書籍

経食道心エコー法マニュアル改訂第4版

DVD付

: 渡橋和政
ISBN : 978-4-524-26253-3
発行年月 : 2012年2月
判型 : B5
ページ数 : 374

在庫僅少

定価16,200円(本体15,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

基本事項から応用までを1冊で解説したTEEの実践的テキスト改訂第4版。付属のDVDには手術場面の動画を収載。多数の動画とケースファイルとがリンクし、バーチャルな経験を通して、TEEを行うタイミングと理由、手術や術中管理決定のプロセスを学べる。リアルタイム3D-TEEについても扱っており、最新のニーズに応える。

第I部 基本編
第1章 TEE(経食道心エコー法)とは
 A.TEEの特徴
  (1)TEEの長所と短所
 B.術中TEEの役割とコンセプト
  (1)術中TEEの役割
  (2)TEEの基本コンセプト
 C.救急部・集中治療室でのTEEの役割
 D.循環器内科医とTEE
 E.心臓外科医とTEE
 F.トレーニングと資格への挑戦
  (1)効果的なトレーニング方法
  (2)TEEの資格
第2章 TEEで使用するモード
 A.Bモード
  (1)Bモードとは
  (2)パネル設定
  (3)tips&pitfalls
 B.Mモード
  (1)Mモードとは
  (2)tips&pitfalls
 C.カラードプラモード
  (1)カラードプラモードとは
  (2)パネル設定
  (3)tips&pitfalls
 D.カラーMモード
  (1)カラーMモードとは
  (2)tips&pitfalls
 E.パルスドプラモード
  (1)パルスドプラモードとは
  (2)パネル設定
  (3)tips&pitfalls
 F.連続波ドプラモード
  (1)連続波(CW)ドプラモードとは
  (2)tips&pitfalls
 G.ドプラ計測を用いた評価法
  (1)圧較差の評価
  (2)PHT
  (3)連続式
  (4)PISA法
第3章 アーチファクトとその対策
 A.音響陰影
  (1)音響陰影とは
  (2)影響を受けるモード
  (3)対策
  (4)逆利用
 B.サイドローブ
  (1)サイドローブとは
  (2)影響を受けるモード
  (3)対策
  (4)pitfall
 C.多重反射
  (1)多重反射とは
  (2)影響を受けるモード
  (3)対策
  (4)comet tails
 D.aliasing(折り返し現象)
  (1)折り返し現象とは
  (2)影響を受けるモード
  (3)見分け方
  (4)対策
 E.mirroring(鏡面像)
  (1)mirroringとは
  (2)影響を受けるモード
  (3)見分け方
 F.電磁干渉
  (1)電磁干渉とは
  (2)影響を受けるモード
  (3)対策
 G.他の超音波装置との干渉
第4章 TEEの手順と安全管理
 A.TEE装置のセットアップ
 B.プローブ挿入(術中)
  (1)挿入前の準備
  (2)挿入手順
  (3)挿入困難なとき
 C.プローブ挿入(覚醒時)
  (1)挿入前の準備
  (2)挿入手順
  (3)挿入困難なとき
  (4)tips
 D.救急における非挿管状態での挿入
 E.プローブの抜去
  (1)抜去前の確認
  (2)検査後
  (3)プローブの消毒
 F.TEEの禁忌
  (1)食道・胃疾患
  (2)頸椎の可動性が低下している状態
  (3)頸部への放射線治療後
 G.合併症
  (1)食道穿孔、損傷
  (2)不整脈
  (3)気道狭窄
  (4)左房内血栓遊離
  (5)大動脈解離破裂
  (6)咽頭痛
 H.TEEにおける一般的な注意事項
  (1)大原則
  (2)実際面での注意点
  (3)装置の取扱い
第5章 画像のオリエンテーションと基本画像
 A.画像のオリエンテーション
  (1)TEEの走査面と画像のオリエンテーション
  (2)プローブ操作
 B.マルチプレーンの基本画像
  (1)基本20画像
  (2)20画像のグループ化
  (3)ME 4Cの描出
  (4)ステップ1
  (5)ME 4Cからの左心系画像(ステップ1)
  (6)ME 4Cからの右心系画像(ステップ1)
  (7)経胃画像からの画像(ステップ1)
  (8)ステップ2
  (9)ステップ3
 C.blind zone
第6章 リアルタイム3D-TEE
 A.3D-TEEの変遷
 B.表示の種類
  (1)3Dモード:正面像(en face view)
  (2)xPlaneモード
 C.3D画像のオリエンテーション
  (1)live 3D mode
 D.画像の使い分けと描出の工夫
  (1)対象を見るためのwindow
  (2)3DとxPlaneの使い分け
  (3)心房細動の影響
  (4)表示の遅れへの対処
  (5)echo dropout
第7章 TEEにおける小技
 A.トランスデューサの前の邪魔もの
  (1)トランスデューサの前の気泡
  (2)トランスデューサの前の経鼻胃管
  (3)食道内の空気
 B.プローブと経鼻胃管の関係
  (1)プローブ挿入後に経鼻胃管を入れる
  (2)経鼻胃管が抜けないようにプローブを抜く
 C.その他のコツどころ
  (1)目の前の邪魔者
  (2)胃液も使おう
  (3)入射角を小さくする
  (4)プローブの横ふり

