書籍

新 心臓血管外科管理ハンドブック改訂第2版

編集 : 国立循環器病研究センター心臓血管部門
ISBN : 978-4-524-26373-8
発行年月 : 2016年2月
判型 : B5
ページ数 : 390

在庫あり

定価14,040円(本体13,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

わが国の循環器疾患対策の中枢である国立循環器病研究センターで修練を積んだスタッフが、術前・術中・術後の患者管理に関する豊富な経験を外科医・麻酔科医双方の観点から集大成した実際書。今改訂では、新薬剤や治療法の最新知見を反映し、センターにおける手術適応や周術期管理の実際を踏まえた実践的解説をより充実させた。

総論
総論I.術前管理
 A.感染症スクリーニングと陽性患者への対応
  1.感染症合併のリスク
  2.黄色ブドウ球菌の鼻腔内保菌者の術後創部感染
  3.ウイルス
  4.術前患者への対応
 B.自己血輸血と血液準備
  1.異型輸血の防御法
  2.術前血液準備
  3.自己血輸血
 C.服用薬剤の術中・術後への影響および中止時期
  1.抗凝固薬
  2.抗血小板薬
  3.β遮断薬
 D.術前合併症とその対応
  1.発熱
  2.湿疹
  3.齲歯・歯肉炎
  4.脳合併症
  5.肝機能障害
  6.腎機能障害
  7.呼吸器合併症
  8.血液疾患・凝固系異常
  9.不規則抗体陽性
  10.代謝疾患
  11.膠原病および類縁疾患
  12.消化器悪性腫瘍
  13.まとめ
総論II.術中管理
 A.人工心肺
  1.人工心肺の目的
  2.構成要素
  3.人工心肺操作手技
  4.自己血回収装置
  5.心筋保護法
  6.脳保護法
  7.再手術への対応
 B.術中経食道心エコー(TEE)
  1.心臓大血管手術における周術期経食道心エコー(TEE)の特徴
  2.術中術後TEEの利用方法と適応疾患
  3.TEEの禁忌と注意点
  4.今後のTEEの展望
総論III.術後急性期管理
 A.循環モニタリング
  1.基本的モニタリング
  2.呼吸モニタリング
  3.生化学的モニタリング(検査)
 B.循環管理
  1.基本的概念
  2.酸素代謝管理
  3.循環作動薬
  4.補助循環
  a.大動脈内バルーンパンピング(IABP)
  b.V-A(veno-arterial)バイパス
  c.経皮的心肺補助法(PCPS)
  d.補助人工心臓
  5.心血管系合併症管理
 C.呼吸管理
  1.人工呼吸管理の基本
  2.呼吸理学療法
  3.呼吸器合併症
   a.人工呼吸器関連肺傷害(VALI)
   b.人工呼吸器関連肺炎(VAP)
   c.消化管出血
   d.横隔神経麻痺
   e.先天性心疾患に伴う気道異常
 D.術後出血と管理
  1.心タンポナーデ
  2.輸血
 E.術後鎮痛・鎮静管理
  1.fast track管理
  2.鎮痛・鎮静法
  3.鎮痛・鎮静法の実際
  4.シバリングの予防・治療
  5.けいれん発作の治療
 F.水・電解質・栄養管理
  1.輸液療法と栄養管理
  2.電解質異常
  3.新生児・乳児の輸液・栄養
  4.経腸栄養
  5.特殊病態における栄養管理
 G.薬物投与管理
  1.投与経路
  2.ライン管理
  3.フィルタについての注意点
  4.注射薬の配合変化
 H.感染症対策
  1.一般的予防法
  2.術後対策
  3.TDMに基づく抗菌薬の投与方法
 I.凝固系管理
  1.生体における血栓止血のメカニズム
  2.抗血小板薬と抗凝固薬
  3.術後抗凝固療法
  4.血小板数低下,DIC,その他の凝固異常
 J.腎不全
  1.急性腎障害(AKI)の定義
  2.外科手術におけるAKIの原因
  3.外科手術におけるAKIの予防と治療
  4.慢性腎臓病(CKD)
 K.糖尿病
  1.心血管疾患と糖尿病
  2.周術期における血糖管理
 L.消化器系合併症
  1.胃,十二指腸
  2.肝臓
 M.中枢神経異常
  1.原因と発生頻度
  2.予防
  3.症状
  4.早期診断
  5.治療
  6.まとめ
各論
各論I.先天性心疾患の管理
 A.術前管理
  1.新生児
  2.乳児期以降
 B.術中管理
  1.麻酔
  2.人工心肺
  3.限外濾過
 C.術後管理・総論
  1.手術の目的
  2.新生児・乳児期の術後管理
  3.術後遺残症・続発症
 D.非開心修復手術の管理
  1.動脈管開存症(PDA)
  2.大動脈縮窄・離断症
