書籍

皮膚レーザー治療プロフェッショナル

プロから学ぶ正しい知識と手技

編集 : 渡辺晋一/岩崎泰政/葛西健一郎
ISBN : 978-4-524-26385-1
発行年月 : 2013年10月
判型 : B5
ページ数 : 260

在庫あり

定価12,960円(本体12,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

皮膚科や形成外科領域ではもはや欠かせないレーザー治療だが、いまだにその手法についてのエビデンスは十分とはいえない。現時点でもっともエビデンスに基づいた内容となるよう留意し、原理を踏まえての治療法を考えられるよう、皮膚に対するレーザー治療の知識やノウハウをまとめた。カラー写真の症例や、経験豊かなエキスパートのコラムも多数収載し、臨場感溢れる内容とした。

I.皮膚レーザー総論
 A.皮膚科におけるレーザー治療の原理とメカニズム:
   光と生体組織の相互作用間
 B.皮膚科・形成外科で臨床使用されているレーザー機器一覧
II.治療の実際
 A.血管性病変
  1.血管性病変のレーザー治療の原理と作用機序
  2.血管性病変の治療の実際
   a.単純性血管腫
   b.正中部母斑
   c.苺状血管腫
   d.老人性血管腫
   e.毛細血管拡張症
   f.血管拡張性肉芽腫
 B.色素沈着症
1.色素沈着症のレーザー治療の原理と作用機序
2.色素沈着症の治療の実際
   a.太田母斑
   b.太田母斑類似の色素病変
   c.蒙古斑
   d.母斑細胞母斑(色素細胞母斑、色素性母斑)
   e.刺青
   f.茶アザ
   g.老人性色素斑
   h.肝斑
   i.口唇の色素斑
   j.炎症後色素沈着
   k.雀卵斑
 C.腫瘤性疾患
  1.腫瘤性疾患のレーザー治療の原理と作用機序
  2.腫瘤性疾患の治療の実際
   a.脾粒腫
   b.眼瞼黄色腫
   c.口唇粘液嚢腫
   d.指趾粘液嚢腫
   e.尖圭コンジローマ
   f.脂腺増殖症
   g.尋常性疣贅
    g-1.蒸散によるレーザー治療
    g-2.切開と人工真皮使用による治療
   h.軟性線維腫
   i.巨細胞性腱腫瘍
   j.粉瘤
   k.脂漏性角化症
 D.美容形成
   a.脱毛
   b.しわ、たるみ
   c.瘢痕
   d.その他
索引

私は10年近く前から、タイのバンコクで、中東を含む東南アジアの医者約30名にレーザー治療と美容皮膚科の講義を年間20時間ほど行っている。東南アジアの皮膚科治療は欧米と同じで、日本より進んでいるが(日本の皮膚科治療は東南アジアより劣っている!)、レーザー治療となると日本と似たり寄ったりで、レーザー治療の講義はもっぱらメーカー頼みということである。つまりメーカーが原稿を作成し、講演料をもらった医師が講演するという構図である。そのため、その講演内容は販売促進の宣伝を目的としたもので、必ずしも証拠に基づいたレーザー治療(evidence based laser therapy:EBL)ではない。
 以前から販売促進を目的とした講演はさまざまな分野で行われており、最近になってようやく、ある降圧薬の臨床研究の捏造論文が話題となり、学会で作成したガイドラインにも疑惑の目が向けられるようになったが、皮膚科も例外ではない。とくにレーザー治療では経験がない医師の方が圧倒的に多いので、これらの宣伝文句を批判的に検証できる医師は皆無に等しい。そこで、以前から時間があったらバンコクで行っているレーザー治療・美容皮膚科の講義を1冊の本にまとめてみたいと思っていたところ、南江堂からレーザー治療の本の出版の依頼があったため、渡りに船とばかりにこの本を上梓することになった。たった一人で全部を書き上げる時間がなかったため、何人かの先生にお願いして、分担執筆していただいた。依頼した先生方はいずれも利益相反(confl ict of interest:COI)に基づく医学(COIbased medicine)にはほとんど無縁な先生方なので、信頼性は高い。今後さらなるエビデンスの集積により、変更を余儀なくされる可能性はあるが、現時点ではもっともエビデンスに基づいたレーザー治療の解説書になっている。この本により証拠に基づいた医療(evidence based medicine:EBM)とは何かを実感していただければ、望外の喜びである。

2013年10月
編者代表 渡辺晋一

本書は、レーザー治療を「証拠に基づいた治療」として確立させたものである。これまで、レーザー治療を行う臨床医は、レーザー機器メーカーが提案する出力を設定し、患者に照射を行った結果、効果があるということを実感するにとどまっていたのではないだろうか。つまり、レーザーを照射すれば、皮下でどのような反応が起こり、どのように治療効果を表すのか、想像するほかなかったのである。実際に生検を行って評価したいと考えても、とくに、小児に多い単純性血管腫や苺状血管腫、太田母斑や異所性蒙古斑などについては、照射前後で生検を行うことは、なかなか同意が得られるものではない。しかし、本書はそれを行い、丁寧に解説している。
 本書の構成は、大きく「レーザーの総論」と「治療の実際」に分けられている。総論ではレーザー治療の原理とメカニズム、および現在臨床応用されているレーザー機器についての解説である。レーザーの原理は、先に出版されているレーザー治療の教本などにも必ず示されているものであるが、本書では図式も多く、視覚的に理解しやすく記されている。レーザー機器の紹介は、日本で承認されていない機器も網羅されており、各会社の特徴なども記載され、興味深く読むことができる。
 治療については、血管性病変、色素沈着症、腫瘍性疾患、美容形成の各項目に分けて解説されている。疾患の詳細な解説とそれに対するレーザー治療の考え方、治療戦略がシェーマを使って書かれており、実際の治療症例の臨床写真が提示され、治療の限界点なども示されている。また、レーザー照射後の組織学的変化がHE染色標本や電顕像を用いて時系列で掲載されており、レーザー治療の有効性を納得することができる。
 また、本書の特徴といえるのが、「COLUMN」が非常に充実している点である。実際の診療で疑問に思うことがあるが、教科書には解説が載っていないこと、それを本文とは別にコラムとして記載している。たとえば、「COLUMN7 単純性血管腫のlife-long management」では単純性血管腫の治療限界は多くの臨床医が経験することだが、治療の限界に到達した後も、再発の可能性も視野に入れながら、長期的にメンテナンスを行う必要があるといった内容である。実際に診療していると、患者やその親族と関わっていくなかで、治療の限界を宣言するのは非常に心苦しいものであるが、無駄な治療を繰り返すより、発想の転換を行い、よい状態を維持するために必要な治療を提案していくことで、信頼関係も生まれるのではないかと考えられる。「治療の限界なので、これでいったん終了しましょう」といってしまいがちだが、「今後は1年に1回程度の診察で、再発があるようなら、照射を続けましょう」というほうが説得力がある。つまり、本書は実際の診療の場に非常に即した教本なのである。
 これからレーザー治療を始める医師はもちろんのこと、これまでレーザー治療に携わってきた熟練した医師も、本書を手に取り、これまで疑問に思ってきたことの答えがないか、読んでみてはどうだろうか。また新たな知見が広がり、診療に役立つことであろう。

臨床雑誌内科114巻3号(2014年9月号)より転載
評者●和歌山県立医科大学皮膚科 古川福実、国本佳代