書籍

研修医・指導医のための呼吸器疾患診断Clinical Pearls

編著 : 宮城征四郎/藤田次郎
ISBN : 978-4-524-25744-7
発行年月 : 2015年10月
判型 : A5
ページ数 : 254

在庫あり

定価4,536円(本体4,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

実臨床で活躍するエキスパート達が長年培った知識と経験から、呼吸器疾患診断の基本を丁寧かつ実践的に解説。身体所見から、胸部X線・CTによる鑑別診断、グラム染色・バイオマーカーの活用、気管支鏡・呼吸器能検査等の各種検査までカバー。自身の“哲学”から生まれた「格言(Clinical Pearls)」を随所にちりばめた、指導医にもオススメの一冊。

第1章 指導ならびに学びの姿勢
 A 研修制度上の諸問題
 B 研修医に問われるもの
 C 初期研修に求められる基本的研修
 D 指導医の対応
 E 指導医による回診の仕方
 F 症例検討会における研修医のプレゼンテーションの順序と心得
第2章 問診
 A 問診について
 B 身体所見について
第3章 バイタルサイン
 A バイタルサインの病態生理学的解釈
第4章 身体所見のとり方
 A 視診
 B 触診
 C 打診
 D 聴診
第5章 グラム染色
 A 呼吸器疾患におけるグラム染色
 B グラム染色,その前に
 C 塗抹検査
 D グラム染色を活かすポイント
 E グラム染色の限界
 F スメア室の整え方
第6章 バイオマーカー
 A 炎症マーカー
 B 呼吸器感染症マーカー
 C 自己免疫疾患
 D 腫瘍マーカー
 E アレルギー疾患のマーカー
 F 胸水マーカー
 G その他のマーカー
第7章 胸部単純X線写真
 A 読影の基本−正常であることの確認:何がどのように写っているのか?
 B 異常の発見
 C 胸部単純X線写真で診断すべき(診断可能な)common disease
第8章 胸部CT
 A 胸部CTの撮像法
 B 呼吸器疾患のCT読影に必要な解剖
 C 限局性肺疾患のCT読影のプロセス
 D びまん性肺疾患のCT読影のプロセス
 E CTによる生検手技,部位の決定
第9章 呼吸器内視鏡(気管支鏡)
 A 気管支鏡検査(診断目的)の適応・禁忌・合併症
 B 気管支鏡検査の準備
 C 前処置・咽頭喉頭麻酔
 D 気管支内観察
 E 肺末梢病変への気管支鏡の誘導
 F ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(endobronchial ultrasonography using a guide sheath:EBUS-GS)
 G EBUS-TBNA(EBUS guided transbronchial needle aspiration)
 H 中枢気道病変に対する白色光観察,蛍光気管支鏡,narrow band imagingによる診断と治療
 I 中枢気道に対するEBUS
 J 気管支ナビゲーション
第10章 血液ガス分析・呼吸機能検査
 A 血液ガス分析
 B 呼吸機能検査
第11章 文献の調べ方・論文の書き方
 A 文献の調べ方
 B 論文の書き方
索引

序文

 呼吸器疾患は、感染症からアレルギー疾患、閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、肺癌まで非常に多彩であり、それらを的確に診断するためにはさまざまな手法を駆使する必要がある。具体的には問診・聴診・身体所見の取得から始まり、胸部X線・CTにより鑑別診断を絞り込む。病態把握のためにはグラム染色やバイオマーカーの活用、気管支鏡や呼吸機能検査の実施も重要となる。
 以上のような背景から、私が日本呼吸器学会の臨床諸問題部会長であった際、第54回日本呼吸器学会学術講演会(2014年、広島)において、シンポジウムとして「研修医(非専門医、若手医師も)を対象とした呼吸器内科教育セミナー」を企画した。この企画には非常に多くの若手医師および指導医が集まり、熱心に聴講していただいた。学会会場にて、南江堂より本シンポジウムの内容を骨格とした本を企画したいとのご提案をいただいた。このような経緯で、本書はシンポジウムの内容をもととし、さらに呼吸器診断に必要となる項目を追加したものである。
 本書で工夫した点としては、(1)呼吸器疾患の診断のための各手法について、その領域のエキスパートが実践的な内容を解説したこと、(2)解説において、とくに重要かつ役立つ内容は“Clinical Pearls”という見出しをつけ、暗記できるくらいの短いフレーズにまとめて随所にちりばめたこと、(3)写真・図(イラスト)・表を多用し、ビジュアル的にも理解しやすいものとしたこと、などがあげられる。
 共同編集者である群星沖縄臨床研修センターの宮城征四郎先生には「第1章指導ならびに学びの姿勢」、および「第3章バイタルサイン」をご執筆いただいた。お忙しい宮城先生から貴重な原稿をいただけたことに、心から感謝している。また私自身も、「第6章バイオマーカー」と「第11章文献の調べ方・論文の書き方」を執筆させていただいた。その他の原稿も、第一線で活躍する先生方にご執筆いただいたことにより、充実した内容が揃ったと自負している。
 本書の目的は、呼吸器疾患の診療に役立つ実践的な内容を盛り込むことにあった。ただし、症例の理解を深め、かつ日々の臨床にメリハリをつけるためには、文献を調べ、また自身の経験を論文としてまとめることの重要性を改めて強調したい。
 本書が呼吸器疾患の診療に携わる若手医師、および指導医に役立つことを心から願っている。

