書籍

運動器の痛みプライマリケア

股関節の痛み

編集 : 菊地臣一
ISBN : 978-4-524-26264-9
発行年月 : 2011年7月
判型 : B5
ページ数 : 280

在庫あり

定価5,400円(本体5,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

運動器の痛みに対する診療・ケアを、トータルペイン・パーソナルアプローチの観点からやさしく解説。股関節周囲の痛みからのアプローチとプライマリケアを、重篤な疾患の鑑別診断から治療、さらには日常生活やリハビリテーション指導、心理的・社会的ケアまで余すところなく解説した。エビデンスがない場合における診療の考え方と実際も記載した。

I  痛みについて
 1 運動器のプライマリケア−careを重視した全人的アプローチの新たな流れ
 2 運動器の疼痛をどう捉えるか−局所の痛みからtotal painへ、痛みの治療から機能障害の克服へ
 3 疼痛−診察のポイントと評価の仕方
 4 治療にあたってのインフォームド・コンセント−必要性と重要性
 5 各種治療手技の概要と適応
  a.薬物療法
   1)医師の立場から−薬効からみた処方のポイント
   2)薬剤師の立場から−処方箋のチェックポイント
  b.ペインクリニックのアプローチ
  c.東洋医学的アプローチ
  d.理学療法
  e.運動療法
  f.精神医学(リエゾン)アプローチ
  g.集学的アプローチ
 6 運動器不安定症−概念と治療体系
 7 作業関連筋骨格系障害による痛み

II 股関節の痛みについて
 1 診療に必要な基礎知識-解剖と生理
   A.股関節周囲の表面解剖/B.骨盤出口部の解剖/C.股関節の深層解剖
 2 診察手順とポイント−重篤な疾患や外傷を見逃さないために、他部位の痛みを誤診しないために
  a.小児の診察
   A.医療面接/B.身体診察/C.画像診断/D.臨床検査/E.関節穿刺および局所麻酔剤注入テスト
  b.成人の診察
   A.医療面接/B.身体診察/C.画像診断/D.疾患
 3 鑑別に注意を要する股関節および周辺部の痛み
  a.骨・軟部腫瘍
  b.骨系統疾患
  c.発育期のスポーツ損傷・障害による痛み
 4 股関節疾患と間違いやすい痛み
   A.腰椎疾患による股関節痛/B.骨盤部疾患による股関節痛/C.腹部内臓器による股関節痛
 5 画像診断と臨床検査
   A.股関節痛と画像診断/B.股関節痛と臨床検査
 6 各種治療手技の実際と注意点
  a.薬物療法
  b.理学療法・運動療法
   A.理学療法/B.運動療法
  c.ペインクリニックのアプローチ
   A.トリガーポイント注射(圧痛点注射)/B.股関節ブロック/C.腰神経叢ブロック/D.仙腸関節ブロック/E.梨状筋ブロック/F.股関節知覚枝高周波熱凝固
  d.東洋医学的アプローチ
   A.漢方/B.鍼灸/C.指圧・マッサージ

