書籍

結核診療ガイドライン改訂第3版

編集 : 日本結核病学会
ISBN : 978-4-524-26179-6
発行年月 : 2015年3月
判型 : B5
ページ数 : 138

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

結核診療に携わる全医療スタッフ・行政担当者必携の“公式”ガイドライン。「結核の現状」「結核の診断」「結核菌検査」「患者の管理」「結核の治療」「潜在性結核感染症」「医療従事者に対する対策」について、その基本から実践までを記載、今日の結核診療のスタンダードを示す。今版では、「IGRA(インターフェロンγ遊離試験)」「潜在性結核感染症治療指針」「デラマニド」に関する解説を追加した。

I章 結核の現状
 1.世界の結核
 2.日本の状況
 3.新たな対策
II章 結核の診断
 1.結核の発症・治癒の様式
 2.臨床症状
 3.画像診断
 4.喀痰結核菌検査の臨床上の注意点
 5.喀痰検査以外の検査
 6.ハイリスク者の結核
 7.肺外結核
III章 結核菌検査
 1.抗酸菌検査依頼と検査回数についての注意
 2.塗抹検査
 3.培養検査
 4.同定検査
 5.薬剤感受性検査
 6.核酸増幅法検査
IV章 結核患者の管理
 1.患者の発生届
 2.保健所による積極的疫学調査
 3.入院および退院の基準
 4.結核医療費の公費負担制度
 5.保健指導,治療支援
 6.DOTS
V章 結核の治療
 1.結核治療の原則
 2.化学療法の原則
 3.標準治療の実際(活動性結核)
 4.標準治療における主な副作用への対応
 5.標準治療が行えないとき(活動性結核)
 6.化学療法以外の治療
 7.小児,妊婦および合併症がある場合の治療
 8.潜在性結核感染症の治療
 9.附:主な抗結核薬の分類と種類
VI章 潜在性結核感染症
 1.潜在性結核感染症(LTBI)とは
 2.LTBIの治療対象の選定
 3.感染診断法
 4.接触者健康診断の方法と事後措置
 5.LTBI治療の実際
 6.LTBIをめぐる制度
VII章 医療従事者に対する対策
 1.医療従事者の院内感染
 2.医療機関における感染防止対策の考え方
 3.組織的な対策
 4.環境上の感染防止(作業環境管理)
 5.個人の感染防止(作業管理)
 6.結核患者発生時の対応
索引

改訂第3版 序文

 この度、およそ3年ぶりに一般社団法人日本結核病学会の診療ガイドライン作成委員会から「結核診療ガイドライン」の改訂第3版を発刊することとなりました。初版から改訂第版までの期間も3年であり、3年ごとに改訂を繰り返していることになります。これは、3年を経過する間には、結核診療に関する情報が次々と新しくなり、旧版では記載されていないことも多くなるからです。読者に必要な最新情報をお伝えするためには、およそ3年ごとの改訂が必要となるのです。
 この3年の間に、予防接種法施行令の一部改正が行われ、BCG接種時期が変更されました。また、本学会からも「潜在性結核感染症治療指針」および、「インターフェロンγ遊離試験使用指針」が相次いで報告されています。「潜在性結核感染症治療指針」は、インターフェロンγ遊離試験が広く行われるようになり、また生物学的製剤の種類および適応疾患も増大していることなどから作成されました。「インターフェロンγ遊離試験使用指針」は、クォンティフェロンRTB ゴールドに加え、T スポットRTBが保険適用になったことから作成されました。さらにリファンピシン以来となる新しい系統の抗結核薬デラマニドが新たに承認されたのを受けて「結核医療の基準」の一部改正が行われ、デラマニドが多剤耐性結核の治療薬として使用可能となっています。今回の改訂では、このようにBCG接種、結核感染診断、潜在性結核感染症の治療、新規の結核治療薬と、多岐にわたる新たな情報が掲載されています。
 執筆者は初版、第2版と同様に、本学会の各種委員会の委員長を中心に、各分野の専門の先生方にお願いし、第2版をベースにかなり手を加えていただきました。出来るだけ新しいデータで、かつ、わかりやすい内容になることを心がけ、第2版にも増してさらに充実した内容になっています。
 2004年4月から新医師臨床研修制度が始まったことを受けて、研修医教育のために結核症全般の体系的なガイドライン作成が望まれたことから、初版「結核診療ガイドライン」は臨床研修医や一般臨床医に主眼を置いて作成された経緯があり、現在もそれに変更はありません。初版および第2版とも大変に好評で、多くの先生方にご利用いただいているとのことです。さらに、結核患者の診断に最もかかわりの深い呼吸器専門医にも是非お手元に置いていただき、大いに活用していただければ幸いであると思います。