第II部 正常編
第1章 左心系
 A.左室
  (1)構造
  (2)左室の描出
  (3)正しい描出のために
  (4)全般的左室機能評価
  (5)局所壁運動の評価
  (6)左室機能評価時のpitfalls
 B.僧帽弁
  (1)構造
  (2)僧帽弁の描出
  (3)僧帽弁血流
 C.大動脈弁
  (1)構造
  (2)大動脈弁の描出
  (3)大動脈弁血流
 D.左房と肺静脈
  (1)構造
  (2)左房の描出
  (3)肺静脈の描出
  (4)肺静脈血流
第2章 右心系
 A.右室および心室中隔
  (1)構造
  (2)右室の描出
  (3)機能評価
 B.右房および心房中隔
  (1)構造
  (2)右房および心房中隔の描出
  (3)機能評価
 C.三尖弁
  (1)構造
  (2)三尖弁の描出
 D.肺動脈
  (1)構造
  (2)肺動脈の描出
第3章 冠血管
 A.冠動脈
  (1)構造
  (2)右冠動脈の描出
  (3)左冠動脈の描出
 B.冠静脈洞
  (1)構造
  (2)冠静脈洞の描出
第4章 大動脈と上・下大静脈
 A.構造と描出の基本
 B.上行大動脈
  (1)基本的な描出
  (2)描出の意義とコツ
 C.胸部下行大動脈-弓部
  (1)基本的な描出
  (2)描出の意義とコツ
 D.弓部分枝
  (1)構造と描出の意義
  (2)描出のコツ
  (3)左総頸・鎖骨下動脈の描出
  (4)腕頭動脈の描出
  (5)90°走査
 E.腹部大動脈
  (1)構造と描出の意義
  (2)腹腔動脈、上腸間膜動脈の描出
  (3)腎動脈の描出
  (4)血流評価
  (5)腹部臓器の描出
 F.下大静脈
  (1)構造と描出の意義
  (2)下大静脈の描出
 G.上大静脈
  (1)構造と描出の意義
  (2)上大静脈の描出
第5章 心膜、胸膜
 A.心膜
  (1)構造
  (2)心膜の描出
 B.胸膜
  (1)構造
  (2)胸膜の描出

第III部 体外循環・モニター編
第1章 異物描出
 A.異物描出の意義
 B.異物描出の原則
  (1)透過と反射>音響陰影
  (2)反射の方向>表面の輝度
第2章 体外循環、補助循環
 A.Swan-Ganz(SG)カテーテル
  (1)描出
  (2)挿入ガイド
  (3)3D-TEEによるガイド
  (4)トラブルシューティング
  (5)鎖骨下静脈穿刺
 B.送血管
  (1)描出
  (2)送血管関連の合併症
 C.脱血管
  (1)描出
  (2)挿入ガイド
  (3)脱血不良
 D.左室ベント
  (1)描出
  (2)脱血不良
 E.心筋保護
  (1)描出の意義
  (2)順行性心筋保護(ルート)
  (3)順行性心筋保護(選択的)
  (4)逆行性心筋保護
  (5)順行性心筋保護(バルン)
  (6)左上大静脈遺残
 F.IABPカテーテル
  (1)描出
  (2)カテーテル留置の手順
  (3)トラブルシューティング
 G.PCPS
  (1)脱血管挿入時のガイド
  (2)送血管挿入時のガイド
  (3)送血管挿入後の確認
  (4)脱血不良
  (5)合併症のチェック
 H.脳分離灌流
  (1)右総頸動脈への迷入
  (2)右鎖骨下動脈への迷入
  (3)トラブルシューティング
 I.心内遺残空気
  (1)空気の描出と特徴
  (2)空気の貯留部位
  (3)検出時のpitfall
  (4)空気の除去

