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肝臓専門医テキスト改訂第2版

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

編集 : 日本肝臓学会
ISBN : 978-4-524-25987-8
発行年月 : 2016年11月
判型 : B5
ページ数 : 530

在庫なし

定価15,400円(本体14,000円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

肝臓専門医研修カリキュラムに則った目次立ての、日本肝臓学会による公式テキスト。「基礎知識編」、「検査編」、「疾患編」、「治療と予防編」、「行政と肝疾患診療編」の5編から構成され、基礎的な内容から疾患ごとの詳細知識まで、専門医に求められる幅広い情報を網羅。今版では肝疾患診療の進歩に伴う内容の見直しとアップデートを行い、コラム欄も刷新した。肝臓専門医試験受験者のみならず、専門医取得者にとっても最新知見を学ぶのに有用な一冊。

[基礎知識編]
第I章 肝・胆道の解剖と機能
 1.肝の解剖,区域,亜区域
 2.肝の脈管構造
 3.肝臓の構成細胞,zonation
 4.肝細胞の機能
 5.胆道の構造と機能
 6.薬物代謝
 7.アルコール代謝
 8.胆汁分泌機構
第II章 肝障害を惹起するウイルス
 1.肝炎ウイルス
 2.肝炎ウイルス以外のウイルス
第III章 病態生理
 1.ウイルス肝炎の発症機序
 2.ウイルス肝炎の臨床像と慢性化
 3.肝炎ウイルスの感染様式
 4.HBe抗原セロコンバージョンの意義
 5.肝炎の再活性化の機序
 6.急性肝不全の発症機序
 7.肝再生の機序
 8.肝発癌の機序
 9.肝細胞障害機序
 10.黄疸・胆汁うっ滞の発生機序
 11.腹水の発生機序
 12.肝性脳症の病態
 13.門脈圧亢進症の病態
 14.肝線維化の機序
 15.インスリン抵抗性と肝疾患
 16.肝硬変の機能評価法(Child-Pugh分類,肝障害度)
 17.一塩基多型(SNP)の意義と肝疾患診療との関連(IL28B,ITPAなど)
第IV章 肝・胆道の手術療法
 1.肝切除術式
 2.肝切除の適応
 3.胆道再建法
第V章 肝移植
 1.肝移植の適応疾患と適応条件
 2.脳死肝移植の臓器分配(肝移植レシピエントの選択基準)
 3.生体肝移植ドナーの適応基準
[検査編]
第VI章 血液・尿検査
 1.血液生化学
 2.肝炎ウイルスマーカー
 3.免疫学的検査
 4.腫瘍マーカー
  a.α-フェトプロテイン(AFP),レクチン結合型AFP(AFP-L3)
  b.PIVKA-II
  c.CEA(癌胎児性抗原)
  d.CA19-9
 5.線維化関連マーカー
 6.尿ビリルビン,ウロビリノゲン
第VII章 画像診断
 1.放射線検査
  a.腹部単純X線
  b.CT
  c.胆道造影(DIC)
  d.内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)
  e.血管造影
  f.血管造影下CT(CTAP,CTHA)
  g.核医学検査
 2.超音波検査
 3.磁気共鳴画像(MRI)
 4.胆道鏡検査
 5.腹腔鏡検査
 6.肝臓の病理診断
第VIII章 その他の検査
 1.腹水穿刺
 2.腹水一般検査
 3.肝硬度評価法
 4.肥満度/体格指数
 5.経口糖負荷試験,IRI,HOMA-IR,HOMA-β
[疾患編]
第IX章 肝疾患
 1.急性肝炎(A型肝炎,B型肝炎,C型肝炎,D型肝炎,E型肝炎)
 2.急性肝不全,劇症肝炎
 3.慢性肝炎
  a.B型肝炎
  b.C型肝炎
  c.非B非C型肝炎
 4.自己免疫性肝炎
 5.原発性胆汁性胆管炎
 6.原発性硬化性胆管炎
 7.肝硬変(アルコール性,ウイルス性を含む)
 8.門脈圧亢進症
 9.肝性脳症
 10.放射線肝炎(放射線肝障害:RILD)
 11.薬物性肝障害
 12.アルコール性肝障害
 13.肝内胆汁うっ滞
 14.体質性黄疸
 15.脂肪肝
 16.NAFLD
 17.NASH
 18.代謝性肝疾患
  a.糖原病
  b.肝アミロイドーシス
  c.ヘモクロマトーシス
  d.Wilson病
  e.肝性ポルフィリン症
  f.尿素サイクル(代謝)異常症
  g.脂質蓄積症(リピドーシス)
  h.シトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞
 19.その他のウイルス肝炎(EB ウイルス肝炎,サイトメガロウイルス肝炎など)
 20.Reye症候群
 21.肝嚢胞
 22.原発性肝癌
  a.肝細胞癌
  b.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
  c.その他の肝悪性腫瘍
 23.転移性肝癌
 24.肝良性腫瘍
 25.特発性門脈圧亢進症
 26.肝外門脈閉塞症
 27.Budd-Chiari症候群
 28.肝中心静脈肝閉塞症
 29.肝内結石症
 30.肝感染症
 31.全身疾患と肝
  a.甲状腺疾患
  b.肝腎症候群
  c.循環不全
  d.膠原病
  e.血液疾患
  f.糖尿病
  g.消化器疾患
  h.IgG4関連疾患
  i.血球貪食症候群
 32.特発性新生児肝炎症候群
 33.妊娠と肝
第X章 胆道疾患
 1.胆石症
 2.胆道感染症
 3.胆嚢腺筋腫症
 4.胆嚢胆道腫瘍
 5.膵・胆管合流異常
 6.先天性胆道拡張症
 7.胆道閉鎖症
 8.Alagille症候群
第XI章 腹腔疾患
 1.特発性細菌性腹膜炎
[治療と予防編]
第XII章 薬物治療
 1.ウイルス性肝炎に対する薬物治療:抗ウイルス薬
 2.慢性肝疾患に対する肝庇護療法
 3.分岐鎖アミノ酸療法
 4.ステロイド治療・免疫抑制薬治療
 5.分子標的治療薬
 6.癌免疫療法
 7.瀉血療法
 8.予防薬
  a.肝炎ワクチン(A型,B型,E型)
  b.免疫グロブリン製剤
  c.発癌予防薬
第XIII章 栄養療法
 1.肝硬変に対する栄養療法
  a.非蛋白呼吸商(npRQ)
  b.就寝前補食(LES)
  c.分割食
 2.C型肝炎に対する鉄制限食
第XIV章 肝・胆道の特殊治療
 1.経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD),経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)
 2.経皮的膿瘍ドレナージ
 3.肝動脈化学療法(TAI),肝動脈塞栓療法(TAE),肝動脈化学塞栓療法(TACE)
 4.動注化学療法
 5.経皮的エタノール注入(PEI)
 6.経皮的マイクロ波凝固療法
 7.ラジオ波焼灼(凝固)療法(RFA)
 8.内視鏡的治療手技(EST,EPBD,EBD,ENBD)
 9.血漿交換,血液濾過透析療法
 10.放射線療法
第XV章 門脈圧亢進症の治療
 1.食道(胃)バルーンタンポナーデによる止血
 2.食道(胃)静脈瘤硬化療法(EIS)
 3.内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)
 4.バルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)
 5.経皮経肝的門脈塞栓術(PTO)
 6.経頸静脈的肝内門脈-大循環シャント術(TIPS)
 7.経皮的シャント塞栓術
 8.部分的脾動脈塞栓術・脾摘
第XVI章 肝性脳症の治療
 1.肝性脳症の治療
第XVII章 肝移植
 1.肝移植後の合併症
 2.肝移植後の抗ウイルス療法
[行政と肝疾患診療編]
第XVIII章 肝疾患診療に関する病診連携
 1.肝疾患診療連携拠点病院ならびに肝疾患診療ネットワーク
 2.肝疾患治療パス
第XIX章 肝疾患診療に関連する法律,制度
 1.B型肝炎母子感染防止対策
 2.肝炎対策基本法
 3.肝炎治療特別促進事業(医療費助成制度)
 4.改正臓器移植法
 5.身体障害者福祉法
第XX章 感染症法
 1.感染症法
肝臓専門医研修カリキュラム
索引

