書籍

感染症Emergency

監訳 : 島田馨/奥住捷子
: 吉田敦/吉田穂波/亀井千夏/藤澤隆一
ISBN : 978-4-524-26061-4
発行年月 : 2011年7月
判型 : 四六倍
ページ数 : 472

在庫あり

定価11,880円(本体11,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

感染症の臨床、特に緊急・救急におけるテーマ76を挙げ、その初期対応について解説した好評書「Emergency Management of Infectious Diseases」日本語版。臨床的視点による解説と豊富な図表で、内科、小児科、産婦人科、外科など各領域の感染症を広く扱う。臓器別感染症、小児感染症、特殊感染症、トピックス(新興感染症、バイオテロなど)を章立てする。

Emergency Management of Infectious Diseases
Rachel L.Chin

第I部 臓器別の感染症
A.心血管感染症
 1.感染性心内膜炎
 2.心筋炎と心膜炎
B.口腔内感染
 3.歯性感染症
C.皮膚感染症
 4.発熱と発疹を伴う全身性疾患
D.耳鼻咽喉の感染症
 5.中耳炎
 6.外耳道炎
 7.副鼻腔炎
 8.声門上炎(喉頭蓋炎)
 9.咽頭炎および扁桃腺炎
 10.深頸部感染症
 11.流行性耳下腺炎(ムンプス)
E.消化器感染症・肝胆道系感染症
 12.腹膜炎
 13.ウイルス性肝炎
 14.胆道感染症(胆嚢炎と胆管炎)
 15.感染による急性の下痢症
 16.HIV感染者の下痢
F.生殖器感染症と性感染症
 17.性感染症による潰瘍性病変
 18.潰瘍を伴わない性感染症
 19.外陰膣炎
 20.男性の泌尿生殖器感染症
G.骨・関節感染症
 21.成人の敗血症性関節炎
 22.手の感染症
 23.骨髄炎
 24.開放骨折
 25.脊椎の感染症
 26.人工関節の感染症
 27.糖尿病の足
 28.足底の刺し傷
 29.救急外来でみる関節炎
H.眼感染症
 30.眼周囲の感染症
 31.結膜と角膜の感染症
 32.ぶどう膜、硝子体、網膜の感染症
I.呼吸器感染症
 33.市中肺炎
 34.結核
 35.インフルエンザ
 36.HIV感染者の呼吸器疾患
J.尿路感染症
 37.成人の下部尿路感染症(膀胱炎)
 38.成人の腎盂腎炎
K.中枢神経系感染症
 39.発熱と頭痛(髄膜炎)
 40.大脳の巣症状を伴う発熱
 41.脊髄に起因する発熱と急性の麻痺
 42.HIV感染者の意識障害
L.皮膚・軟部組織感染症
 43.細菌による皮膚・軟部組織感染症

第II部 小児感染症
 44.小児の発熱と発疹
 45.新生児の発熱
 46.乳幼児の発熱
 47.小児の整形外科疾患
 48.小児の尿路感染症
 49.小児の呼吸器感染症

第III部 特殊条件下の感染症
 50.咬傷
 51.担癌患者の感染症
 52.皮膚の寄生虫症
 53.妊婦の発熱
 54.海外渡航後の発熱
 55.静注薬物濫用者(IDU)の感染症
 56.血液、体液の曝露およびHBV・HIVの曝露後予防
 57.術後感染症
 58.産褥婦と流産後の発熱
 59.移植後患者の発熱
 60.狂犬病
 61.敗血症性ショック
 62.鎌状赤血球症
 63.破傷風

第IV部 トピックス
A.バイオテロリズム
 64.炭疽
 65.ボツリヌス症
 66.ペスト
 67.天然痘
 68.野兎病
 69.ウイルス性出血熱
B.新興感染症
 70.ハンタウイルス感染症
 71.鳥インフルエンザ
 72.SARS
 73.ウエストナイルウイルス熱・脳炎

