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分子標的治療薬の副作用マネジメント

編集 : 弦間昭彦
ISBN : 978-4-524-26348-6
発行年月 : 2011年1月
判型 : A5
ページ数 : 238

在庫あり

定価4,536円(本体4,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 書評

がん薬物療法において使用頻度が急増している分子標的治療薬の副作用に焦点を絞り、そのマネジメント法の実際を解説。各分子標的治療薬の使用法とともに、副作用の予防対策、副作用出現時の対応策について各薬剤別、また副作用別に、がん薬物療法のエキスパートが実践的に記述する。副作用マネジメントが治療継続の鍵となる昨今において、がん治療医はもとより、がんチーム医療スタッフも必携の一冊。

第I章 分子標的治療薬による副作用の特殊性と対応
 1.分子標的治療薬による副作用の特殊性
  1 一般的細胞傷害型抗癌薬の副作用
  2 分子標的治療薬の副作用プロファイル
   a)皮膚
   b)間質性肺炎
   c)心毒性、高血圧、血栓、出血
   d)蛋白尿
   e)消化器障害
   f)神経障害
   g)甲状腺機能低下症
  3 分子標的治療薬の特殊性と対応
 2.副作用発生に影響する因子と予測の展望
  1 一般抗癌薬の副作用
  2 分子標的治療薬の副作用
  3 副作用発生に影響する因子の予測
  4 遺伝因子としての薬剤代謝酵素
  5 遺伝子関連解析
  6 分子標的治療薬の副作用と民族差
  7 まとめ
 3.副作用対策におけるチーム医療の意義
  1 チームで検討した副作用対策による副作用の軽減
  2 副作用のモニターにおける患者とのコミュニケーションを通した看護師の役割
  3 分子標的治療薬へのチーム医療導入
  4 患者や医師などの副作用評価による臨床経過の相違
  5 分子標的治療薬の有害事象に苦しむ患者を減少させるために
 4.製造販売後調査の現状と役割
  1 承認までに得られる情報の限界
  2 製造販売後における情報収集の方法
  3 製造販売後調査等の種類
  4 分子標的治療薬における製造販売後調査の現状
  5 医薬品のリスクマネジメント
  6 まとめ
 5.分子標的治療薬による副作用に関する日常臨床におけるインフォームドコンセント
  1 医療におけるインフォームドコンセントの基本的な認識
  2 抗癌薬による薬物療法に際してのIC
  3 まとめ

第II章 分子標的治療薬と副作用対策の実際
A.分子標的治療薬別副作用の特徴と対策
 1.bevacizumab
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度
  3 副作用の予防対策
  4 副作用出現時の対応法
   a)高血圧
   b)出血
   c)蛋白尿
   d)血栓塞栓症
   e)消化管穿孔
 2.cetuximab、panitumumab
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 臨床における有効性
   a)cetuximab
   b)panitumumab
  3 副作用の特徴と頻度
   a)主な副作用とその特徴
   b)Infusion reaction(IR)
   c)皮膚障害(座瘡様皮疹、皮膚乾燥、掻痒、皮膚炎、皮膚亀裂、爪囲炎)
   d)急性肺障害・間質性肺炎(ILD)
   e)電解質異常
   f)心毒性
   g)消化管障害
   h)眼障害(角膜炎等)
  4 副作用の予防対策
  5 副作用出現時の対応法
 3.sorafenib、sunitinib
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度
  3 副作用の予防対策
   a)手足症候群(HFS)
   b)骨髄抑制
   c)高血圧
   d)心機能障害
   e)甲状腺機能障害
   f)消化管障害
  4 副作用出現時の対応法
 4.imatinib、nilotinib、dasatinib
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度
  3 副作用の予防対策
   a)第二世代TKIの選択
   b)薬剤代謝に影響を及ぼす併用薬
  4 副作用出現時の対応法
   a)骨髄抑制
   b)皮疹
   c)浮腫
   d)悪心・嘔吐
   e)QTc延長
   f)膵酵素の上昇
   g)耐糖能異常
   h)胸水
   i)出血
   j)間質性肺炎
 5.gefitinib、erlotinib
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度
   a)主な副作用とその特徴
   b)急性肺障害・間質性肺炎(ILD)
  3 副作用の予防対策
   a)皮膚障害
   b)急性肺障害・間質性肺炎(ILD)
  4 副作用出現時の対応法(参考:イレッサ錠250適正使用ガイド)
   a)皮膚障害
   b)急性肺障害・間質性肺炎(ILD)
   c)消化器症状
   d)肝障害
 6.trastuzumab
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度
   a)主な副作用とその特徴
   b)心毒性
  3 副作用の予防対策
   a)infusion reaction(IR)
   b)心毒性
  4 副作用発現時の対応法
 7.lapatinib
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度、予防、対応法
   a)下痢
   b)皮膚障害
   c)悪心・嘔吐、倦怠感
   d)肝障害
   e)心機能障害
   f)併用薬、食物についての注意点
   g)食事との関係
   h)その他
  3 まとめ
 8.gemtuzumab ozogamicin
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度
   a)血液毒性
   b)非血液毒性
   c)肝障害および静脈閉塞性肝疾患(VOD)
   d)日本における副作用
  3 副作用の予防対策
   a)infusion reaction(IR)
   b)血液毒性
   c)VOD/SOS
   d)肺症状
  4 副作用出現時の対応法
  5 まとめ
 9.rituximab
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度
   a)infusion reaction(IR)
   b)B型肝炎再活性化
   c)免疫グロブリン産生低下による易感染性
   d)rituximab耐性化
   e)その他
  3 副作用の予防対策
  4 副作用出現時の対応法
 10.bortezomib
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
  2 副作用の特徴と頻度、予防対策、対処法
   a)肺障害
   b)末梢性神経障害(PN)
   c)血小板減少
   d)帯状疱疹
   e)消化管障害
  3 おわりに
 11.everolimus、temsirolimus
  1 作用機序、適応疾患、使用法の概説
   a)mTORとは
   b)転移性腎細胞癌に対するmTOR阻害薬の開発
  2 副作用の特徴と頻度
  3 副作用の予防対策
  4 副作用出現時の対応法