  3.血管輪
 E.新生児期・乳児期早期開心修復手術の管理
  1.完全大血管転位(TGA)
  2.総肺静脈還流異常(TAPVC)
  3.大動脈縮窄・離断複合
  4.総動脈幹
 F.左-右短絡疾患の管理
  1.心房中隔欠損(ASD)
  2.心室中隔欠損(VSD)
  3.房室中隔欠損(AVSD)
 G.右-左短絡疾患の管理
  1.Fallot四徴症(TOF)
  2.Fallot四徴症/肺動脈閉鎖(PAVSD)
  3.Fallot四徴症/肺動脈閉鎖/巨大体肺側副血行路(MAPCA)
  4.心外導管手術,自己組織を用いた右室流出路再建術
  5.両大血管右室起始(DORV)
  6.房室錯位(AVD)
  7.単心室
  8.isomerism heartの修復手術
  9.純型肺動脈閉鎖(PAIVS)
 H.狭窄疾患・弁疾患の管理
  1.肺動脈弁狭窄(PS)
  2.大動脈弁狭窄(AS)
  3.大動脈弁下狭窄(SAS)
  4.大動脈弁上狭窄(SVAS)
  5.僧帽弁狭窄(MS)
  6.僧帽弁閉鎖不全(MR)
  7.Ebstein病
 I.乳児期・幼児期無輸血開心術の管理
  1.乳児期・幼児期無輸血開心術の適応疾患
  2.乳児期・幼児期無輸血開心術の手段
 J.遠隔期再手術の管理
  1.心外導管を用いた右室流出路再建術後の導管狭窄
  2.Fallot四徴症遠隔期肺動脈弁閉鎖不全に対する再手術
  3.房室中隔欠損修復術後の房室弁閉鎖不全
  4.房室中隔欠損修復術後の左室流出路狭窄
  5.両大血管右室起始修復術後の左室流出路狭窄
  6.Fontan手術後の再手術
  7.conotruncal anomaly術後の上行大動脈拡大
 K.成人期の先天性心疾患開心術の管理
  1.心房中隔欠損(ASD)
  2.心室中隔欠損(VSD)
  3.房室中隔欠損(AVSD)
  4.Ebstein病
  5.Fallot四徴症
 L.機能的修復手術の管理
  1.Fontan手術
  2.1.5心室修復手術
  3.機能的二心室修復手術
 M.非開心姑息手術の管理
  1.体肺動脈短絡手術
  2.肺動脈絞扼術
  3.大動脈縮窄・大動脈弓離断複合に対する大動脈弓再建術
  4.心房中隔欠損作製または拡大術
  5.肺動脈弁裂開術
  6.肺動脈統合術
 N.開心姑息手術の管理
  1.右室流出路再建術
  2.左心低形成症候群に対する寛解手術(Norwood手術)
  3.isomerism heartに対する開心姑息手術
  4.新生児期重症Ebstein病に対する開心姑息手術
各論II.後天性心疾患の管理
 A.弁膜疾患の管理
  1.僧帽弁疾患
  2.大動脈弁疾患
  3.三尖弁疾患
  4.感染性心内膜炎(IE)
  5.移植弁機能不全
  6.低侵襲弁膜症手術
 B.冠動脈疾患の管理
  1.狭心症
  2.急性心筋梗塞合併症に対する手術
  3.陳旧性心筋梗塞合併症に対する手術
  4.虚血性心筋症に対する左室形成術(SVR)
  5.特殊なCABG
  6.まとめ
 C.不整脈の管理
  1.心房細動(AF)
  a.maze手術
  b.カテーテルアブレーション
  2.心房頻拍・心室頻拍
  a.心房頻拍(AT)
  b.心室頻拍(VT)
 D.拡張型心筋症
 E.特殊疾患
  1.閉塞性肥大型心筋症(HOCM)
  2.収縮性心膜炎(CP)
  3.心臓腫瘍
  4.心外傷
 F.心臓移植の管理
  1.適応およびレシピエントの決定
  2.移植手術待機患者の術前管理
  3.移植手術
  4.心肺同時移植
  5.心臓移植の麻酔
  6.術後急性期管理
各論III.血管疾患の管理
 A.胸部・胸腹部動脈瘤
  1.術前管理
  2.標準手術手技
   a.大動脈基部置換術
   b.上行弓部大動脈置換術
   c.下行大動脈置換術および胸腹部大動脈置換術
   d.ステントグラフト内挿術(ハイブリッド治療を含む)
 B.大動脈解離
  1.術前管理
  2.標準手術手技
 C.胸部・胸腹部大動脈外科
  1.術中合併症
  2.術後管理
 D.腹部大動脈瘤
  1.術前管理
  2.標準手術手技
   a.アプローチ
   b.再建方法
   c.ステントグラフト内挿術
   d.術中管理
  3.術後管理
 E.末梢血管疾患
  1.末梢動脈疾患
   a.急性動脈閉塞症
   b.慢性動脈閉塞症
   c.血管内治療
   d.血管新生療法
  2.末梢静脈疾患:深部静脈血栓症
 F.肺血栓塞栓症
  1.急性肺血栓塞栓症
  2.慢性肺血栓塞栓症
索引

