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呼吸器外科テキスト(オンラインアクセス権付)

外科専門医・呼吸器外科専門医をめざす人のために

編集 : 日本呼吸器外科学会/呼吸器外科専門医合同委員会
ISBN : 978-4-524-25858-1
発行年月 : 2016年4月
判型 : A4
ページ数 : 524

在庫僅少

定価14,040円(本体13,000円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

日本呼吸器外科学会「呼吸器外科専門医修練カリキュラム」と「認定試験問題内容」に準拠。学会のテキスト小委員会のもとに編纂され、呼吸器外科専門医をめざす医師の自己学習ならびに専門医取得者の知識更新のために広く活用されることを目的とした。外科専攻医、外科専門医、医学生、外科医をめざす学生・研修医、内科医、呼吸器外科指導医・外科指導医も対象とした必読書。

第I章 総論
 1.呼吸器外科の歴史
 2.保険診療,専門医制度
 3.医療安全,医療倫理
 4.肺の発生
 5.呼吸器外科に関連する解剖と組織
 6.呼吸生理と呼吸機能検査
 7.呼吸器疾患の症候・身体所見
 8.呼吸器疾患の検査
第II章 手術手技
 1.手術器具と使用方法の基本
 2.開胸法(切開法)
 3.胸腔鏡下手術総論
 4.ハイブリッドアプローチ
 5.ロボット支援手術
 6.術前のシミュレーション,術中のナビゲーション
 7.胸腔ドレーン管理
 8.癒着.離,肺瘻処理,被覆法
 9.気管・気管支・肺
  A 肺切除の基本
  B 縦隔リンパ節郭清
  C 肺切除術
  D 気管・気管支形成術
  E 隣接臓器合併切除術
  F 肺尖部腫瘍切除術
 10.胸壁
 11.胸膜
 12.胸郭成形
 13.縦隔
 14.横隔膜
 15.横隔膜弛緩症と横隔神経麻痺に対する手術
 16.トラブルシューティング
第III章 周術期管理と術後合併症
 1.肺切除術の機能的適応
 2.術前管理
 3.術中管理
 4.術後管理
 5.術後合併症
 6.術前・術後の呼吸リハビリテーション
第IV章 一般外科・呼吸器外科に必要な循環器領域の病態
 1.血管走行異常
 2.虚血性心疾患,弁膜症,心筋症
 3.周術期の心不全・不整脈管理
 4.肺性心・肺循環の一般論
 5.急性肺血栓塞栓症
 6.大動脈疾患,その他
 7.抗血栓療法
第V章 肺の非腫瘍性疾患
 1.肺感染症の外科
  A 結核
  B 非結核性抗酸菌症
  C 肺真菌症
  D 寄生虫疾患
  E 気管支拡張症
  F 肺放線菌症
  G 肺膿瘍
 2.嚢胞性肺疾患,その他
 3.その他の外科的肺疾患・血管疾患
  A 先天性疾患
  B 肺血管・その他の疾患
  C 外科的生検
  D その他
第VI章 肺の腫瘍性疾患
 1.原発性肺癌
  A 肺癌の疫学
  B 肺癌の分子生物学
  C 肺癌の組織型分類
  D 肺癌のTNM分類(UICC-7)と病期
  E 肺癌の症状
  F 肺癌の診断法
  G 肺癌の検診
  H 肺癌の外科的治療
  I 肺癌の併用療法
  J 非小細胞肺癌の化学療法/薬物療法
  K 非小細胞肺癌の放射線治療
  L 肺癌の術後フォローアップ
  M 肺癌に対するインターベンション治療
 2.転移性肺腫瘍
  A 転移性肺腫瘍の総論
  B 転移性肺腫瘍の手術適応
  C 転移性肺腫瘍の手術術式
  D 大腸癌肺転移の手術成績と予後因子
  E 大腸癌以外の肺転移の手術成績と予後因子
 3.その他の腫瘍性疾患
  A 良性上皮性腫瘍
  B 間葉系腫瘍
  C リンパ増殖性腫瘍
  D その他の腫瘍
第VII章 胸部外傷・その他
 1.概論
 2.胸郭損傷
 3.肺損傷
 4.気管・気管支損傷
 5.縦隔損傷
 6.横隔膜損傷
 7.気道異物
第VIII章 気管・気管支
 1.概論
 2.気管の先天性異常
 3.食道気道瘻
 4.気管・気管支軟化症
 5.気管支拡張症
 6.気管・気管支結核
 7.気管腫瘍
 8.気管・気管支病変に対するインターベンション治療
第IX章 縦隔
 1.縦隔の解剖
 2.縦隔の炎症
 3.縦隔腫瘍
  A 概論
  B 胸腺上皮性腫瘍
  C その他の縦隔腫瘍
  D 手術
 4.重症筋無力症
 5.胸腺腫に伴う自己免疫疾患(重症筋無力症以外)
 6.縦隔気腫あるいは気縦隔
第X章 胸膜
 1.胸膜の解剖
 2.気胸
 3.血胸
 4.急性膿胸
 5.慢性膿胸
 6.乳び胸
 7.水胸
 8.胸膜腫瘍
第XI章 胸壁
 1.胸壁の解剖
 2.胸壁の変形
 3.胸壁の炎症,感染症
 4.胸壁腫瘍
 5.多汗症
第XII章 横隔膜
 1.横隔膜の解剖
 2.横隔膜ヘルニア
 3.横隔膜弛緩症
 4.横隔膜腫瘍
 5.その他の横隔膜疾患
第XIII章 肺移植
 1.概論
 2.適応
 3.術式
 4.肺保存液
 5.拒絶反応と免疫抑制
 6.術後合併症
第XIV章 緩和ケア
 1.概論
 2.各論:癌疼痛コントロール,緩和ケアの実際
 3.指針
索引