序文

 わが国の専門医制度では、日本肝臓学会の肝臓専門医はSubspecialty領域専門医に位置づけられ、その総数は2015年度に6,000人を超えました。日本専門医制評価・認定機構が2013年に公表した資料によると、内科系のSubspecialty領域では、肝臓専門医の総数は日本消化器病学会、日本循環器病学会の専門医に次いで3番目に多いことになります。2013〜2015年の3年間でも、1,285名の学会員が肝臓専門医認定試験を受験し、新たな専門医1,012名が誕生しました。多くの都道府県で、肝臓専門医の資格が「肝炎治療特別促進事業」、「ウイルス性肝炎等の重症化予防推進事業」、「身体障害者福祉法による肝臓機能障害認定」などに参画する条件になっています。国民病である肝硬変、肝癌を撲滅するために、肝臓専門医は各地域の医療を支える必須の存在と言えるでしょう。これら社会的な要請が、肝臓専門医の資格を希望する医師増加の要因と考えられます。
 以上の状況を鑑み、日本肝臓学会は2013年3月に「肝臓専門医テキスト」を刊行しました。日本肝臓学会の研修カリキュラムは2012年4月に改訂されました。同テキストはこれに準拠して、肝臓専門医に求められる事項を、「基礎知識編」、「検査編」、「疾患編」、「治療と予防編」、「行政と肝疾患診療編」の5編に分けて網羅しています。多数の学会評議員が、短期間に無報酬で執筆した膨大な原稿を、当時の企画広報委員会が、委員長であった坪内博仁先生を中心にまとめられた大作です。
 しかし、その後の3年間で肝臓病の診療はさらに進歩しました。C型肝炎はdirect-acting antivirals(DAAs)を用いたインターフェロン・フリーの治療で、ほぼ全例でウイルス排除が可能になりました。その一方で、非アルコール性脂肪性肝疾患に起因する肝癌が増加しています。原発性胆汁性肝硬変は原発性胆汁性胆管炎と病名を変更しました。肝不全の治療法も選択肢が広がっています。そこで、日本肝臓学会は2016年に「肝臓病専門医テキスト」を改訂し、第2版を発刊することを決定しました。しかし、初版は完成度が高いことから、前版の執筆者を中心に見直しを依頼し、2014〜2015年度の企画広報委員会委員が分担して査読しました。これら作業の全てに携わった多数の先生に深謝申し上げます。
 本テキストは最近の合格率が80%以下と発表されている日本肝臓学会の肝臓専門医認定医試験に合格するために有用であり、受験する学会員は雑誌「肝臓」に掲載される過去問題とともに、ご活用ください。また、既に肝臓専門医の学会員にも、最近の動向を把握して、診療の質を向上させるために役立つと考えられます。今回の改訂が、わが国における肝臓病診療の均霑化に寄与し、多数の患者さんの利益として還元されることを期待します。