巻頭言

 『心臓血管外科管理ハンドブック』は国立循環器病センター創立(1977年6月)から18年目を迎えた1995年に南江堂から初版が発刊された。当時の心臓・血管外科部長(後に千葉大学外科教授)をつとめられた故・中島伸之部長らによって執筆・編集された。その版を開いてみると、序文を故・曲直部寿夫名誉総長が執筆されている。
 2005年に10年ぶりの改訂第1版が『新・心臓血管外科管理ハンドブック』として発刊された。初版と改訂第1版を比較してみると、心臓血管外科10年の歩みが大変明確に理解しうる。初版のCABGの項は静脈グラフトが中心となっていたが、改訂版では動脈グラフトが中心となり、off-pump CABGが登場した。また、初版には心臓移植の項が設けられていなかったが、改訂版には重要な項目として加えられている。初版当時ではWPW手術は主要な不整脈手術であったが、改訂版時にはmaze手術が重要な外科の役割となった。その他、弁形成や弓部・胸腹部大動脈瘤手術が普及し、左室低形成症候群などの新生児手術などに術前・術中・術後管理法を含め長足の進歩がみられた。これらの弛まざる進歩は今回の改訂第2版でも引き継がれている。
 改訂第1版の発刊から再び10年を経過し今回、改訂第2版が出版されることとなった。この間、改訂第1版の「編集にあたって」を執筆して下さった中島先生も他界され、この10年の世の変遷と心臓血管外科の進歩に自ずと思いが馳せられる。私は幸いにもこれら改訂第1、第2版の作成に関与させて頂く機会を得て、感慨深い。この10年ではわが国の高度高齢化の社会を反映し、各領域における低侵襲手術の進歩や大動脈瘤へのステントグラフト手術の著しい進歩と普及がみられる。また、わが国で利用可能な補助人工心臓の種類や利用数は飛躍的に伸び、J-MACS登録事業も開始された。心臓移植は200例を超えたが、世界的にみると低調といわざるを得ない状況が続いている。
 現在、新しい名称となった国立研究開発法人国立循環器病研究センターの心臓血管外科を支えている若い世代の執筆者が立派にその役目を果たしてくれていることを心強く、かつ嬉しく思っている。本書がわが国の心臓血管外科手術・管理の最新の書であり続け、同時にわが国の手術成績が世界のトップレベルにあり続けることを願ってやまない。
 10年後には、また次の世代の人が改めてくれ、永く引き継がれる書であることを願う。

