書籍

レスキューTEE(経食道心エコー法)

シナリオから考えるトラブルシューティング

: 渡橋和政
ISBN : 978-4-524-26164-2
発行年月 : 2014年9月
判型 : B5
ページ数 : 170

在庫あり

定価7,344円(本体6,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

TEEの能力を十分に活かすにはどうすべきか?主に心血管手術の現場で遭遇するトラブルのレスキュー例をもとに、(1)トラブル遭遇時の考え方、(2)情報を得るために必要なテクニックや解釈、(3)情報が得られない時の代替策等を、フルカラーの図と写真でわかりやすく解説。全編見開き2頁の読み切りで、トラブル時に必要な箇所だけ読んでも簡単に理解できる!TEEに関わるすべての医師必携の一冊。

I 冠状動脈バイパス術
 1.冠状動脈の吻合部決定
 2.グラフト評価
 3.内胸動脈の拍動微弱
 4.ICUでのグラフト閉塞疑い
 5.オフポンプ冠状動脈バイパス術中の血圧低下
II 大動脈弁置換術
 1.選択的冠灌流ができない
 2.大動脈切開のレベル
 3.心拍動再開とともに前壁akinesis
 4.人工弁植込み後の右冠状動脈
 5.人工弁のサイズ決定
 6.大動脈弁位機械弁の評価
 7.人工弁の弁周囲逆流
 8.生体弁の機能障害
 9.大動脈基部出血
III 僧帽弁手術、三尖弁手術、心房細動手術
 1.僧帽弁輪のアブレーションで左回旋枝の位置は?
 2.収縮期前方運動を予想できるか、回避できるか
 3.左心耳血栓の有無の判定
 4.心房細動手術のpitfall
 5.心房細動手術後のトラブル
 6.三尖弁逆流におけるペーシングリード関与
IV 大動脈解離、大動脈瘤
 1.基部置換か上行置換か
 2.大動脈基部置換の冠状動脈グラフト評価
 3.偽腔送血のチェック
 4.大動脈解離のエントリー部位
 5.破裂部位の同定
 6.大動脈解離の送血路
 7.内臓虚血の評価
 8.真腔送血の効果
 9.腕頭動脈狭窄合併時の送血路
 10.大動脈弁逆流の治療方針
 11.閉胸時の突然の血圧低下
 12.下行大動脈破裂の場所は?
 13.弓部全置換におけるrSO2低下
 14.オープンステントのトラブル
 15.オープンステントによるエンドリーク
 16.オープンステント後のblue toe
 17.左椎骨動脈の起始異常
 18.眼球ドプラ法
V 循環破綻、不安定な血行動態
 1.冠状動脈病変の有無
 2.心臓マッサージは効いているのか
 3.大動脈内バルーンパンピングカテーテル挿入
 4.出産直後の心停止
 5.術後ICUでの血圧、心拍出量低下
VI Swan-Ganzカテーテル
 1.内頸静脈から入れたガイドワイヤーが右房にこない
 2.右房に入ったSGカテーテルが右室に進んでいかない
 3.SGカテーテルが肺動脈に上がらない.心室期外収縮が連発
 4.SGカテーテルの圧波形がなまっている
VII 体外循環
 1.大動脈弁置換の送血路
 2.大腿静脈脱血管が入らない
 3.上大静脈の脱血管挿入時の抵抗
 4.脱血不良の原因
 5.体外循環離脱後の異常な中心静脈圧高値
 6.冠状静脈洞カニューラ挿入時のトラブル
 7.冠状静脈洞カニューラ挿入時の抵抗
 8.逆行性心筋保護で灌流圧が異常に低い
 9.冠状静脈洞カニューラの深さ
 10.左室ベントカニューラ挿入時のトラブル
 11.脳梗塞を回避するには
VIII 心内遺残空気
 1.空気をルーチンどおりに抜いたが
 2.右上肺静脈の空気
 3.左房の空気
 4.左室の空気
 5.心尖部の空気をチェックしたいが、うまく描出できない
 6.体外循環離脱時の異常な左房内mass
 7.右心系の空気はしっかり抜くべきか
 8.空気かどうかがわからない
IX プローブ操作
 1.プローブが胃に進まない
 2.プローブが抜けてしまった.再挿入が難しい
 3.心尖部アプローチでオリエンテーションがわからない
索引

