教科書

生化学実践問題

基礎と臨床をつなぐ420題

監訳 : 横溝岳彦
ISBN : 978-4-524-26359-2
発行年月 : 2011年7月
判型 : A4変
ページ数 : 222

在庫あり

定価3,456円(本体3,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

生化学を“問題を解き、解答・解説から習得できる”演習書。代謝や酵素、遺伝子、がん、分子生物学など生化学の重要トピックを網羅した、約400題の問題を収載。生化学的異常と病態との関係を、フルカラーの豊富な図や写真から学べる。問題を解き、詳しい解説を読むことで、講義で学んだことが“そういうことだったのか”と理解できる。医学部からコメディカル・生命科学系学生まで、教科書のサポートや自学自習に必携の一冊。

Lippincott's Illustrated Q & A Review of Biochemistry
Michael A.Lieberman & Rick Ricer

第1章 生化学で取り扱う生体内の物質
第2章 タンパク質の構造と機能
第3章 DNAの構造、複製、修復
第4章 RNA合成
第5章 タンパク質の合成
第6章 遺伝子発現の制御
第7章 分子医学と分子生物学的技術
第8章 エネルギー代謝概論
第9章 ホルモンとシグナル伝達
第10章 解糖と糖新生
第11章 クエン酸回路と酸化的リン酸化
第12章 グリコーゲン代謝
第13章 脂肪酸代謝
第14章 ペントースリン酸経路(HMPシャント)とラジカル酸化反応
第15章 アミノ酸代謝と尿素回路
第16章 リン脂質代謝
第17章 全身の脂質代謝
第18章 プリン・ピリミジン代謝
第19章 糖尿病とメタボリックシンドローム
第20章 栄養とビタミン
第21章 ヒトの遺伝的性質と発がん
索引

大学の学部学生に「生化学」を体系的に教えることは、実は相当に困難なことである。肉眼解剖学や組織学とは異なって、「生化学」で取り扱う分子のほとんどはたとえ電子顕微鏡を使ったとしても「見る」ことができない。幼少時から数多くの画像や写真にさらされてきたデジタル世代の若い学生たちを相手に、目に見えない分子の化学式や構造式を理解させ、その代謝経路の意義に興味を持たせるために腐心するのが、我々生化学教官の毎日である。連日のように新たな発見がなされ新しい知見が加えられていく生化学の教科書は、厚くなることはあっても薄くなることはない。多数の受験用の参考書・問題集が存在し、正解が準備された受験勉強に慣らされてきた多くの学生たちは、入学後に購入させられる分厚い生化学の教科書を前に途方に暮れる。この分厚い教科書を全て理解し記憶しなければならないのだと思い込み、その絶望感から勉学への意欲を失うきっかけを作るのも、残念ながら「生化学」という学問のようである。さらに中学・高校の理科の勉強が大学受験を強く志向するあまり、高校時代に「生物」を全く履修しないで大学に進学する学生が多くなってしまっていることも「生化学」への興味を削ぐ一因となっているように感じる。
 「いかにして学生に生化学の醍醐味と重要性を認識させるか」を模索する過程で、少なくとも医学部の学生には「疾患との関連」を強調することが効果的であることに気づいた。眠そうに講義を聴いていた学生も、病気の話になると身を乗り出してくる。自分の短い医師時代のエピソードを脱線話として話すと、こちらだけは覚えてくれているようである。医学部以外の学部に講義に出かけても、疾患と絡めた生化学の講義は人気があるようである。学問としての「生化学」を考えると本意ではないが、疾患の発症や治療と絡めた生化学の教育を積極的に行う必要があると漠然と考えていたときに出会ったのが本書であった。この『生化学実践問題 基礎と臨床をつなぐ420題』は臨床医学の症例から生化学的な問題を提起し、分厚い生化学の教科書をひもとくきっかけを作ることができる優れた問題集である。分厚い本ではないので解説は完全ではないが、むしろ教科書に戻って勉強しなければならないと感じさせるところに魅力を感じる。高校や予備校で行われる受動的な授業に慣らされた現在の大学生に足りないのは、講義や実習で教わった内容を教科書で再度勉強し直すという自主的な勉学への姿勢である。問題に示された症例の発症原因や治療法を生化学的な考え方で理解し、それをきっかけにしてその症例の周辺の知識を身につけていくことが、理論的な科学者としての医師や研究者の養成につながる有効なアプローチであると信じる。
 この素晴らしい問題集をぜひ翻訳して生化学を学ぶ国内の大学生の学習に役立てたいと考えていたが、私一人の限られた能力と時間では何年かかることか、と思いあぐねていた時に救世主が現れた。4年前に私から生化学を教わり、現在は6年生となった九州大学医学部医学科の6名の学生たちである。大学病院での実習で患者さんに触れる機会を得た若き俊才たちは、臨床医学の現場で改めて生化学の重要性を再認識し、自分たちの勉強のためにと本書の翻訳を引き受けてくれた。6人は週末や深夜に各自の担当の訳を持ち寄って勉強会を行い、議論と修正を行ってわずか2ヵ月余で下訳を完成させてくれた。もちろん学生の訳である。珍訳も間違いもあったが、それを修正する作業は私にとってとても楽しい時間であった。本書の翻訳に携わってくれた6名の学生の名前を挙げ、その自主性と熱意をたたえたい。本書が生化学を学ぶ学生の理解と興味につながることを心より祈っている。
九州大学医学部生化学ワーキンググループ
佐藤暢晃、高森信吉、原田純、藤本侑里、前園明寛、山村聡
2011年6月吉日
九州大学大学院医学研究院医化学分野教授 横溝岳彦