書籍

造血幹細胞移植診療実践マニュアル

データと経験を凝集した医療スタッフのための道標

: 神田善伸
ISBN : 978-4-524-25724-9
発行年月 : 2015年3月
判型 : A5
ページ数 : 338

在庫あり

定価5,184円(本体4,800円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

造血幹細胞移植診療全体をカバーしたマニュアルの決定版。本領域のエキスパートである著者が、事前準備・移植の実際・移植後の合併症管理・各疾患別の診療の実際に加え、本領域の論文の読み方と統計のポイントを、膨大なエビデンスと自らの豊富な経験に基づいて丁寧に解説。造血幹細胞移植に携わる全スタッフ必携の一冊。

略語一覧
第I章 移植実施の決定(移植適応の判定〜ドナー選択)
 A.造血幹細胞移植の原理と流れ
 B.自家移植と同種移植の比較
 C.造血幹細胞移植の流れと合併症
 D.移植適応の考え方
 E.HLA検査
 F.同種造血幹細胞移植のドナーの選択
 G.骨髄移植と末梢血幹細胞移植の比較
第II章 移植の準備(移植計画の決定〜幹細胞輸注)
 A.移植の準備と移植コーディネーター
 B.医療費
 C.ドナーの準備
 D.患者の準備
 E.移植前処置の決定
 F.妊孕性の温存
 G.急性GVHD 予防法の決定
 H.無菌管理・移植後早期感染症予防法の決定
 I.輸血対策の決定
 J.栄養管理の決定
 K.心理的サポート
 L.リハビリテーション
 M.幹細胞輸注
第III章 移植後合併症の管理
 A.前処置関連毒性(RRT)の評価と対応
 B.移植後の疼痛管理
 C.移植後早期の細菌・真菌感染症対策
 D.生着不全
 E.キメリズム解析
 F.生着症候群,生着前免疫反応
 G.急性GVHDの診断と治療
 H.移植関連血栓性微小血管症(TA-TMA)
 I.移植後中後期の感染症対策
 J.慢性GVHDの診断と治療
 K.非感染性肺合併症
 L.晩期合併症対策
 M.移植後再発の予防,治療
第IV章 各血液疾患に対する造血幹細胞移植
 1 急性骨髄性白血病(AML)[急性前骨髄球性白血病(AML M3)を除く]
  A.予後予測因子
  B.標準化学療法
  C.第一寛解期AMLにおける造血幹細胞移植の適応
  D.第一寛解期AMLにおける薬物療法と造血幹細胞移植を比較した臨床決断分析
  E.第一寛解期AMLに対する自家造血幹細胞移植
  F.再発後の治療
  G.ミニ移植
  H.急性前骨髄球性白血病(APL)
 2 急性リンパ性白血病(ALL)
  A.予後予測因子
  B.標準化学療法
  C.第一寛解期ALLに対する造血幹細胞移植の適応
  D.第一寛解期ALLにおける薬物療法と造血幹細胞移植を比較した臨床決断分析
  E.第一寛解期ALLに対する自家造血幹細胞移植
  F.再発後の治療
  G.ミニ移植
  H.第一寛解期Ph染色体陽性ALLに対する造血幹細胞移植
  I.Ph染色体陽性ALLに対するミニ移植
 3 骨髄異形成症候群(MDS)
  A.予後予測因子
  B.移植以外の治療
  C.同種造血幹細胞移植の適応
  D.造血幹細胞移植前の芽球減少治療の妥当性
  E.自家移植
  F.ミニ移植
 4 慢性骨髄性白血病(CML)
  A.予後予測因子
  B.薬物療法
  C.造血幹細胞移植の適応
  D.ミニ移植
 5 悪性リンパ腫(ML)
 5-1.びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)
  A.予後予測因子
  B.薬物療法
  C.自家移植の適応
  D.自家移植におけるBMTとPBSCTの比較
  E.同種移植の適応
  F.ミニ移植
 5-2.濾胞性リンパ腫(FL)
  A.予後予測因子
  B.化学療法
  C.自家移植の適応
  D.同種移植の適応
  E.ミニ移植
 5-3.ホジキンリンパ腫(HL)
  A.予後予測因子
  B.自家移植の適応
  C.同種移植の適応
  D.ミニ移植
 5-4.末梢性T細胞性リンパ腫(PTCL)
 5-5.マントル細胞リンパ腫(MCL)
 5-6.成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)
 5-7.そのほかのリンパ腫
 6 多発性骨髄腫(MM)
  A.予後予測因子
  B.薬物療法
  C.自家移植
  D.MM患者からの自家末梢血幹細胞採取
  E.同種移植とgraft-versus-myeloma(GVM)効果
  F.ミニ移植
 7 再生不良性貧血(AA)
  A.重症度分類
  B.薬物療法
  C.同種造血幹細胞移植
  D.免疫抑制療法と同種造血幹細胞移植の比較
第V章 造血幹細胞移植関連の論文の読み方と統計
 A.造血幹細胞移植領域の統計解析の特殊性
 B.生存解析の定義
 C.競合イベント
 D.時間依存性変数
 E.臨床決断分析
 F.リスク分類
 G.交絡
 H.多変量解析
 I.交互作用
 J.実際の統計解析の流れ
巻末付録
 1.ドナーチェックリスト
 2.移植患者チェックリスト(一般的な検査項目を除く)
 3.症状,身体所見,検査所見などに基づく鑑別診断リスト(頻度の高いもの)
 4.日本人における体表面積表
 5.抗微生物薬の腎障害時の減量基準
索引