第IV部 病態・治療編
第1章 心筋虚血:狭心症、心筋梗塞
 A.心筋虚血の検出
  (1)虚血のTEE診断と重症度
  (2)部位診断
  (3)術中心筋虚血の原因
 B.on-pump CABG
  (1)体外循環前
  (2)体外循環中
  (3)体外循環後
 C.OPCAB
  (1)吻合前
  (2)吻合開始
  (3)吻合後
 D.内胸動脈グラフトの評価
  (1)背景と意義
  (2)内胸動脈グラフトの評価
  (3)内胸動脈が見つけにくいとき
  (4)鎖骨下動脈起始部の狭窄
  (5)限界
 E.#4PDへのグラフトの評価
  (1)グラフトの描出
  (2)グラフトの評価
 F.その他のグラフトの評価
 G.急性心筋梗塞
  (1)病態とTEE所見
  (2)心破裂
  (3)心室中隔穿孔
  (4)乳頭筋断裂
 H.陳旧性心筋梗塞
  (1)病態
  (2)エコー所見
第2章 弁膜疾患
 A.僧帽弁狭窄
  (1)TEE所見
  (2)重症度評価
  (3)PTMC
 B.左房内血栓
  (1)血栓のTEE所見
  (2)血栓描出上のpitfall
 C.僧帽弁置換術
  (1)機械弁
  (2)生体弁
  (3)僧帽弁置換術でのTEEルーチンワーク
  (4)慢性期の人工弁の病態
 D.僧帽弁逆流
  (1)描出とTEEの役割
  (2)原因
  (3)重症度評価
  (4)重症度評価時のpitfall
  (5)形成術前のTEE評価
  (6)形成術の基本方針
  (7)形成術の術中評価
  (8)second pump-runの決断
  (9)SAM
  (10)術後評価における3D-TEEのメリット
  (11)形成術の実例
 E.大動脈弁狭窄
  (1)病態
  (2)TEE所見
  (3)重症度評価
  (4)人工弁の配置
  (5)大動脈弁置換術のルーチン
  (6)経カテーテル大動脈弁植え込み術
 F.大動脈弁逆流
  (1)病態とTEE所見
  (2)重症度評価
 G.三尖弁逆流
  (1)原因とTEE所見
  (2)重症度評価
  (3)三尖弁輪縫縮術のルーチン
  (4)三尖弁狭窄
 H.感染性心内膜炎
  (1)病態
  (2)TEE所見
  (3)心臓外の病変
  (4)人工弁感染(PVE)
 I.心房細動手術
  (1)心房細動手術の概略
  (2)メイズ手術におけるTEEの役割
  (3)心房細動のカテーテルアブレーション
第3章 先天性心疾患
 A.卵円孔開存
  (1)病態
  (2)TEE所見
 B.心房中隔欠損
  (1)病態
  (2)TEE所見
  (3)ルーチンワーク
  (4)Amplatzer occluder
 C.心室中隔欠損
  (1)病態
  (2)TEE所見
  (3)ルーチンワーク
 D.房室中隔欠損
 E.動脈管開存
  (1)病態
  (2)TEE所見
  (3)ルーチンワーク
 F.心房中隔瘤
  (1)病態
  (2)TEE所見
 G.他の先天性心疾患
  (1)三心房心
  (2)修正大血管転位
  (3)右胸心ASD
  (4)肺動脈弁下漏斗部狭窄
第4章 心筋疾患、心膜疾患
 A.左室肥大
  (1)病態
  (2)評価
  (3)術中の注意点
 B.閉塞性肥大型心筋症
  (1)病態
  (2)TEE所見
 C.mid-ventricular stenosis
  (1)病態
  (2)TEE所見
 D.拡張型心筋症
 E.ICD、CRT-D
  (1)病態
  (2)リード挿入ガイド
  (3)CRT、ICDの評価
 F.心嚢液貯留、心タンポナーデ
  (1)病態
  (2)心タンポナーデのTEE所見
  (3)術後心嚢内出血
 G.収縮性心外膜炎
  (1)病態
  (2)TEE所見
  (3)術中TEEの役割
第5章 大動脈解離
 A.大動脈解離の概念と合併症
  (1)概念
  (2)合併症
  (3)エントリーと病型分類
  (4)解離のTEE所見
  (5)TEE評価
 B.エントリー部位の同定
 C.破裂の診断
  (1)破裂時のTEE診断
  (2)破裂時のTEE所見