2015年9月
藤田次郎

 最初に本書を手にしたとき「研修医・指導医のための」と銘打ってあり、どのような読者層を想定したものか戸惑ったが、読むとこの副題に偽りがないことがすぐにわかる。タイトルになっている「Clinical Pearls」は診療現場で役立つ実践的なものでなければならないが、暗記できる短いフレーズで随所にちりばめられ、一読し目的を確かに達成している印象を受けた。診療現場ではエビデンスは確かに重要だが、エビデンスがない部分での診療が求められることは少なくない。その意味において、本書はアートとサイエンスの部分が程よく混じっている。
 第1章では学びの姿勢として研修医に問われるものは、そのまま指導医に突き付けられた要件とも読み替えることができ、併せて「指導医の対応」に示される群星ガイドブックの「良き指導医12ヶ条」は指導医にとって座右の銘とすべき内容である。「専門教育のなかでも狭い専門領域のみを学ぶ傾向を忌避すべし」、「すべての呼吸器疾患を扱うことができる呼吸器ジェネラリストを目指すべき」などの真に指導医に求められる姿勢が心に残る。
 第2章で「若い人は一元的にとらえ、高齢者は複数の病態がからんでいる可能性」を強調している。著者の豊富な臨床経験から導き出されたもので、教科書には現れないまさに「Clinical Perl」というべきものであり、経験値を形式知に昇華させた本書の真価といえる。第4章の「閉塞性肺疾患患者の呼吸の疑似体験」は病態を学ぶうえでも有効な方法であり、「ナイス!」といいたい。
 個人的には「第7章 胸部単純X線写真」は、もっとも勉強になった箇所である。「取り敢えずCT」に流れてしまいがちな日本の医療文化だが、「なぜこのような状況においても単純X線がなくならないのか」は説得力があり、「CTという前に、3分間だけ胸部単純X線写真をながめてみる、その読影は高度に知的なクイズ」というくだりには拍手を送りたい。肺縦隔の境界線について「必ず確認すべき」、「少し気にかけておくべき」、「あまり気にしなくてもよい」と重みづけを行うことで、研修医が単純X線の読影が容易になるのはもちろんのこと、教える指導医にも大変役立ち、私にも知識の再整理になった。著者に感謝である。次章の「胸部CT」でびまん性肺疾患の理解のための小葉構造とCTとの対比に著者の真骨頂が現れており、その後の読影プロセスの理論的流れがよくわかるように構成されている。この小葉構造の理解が困難なために、びまん性肺疾患の診断に苦手意識をもっている多くの医師への手助けになるであろう。
 「第9章 気管支鏡検査」では、標的病変までの気管支ルート同定のための枝読みを強調している。近年仮想気管支鏡ナビゲーションが容易となったが、反面枝読みがおろそかになっているという現実があり、仮想気管支鏡ナビゲーションが使えない状況でも気管支ルートを同定できることの必要性を日々感じている。さらにEBUS-TBNAを始めた医師たちがぶつかるハードルをクリアするための外筒法の伝授など現場での問題点を熟知した配慮も行き届いている。「第10章 血液ガス・呼吸機能検査」では、これだけで本1冊になる内容を初心者にわかるようにきわめてコンサイスにまとめられている。最終章の論文の書き方は自ら論文を執筆する者から指導する者、さらに投稿された論文を査読する者にまで参考になる。
 このように本書は初期研修医から、専門研修を始めた後期研修医、指導医といった異なる読者それぞれに対応でき、さらに呼吸器のなかでサブスペシャリティを有するベテランにも、自分の領域以外を俯瞰するという生涯教育としての価値がある。読むことをお勧めしたい一冊である。

臨床雑誌内科118巻1号(2016年7月号)より転載
評者●亀田総合病院呼吸器内科主任部長 青島正大