書籍

ビジュアル機能解剖

セラピストのための運動学と触診ガイド

監訳 : 福林徹/鳥居俊
ISBN : 978-4-524-26286-1
発行年月 : 2014年3月
判型 : A4
ページ数 : 460

在庫あり

定価6,480円(本体6,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

運動器疾患に携わる医療者に必要な人体解剖から機能解剖、運動学、形態学、ファシリテーションテクニックまでの知識がこれ一冊で理解できるビジュアルブック。フルカラー写真で体の構造や各部位の動き・働きなどの基本的知識と、経皮的解剖に基づいた触診の実際を解説。筋の起始・停止部や神経分布、表層解剖から段階的に浅層〜深層にいたる各層の筋・骨・靱帯までが手に取るようにわかる。

第1章 人体の序論
 1.人体の基本情報
 2.人体の構造
 3.運動器系の構造
 4.特殊構造
第2章 骨学と関節学
 1.骨格系
 2.骨の形状
 3.骨ランドマーク
 4.骨格系における関節
 5.滑膜関節の構造と機能
 6.副運動
第3章 筋学
 1.筋組織の種類
 2.骨格筋の機能
 3.筋線維の方向と筋肉の命名法
 4.骨格筋の特性
 5.筋線維の解剖学
 6.筋収縮の生理学
 7.骨格筋線維タイプ
 8.筋収縮の種類
 9.筋肉の相互関係
 10.人体のテコの原理
 11.固有感覚
 12.関節可動域
第4章 肩
 三角筋
 大胸筋
 烏口腕筋
 上腕二頭筋
 小胸筋
 鎖骨下筋
 僧帽筋
 肩甲挙筋
 菱形筋(大菱形筋、小菱形筋)
 広背筋
 大円筋
 前鋸筋
 棘上筋
 棘下筋
 小円筋
 肩甲下筋
 上腕三頭筋
第5章 肘、前腕、手首、手
 上腕筋
 腕橈骨筋
 橈側手根屈筋
 長掌筋
 尺側手根屈筋
 浅指屈筋
 深指屈筋
 長母指屈筋
 円回内筋
 方形回内筋
 回外筋
 肘筋
 長橈側手根伸筋
 短橈側手根伸筋
 尺側手根伸筋
 総指伸筋
 示指伸筋
 小指伸筋
 長母指外転筋
 短母指伸筋
 長母指伸筋
 手の内在筋
第6章 頭部、頚部、顔面
 胸鎖乳突筋
 斜角筋
 広頚筋
 頚長筋
 頭長筋
 舌骨上筋
 顎二腹筋
 舌骨下筋
 頭板状筋
 頚板状筋
 半棘筋
 大後頭直筋
 小後頭直筋
 上頭斜筋
 下頭斜筋
 前頭直筋
 外側頭直筋
 側頭筋
 咬筋
 内側翼突筋
 外側翼突筋
第7章 体幹
 腹直筋
 外腹斜筋
 内腹斜筋
 腹横筋
 横隔膜
 外肋間筋
 内肋間筋
 腸肋筋
 最長筋
 棘筋
 腰方形筋
 上後鋸筋
 下後鋸筋
 半棘筋
 多裂筋
 回旋筋
 棘間筋
 横突間筋
 呼吸に関わる他の筋群
第8章 骨盤、大腿、膝
 腰筋
 腸骨筋
 大腿直筋
 縫工筋
 大腿筋膜張筋
 外側広筋
 内側広筋
 中間広筋
 恥骨筋
 短内転筋
 長内転筋
 薄筋
 大内転筋
 大殿筋
 中殿筋
 小殿筋
 梨状筋
 上双子筋
 下双子筋
 内閉鎖筋
 外閉鎖筋
 大腿方形筋
 大腿二頭筋
 半膜様筋
 半腱様筋
 膝窩筋
第9章 下腿、足関節、足
 前脛骨筋
 長趾伸筋
 長母趾伸筋
 長腓骨筋
 短腓骨筋
 第三腓骨筋
 腓腹筋
 ヒラメ筋
 足底筋
 後脛骨筋
 長趾屈筋
 長母趾屈筋
 足の内在筋
付録
 各章の復習問題の解答
 用語集
 文献
索引