  (3)対処法
 D.灌流障害の機序
  (1)フラップの挙動
  (2)分枝灌流障害の形態
  (3)灌流障害のTEE診断
 E.冠動脈の灌流障害
  (1)右冠動脈
  (2)左冠動脈
 F.弓部分枝の灌流障害
  (1)チェックポイント
  (2)脳灌流の系統的三段階モニター
 G.腹部内臓分枝の灌流障害
  (1)大動脈および起始部の評価
  (2)臓器機能の評価
  (3)限局解離
  (4)術中評価
 H.大動脈弁逆流
  (1)大動脈弁逆流の機序
  (2)大動脈弁逆流の治療方針
 I.偽腔送血と送血路の選択
  (1)偽腔送血の機序
  (2)送血路の種類
  (3)偽腔送血は予知可能か
 J.復温-体外循環後の評価
  (1)弓部分枝内のトリック
  (2)大動脈弁逆流、冠動脈血流
  (3)偽腔内血流、血栓化
  (4)腹部内臓血流
 K.fenestrationのガイド
 L.体表からの解離の診断
第6章 大動脈疾患(解離以外)
 A.大動脈の粥状硬化性変化
  (1)粥腫
  (2)潰瘍
  (3)石灰化
  (4)拡大-瘤形成
  (5)分枝動脈狭窄
 B.大動脈瘤
  (1)病態と描出
  (2)TEE評価
 C.大動脈弁輪拡張症
  (1)体外循環前
  (2)体外循環中
  (3)体外循環後
 D.open stent grafting
  (1)概略
  (2)手順とTEEガイド
 E.TEVAR
  (1)概略
  (2)手順の概略
  (3)特徴
  (4)TEEガイド
 F.胸腹部大動脈瘤と脊髄保護
  (1)標準的なTEE評価
  (2)脊髄虚血という問題
  (3)脊髄の描出
 G.外傷性大動脈損傷
  (1)画像診断の優先順位
  (2)好発部位
  (3)TEE所見
  (4)分枝動脈損傷
 H.大動脈炎
 I.大動脈縮窄
 J.他の大動脈疾患
  (1)大動脈閉塞
  (2)大動脈−肺動脈瘻
  (3)鎖骨下動脈閉塞
  (4)腹腔動脈瘤
  (5)abdominal angina
第7章 腫瘍性疾患
 A.心臓の良性腫瘍
  (1)左房粘液腫
  (2)乳頭状線維弾性腫
  (3)他の良性腫瘍
 B.心臓の悪性腫瘍
  (1)症例供覧
 C.肺癌
  (1)肺腫瘍におけるTEEの役割
  (2)浸潤の評価
  (3)症例供覧
 D.縦隔腫瘍
  (1)甲状腺腫
  (2)奇形種
  (3)胸腺嚢腫
  (4)その他
 E.腎腫瘍の下大静脈内進展
  (1)病態
  (2)TEE所見とモニター、ガイド
 F.肺動脈腫瘍
  (1)症例供覧
第8章 その他
 A.急性肺塞栓
  (1)病態
  (2)TEE所見
  (3)症例供覧
  (4)治療
 B.慢性肺塞栓
  (1)病態
  (2)TEE所見
 C.縦隔洞炎
  (1)病態
  (2)TEE所見
 D.胸腔内液貯留と無気肺
  (1)臨床的意義
  (2)TEEによる描出
  (3)治療のガイドと評価
第9章 心肺停止、外傷、ショック
 A.心肺停止におけるTEE
 B.多発外傷におけるTEE
  (1)腎損傷
  (2)大動脈閉塞バルン
  (3)外傷性クモ膜下出血
 C.ショック時のTEE
  (1)前負荷低下
  (2)後負荷低下
  (3)心拍数減少
  (4)収縮力低下
第10章 開心術のルーチンワーク
 A.麻酔導入直後
  (1)basic control study
  (2)術前診断の確認(簡単に)
  (3)他の病態の除外診断
  (4)大動脈の評価
  (5)SGカテーテル挿入のガイド
 B.体外循環前-開始
  (1)手術対象疾患の再評価(詳細に)
  (2)体外循環用の各種カテーテル挿入
  (3)体外循環開始時のチェック
 C.体外循環中
  (1)心筋保護
  (2)大腿動脈送血による体外循環の場合
  (3)胸腔内液貯留
 D.心拍動再開
  (1)心内遺残空気
  (2)左室機能のモニター
  (3)外科治療の評価
  (4)合併症の検出
 E.閉胸時
  (1)閉胸操作の影響
  (2)心嚢内、胸腔内出血の検出
 F.MICS

