書籍

薬剤性腎障害ケーススタディ

診療に活かす33の症例

編集 : 富野康日己/木村健二郎/上田志朗/新田孝作
ISBN : 978-4-524-26367-7
発行年月 : 2010年9月
判型 : B5
ページ数 : 212

在庫僅少

定価6,804円(本体6,300円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

薬剤性腎障害を起こす薬剤は多岐にわたり、多くの医師が遭遇しうる疾患である。本書は、すべての医師を対象に薬剤性腎障害について知っておきたいポイントを、様々なケースを通して具体的に学べる症例集である。腎障害を起こす薬剤の傾向、起きてしまったときの治療法、代替薬についての情報を解説し、巻末には、薬剤性腎障害を起こすと報告された薬剤の一覧表も収載した。

薬剤性腎障害とは
CHAPTER I. 蛋白尿をきたすもの
 CASE 1 ネフローゼ症候群の原因は多彩
 CASE 2 関節リウマチ治療中は定期的尿検査を!
 CASE 3 抗リウマチ薬使用中のネフローゼ症候群
 CASE 4 C型肝炎のインターフェロン治療後のネフローゼ症候群:原因は肝炎それとも薬剤?
 CASE 5 生物学的製剤治療中の関節リウマチ患者に発症したネフローゼ症候群
 POINT 薬剤性ネフローゼ症候群のポイント

CHAPTER II. 腎機能低下をきたすもの
 CASE 1 感冒後の急性腎不全
 CASE 2 高齢CKD患者への薬物投与は少量から慎重に
 CASE 3 癌化学療法中に急性腎不全を発症した単腎症例
 CASE 4 MRSA肺炎治療中に腎不全の急性増悪を呈した症例
 CASE 5 造影剤を使用する患者は動脈硬化のリスクも高い人が多い
 CASE 6 原疾患の存在に惑わされてはいけない
 CASE 7 肺結核治療中の急性腎不全
 CASE 8 甲状腺機能亢進症の治療中に血尿・蛋白尿が生じた1例
 CASE 9 強皮症治療中に溶血性尿毒症症候群を呈した1例
 CASE 10 メタボリックシンドローム治療中に褐色尿と筋肉痛が出現し、腎機能低下を認めた1例
 CASE 11 統合失調症の患者に起きた発熱を伴う急速な腎機能悪化
 CASE 12 ラジカット使用時には開始直後より生化学検査を頻繁に
 CASE 13 高尿酸血症を伴う腎機能障害を示した未治療の悪性リンパ腫の1例
 POINT 薬剤による急性腎不全のポイント

CHAPTER III. 蛋白尿+腎機能低下をきたすもの
 CASE 1 腰痛患者に出現したネフローゼ症候群と急性腎不全
 CASE 2 関節リウマチ薬物治療中のループス様症状に注意
 CASE 3 骨転移を伴う乳癌治療中の腎障害
 POINT 蛋白尿+腎機能低下をきたす薬剤性腎障害のポイント

CHAPTER IV. 水・電解質異常をきたすものなど
 CASE 1 心・腎機能正常の糖尿病患者にみられた浮腫
 CASE 2 ARB・ヒドロクロロチアジド配合剤は低ナトリウム血症を作る名人
 CASE 3 手術後に起こった急激な低ナトリウム血症
 CASE 4 化学療法治療中に低ナトリウム血症を呈した症例
 CASE 5 意識障害時は電解質測定が必要
 CASE 6 甲状腺全摘患者の治療中に起こった高カルシウム血症に伴う急性腎不全
 CASE 7 下肢浮腫治療中の患者に起きた低カリウム血症および代謝性アルカローシス
 CASE 8 電解質異常を起こす薬物の併用に注意
 CASE 9 慢性的な低カリウム血症と持続する下痢で腎不全に至った例
 CASE 10 RAS阻害薬を内服中に生じた気分不快と筋力低下
 CASE 11 多飲・多尿をきたす可能性のある薬剤に留意する
 CASE 12 抗TNFαモノクローナル抗体は感染症を誘発する
 POINT 水・電解質異常をきたす薬剤性腎障害のポイント