20年前、心臓血管外科手術はまだリスクの高い治療で、70歳以上(高齢者)の手術にはたいへん慎重でした。しかし診断技術や医療機器の進歩に加え、多くの臨床研究で治療戦略が洗練され、ほとんどの疾患で待機手術の死亡率は1%前後となりました。急性A型大動脈解離でも、上行〜弓部大動脈置換術の救命率は90%を超え、さらに90歳代であっても積極的に手術が行われる時代となりました。
 しかし、それに伴ってパラダイムシフトが起こりました。95%の救命率を98%にできないのか。合併症をもっと減らすことができないのか。治療を受ける立場に立つと、完璧を求める気持ちは強くなります。あいにく後遺症を残したり低率ながら死亡につながるイベントは、要因が多彩で症例間の差異も大きく、いかに症例数を増やし統計的手法を駆使しても解答を得ることは困難ですし、得られる結論も常に数%の危険率を含んでいます。目の前のこの一症例への答は与えてくれないのです。
 仮に自分が治療を受けて不幸にも合併症が起こり、治療者が「想定外のイベントが」と告げたらどうでしょう。「何とか想定できなかったのか」と感じるでしょう。少なくとも「今日の症例はアンラッキーだったね」などと発言しているのを聞いたら我慢ならないでしょう。95%を98%や100%にするためには、(1)想定範囲を広げること、(2)起こったことを速やかに察知し適切に対処すること、(3)可能なら起こる前に回避すること、が必要でしょう。母集団に対して対策を立てる時代は終わり、すでに治療戦略個別化のステージに移っているのです。要は残りの数%をいかにつぶすかです。私は、今後症例報告が大切になってくると考えています。論文査読でも「症例紹介+文献的考察」だけの報告をよく目にしますが、これでは次回同様な経験をしたときに活かせるものがないため、プラスの示唆を含めるよう大幅な修正を求めています。
 TEE(transesophageal echocardiography、経食道心エコー法)は上の(1)〜(3)の実現に大きく貢献する力を持っており、その対価として「術中経食道心エコー連続監視加算」があります。しかしTEEの能力を十分活かし切れていない事例を学会や論文で目にします。原因は、(1)何が起こるかを頭の中で整理できていない、(2)TEEできちんと診断できない(描出の判断と技術、画像の解釈)、(3)回避するために打っておくべき手がわからない、です。残念ながら、教科書は答を与えてくれませんし、講習会の内容も必ずしも参考になりません。そこで思い至ったのが、いざというときの『レスキューTEE』です。
 見渡したところ、このような切り口の教材はありません。「ないなら作ろう」と考え、南江堂の篠原さん、杉山さんに相談したところ、企画として採用いただきました。臨床現場で遭遇するトラブルや疑問(答もないままになりがち)やリスクがらみのイベントのレスキュー例を紹介しながら、その場で考える道筋、情報を得るために必要なTEEのテクニックや解釈、情報が得られないときの代替策などを紹介しています。すべて見開き2ページの読み切りで、どこから読み始めてもけっこうです。『経食道心エコー法マニュアル(改訂第4版)』(南江堂、2012年刊)と重複する部分は参照とし、論文として症例報告しているものは、参考文献として各項目の末尾に載せました。外科医が協力しなければできない内容もあります。ここがうまくいかなければ、真の「ハートチーム」とはいえないでしょう。私見に基づいたeccentricな内容、主張もありますが、熱いハートに免じてご容赦下さい。
 TEEは、CTなど他のモダリティと異なり自分でデータを取りにいく必要があり、何を考えているかによって生きた情報にも無益な情報にもなります。超音波を発信し身体に問いかける「思考」と「技術」、こだま(エコー)として得た情報を方針決定に活用する「論理」を理解するために本書が一助となればと願っています。

2014年8月
渡橋和政

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