付録:TEE-SIMの使い方

第3版を上梓した2005年以降の7年間で、TEEに関連する大きな動きがいくつもあった。
 まず2009年に導入されたリアルタイム3D-TEEは、「TEE=断層像」という常識を覆すepoch-making innovationであった。三次元表示に加えxPlaneモードという強力な武器により、これまで描出できなかった画像が数多く表示できるようになった。
 2010年には「術中TEEによる連続監視加算880点」が保険収載された。心臓手術におけるTEEの存在が公式に認められた形である。さらに心臓血管麻酔専門医制度がスタートし、必須要項の一つにJB-POT合格が組込まれた。ただし加算や専門医の肩書きに見合うメリットを産み出さなければならないと言うことも意味している。
 手術対象患者の高齢化が進み、ER/ICUを含め多彩な既往や内服薬、進行した動脈硬化性病変の存在下での治療が日常となりつつあり、小さな合併症でも大きく成績を左右しうる。一方で、各疾患の治療成績は着実に向上しつつあり、治療の目標もすでに救命を通り越し、いかに安全、確実に目的を完遂するかにかかってきている。個別化治療へと移行しつつある時代であり、この意味でもTEEの果たす役割は大きい。
 心臓血管外科にもbig waveがやってきた。大動脈瘤に対するステントグラフト治療、経カテーテル大動脈弁植え込み術が日本に導入された。ロボット手術はまだごく一部で行われている段階だが、海外ではCABGをはじめ、僧帽弁形成術、心房細動手術などにも積極的に用いられている。しかし視覚的に確認できる範囲が狭くなるにつれてTEEによる安全性の担保がより重要となってくる。また、「3D-TEEガイドの心拍動下治療」が始まろうとしている。
 今回の改訂では、このような背景を受け新たな内容を盛り込んだ。南江堂のご協力で本改訂版はオールカラー刷りとなりDVDを付けることができたおかげで、多数のイラストや動画、術中画像を提供できることとなった。DVDには688点の動画を収載し、さらに、実際の現場でどのようにTEE情報を得て方針決定をしていくかという内容を、51点のCase FileとしてDVDに入れた。
 TEE習得で最初に越えなければならないステップが、プローブ操作と画像との関連付けである。2010年にはGadelius社(スウェーデン)が新たなシミュレーションシステムを出した。習得には非常に有用なシステムだが、1000万円以上と非常に高額である。この第4版では、このステップの一助となることを願いつつ、無料のシミュレーションソフトを付録として付けた。CT画像データを応用したソフトで、制作にあたっては広島国際大学臨床工学科の二宮伸治先生に全面的にお世話になった。この場をお借りして感謝いたします。
 本書は、初版より「教科書」という殻は脱ぎ捨て、あくまで実践的に役立つことをめざした「マニュアル」の形で提供してきた。1987年に広島大学麻酔科の盛生倫夫先生、第一外科の松浦雄一郎先生にTEEと巡り会わせていただき、1988―1990年にNYのAlbert Einstein医科大学麻酔科で丘ヤス先生にご指導いただいて以来、24年にわたり外科医としての成長とともに育ててきたTEE活用の結果をこの1冊にまとめた。読者の皆さんには、これをたたき台としてさらに発展させていっていただきたい。本書のマテリアルは、20年間にわたりお世話になった広島大学で収録させていただいたものであり、ご支援、ご協力いただいた皆様に深謝いたします。
平成23年12月15日
高知大学医学部第二外科
渡橋和政

