式内視鏡手術の難易度が低下し適応が拡大することが予想される。本書が適宜改訂され、安全で確実な手術の普及に貢献する教科書となることを切に希望している。

評者●坂井義治
外科75巻2号(2013年2月号)より転載