 このたび『呼吸器外科テキスト〜外科専門医・呼吸器外科専門医をめざす人のために〜』が刊行された。平成15年(2003年)から呼吸器外科専門医認定試験が始まり、2016年3月現在約1,400名の呼吸器外科専門医が活躍している。この専門医試験問題の一部はWEB 上で公開されているが、呼吸器外科専門医を目指す方々にとっては、単なる問題集よりも、基本から応用にわたる幅広い知識の供給源としての教科書、そして試験のガイドラインともいえるような内容も求められていると判断し、本書を作成することとなった。そのため本書は、呼吸器外科専門医試験を受験する医師の学習目標を提示することを想定しているが、内容からは内科医、外科専門医を目指す専攻医、専門医資格を取得したあとの医師(外科専門医や呼吸器外科専門医)の知識更新やレベル向上のため、さらには医学生も手にとって当該分野の知識を学習していただくことを大いに期待している。
 以上の経緯より、特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会(以下、本学会)内にテキスト小委員会が組織され、平成26年(2014年)5月より本書作成に向けて編纂を開始した。執筆者は、本学会員として活躍している方々にそれぞれの専門的な立場からお願いした。また、循環器系や放射線治療などの分野では本学会以外の専門家のご協力をいただいた。このように、本書の作成にかかわっていただいた大勢の皆様の献身的なご協力とご厚意に厚く御礼申し上げる。また、発刊までにご協力をいただいた本学会事務局、株式会社南江堂の関係各位に感謝の意を申し上げる。

 本書では、利用する方々の利便性を考え、下記のような特徴を持たせた。
 ○要点:各項目の「キーワード」に沿って、知識の到達目標を「要点」として簡潔に箇条書きとした。
 ○キーワード:各項目内に必要と判断した内容のうち、キーワードを整理し記載した。
 ○学習時の参考のため、各項目にレベルAからCの3段階の表示を行った。なお、レベルAは基礎知識レベル、レベルBは実施・理解・活用できる知識レベルで専門的内容を概略理解している、そして、レベルCは専門的知識で、呼吸器外科専門医や指導医レベルを示す。
 ○「サイドメモ」として専門医試験レベルあるいは標準的治療などを超えた話題や新たな知見を簡潔に紹介した。
 ○本書による学習者、外科専門医試験受験者、そして呼吸器外科専門医試験受験者のために、各章の末尾に「復習ドリル」を設け、知識の確認など学習の補助とした。