序文

 本書は造血幹細胞移植の診療現場で、医師のみならずさまざまな職種の医療スタッフの皆様に使用していただくことを目的として執筆しました。造血幹細胞移植についての教科書的な書籍は目にしますが、日常診療における具体的な薬剤選択や投与量まで言及しているものは少ないと思います。一方、造血幹細胞移植に従事する医療スタッフの多くは既に一般内科、血液内科の領域で経験を積み重ねていることが想定されますので、単なる診療マニュアルでは物足りないのではないかと考えました。そこで、本書には背景となる考え方、文献的根拠を紹介して、さらに診療現場での細かな注意事項を含めて網羅するように意識して執筆しました。
 本書は単独執筆です。参考文献の数をみてもおわかりいただけると思いますが、やはり膨大な作業となりました。なぜ、その作業にあえて挑み続けるのでしょう?狙いは巷で噂されている印税豪邸でしょうか?いや、印税目当てなら書籍の編集だけを担当して執筆は分担執筆者に依頼する方がはるかに効率的ですし、そもそも、刊行数に限界のある医学書の印税収入では、豪邸どころか(少し立派な)犬小屋ぐらいが限界です。では、単独執筆を推し進めている原動力は何なのでしょう?ひとつには移植の決定から移植後の合併症管理まで、あらゆる点について自分の考えを伝えたいというこだわりです。これは布教目的といってもいいのかもしれません。もうひとつの目的は備忘録としての役割です。日頃から数多くの医学専門誌のTOC(Table of contents)サービスを利用し、無数の論文をチェックしてPDFファイルをPCに保管しています。それらの論文から得られる知識を整理して書籍としてまとめることによって、自分自身にとっても世界で最も役立つ一冊となっています。
 しかし、移植診療はいわゆるエビデンスだけでは決断できない部分も多いのが実状です。そのような中で、私が重要視していることは物事をシンプルにしていくことです。移植診療における日々の細かな変化にあわてて介入を繰り返すことで病態をさらに複雑化して失敗するような状況をよくみかけます。確かに移植は一般化学療法と比較すると変化が早いのですが、それでも少し経過をながめる余裕はあることが多いと思います。移植後のさまざまな嵐のような合併症は自然と通り過ぎることもあります。しかし、自信を持って経過をながめるためにはやはり経験が必要であり、その判断については個人的な感覚を重視して記述しました。
 さて、前述したように網羅的に内容を欲張ったところ、予想通り分厚い本となってしまいました。重量も増加したため、本書を白衣の左ポケットに入れて歩くと、いつのまにか左の壁にぶつかってしまいます。そのような場合は右のポケットに『血液病レジデントマニュアル(第2版)』(医学書院、2014年)を入れることをお勧めします。ちょうどバランスがとれて、王道の真ん中を突き進むことが可能となります。
 なお、本書は2014年12月の時点で最新の情報を元に記載したつもりですが、あらゆる分野において完全を期すことは難しく、ご自身でも文献、薬剤添付文書などを必ずご確認いただけますようお願い申し上げます。また、日本国内で承認されている適応と異なる記載が含まれていることをご了承ください。

平成27年2月
自治医科大学附属病院・附属さいたま医療センター血液科
神田善伸

 本書は、自治医科大学附属病院・附属さいたま医療センター血液科 神田善伸教授単独執筆の造血幹細胞移植診療のまさにバイブルともいえる珠玉の一冊である。
 造血幹細胞移植領域の第一人者である著者が造血幹細胞移植診療全体をカバーしたマニュアルの決定版といえる。本書は医師のみならず造血幹細胞移植の診療現場に従事するさまざまな医療スタッフにも使用してもらえるように執筆されている。そのため、内容は日常診療における具体的な薬剤選択や投与量にも言及している。また、それらの背景となる考え方や文献的根拠の紹介もあり、実際の移植診療現場での細かな注意事項も含めて網羅的に記載されている。
 その内容は「移植実施の決定」から始まり、「移植の準備」、「移植後合併症の管理」、そして「各種血液疾患に対する造血幹細胞移植」、最後に「造血幹細胞移植関連の論文の読み方と統計」(著者作成の無料統計ソフトEZRの解説を含む)、と造血幹細胞移植に携わるすべてのスタッフが必要とする情報を膨大なエビデンスとみずからの豊富な臨床経験に基づいて丁寧にかつ詳細に解説している。
 これだけの膨大な作業を著者単独で行ったことは驚嘆に値するが、その理由について著者は序文のなかで「移植の決定から移植後の合併症管理まで、あらゆる点について自分の考えを伝えたいこだわりです」と説明している。と同時に移植診療の現場ではいわゆる文献的なエビデンスだけでは解決できない部分も多いのが実情であり、その点に関して著者は「私が重要視していることは物事をシンプルにしていくことです」と述べている。つまり嵐のような移植後の合併症に際して自信をもって経過観察していくには経験が必要であり、その判断については個人的な感覚が重要ということである。このように、本書はただ単に膨大な文献的知識・エビデンスを羅列するのではなく、著者の豊富な臨床経験に裏打ちされた診療の「コツ」を伝授している。
 あまりにも素晴らしいマニュアルなのでますます神田教の信者が増え、そのお布施?(印税)によって豪邸が建てられることになるかと思いきや、著者いわく少し立派な犬小屋ぐらいが限界とのことなので余計な勘ぐりは不要と思われる。
 最後に、移植スタッフの1人でも多くの方が本書を有効に利用されることによって、移植医療を受ける患者やその家族に幸せがもたらされることを祈念する。

臨床雑誌内科117巻1号(2016年1月号)より転載
評者●東京女子医科大学血液内科学講座主任教授 田中淳司