B.分子標的治療薬の副作用別対策
 1.皮膚障害
  1 副作用の概要
  2 副作用の出現頻度と注意すべき薬剤
   a)上皮成長因子受容体(EGFR)系阻害薬によって出現する皮膚症状
   b)分子標的治療薬によって起こる手足症候群(HFS)
  3 マネジメント法の実際
   a)EGFR系阻害薬で起こる代表的な皮膚症状と治療・処置法
   b)分子標的治療薬で起こる手足症候群に対する局所療法
  4 予防対策
   a)基本的なスキンケア
   b)抗EGFRモノクローナル抗体によって起こる皮膚障害を予防するための臨床試験
   c)分子標的治療薬による手足症候群の予防
 2.肺障害
  1 副作用の概説
  2 出現頻度と注意すべき薬剤
  3 マネジメント法の実際
   a)分子標的治療薬による肺障害の診断
   b)分子標的治療薬による肺障害の治療
   c)各薬剤による肺障害
  4 予防対策
 3.循環器障害
  1 分子標的治療薬の循環器系副作用とその頻度
   a)bevacizumab
   b)sunitinib
   c)sorafenib
   d)trastuzumab
  2 循環器系障害の病態生理
  3 マネジメント法の実際
 4.血管障害
  ●血栓症
  1 概説と頻度
  2 マネジメント法の実際
   a)深部静脈血栓症(DVT)
  ●脳血管障害(脳出血と脳梗塞)
  1 概説と頻度
  2 マネジメントと予防
 5.消化管障害
  1 抗EGFR阻害薬による下痢
   a)抗EGFR抗体
   b)gefitinib
   c)erlotinib
  2 血管新生阻害作用を有する分子標的治療薬による消化管穿孔
   a)sunitinib
   b)bevacizumab
  3 その他の分子標的治療薬による消化管毒性
   a)sunitinib
   b)sorafenib
   c)trastuzumab
   d)bortezomib
   e)rituximab
   f)imatinib
   g)everolimus
 6.肝・膵系の障害
  1 副作用の概説
  2 出現頻度と注意すべき薬剤
   a)肝障害
   b)膵酵素値の上昇
  3 マネジメント法の実際
  4 予防対策
 7.造血器障害
  1 副作用の概説
  2 注意すべき薬剤
   a)imatinib
   b)sunitinib
   c)bevacizumab
   d)bortezomib
  3 マネジメント法の実際
   a)好中球減少症
   b)発熱性好中球減少症
   c)血小板減少
   d)貧血
 8.神経毒性
  1 副作用の概説
  2 出現頻度と注意すべき薬剤
   a)分子標的治療薬の副作用報告にみられる神経障害
   b)bortezomibによる神経障害
   c)reversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)
  3 マネジメント法の実際
  4 予防対策
 9.倦怠感、その他
  1 副作用の概説
  2 出現頻度と注意すべき薬剤
  3 マネジメント法の実際
  4 予防対策