第V部 抗菌薬のオーバービュー
 74.抗菌薬のオーバービュー

第VI部 微生物検査
 75.微生物検査

第VII部 感染予防策
 76.感染予防策

索引

ほとんどの感染性疾患は発熱を主訴とするために、有熱患者の診定が感染症診療の第一歩となる。まず発熱のあらゆる可能性を順次考慮に入れ、既往歴、他覚的所見を注意深く周到に吟味して、原因が感染症によるものか、膠原病、悪性腫瘍、血液疾患など感染症以外の疾患によるかを考慮し、一般検査、血液像、画像などを参考にしながら病原体検索を行うのが常道である。
 しかし感染症で扱われる疾患は、他の領域に比べてもはるかに多い。日常よく遭遇する一般的な感染症には内科では呼吸器感染や尿路感染が、外科では術後感染があげられるが、小児科、産婦人科、整形外科、耳鼻科、眼科、皮膚科にも特有な感染症がある。また入院中の抵抗力の低下した高齢者や悪性腫瘍の患者には、強毒菌に加えて各種の環境常在菌も病原菌としての役割を発揮するようになり、治療と院内感染対策に格別な配慮が求められるし、HIV感染症など細胞性免疫不全患者の診療には、一般感染症とは異なる知識が求められる。さらに国内に常在しない熱帯病を発症、受診する海外旅行帰国者もいる。
 このような多種多彩な疾患全体を網羅し、克明に記述した感染症の専門書は大分冊にならざるを得ず、米国では2,000ページを超えるものがいくつか刊行されているが、残念ながら日本語できちんと編集されたものは見当たらない。
 米国で感染症教科書のベストセラーになっている本書の原著を手にとってみると、診断、治療に必要な知識をできるだけ表にまとめ、しかも画像も豊富に取り入れて557ページに圧縮してあり、医学生や一般医師に高い評価を受けているのも当然と考えられた。
 訳者の吉田敦獨協医科大学准教授はハーバード大学医学部に留学中、感染症の初期対応の重要さを説く本書の日本語訳の刊行を思い立ち、このほど実現の運びとなった。日本語で平易に読める感染症のきちんとした教科書としては初めてのものであると思われ、日本の感染症教育および感染症診療に大きく貢献する一冊として記憶されるであろう。吉田准教授の着眼点と多大の労に心からの敬意を表する。
2011年5月
島田馨
奥住捷子

原書の『Emergency Management of Infectious Diseases』の著者であるDr.Chinは救急医である一方、感染症専門医でもある。監訳者の島田馨先生、奥住捷子先生、ならびに訳者代表の吉田敦先生のグループは、この原著に込められた思いを忠実に、また若手医師にも理解可能なようにわかりやすく訳されている。訳者の1人、吉田穂波先生は当院で初期研修を受け、その後産婦人科医としての研鑽を積む一方で、Harvard大学公衆衛生大学院で公衆衛生学を習得し、帰国後は産婦人科のみならず、総合診療や災害医療にも関与するなど幅広い活躍をされていて、個人的には実の娘のように思える将来の楽しみな人物である。
 本書の特徴は、救急外来で遭遇する感染症のほとんどが網羅されており、しかもわれわれ救急医が比較的軽視しがちなマイナー領域(口腔、耳鼻、眼)に関しても詳述されていることである。記載の形式も「疫学と病態」に始まり、「鑑別診断」のみならず「入院適応」や応対する医療者側が心得ておくべき「感染対策」まで記載されている。これは一般的な感染症の教科書ではあまりみられないことであり、救急外来に常備しておき、感染症患者1例ごとに本書をマニュアルとして使うのみならず、研修医が症例のサマライズ時にもう一度感染性疾患の概要を理解・整理するためにもたいへん有用と思われる。さらに興味がある場合には、参考文献やおすすめ図書も記載されているので意欲旺盛な学習者も満足がゆくものと思われる。またコラムである「コツとピットフォール」は、上級医が経験則として伝えたいエッセンスがしたためられている。
 救急医療やプライマリケアにかかわる多くの医師が本書を参考にされ、日常診療に奥行きの深さを見出されることを期待したい。
評者● 石松伸一
臨床雑誌外科73巻13号(2011年12月号)より転載