付録
 薬剤性腎障害を起こすと報告のある薬剤一覧

索引

薬物治療を行う大前提として、間違った生活習慣を修正することが重要視されている。肥満、喫煙、飲酒、運動不足など是正すべき項目はたくさん挙げられているが、そうした生活習慣を修正しても改善しない場合には、薬物療法が行われる。とくに、内科系領域の疾患では欠くことのできない治療法になっている。私達医師は、患者の主訴・病態・臨床経過などに従い薬物治療を行っているが、最近では多施設共同研究による大規模臨床試験のエビデンスに基づいた治療(EBM)が求められている。しかし、患者個々の生活様式や体格、薬物に対するアレルギーなどに十分配慮しながらオーダーメイドの治療を行うことも欠くことはできない。そうした配慮のもとで治療を行っても、薬剤による腎障害はときおり認められる。
 薬剤による腎障害(薬剤性腎障害、中毒性腎障害)の原因や発症・進展様式は、多岐にわたっている。たとえば、発症には急激なものと緩徐なものがあり、進展には蛋白尿が主体となるもの、腎不全が主体となるもの、蛋白尿と腎機能低下を伴うもの、水・電解質異常を呈するものなどに分けることができる。また、その治療・予防も服薬の中止を含め多岐にわたっている。
 私達は、2005年から厚生労働省の「腎臓領域の副作用に係る重篤副作用疾患別対応マニュアル作成委員会」で検討してきたこともあり、今回、日常診療の実践書として『薬剤性腎障害ケーススタディ―診療に活かす33の症例』を上梓した。本書は、総論で「薬剤性腎障害」を概説したのち、薬剤性腎障害について、「I。蛋白尿をきたすもの」、「II。腎機能低下をきたすもの」、「III。蛋白尿+腎機能低下をきたすもの」、「IV。水・電解質異常をきたすものなど」を症例(自験例、他験例)を挙げて記載している。薬剤性腎障害のメカニズム・早期診断・治療・予防のポイントは、分かりやすく、箇条書きを中心に記載することにした。執筆は、編集者の施設などで日常診療に積極的にあたっておられる腎臓専門医にお願いした。薬剤性腎障害は、どの診療科の医師でも経験し得ることから、日常診療にすぐに役立つよう、分かりやすい記載を心掛けた。内科医・腎臓専門医のみならず、一般臨床医(かかりつけ医)、臨床研修医、大学院生、看護師、薬剤師、MR(医薬情報担当者)をはじめ、コメディカルスタッフの皆様にお読みいただければ、望外の喜びである。皆様のご批判やご叱正を願う次第である。
2010年初秋
編集者を代表して
富野康日己

薬剤性腎障害に関しては、筆者も以前いくつかの総説を執筆したことがある。また、厚生労働省による進行性腎障害の研究において薬剤性腎障害の班研究を担当しているが、薬剤性腎障害は非常にまとめにくい疾患群の一つである。本書の付録にある、「薬剤性腎障害を起こすと報告のある薬剤一覧」を見ていただければわかるように、膨大かつ、多彩である。また、本書の項立てにあるように臨床所見もネフローゼ症候群をきたすものや、腎機能低下あるいは水・電解質異常をきたすが、蛋白尿が軽微なもの、さらには血尿が主体のものなどがあり、また腎性、腎前性、ときには腎後性のものもあり、かつ急性、慢性と分けられる。そして発症機序として腎毒性のある薬剤、薬剤過敏症に基づくもの、水・電解質代謝異常や内分泌学的異常を介しての腎障害、閉塞性腎障害によるもの、さらにはこれらの発症機序が重複している症例や、基礎疾患として腎臓病や高血圧などのある症例とない症例がある。
 そのため診断においても成書では、まず現在使用している薬剤の中に腎障害を惹起する薬剤が含まれていないかを調べ、薬剤性腎障害を疑ってみることからはじまるなどと、きわめて抽象的なことを書かざるをえない。結果として筆者の書いた総説や成書などは、実際の臨床ではあまり役立たないことが多い。しかも医療が高度化すればするほど、使用薬剤が増えれば増えるほど、薬剤性腎障害の症例は増加し、その重要性は増してくると思われる。薬剤性腎障害に対応するためには、患者の体質(アレルギーの有無など)、体格、年齢、基礎疾患の種類と重症度、生活習慣などの患者側の要因と、使用されている薬剤の特徴を組み合わせて、本書の序文で富野康日己教授が書かれているようにテーラーメイド医療の実践が必須である。また、病態によっては原因と思われる薬剤を中止できないこともある。誠に薬剤性腎障害の取り扱いは厄介である。
 そこで、本書のように臨床所見を中心に分類したケーススタディを集めて、最後にその症例のポイントを付け加えていただくことにより、現在目の前の症例で悩んでいる医師(とくに研修医、レジデント)にとっては貴重な情報となるであろう。
 しかし本書に記載されている症例は限られており、他にもいろいろな特徴を有する薬剤性腎障害の症例は数多くあると思われる。また新薬も続々と登場しているので、ぜひ続編を執筆していただきたい。
 編集、執筆の先生方のご苦労に敬意を表するものである。
評者● 細谷龍男
臨床雑誌内科107巻1号(2011年1月号)より転載