書籍

便失禁診療ガイドライン2017年版

  • 新刊

編集 : 日本大腸肛門病学会
ISBN : 978-4-524-25896-3
発行年月 : 2017年3月
判型 : B5
ページ数 : 132

在庫あり

定価3,240円(本体3,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

潜在的な患者数が500万人ともいわれる便失禁について、基本的事項から診療の概要をエビデンスに基づき系統立てて解説したガイドライン。意見や判断の分かれるポイントについては補足的にCQを設け、臨床における便失禁診療の疑問に対する指針を示した。一般臨床医から看護師、介護士まで広く役立つ一冊。

I 便失禁の定義
II 便失禁の有症率
III 便失禁の病態と原因
IV 便失禁の発症リスク因子
V 便失禁の臨床的初期評価法
 A.病歴聴取
  1.現病歴
  2.既往歴・併存疾患
 B.直腸肛門部の診察と評価
  1.視診
  2.触診
   a.肛門周囲の触診
   b.直腸肛門指診(膣指診・双指診を含む)
VI 便失禁の臨床評価のための症状スコアとQOL質問票
 便失禁の検査法
 A.生理学的検査
  1.直腸肛門内圧検査
  2.直腸肛門感覚検査
  3.陰部神経伝導時間検査(PNTML)
  4.肛門筋電図検査
 B.形態学的検査
  1.肛門管超音波検査
  2.骨盤部MRI検査
  3.排便造影検査
  CQ1 肛門括約筋断裂はどのように評価するか?
I 便失禁の保存的療法
 A.食事・生活・排便習慣指導とスキンケア
 B.薬物療法
  CQ2 便失禁の薬物療法において,ポリカルボフィルカルシウムとロペラミド塩酸塩はどのように使い分けるか?
 C.骨盤底筋訓練
 D.バイオフィードバック療法
 E.挿入型肛門用失禁装具(アナルプラグ)
 F.逆行性洗腸法(灌注排便法,経肛門的洗腸法)
 G.その他の保存的療法
  1.脛骨神経刺激療法
  2.肛門管電気刺激療法
IX 便失禁の外科治療
 A.肛門括約筋修復/形成術
 B.仙骨神経刺激療法(SNM)
 C.順行性洗腸法(ACE)
 D.有茎薄筋移植術
 E.ストーマ造設術
 F.その他の外科治療
  1.生体物質肛門注入術
  2.人工肛門括約筋(ABS)
  3.磁気的肛門括約筋(MAS)
  4.恥骨直腸スリング術
  5.Ventral rectopexy
  CQ3 肛門括約筋断裂に対して肛門括約筋形成術と仙骨神経刺激療法のどちらを先行すべきか?
X 特殊な病態の便失禁
 A.神経・脊髄疾患(損傷)
  CQ4 脊髄障害における便失禁に仙骨神経刺激療法は推奨できるか?
 B.認知症,フレイル・寝たきり高齢者
  1.認知症
  2.フレイル・寝たきり高齢者
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索引

便失禁診療ガイドラインの刊行にあたって

 昨今、医療の均てん化のために、医療現場において適切な診断と治療を補助することを目的として、種々の疾患に関する予防・診断・治療・予後予測など診療の根拠や手順についての最新の情報をわかりやすくまとめた診療ガイドラインが各学会より作成され、日常診療に使用されています。欧米では便失禁に関する研究・診療が活発に行われ、主要雑誌には総説が多数掲載され、診療ガイドラインも作成されていますが、本邦ではいまだ不十分といわざるを得ません。そこで、診療すべき症状として十分に認識されているとはいえない便失禁に関しても、その意識を高めると同時に便失禁患者の診療に不慣れな医療従事者が安心して診療できる情報を提供するために、本邦における便失禁の診療ガイドライン作成が検討されてきました。
 便失禁は、国際失禁会議において、「自らの意思に反して社会的、衛生的に問題となる状況で液状または固形の便がもれる症状」と定義され、これにガスが加わると肛門失禁と表現されています。また、RomeIIIでは「3ヵ月以上続く再発性で制御不能の便もれ」と定義されています。この便失禁は、日常生活に多大な影響を及ぼし、QOLに大きく影響する症状でありながら、患者自身が検査や治療を求めて医療機関を訪れることをためらい、それゆえにsilent afflictionと呼ばれています。その原因として、良性疾患であることや患者の羞恥心のほかに、保存的・外科的療法で症状が改善・治癒する可能性があるとの認識が患者自身のみならず、医療従事者の間ですら低いためと考えられています。
 日本大腸肛門病学会は多数の肛門科医が外科系、内科系医師とともに参加する唯一の学会であり、便失禁の診療ガイドライン作成に最も適しています。そこで2年前より、便失禁の診療や臨床研究の実績のある国内の医師および臨床看護師に作成委員会のメンバーになっていただき、文献のエビデンスの集約ならびに臨床経験に基づいた臨床現場で役立つ内容の診療ガイドラインを作成してまいりました。本ガイドラインの特徴は、便失禁の定義、病態と原因などの基礎的知識から、問診や診察方法、そして治療法の適応やそのアルゴリズムなどを網羅したものです。大腸肛門病学会ガイドライン委員会と評価委員会の熱心な討議の末にできあがったガイドラインですが、今後の便失禁のエビデンスの蓄積に即して、定期的に改訂を重ね、本邦のゴールドスタンダードとして位置づけられることを願っております。
 最後に、ガイドライン作成委員長をお願いした前田耕太郎先生の本ガイドライン作成に対する強い熱意と、ガイドライン作成委員会、評価委員の先生方への多大なご協力に深謝するとともに、本ガイドラインが諸先生方の日常診療に、少しでも役立てば幸いです。

2017年2月
日本大腸肛門病学会理事長
楠正人