経食道心エコー(TEE)は、今や心臓外科医にとっては第二の眼であり、その第二の眼を操作するのが麻酔科医である。今やTEEなしでは質の高い心臓手術はすでに成り立たなくなっており、心臓外科医にもその画像の意味するところを十分に理解することが求められる。著者の渡橋先生は、心臓外科手術を行ううえで必要とされるTEEの手技と理論をきわめて実践的かつわかりやすく本書に凝縮している。
 今回の改訂第4版は、初版に比べ、マルチプレーンはもちろんのこと、リアルタイム3D-TEEなど機器の発達やステントグラフトのような術式の進歩に伴い、内容は盛りだくさんである。それにもかかわらず、ベッドサイドでのマニュアル本として、全体で約370ページとコンパクトに収まっており、全ページがカラーで、図譜が惜しげもなく使われている。
 第T部「基本編」、第U部「正常編」、第V部「体外循環・モニター編」、第W「部病態・治療編」という構成はわかりやすく、初学者にも無理なく理解できるようになっている。実際の超音波画像に加え、CTの断面像や3D画像、ならびにプローブ操作に合わせてあえて上下逆転させた図譜を交え、きわめて直観的に理解しやすい構成である。また本書に添付されたDVDには、3D-TEEの動画を含め、多数のビデオが含まれている。百聞は一見にしかずで、やはり動いている心臓相手のエコーは、動画があってはじめて理解が深まる。特にcase fileでは、症例ごとに実際の術野ビデオも合わせて供覧されており、エコー画像と実際の心臓との関連づけが可能な構成となっている。
 以下、各項目に沿って、コメントを述べさせてもらう。
 まず、第T部第5章の「画像のオリエンテーションと基本画像」の項では、基本20画像のお互いの位置関係を、深さと手元の操作とで二次元の図に表してあり、実に実践的でわかりやすい。第T部第6章の「リアルタイム3D-TEE」の項には、3D-TEEの総論的な情報がまとめられており、おそらく本書改訂の最大の目玉であろう。初心者にも理解しやすいように、3D-TEEの三つのモードやxPlaneモードの三つの走査法などが詳細に説明されているのがありがたい。この章だけでなく3D-TEEの各論として、本書のいたるところに3D画像がちりばめてあり、最新機器を利用する際には大いに役立つことは間違いない。臨床の現場ではさまざまな理由で心臓の描出がうまくいかない場面に遭遇するが、第T部第7章の「TEEにおける小技」の項には、その際の解決方法が図を交えてわかりやすく示されている。このようなちょっとしたコツが書かれているTEEの専門書は、決して多くはない。またTEEにおけるアーチファクトの種類は多彩で、発生の機序が理解しにくいものであるが、本書では多数の図を用いてわかりやすく記載されている。特にサイドローブとグレーディングローブの違いがよくわかる。
 著者はTEEに関して数多くの業績を誇っているが、おそらく最大の功績はTEEにおいて弓部3分枝の描出方法を確立したことであろうと思う。第U部第4章の「大動脈と上・下大静脈」の項では、これについて詳しく書かれており、まさに渡橋先生ならではのものである。各分枝を描出するための手技について、ほかの本ではなかなかここまでは言及されていない。
 第V部の「体外循環・モニター編」には、異物の描出やSwan-Ganzカテーテル、人工心肺や補助循環、逆行性心筋保護液注入カニューレ留置、心内遺残空気の描出法の項目が独立しており、開心術の基本手技を行ううえでのTEEの役割が、きわめて実践的な内容として盛り込まれている。この項を読むと、手技の安全性向上のために心臓外科医にとってTEEが欠かせないことがよく理解できる。さらに第W部の「病態・治療編」では、冠状動脈バイパス術(CABG)のグラフト評価法、弁膜病変の評価、大動脈解離など、各疾患別に心臓手術におけるTEEの一連の使い方をマスターすることができる。
 まさに本書は、心臓外科医と麻酔科医にとって臨床の現場に必携の一冊であり、これほど実践的で質が高くわかりやすい著書を執筆された渡橋先生に、心から敬意を表する。
評者● 荒井裕国
胸部外科65巻12号(2012年11月号)より転載

