書籍

運動器の痛みプライマリケア

頚部・肩の痛み

編集 : 菊地臣一
ISBN : 978-4-524-25399-9
発行年月 : 2010年4月
判型 : B5
ページ数 : 316

在庫あり

定価5,724円(本体5,300円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

局所の痛みにとどまらない難解な運動器の痛みを、トータルペイン・パーソナルアプローチの観点からやさしく解説。“肩こり”“むち打ち”など頚部・肩の痛み診療における必須の知識を、重篤な疾患の鑑別診断から治療、さらには日常生活やリハビリテーション指導、心理的・社会的側面からのアプローチ、エビデンスを超えた独自の治療上のコツまで余すところなく解説。

I 痛みについて
 1 運動器のプライマリケア─careを重視した全人的アプローチの新たな流れ
 2 運動器の疼痛をどう捉えるか─局所の痛みからtotal painへ、痛みの治療から機能障害の克服へ
 3 疼痛─診察のポイントと評価の仕方
 4 治療にあたってのインフォームド・コンセント─必要性と重要性
 5 各種治療手技の概要と適応
  a. 薬物療法
   1)医師の立場から─薬効からみた処方のポイント
   2)薬剤師の立場から─処方箋のチェックポイント
  b. ペインクリニックのアプローチ
  c. 東洋医学的アプローチ
  d. 理学療法
  e. 運動療法
  f. 精神医学(リエゾン)アプローチ
  g. 集学的アプローチ
 6 運動器不安定症─概念と治療体系
 7 作業関連筋骨格系障害による痛み

II 頚部・肩の痛みについて
 1 診療に必要な基礎知識─解剖と生理
  a. 頚部
  b. 肩
 2 診察手順とポイント─重篤な疾患や外傷を見逃さないために
 3 画像診断─価値と限界
  a. 頚部
  b. 肩
 4 手術─勧める時機と症状/所見
  a. 頚部
  b. 肩
 5 各種治療手技の実際と注意点
  a. 薬物療法
  b. 理学療法、運動療法
  c. ペインクリニック
  d. 徒手療法
   1)AKA-博田法
   2)カイロプラクティック
   3)オステオパシー
  e. 東洋医学的アプローチ

III 頚部の主な疾患や病態の治療とポイント─私はこうしている
 1 いわゆる「寝違え」
 2 外傷性頚部症候群(むち打ち関連障害)
 3 頚部脊椎症に伴う頚部痛
 4 頚部神経根障害
 5 頚部脊髄障害
 6 頸肩腕障害
 7 関節リウマチに関連する頚部痛

IV 肩の主な疾患や病態の治療とポイント─私はこうしている
 1 いわゆる「肩こり」
 2 石灰沈着性腱板炎
 3 いわゆる「五十肩」
 4 インピンジメント症候群
 5 腱板損傷
 6 動揺性肩関節症
 7 上腕二頭筋長頭腱炎
 8 投球障害肩
 9 複合性局所疼痛症候群(CRPS)、肩手症候群
  a. 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
  b. 肩手症候群
 10 胸郭出口症候群

索引

腰痛、肩こり、そして関節痛など、運動器の痛みは国民に多い愁訴のオンパレードである。この傾向は高齢化の進展とともにますます顕著になっていくものと予想される。
 運動器の痛みは、支持と運動という相反する機能を持つがゆえの過重な負担の結果であることが少なくない。それだけに、その診療にあたる医療従事者は生体力学的知識を持つことが求められる。それに加えて運動器の痛みには、従来我われが認識していた以上に早期から、心理・社会的因子が深く関与していることも明らかになってきた。当然、適切な診療を行うためにはこれらの知識も必要である。このような知見の集積から、近年は腰痛を代表とする運動器の痛みを、単なる「解剖学的異常」から「生物・心理・社会的疼痛症候群」として捉えようという動きが始まっている。つまり、運動器の痛みを「local pain」としてではなく「total pain」として捉えて診療にあたるということである。
 疼痛には、器質的、そして機能的な因子が複雑に絡み合っていることがわかってきた。運動器の疼痛、特に患者さんの多い慢性疼痛の診療には、それに応じた診療体系が求められる。それはまず、「cure」だけでなく「care」という視点の導入である。次に多面的、集学的アプローチの導入である。わが国の医療システムや患者の立場を考えると、1人の運動器の疼痛診療従事者が中心となって診療を進めていくのが妥当といえる。そのためには、自分の専門領域の知識、技術、そしてknow‐howのみならず、学際領域でのそれらの習得も必要になってくる。これにより、「何を治療するか」ではなくて、「誰を治療するか」という視点を持った診療が可能になる。
 運動器の痛みのプライマリケアを部位別に取り上げていくというのがこのシリーズの構成になっている。しかし、運動器の痛みのプライマリケアにあたっては、部位に関係なく患者と医療従事者の信頼関係の確立が死活的に重要である。何故ならば、EBM(evidence‐based medicine)が教えてくれたのは、皮肉にもNBM(narrative‐based medicine)の重要性だからである。医療従事者と患者との信頼関係の確立により、患者の診療に対する満足度はもとより、治療成績も向上することはよく知られている。また、信頼関係があればこそ、長期にわたるcareも可能になる。
 本シリーズは、近年の運動器の痛みを診療するうえで必要な新知見を総論に、各論には部位別にみた最前線の診療の提示という構成にした。総論のうち「I 痛みについて」はシリーズ共通の内容である。執筆者には、第一線の診療現場で活躍している先生方にknow‐howを含めた実践的診療の記載をお願いした。本巻は、診療現場で遭遇することの多い「頚部」と「肩」の痛みを一冊にまとめた。このシリーズが、運動器の痛みのプライマリケアの向上に役立ち、結果的に運動器の痛みの診療に従事している人々に対する国民の信頼が高まることを期待している。
2010年3月
菊地 臣一