医師にとっても、理学療法士、アスレティックトレーナーにとっても、診察や評価において訴えのある部位の触診をすることは基本中の基本である。痛みやはり、硬さ、動きの悪さなど、さまざまな訴えに対して、実際に身体がどのような状態にあるのか、眼で見て、触れて、動かして、という順番に診察や評価を進めていくが、触れるべき対象である解剖学的構造を知識としてだけでなく、触感として記憶しておく必要がある。
 近年はMRIなどの医療画像の進歩により、触知することのできない深部の構造について容易に情報を得ることが可能になり、ともすれば身体に触れられることなく診断が終わり治療が進む、などということも起こり得る。しかし、スポーツの現場に立つ医療関係者は、まさに現場で選手の診察や評価を要求され、医療画像の助けを借りずに眼と手と知識や触感の記憶により最初の判断を下さなければならない。
 身体を構成する解剖学的構造の「かたち」と「動き」という機能解剖学の基本事項について、本書は豊富な写真や図とともに非常にわかりやすく、かつ整理して記述してある。しかも、マニュアル本ではなく、解剖学や運動学の基礎知識も必要十分に配置され、スポーツ動作における役割にも言及があり、そのうえ、章ごとに確認や復習ができるような構成になっている。
 国内の大学の体育学、スポーツ科学系の学部・学科や専門学校は現在も増加しており、それぞれのカリキュラムにおいて名称は異なっているかもしれないが、機能解剖学は基礎科目や必修科目として教えられている。その際の教科書や参考書として、すでに多数の書籍が存在し、各々特徴を持っているが、本書は前述したような特徴を持ち、系統的に学習するには最適のテキストである。
 2020年に東京でオリンピックが開催されることが決まり、日本のスポーツ界は2020年に向けての体制づくりや体制の強化を図っている。アスリートの健康管理に携わるスポーツ医学スタッフも2020年に向けて、さらに重要な期待を担う立場になる。アスリートの育成・養成はJOCや競技団体の任務であるが、彼ら・彼女らを支えるスポーツ医学スタッフの育成・養成も不可欠である。これからスポーツ医学スタッフとなるための資格取得に向けて学習する若い人たちにとって、さらに、若い学習者を教える立場の有資格者や教員にとっても、本書は必要十分な事項がコンパクトにまとまったテキストとなる。アスリートの指導において、動きを観察しスポーツ障害の予防も考えなければならないコーチや指導者にとっても、運動器の「かたちと動き」を解説した本書は学習書として、参考書として有用であろう。一方、最近はアスリートのなかにも、自ら専門書を開き、自分の身体を触れて自分で考えるアスリートが増えているようである。本書は高度な内容を備えているが、わかりやすく整理されていることで、アスリート自身の自己評価、自己管理の参考書としても役に立つことが期待される。
 どんな立場にあっても、どんな年齢になっても「基本」は「基本」である。

2014年1月
監訳者

本書はビジュアルに機能解剖を示した書籍で、副題として「セラピストのための運動学と触知ガイド」とある。まさにその内容を的確に表しているものである。医師、特に整形外科医にとって、四肢、脊柱を診察する際には問診後に触診、打診を行い、必要な計測を行うことが基本である。視診の後、実際に医師自らの手で触れて診察をする。健常範囲内であるか、腫脹、腫瘤や変形などの異常はないか、さらに関節であればその可動性を確認する。可動域は正常範囲内であるか、可動域制限あるいは関節可動性の増大(弛緩性や不安定性)があるか否かを診察することで病態や病因を診断し、それに基づき治療方法の検討へとすすめる。
 的確な診察と異常所見の正確な診断をするには、人体の構造を知っていることが不可欠であり、その知識があってはじめて実際の患者の骨、靱帯、腱、神経、筋・筋膜の部位、走行を触知でき、診断を行うことができるのである。本書は運動学を提示しており、さらに実際の人体を触知する際のガイドとなる有用な情報が掲載されている。
 本書では第1章「人体の序論」で人体の構造を識別し、その部位の確認や触知ができることの習得が目的となっている。図版によりビジュアルに人体の基本情報が提示されており、解剖学的肢位、方向とその用語が視覚的に理解できる。第2章「骨学と関節学」、第3章「筋学」では骨格、骨を理解し、骨ランドマークを確認できる。人体に骨、関節陰影を重ねて(superimpose、上乗せして)記載しており、皮膚上のランドマークが実際の骨や関節のどの部分に該当するかを容易に理解できるように工夫されている。
 第4章以降では個別の関節について説明をしている。第4章「肩」では、肩における骨ランドマークがどの骨に該当するかが図示されており、筋肉については浅層、深層別に記載されている。三角筋以下、肩関節周囲の筋についてその筋の解剖、機能解剖、体表からの触知について記載されており、実際的である。以下、第5章「肘、前腕、手首、手」、第6章「頭部、頚部、顔面」、第7章「体幹」、第8章「骨盤、大【腿】、膝」、第9章「下【腿】、足関節、足」においても同様に記載されている。骨のランドマークと主な深層から浅層の構造、筋肉の解剖で、特に体表からみたときにどの部位にどのように走行しており、どのように触知されるかを示している。それぞれの関節の動きにおける共同筋、拮抗筋をわかりやすく示している。一つ一つを確認する診察を重ねていくと貴重な経験となり、診察技術の向上につながるものであろう。さらに「動作に当てはめてみよう」が準備されており、たとえば「骨盤、大【腿】、膝」では、「走る」、「持ち上げる」、「投げる」、「蹴る」といったそれぞれの動作において使われる関節の動き、筋肉の動きがまとめられており、実際の関節の動きを理解するうえで有用な情報である。
 またそれぞれの章末にはまとめ、復習のための小テストが準備されており、得られた知識を確認でき、たいへん有用である。
 このように本書は視覚的な記載により構成されており、骨、関節、筋肉などのいわゆる運動器の構造、機能を理解できる。そのうえで実際の診療においてこの知識、技術を生かすことができるもので、きわめて実践的な内容から構成された書籍である。運動器診療にかかわる医師、整形外科医はもちろんのこと、看護師、理学療法士や作業療法士などのリハビリテーション関連職の方々が臨床の場で活用することが期待されることから、ぜひ備えていただきたい書である。

臨床雑誌整形外科65巻6号(2014年6月号)より転載
評者●新潟大学大学院整形外科教授 遠藤直人