2016年1月吉日
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
名誉総長 北村惣一郎

 『新心臓血管外科管理ハンドブック』が改訂第2版として一新された。国立循環器病研究センター心臓血管部門の関係者48名が執筆している心臓血管外科の周術期管理のバイブル書である。本書は、国立循環器病センターで行われていた心臓血管外科の手術・管理を、心臓血管外科に従事する外科医、麻酔科医、内科医、看護師、臨床工学技士などの関連スタッフに広く理解してもらい、日本の心臓血管外科の成績向上と発展に寄与するために1995年に『心臓血管外科管理ハンドブック』として誕生した。発刊から10年が経過した2005年に改訂版ではなく、初版を基礎にしてさらに発展させた新しい管理ハンドブックとして『新心臓血管外科管理ハンドブック』と改名した第1版が発刊されている。編者の中島伸之先生は、心臓血管外科学の著しい進歩・発展と国立循環器病センターがはたした大きな役割を本書改名の理由にあげられている。
 今回は2005年からさらに10年が経過し、改訂第2版として内容が一新された。編者の北村惣一郎先生は、10年間の変遷として、各領域における低侵襲手術の進歩、大動脈瘤へのステントグラフト手術の進歩と普及、補助人工心臓の飛躍的な伸びをあげている。心臓血管外科学の進歩・発展は著しく、10年の経過により多くの治療方針が変換された。ステントグラフト手術の普及に伴う大動脈手術戦略のパラダイムシフトのみならず、カテーテル式大動脈弁置換術(TAVR)の普及により弁膜症外科にもパラダイムシフトが起きている。また、先天性心疾患治療では治療成績が著しく向上し、手術時期、手術適応、手術戦略に大きな変化がみられる。本書は、わが国の手術成績が世界のトップレベルであり続けるために、わが国の心臓血管外科手術・管理の最新の書であることを目標に改訂されている。心臓血管外科学の進歩・発展にキャッチアップした新規内容が加わり、さらに充実したハンドブックとなっている。
 本書は総論と各論に分かれている。総論は術前管理、術中管理、術後急性期管理の3章からなり、術前管理では感染症への対応、血液準備、休薬、合併症対応が記されている。術中管理では人工心肺と術中経食道心エコーが詳説され、術後急性期管理は循環、呼吸、出血、鎮静、栄養、薬物管理などについて述べられている。各論は先天性心疾患の管理、後天性心疾患の管理、血管疾患の管理の3章からなり、先天性心疾患は単純心奇形から複雑心奇形まですべての心奇形に対する周術期管理が網羅され、根治手術のみならず姑息手術の管理まで詳説されている。後天性心疾患は、弁膜疾患、冠状動脈疾患、不整脈から補助人工心臓・心臓移植まで記述され、低侵襲弁膜症手術も解説されている。血管疾患は胸部・胸腹部動脈瘤、大動脈解離、腹部大動脈瘤、末梢血管疾患から肺血栓塞栓症まで記述され、ステントグラフト治療・ハイブリッド治療も解説されている。
 最新のガイドラインでは、ハートチーム、大動脈チームなどの多職種でのチーム医療が心臓血管外科診療の基本と謳われている。本書は心臓血管外科を志す若手外科医の教科書、心臓血管外科専門医の必携書としてのみでなく、麻酔科医、循環器科医をはじめとする医師や、看護師、臨床工学技士、理学療法士、薬剤師、栄養士など心臓血管外科のチーム医療に携わるすべての職種の方々のハンドブックとして、わかりやすく作成されている。ぜひ、多くの方々に広く活用していただくことを希望する。

胸部外科69巻6号(2016年6月号)より転載
評者●名古屋大学心臓外科教授 碓氷章彦