2016年10月
一般社団法人日本肝臓学会企画広報委員会
委員長持田智

 『肝臓専門医テキスト 改訂第2版』が発行された。初版が発行されたのが2013年であり、今回、医療の急速な進歩に伴って3年半後の改訂となった。
 まず手にして感じたのは、2色刷りになって見やすくなった点である。そして、すべての項目がその分野の専門家により事細かに再検討され、最新の情報に基づいたものに改訂された点である。Advanced lectureも旧版にあった多くが文中に移動もしくは削除され、最新の情報を伝える新しいものに変更されている。
 基礎知識編では、Kupffer細胞の項で旧版では「形質転換成長因子β」でこれは何という感じであったのが、「形質転換成長因子β(TGF-β)」と見慣れた略語が加えられている。HBVの生活環のシェーマにHBs抗原が追加され、HBVのuniversal vaccinationの記述も加わった。HBV再活性化も新知見が加えられ、急性肝不全の項にも追加記載されている。肝移植やSNPの項も現況に合わせて改訂されている。
 検査編では、線維化関連マーカーの項にM2BPGiの追加、超音波の項にエラストグラフィの追加と肝硬度評価法の大幅な改訂がなされている。
 疾患編では、PBCの原発性胆汁性胆管炎への病名変更、急性肝不全の概念の変更に伴った診断基準などの大幅な改訂、慢性ウイルス肝炎の治療薬の変化に対応した改訂、自己免疫性肝炎の診断、治療指針の改定、原発性硬化性胆管炎のわが国発の新しい診断基準への変更、肝硬変の項でC型のDAA治療の追加、B型の核酸アナログの変更、合併症治療でのtolvaptanやcarnitineの追加、ミニマル肝性脳症の診断法の追加、薬物性肝障害の項のHLA遺伝子多型の追加、アルコール性肝障害の診断基準と記載の変更、NAFLD/NASHの項の治療薬を含めた改訂とtwo-hit theoryの記載の削除、肝細胞がんの治療アルゴリズムの変更、その他の肝悪性腫瘍の項の細胆管細胞がんと粘液嚢胞腺がんの追加、肝良性腺腫の項の肝細胞腺腫の分類の追加、肝内結石治療フローチャートの変更、IgG4関連疾患の記載の追加、胆石症の項の2013年の全国調査に基づく結果の記載、胆嚢結石、総胆管結石の治療フローチャートの変更、長期予後のデータの追加、急性胆嚢炎と急性胆管炎の診断基準、重症度診断、治療フローチャートの変更がなされている。
 治療と予防編では、ウイルス肝炎の薬物治療は当然のことながら、大幅に改訂されている。ただし、このテキストに記載してあるガイドラインは新薬の発売に伴って常に変更されているので、最新の情報は日本肝臓学会のホームページで確認いただきたい。これに伴い、肝庇護療法の記載は大幅に短縮されている。肝炎ワクチンの項も大幅に改訂されている。血漿交換、血液濾過透析の項も最新のデータを取り入れて改訂されている。肝性脳症の治療の流れ、肝疾患の病診連携と肝疾患治療パスおよびB型肝炎母子感染防止対策の項の改訂、肝炎治療特別促進事業(医療費補助制度)の項の追加がなされている。
 一方で気になる点もある。体質性黄疸の項にあるように、Rotor症候群は抱合ビリルビンの肝取込トランスポターであるOATP1B1とOATP1B3の両者の欠損で起こるのが2012年に発表されているのに、ビリルビン代謝の項ではこれに対応した記述と図の訂正がなされておらず、黄疸の発症機序の項でRotor症候群でみられる抱合ビリルビンの肝取込障害が欠如している。
 以上のように多岐にわたる改訂が多くの学会員の努力により行われているので、ぜひ、これから肝臓専門医を受験する方々だけでなく、すべての学会員に読んでいただきたい内容である。

臨床雑誌内科119巻6号(2017年6月号)より転載
評者●帝京大学医学部内科主任教授 滝川一

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