書籍

小児・思春期糖尿病管理の手びき改訂第3版

コンセンサス・ガイドライン

編集 : 日本糖尿病学会/日本小児内分泌学会
ISBN : 978-4-524-26262-5
発行年月 : 2011年5月
判型 : B5
ページ数 : 310

在庫なし

定価4,104円(本体3,800円 + 税)

サポート情報

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本糖尿病学会と日本小児内分泌学会編集による小児・思春期の糖尿病治療とケアを解説したオフィシャルなガイドブック。2010年6月に改訂された診断基準や国際標準化HbA1cに対応。また、国際小児思春期糖尿病学会(ISPAD)のガイドラインの内容も盛り込み、よりプラクティカルな内容となった。各項の冒頭には、基本的なステートメントも掲載。小児科医、内科医および糖尿病関連のコメディカルスタッフに役立つ一冊。

I.総論
 1.歴史
 2.定義と分類
 3.診断基準
 4.病因と病態
  A.1型糖尿病
  B.2型糖尿病
  C.その他の糖尿病
 5.疫学
 6.検査法
 7.合併症
 8.学校検尿による尿糖スクリーニングシステム
 9.小児のメタボリックシンドローム
 10.将来の展望
  A.生体膵移植・膵島移植
  B.インクレチン薬

II.1型糖尿病
 1.治療のプランニング
 2.インスリン治療
 3.糖尿病ケトアシドーシス
 4.食事療法
 5.コントロール目標
 6.低血糖
 7.シックデイ対策
  A.シックデイ対策
  B.手術時
 8.生活指導
 9.特異な病態を示す1型糖尿病

III.2型糖尿病
 1.治療のプランニング
 2.食事療法
 3.運動療法
 4.経口血糖降下薬
 5.インスリン療法
 6.コントロール目標
 7.生活指導
 8.清涼飲料水ケトーシス

IV.患児・家族の支援
 1.学校生活
 2.就職
 3.結婚、妊娠、出産
 4.生活指導
 5.心理的支援
 6.家族への教育
 7.糖尿病キャンプ
 8.知的障害および発達障害を伴う糖尿病の管理

V.ケアのシステム化
 1.チーム医療
 2.病診連携
 3.小児科から内科への移行
 4.医療制度
 5.諸団体

付録
 A.日本人の食事摂取基準(2010年版)
 B.IFCC値、JDS値および新規HbA1c(国際標準値)の換算表

索引

日本糖尿病学会(Japan Diabetes Society:JDS)から糖尿病の新しい診断基準が2010年に提案され、さらにHbA1cの値も従来のJDS値から国際的に比較しやすい米国での基準(NGSP値)にほぼ相当するHbA1c(国際標準値)への移行が進められています。小児・思春期糖尿病におけるエビデンスに基づいた診療の必要性も高まり、国際小児思春期糖尿病学会(Interllatiollal Society for Pediatric and Adolescent Diabetes:ISPAD)からは2006-2008年にコンセンサスガイドラインが発表されました。そこで、日本糖尿病学会編集の『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010』(南江堂)との整合性を保ちつつ。日本における小児・思春期糖尿病の実情に合わせたガイドラインとするべく、今回の改訂を企画しました。小児・思春期糖尿病の、診療においては十分なエビデンスが確定していないことも多いのですが、コンセンサスに基づく診療を心がけるのは当然です。従って、今回の改訂では各項にコンセンサスを含めたエビデンスレベルと診療ヒのグレード(推奨の強さ)を明確にしたステートメントを設け、引用文献と参考文献の充実を図りました。
 小児・思春期糖尿病における治療水準は、各種インスリンアナログ製剤の導人などにより向上しています。特に日本における小児・思春期1型糖尿病の血糖コントロールは全般的に改善し、この年齢層での合併症の進展は稀になっています。一方、小児・思春期2型糖尿病の実態は十分に把握されておらず、継続的診療が不十分であるとも考えられます。基本的な食事療法・運動療法の励行への支援体制が乏しいことも多く、家庭・学校・社会への啓発のみならず、子どもたちが抱える諸問題に対応するチーム医療体制の充実が必要となっています。また、薬物療法についての小児への適応が承認されていないことが多く、日本人の特性に即した適応拡大のためにも、エビデンスの確立が急がれています。
 1型糖尿病におけるメタボリック・メモリー、2型糖尿病におけるレガシー・エフェクト(遺産効果)など、小児・思春期からの早期血糖コントロールの良否は成人後の自立に深く関係する重要なエビデンスです。これからの人生が長い彼ら・彼女らが、安心して適切な医療を享受し、自立した健全な社会人へと成長することを期待しています。本書がその一助となれば幸甚です。
2011年5月
日本糖尿病学会小児糖尿病委員会
日本小児内分泌学会糖尿病委員会

『小児・思春期糖尿病管理の手びき』は本書が第3版となる。2001年に発行された初版は“Normal Life with Diabetes”の実現の一助となることを期して日本の小児・思春期糖尿病専門家の臨床経験を集積したコンセンサスガイドラインである。インスリンアナログやカーボカウントの普及に伴って2007年に改訂された第2版では、小児・思春期2型糖尿病に関わる社会的な課題についても言及していた。今回の第3版は、国際小児・思春期糖尿病学会の2006〜2008年コンセンサスガイドラインの発表に合わせた、そして2010年の糖尿病診断基準の改訂やHbA1cの表現法の変更(予定)を受けた、加えてインクレチン薬の登場を反映した改訂である。
 中を見ると、糖尿病の診断・疫学・遺伝子・移植といった総論としての話から、1型糖尿病、2型糖尿病別の治療法、学校生活や就職についての記述など情報は多岐にわたっており、それぞれがわかりやすく、また、かなり実践的に記載されている、臨床の第一線に立つ執筆者グループが執筆し、査読委員会が十分に吟味されたことがよくわかる内容である。
 インクレチン薬に関しては、国際小児・思春期糖尿病学会が成人と同様に使用することを認めているのに対して、今回の第3版は「インクレチン薬は海外でも小児での成績はなく…(中略)慎重に検討すべきと思われる」と慎重な姿勢を示している。
 2点ほど問題を感じた。一つには、(致し方ない部分もあるが)一部に実践性の乏しい勧告がある点があげられる。たとえば、「糖尿病患者の就職;企業、公共団体などは、糖尿病を理由として採用を拒否してはならない」は、主治医に対しても患者に対しても空虚なステートメントである。糖尿病を理由として採用が拒否されることがないようにどのような援助(医療者側)あるいは努力(患者側)が必要なのか、を記載しなくては実践的とはいえまい。ただ、その一方で、国際小児・思春期糖尿病学会の勧告にはそうした記載はなさそうなので、就職や結婚の問題にまで踏み込もうとする姿勢は賞賛されるべきであろう。
 二つには、1型糖尿病の食事療法の項で引用されているアメリカ糖尿病学会の食事療法のステートメントが最新の2008年のものでなく、2006年のものになっていることがあげられる。両者では内容に異なる部分があるので、古いステートメントを引用する際には、その理由を明示する必要があろう。
 しかし、こうした問題を含めてもなお、本ガイドラインの臨床的な有用性は揺るぎないものである。小児1型糖尿病を診療される小児科の先生ばかりでなく、小児科からの引き継ぎ(transition)を受ける可能性のある内科医・糖尿病医には必携のものであると感じられた。
評者● 山田 悟
臨床雑誌内科108巻6号(2011年12月増大号)より転載