III 主な疾患や病態の治療とポイント−私はこうしている
 1 化膿性股関節炎による痛み
  治療の実際
   A.診察のポイント/B.鏡視下洗浄・ドレナージ/C.化学療法/D.遺残変形/E.化膿性関節炎に対する私のアプローチ
 2 Perthes病による痛み
  治療の実際
   A.診察のポイント/B.治療方針/C.保存的治療/D.観血的治療/E.予後予測(重症度の判定)/F.長期成績
 3 単純性股関節炎による痛み
  治療の実際
   A.診察のポイント/B.治療
 4 大腿骨頭すべり症による痛み
  治療の実際
   A.病型と痛みの原因/B.痛みの特徴とアプローチ/C.画像所見/D.治療方針/E.主な観血的治療
 5 変形性股関節症による痛み
  a.治療の実際(1)
   A.変形性股関節症の診断と治療/B.変形性股関節症による痛みと治療法選択/C.保存療法の実際/D.手術療法における術式選択
  b.治療の実際(2)
   A.痛みの特徴と診断/B.治療方針決定のためのポイント/C.保存療法/D.手術へ踏み切るタイミング/E.手術療法/F.股関節手術に対する考え方と治療方針
 6 特発性大腿骨頭壊死症による痛み
  a.治療の実際(1)
   A.治療方針の決定/B.保存療法/C.手術療法
  b.治療の実際(2)
   A.診察のポイント/B.薬物療法/C.手術療法/D.専門医に紹介するタイミング
 7 一過性大腿骨頭萎縮症による痛み
  治療の実際
   A.病態/B.診察のポイント/C.薬物療法/D.物理療法/E.専門医に紹介するタイミング
 8 急速破壊型股関節症による痛み
  治療の実際
   A.定義と病態/B.診察のポイント/C.治療方針/D.手術療法/E.術後リハビリテーションと予後
 9 骨粗鬆症による骨盤・大腿近位部の脆弱性骨折
  治療の実際
   A.背景と病態/B.骨盤IF/C.仙骨IF/D.大腿骨近位部IF
 10 関節リウマチによる痛み
  a.治療の実際(1)
   A.診断と治療のポイント/B.薬物療法/C.理学療法/D.関節注射/E.手術療法
   b.治療の実際(2)
      A.診察のポイント/B.薬物療法/C.物理療法・運動療法・装具療法・その他/D.ブロック療法/E.手術療法/F.専門医に紹介するタイミング
 11 股関節唇損傷による痛み
  治療の実際
   A.股関節唇の解剖と生理/B.診察のポイント/C.保存的治療/D.骨性因子なし/E.骨性因子あり

索引

腰痛、肩こり、そして関節痛など、運動器の痛みは国民に多い愁訴のオンパレードである。この傾向は高齢化の進展とともにますます顕著になっていくものと予想される。
 運動器の痛みは、支持と運動という相反する機能を持つがゆえの過重な負担の結果であることが少なくない。それだけに、その診療にあたる医療従事者は生体力学的知識を持つことが求められる。それに加えて運動器の痛みには、従来我われが認識していた以上に早期から、心理・社会的因子が深く関与していることも明らかになってきた。当然、適切な診療を行うためにはこれらの知識も必要である。このような知見の集積から、近年は腰痛を代表とする運動器の痛みを、単なる「解剖学的異常」から「生物・心理・社会的疼痛症候群」として捉えようという動きが始まっている。つまり、運動器の痛みを「local pain」としてではなく「total pain」として捉えて診療にあたるということである。
 疼痛には、器質的、そして機能的な因子が複雑に絡み合っていることがわかってきた。運動器の疼痛、特に患者さんの多い慢性疼痛の診療には、それに応じた診療体系が求められる、それはまず、「cure」だけでなく「care」という視点の導入である。次に、多面的、集学的アプローチの導入である。わが国の医療システムや患者の立場を考えると、1人の運動器の疼痛診療従事者が中心となって診療を進めていくのが妥当といえる。そのためには、自分の専門領域の知識、技術、そしてknow−howのみならず、学際領域でのそれらの習得も必要になってくる。これにより、「何を治療するか」ではなくて、「誰を治療するか」という視点を持った診療が可能になる。
 運動器の痛みのプライマリケアを部位別に取り上げていくというのがこのシリーズの構成になっている。しかし、運動器の痛みのプライマリケアにあたっては、部位に関係なく患者と医療従事者の信頼関係の確立が死活的に重要である。何故ならば、EBM(evidence−based medicine)が教えてくれたのは、皮肉にもNBM(narrative−based medicine)の重要性だからである。医療従事者と患者との信頼関係の確立により、患者の診療に対する満足度はもとより、治療成績も向上することはよく知られている。また、信頼関係があればこそ、長期にわたるcareも可能になる。
 本シリーズは、近年の運動器の痛みを診療するうえで必要な新知見を総論に、各論には部位別にみた最前線の診療の提示という構成にした。執筆者には、第一線の診療現場で活躍している先生方に、know−howを含めた実践的診療の記載をお願いした。第一弾としての本巻は、診療現場で遭遇することの最も多い「腰背部の痛み」を取り上げている。このシリーズが、運動器の痛みのプライマリケアの向上に役立ち、結果的に、運動器の痛みの診療に従事している人々に対する国民の信頼が高まることを期待している。
2011年6月
菊地臣一