感染症は一部の病態を除けば、そのほとんどが急性炎症である。最初の治療が的確に行われなければ容易に重症化・慢性化する。その点で治療の第一歩が重要であり、『感染症Emergency』という書名に込められた筆者の意図である。
 さまざまな抗菌薬が次々と開発されてきた現在においても、それに対抗する耐性菌の出現により急性感染症は消滅しない。むしろ、生命科学の進歩により易感染性宿主(compromised host)が増加して、感染症治療はより重要な意義をもつようになった。もちろん、こうした複雑な感染症だけではなく、いつものようにいつもの感染が新しい患者に発生する。治療の基本は、正しい抗菌薬を、正しいタイミングで、正しく使うことである。
 本書は76の項目を扱っているが、整形外科関連は、骨・関節感染症9疾患、皮膚・軟組織感染症、小児の整形外科感染症など幅広い。骨・関節感染症には、化膿性関節炎、骨髄炎、脊椎炎などのほかに、「fight bite」や「足底の刺し傷」など、一般診療において注意すべき病態に関しても別項目として扱われている。それぞれの項目ごとに疫学、臨床的特徴、鑑別診断、検査所見と画像所見、治療と予防、合併症と入院適応の小項目について記載があり、疾患によっては「コツとピットフォール」が追加される。図表も豊富であり、四肢表層の感染では普通写真、深部感染ではX線像やMRIなどの多数の画像により疾患の理解を容易にしている。
 特筆されるべきは、感染症ごとに推奨される治療が、具体的な薬剤をあげて、その投与量・投与回数が表示されている点である。表をみるだけで個々の感染症の特徴が把握でき、標準的な治療法が的確に選択できる。たとえば「開放骨折」では、Gustilo分類の説明とともに、typeごとに軟部組織・骨組織の損傷の程度と抗菌薬の処方の実際が示されている。もちろん、本文を熟読することにより理解が深まることはいうまでもない。また、「人工関節の感染」では、まず原因微生物を特定してから抗菌薬の使用を開始すべきとして、安易な抗菌薬使用を戒めている。さらに、その後は、早期の抜去とデブリドマン、二期的なインプラント再挿入をすすめている。いずれにせよ、急性感染症に対する治療のゴールドスタンダードというべき内容を網羅したうえで、外科治療の介入のタイミングとその方法までも言及されており、整形外科領域の内容だけでも本書を座右におくメリットがある。「小児の整形外科感染症」においてもこうした本書の姿勢は貫かれており、経過が早い化膿性関節炎・骨髄炎の手術のタイミングが明確に示されているのはありがたい。
 さらに、術後感染症や破傷風、針刺し事故など、整形外科診療に密接にかかわる感染症やバイオテロリズム、鳥インフルエンザなどに関しても扱われている。また、本書の終盤には「抗菌薬のオーバービュー」、「微生物検査」、「感染予防策」という感染症治療の基本が書かれている。本来総論として先に扱われるべき項目が終盤に出てくるあたりは、緊急治療の記載を優先させた本書の意図が明確に表れている。しかし、であるからといって内容が乏しいというわけではなく、感染症の基本的な診断・治療・予防を身に付けるには、これらを先に通読すべきことはいうまでもない。
 本書は訳本ではあるものの、原書の優れた構成とこなれた和訳とによりたいへんわかりやすい内容になっている。整形外科感染症に対する中途半端な知識を一掃し、現代的で標準的な感染症治療を学ぶうえで格好の教科書といえる。
評者● 大川淳
臨床雑誌整形外科63巻3号(2012年3月号)より転載