内科医には書けない経食道心エコーDVDテキスト
 渡橋和政先生の『経食道心エコー法マニュアル』の書評依頼があり、書評ははじめてだが引き受けることにした。渡橋先生は高名な心臓外科医であり、「心臓外科医の書く心エコーの教科書はどのようなものだろう」と興味が湧いたからだ。
 第T部の基本編はオーソドックスで、実地で役に立つように工夫されている。経食道プローブをうまく挿入できたときと途中で挿入困難になったときの頸部の皮膚がどのように見えるかというような画像まで入っていて、「渡橋先生は一人で経食道心エコーを始めて、当初はテクニカルなことで相当苦労されたんだな」と思ったし、経食道エコープローブと食道壁の間に気胞があると画像が大変見えにくくなるが、プローブにアップ・ダウンの角度をつけて押したり引いたりすると気胞が消え画像もよくなることなど、実地で役に立つことが多く書かれている。また、アーチファクトも数多く取り上げられていて、これから経食道心エコーを始める人にずいぶん親切な教科書になっている。
 圧巻は第V部の体外循環・モニター編から第W部の病態・治療編である。われわれ内科医は経食道心エコーを主に診断のために使うが、渡橋先生が診断にも治療のガイドにも経食道心エコーを非常に幅広く使っているのがよくわかる。術中のSwan−Ganzカテーテル挿入や穿刺のガイドに役立てていたり、逆行性の心筋保護時のカテーテルサイズを経食道心エコーで見た冠静脈洞の大きさから調整したりと、内科医が思いつかない経食道心エコーの役割がふんだんに出てくる。また、術中所見が豊富に提示され、経食道心エコー画像との対比により画像を見る目が養われる。さらには手術の合併症や人工弁不全の画像が多く提示され、心臓外科症例における経食道心エコーを含めた注意点が実によくわかる。大動脈疾患や解離に関する画像が多いのも特徴の一つである。一つ一つの画像が典型例の診断やピットフォールを表している。これほど外科手術あるいは大動脈内ステント挿入等の侵襲的治療の経食道心エコー所見を数多く網羅した教科書は他に類を見ない。
 経食道心エコー法は、山口大学循環器内科教授を今年退官されたばかりの松崎益徳先生が、1978年に世界に先駆けて開発した診断法である。主に循環器内科医が診断に用いており、教科書もほとんどは内科医が執筆し、その主眼は正確な診断や病態評価である。しかし、本書は非常にユニークである。「正確な診断」という部分は共通だが、「実用的である」・「治療に生かす」ということを主眼に書かれている。診断を間違った症例の画像が入っていたり、大動脈内にシースカテーテルを挿入するときにそこにあった粥腫をシースカテーテルが削り取ってしまう画像まで出てくる。全国の多くの施設においてブラインドでシースカテーテルを挿入していると思うが、この画像を見て勉強することにより治療成績が向上することは間違いない。
 この教科書は、まさに「内科医には書けない経食道心エコー法のDVD付テキスト」になっている。この本を読んで「渡橋先生は、経食道心エコーを使って、死亡や合併症ゼロの外科手術や侵襲的治療を目指されている」と感じた。臨床医として頭が下がる。初心者向けにわかりやすく作られているが、循環器内科専門医のベテランにも大変勉強になる内容である。
 「心臓外科と循環器内科は同じ科である」と常々思っている。内科医と外科医がまったく同じ診断名の患者さんの診療に携わる。このような内科医・外科医の関係は他の分野(腎臓・泌尿器、神経等)ではまれである。経食道心エコーは内科医と外科医が協力して手術症例の病態評価を行う診断手技であり、この本に示されているように治療のガイドにもきわめて有用である。内科医は手術を勉強し、外科医は心エコーを勉強し、ともに診断・治療の向上に努力しなければならない。本書は、内科医にとっても外科医にとってもまさにこの目的に合った画期的な勉強道具となると思う。
評者● 尾辻豊
内科110巻2号(2012年8月号)より転載

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