 最後に、本書がさらに充実したものになるよう、ご批判、ご意見をお願い申し上げる次第である。今後、呼吸器外科分野や関連分野の進歩に対応して、改訂などを学会として推進していただくことを期待する。

2016年3月
日本呼吸器外科学会 テキスト小委員会 委員長
佐藤之俊

 本書は、呼吸器外科専門医が具備しなければならない基本的要件を呼吸器外科学会の立場から提示したテキストである。呼吸器外科専門医とはどのようなものであるべきか、呼吸器外科を専門とする医師たちの考え方、患者が呼吸器外科専門医に求めるもの、国や厚生労働省の方針などさまざまな思惑があり、これを云々し唯一の結論を導き出すことはむずかしい。ただ、現在すすめられている呼吸器外科専門医制度がどのような歴史的背景から生まれてきたかを理解すれば、期待される呼吸器外科専門医像は自ずと明らかになる。すなわち呼吸器外科専門医は、「呼吸器外科医が通常扱う手術のほとんどすべてを安全に施行する能力があり、さらに医師としての高潔な倫理観をもつこと」と理解される。
 近年、医療機器の長足の進歩に伴い、検査結果のみで疾患や病態を把握しようとする傾向がみられる。確かに、検査データは正確な診断を下すために欠かせない。しかし、検査ばかりに頼っていたのでは新たな疾患や病態を発見することはできない。病気は一つ一つ異なり、一つとして同じものはない。既往歴や現病歴を十分に聴取し、身体所見を注意深く採取することによってはじめて早期診断や新疾患の発見が可能となる。したがって、検査のあり方を再考する必要がある。
 本書の中核をなすのが手術手技、手術適応、周術期管理と術後合併症である。手術器具の説明や使用法に始まり、開胸法、閉胸法、癒着剥離法、葉間処理法、血管処理法、気管・気管支処理法、リンパ節郭清法、肺摘除法、肺葉切除法、区域切除法、隣接臓器合併切除法、胸壁・横隔膜・縦隔手術など、呼吸器外科手術のスタンダードとなる術式が網羅されている。次に、呼吸器外科手術の中心的存在となった胸腔鏡手術について、その適応、危険性、合併症などとともに、胸腔鏡手術で用いられる特殊な器具についての説明ならびにその使用法が記載されている。また、トラブルシューティングとその対処法、さらに胸腔鏡手術を安全にすすめるための術前シミュレーションや術中ナビゲーションが記載されており、あらためて胸腔鏡手術の進歩に驚かされる。
 手術手技と同様に重要なのが手術適応、周術期管理、術後合併症である。手術では技術的な問題にばかり目がいくが、これは正しくない。手術の成否を左右するのは、周術期管理や術後合併症を含めた手術適応であるといっても過言ではない。「手術は順調に行われたが、全身状態や呼吸機能が非常にわるかったため、術後立ち直ることができず死亡した」ではまったく意味がない。さらにやっかいなのは、術者の技量、設備の充足状況、メディカルスタッフの能力などにより術後経過が異なってしまうことである。患者のリスク評価を十分に行い、術者の能力や術中・術後管理体制、さらには術前・術後リハビリテーションの整備状況などの総合力を勘案し、手術適応を決めなければならない。
 各論では先天性疾患、非腫瘍性疾患、腫瘍性疾患、胸部外傷、気管・気管支疾患、縦隔疾患、胸壁疾患などに関する臨床像、診断方法、治療法などが簡明に記載されている。これらは呼吸器外科専門医が知らなければならない必須の疾患である。また、最後に緩和ケアが紹介されている。患者が穏やかに死に臨めるよう配慮することは、医療の一部であることを認識すべきである。
 以上、本書は呼吸器外科専門医のあるべき姿ならびに具備しなければならない要件を詳細に具体的に説明している。呼吸器外科専門医をめざす若手医師にとってはもちろん、呼吸器外科専門医を更新しているベテランにとっても必読の書となっている。しかし、医療の進歩は急である。多くの呼吸器外科専門医が納得でき、しかも、時代の変化に対応した新しい内容が組み込まれるよう、今後とも改編の努力を続けていただきたい。

胸部外科69巻11号(2016年10月号)より転載
評者●埼玉県央病院長/呼吸器外科学会名誉会員 蘇原泰則