2015年2月
一般社団法人日本結核病学会 理事長
山岸文雄

 結核はやや特殊な疾患である。感染性が高いため感染症法で管理され、患者が発生すれば、隔離と行政への届けが必要であり、治療中はもとより治療終了後も保健所との共同作業が継続する。また、結核に対して地域によっては今なお偏見の残っていることも配慮する必要がある。診断はインターフェロンγ遊離試験(IGRA)の普及もあって容易になっているかというと、鑑別診断が一般医師の念頭に浮かばないためしばしば見落とされ、診断の遅れが生じることも少なくない。診断の遅れは、感染の拡大に直結するだけに深刻である。当然治療可能な疾患であるが肝疾患、妊娠や透析など、薬剤選択と用法・用量に工夫が必要なことも多い。また副作用のため予定どおり薬物療法が進まないこともあって、実際の治療は必ずしも容易ではない。さらに今日の結核患者は高齢で寝たきりや認知症、精神疾患、腎不全を合併することも多く、それぞれに治療の場所の選択に難渋することが多い。
 結核診療には欠かせない「結核診療ガイドライン」はこのような事情もあって2009年の初版、2012年の改訂第2版といずれも好評を博し、出版部数も伸びたと聞いている。結核は疾患としては古くからよく研究されてきたが、一方で今日の診断と治療の進歩も著しく、今回も第3版として適宜必要な改訂がなされている。
 さて、そもそも本書は結核診療に関連して厚生労働省の「結核診療の基準」を基盤として、日本結核病学会各種委員会の声明を統括したコンパクトな書籍として上梓されてきた。改めて各章の構成をみると、「I章 結核の現状」、「II章 結核の診断」、「III章 結核菌検査」、「IV章 結核患者の管理」、「V章 結核の治療」、「VI章 潜在性結核感染症」、「VII章 医療従事者に対する対策」となっている。このような構成で冒頭にあげた結核の特殊性や問題点がよくカバーされている。結核患者はいついかなるときも発生する可能性があり、どんな医療者であっても、また医療機関であっても適切な対応が必須である。このような事情に鑑み、本書は初版のときから一貫して、一般医療者にわかりやすく平易に書かれている。また、診断と治療や、行政とのかかわりなどはフローチャートなどを多用して、対応が一目でわかるような工夫もされている。また、それでいて専門家や行政担当者でもちょっと参照したいような記述も充実しているため、一般の医療施設から結核の専門医療機関にいたるまで、必携の一冊といえよう。
 日本の結核罹患率は人口10万対16.1と、今なお先進諸国の4倍以上であり、高齢者やハイリスク者、また社会経済的弱者に患者が多くみられ、集団感染事例も一向に減少しない。さらには基礎疾患を有する重症例や非定型例が増加していて、結核の診療体制は変革期を迎えている。すなわち結核病院や療養所で行う低コストの結核診療の時代は終焉し、これからは特定機能病院や基幹病院でモデル病床などを活用して、数は少ないものの多岐の合併症をもつ重症結核患者の診療にあたるべきであろう。また、医学教育においてもその必要性が高い。このような意味で結核診療は新時代に入っており、研修医や若手の医師が呼吸器専門医の指導の下で、結核診療を担う時代が始まったものと考えられる。そのような新時代の結核診療のガイドラインとして本書はまさにうってつけであり、一般医療者のみならず、研修医などの若手医師にも本書を推薦したい。

臨床雑誌内科116巻4号(2015年10月号)より転載
評者●埼玉医科大学病院病院長/同呼吸器内科教授 金澤實