索引

分子標的治療薬は個別化治療のホープとして、副作用がなく効果が高い夢の治療薬との期待があったが、実際使用してみると必ずしも重篤な副作用がないことはなく、かつその種類は通常の化学療法薬とかなり異なることが明らかとなってきた。
 抗癌薬の利用価値は有効性と副作用、費用などで決定される。個人単位でみると有効性はないことも多い。ただ、副作用は多かれ少なかれ起こり、重篤なときには死亡することもある。明らかな効果予測因子がない現状では結果的に効果がなかったとしても主治医を責めることはできないが、重篤な副作用の見落としは主治医の責任となる。その意味で医師らは自分の使用する薬剤の特徴を副作用を含めて熟知しておく必要がある。言い換えれば、副作用を制することにより抗癌薬の価値を最大限に引き出せるといえる。
 本書は、第I章では分子標的治療薬に特異的な副作用が抗癌薬との対比で解説されている。また新薬導入時の対処方法としての具体的なチーム医療実践法が例示されており、近年では日常臨床に欠かせないインフォームド・コンセントの内容に関する具体的な提示もなされている。第II章では現在種々の癌に使用されている分子標的治療薬を採り上げ、各々について副作用の概要と頻度、予防策、対処法が具体的に示されている。第II章の後半では副作用の種類別に概説と対応が書かれており、前半で学んだことが横糸的に俯瞰できるようになっている。これらは編集の弦間先生をはじめ各分野の第一線で活躍するエキスパートによりきわめて実践的に執筆されており、明日からの診療に使用できよう。
 分子標的治療薬はミサイル療法ともいわれるようにその作用機序が明確なために、適切なバイオマーカーがあればきわめて有効に使用できる。しかし、効果に関しても副作用に関してもまだ十分なバイオマーカーが開発されているとはいいがたい。したがって、患者のquality of lifeを保ちながら分子標的治療薬をスマートに使いこなすためには、副作用のマネジメントが鍵となる。今まで各薬剤ごとにはインタヴューフォームなどで副作用情報を詳しく知ることができたが、それらをまとめたものはなかった。分子標的治療薬が多く使用できるようになってきた現在、手軽にまとまった情報を与えてくれる本書の出版はきわめてタイムリーと思える。患者を中心としたチーム医療では各職種で情報を共有することもたいへん重要である。本書は分子標的治療薬を処方する医師のみならず、看護師、薬剤師などにもぜひおすすめしたい1冊である。
評者● 池田正
臨床雑誌外科73巻5号(2011年5月号)より転載

分子標的治療に欠かせない副作用マネジメント
 がん化学療法において、分子標的薬を使いこなせるかどうかが、腫瘍内科医、がん薬物専門医の大きな資質のポイントである。次々と臨床の現場に登場する、多種多様の分子標的薬を理解し、使いこなすのは容易ではない。使いこなすことのもっとも重要なポイントは、副作用マネジメントである。副作用を確実にとらえ、適切に対応すること、病状や副作用の発現に応じて、治療の休薬と減量を判断すること、それが腫瘍内科医に求められている。本書は分子標的治療における副作用マネジメントについて、まさにニーズを的確に捉えたテキストである。
 分子標的薬の副作用は、独特の皮膚症状、手足皮膚反応、高血圧、血栓症など、従来の抗がん剤と大きく異なる。分子標的治療の多くは、腫瘍の縮小より進行を抑え、QOLを保ちながら延命効果を得るものであり、副作用管理を適切に行い、長期間治療を継続することがポイントである。
 筆者自身、日々多くの患者さんに対しがん化学療法の診療をしていて、医師一人では副作用の状態を把握し、適切に対応することは困難と感じる。他の医師、看護師、薬剤師のスタッフがうまく役割分担をして、複雑な化学療法の管理を共同で行っていくことがこれまで以上に必要となっている。分子標的治療が一般的になって、チーム医療の重要性が改めて強調されてきている。
 本書では、まず分子標的治療の副作用の特徴を航空写真的に全体としてとらえ、チーム医療の具体的な方法もわかりやすく解説されている。そして、薬剤ごとに特徴的な副作用とその対策、さらに臓器あるいは事象ごとの副作用対策へと2段階に分けて進んでいく。つまり、分子標的治療の副作用対策が縦と横とからコンパクトにわかりやすく解説されている。実に実用的であり、欲しかった本である。
 がん治療の均てん化を目指し、どこでも安心してがん化学療法を受けられる、というがん対策基本法ができ、がん薬物専門医も増えてきている。しかし、わが国ではまだまだ臓器ごとの診療科に属する医師が分子標的薬を使っているのが現状であり、自分の専門領域以外の事象を的確に把握し、対応することは非常にむずかしい。本書は、実際の現場でいかに適切に副作用に対応していくか、臓器ごとの特徴をそれぞれの領域の専門家がカバーしている。
 本書は、机の上に置いて分子標的治療を勉強するだけでなく、むしろ診察室において使える、まさに実践に役立つテキストといえる。分子標的治療に携わる医師、看護師、薬剤師にとって、必携の書である。
評者● 古瀬純司
臨床雑誌内科107巻6号(2011年6月号)より転載