書籍

運動器の痛みプライマリケア

腰背部の痛み

編集 : 菊地臣一
ISBN : 978-4-524-25369-2
発行年月 : 2009年6月
判型 : B5
ページ数 : 280

在庫あり

定価5,400円(本体5,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

腰痛、肩こり、関節痛に代表される運動器の痛みの新しい概念と診療の最前線をやさしく解説したシリーズの腰背部編。部位別の分冊とし、運動器の痛みを単に医学的な損傷としてではなく、様々な要因によって生じる生物・心理・社会的疼痛症候群(トータルペイン)として捉え、機能的・集学的治療としてのプライマリケアにおける評価・診断・治療の要点を詳細に解説。運動器の痛み診療に携わる医療者すべてに必携の書。

I 痛みについて
 1.運動器のプライマリケア−careを重視した全人的アプローチの新たな流れ
 2.運動器の疼痛をどう捉えるか−局所の痛みからtotal painへ、痛みの治療から機能障害の克服へ
 3.疼痛−診察のポイントと評価の仕方
 4.治療にあたってのインフォームド・コンセント−必要性と重要性
 5.各種治療手技の概要と適応
  a.薬物療法
   1)医師の立場から−薬効からみた処方のポイント
   2)薬剤師の立場から−処方箋のチェックポイント
  b.ペインクリニックのアプローチ
  c.東洋医学的アプローチ
  d.理学療法
  e.運動療法
  f.精神医学(リエゾン)アプローチ
  g.集学的アプローチ
 6.運動器不安定症−概念と治療体系
 7.作業関連筋骨格系障害による痛み

II 腰背部の痛みについて
 1.診療に必要な基礎知識−解剖と生理
 2.診察手順とポイント−重篤な疾患や外傷を見逃さないために
 3.画像診断−価値と限界
 4.手術−勧める時機と症状/所見
 5.各種治療手技の実際と注意点
  a.徒手療法
   1)AKA-博田法
   2)オステオパシー
   3)カイロプラクティック
   4)McKenzie法
  b.ペインクリニック
  c.東洋医学的アプローチ
  d.理学療法
  e.運動療法

III 主な疾患や病態の治療とポイント−私はこうしている
 1.急性腰痛
  a.治療の実際(1)−AKA‐博田法を中心に
  b.治療の実際(2)
 2.慢性腰痛
  a.治療の実際(1)
  b.治療の実際(2)
 3.殿部痛
  a.治療の実際(1)
  b.治療の実際(2)
 4.腰椎椎間板ヘルニア
  a.治療の実際(1)
  b.治療の実際(2)
 5.腰部脊柱管狭窄症
  a.治療の実際(1)
  b.治療の実際(2)
 6.骨粗鬆症
  a.治療の実際(1)
  b.治療の実際(2)
 7.スポーツに伴う腰痛
 8.骨盤輪不安定症
 9.小児の腰痛
 10.作業関連腰痛

索引

腰痛、肩こり、そして関節痛など、運動器の痛みは国民に多い愁訴のオンパレードである。この傾向は高齢化の進展とともにますます顕著になっていくものと予想される。
 運動器の痛みは、支持と運動という相反する機能を持つがゆえの過重な負担の結果であることが少なくない。それだけに、その診療にあたる医療従事者は生体力学的知識を持つことが求められる。それに加えて運動器の痛みには、従来我われが認識していた以上に早期から、心理・社会的因子が深く関与していることも明らかになってきた。当然、適切な診療を行うためにはこれらの知識も必要である。このような知見の集積から、近年は腰痛を代表とする運動器の痛みを、単なる「解剖学的異常」から「生物・心理・社会的疼痛症候群」として捉えようという動きが始まっている。つまり、運動器の痛みを「local pain」としてではなく「total pain」として捉えて診療にあたるということである。
 疼痛には、器質的、そして機能的な因子が複雑に絡み合っていることがわかってきた。運動器の疼痛、特に患者さんの多い慢性疼痛の診療には、それに応じた診療体系が求められる、それはまず、「cure」だけでなく「care」という視点の導入である。次に、多面的、集学的アプローチの導入である。わが国の医療システムや患者の立場を考えると、1人の運動器の疼痛診療従事者が中心となって診療を進めていくのが妥当といえる。そのためには、自分の専門領域の知識、技術、そしてknow−howのみならず、学際領域でのそれらの習得も必要になってくる。これにより、「何を治療するか」ではなくて、「誰を治療するか」という視点を持った診療が可能になる。
 運動器の痛みのプライマリケアを部位別に取り上げていくというのがこのシリーズの構成になっている。しかし、運動器の痛みのプライマリケアにあたっては、部位に関係なく患者と医療従事者の信頼関係の確立が死活的に重要である。何故ならば、EBM(evidence−based medicine)が教えてくれたのは、皮肉にもNBM(narrative−based medicine)の重要性だからである。医療従事者と患者との信頼関係の確立により、患者の診療に対する満足度はもとより、治療成績も向上することはよく知られている。また、信頼関係があればこそ、長期にわたるcareも可能になる。
 本シリーズは、近年の運動器の痛みを診療するうえで必要な新知見を総論に、各論には部位別にみた最前線の診療の提示という構成にした。執筆者には、第一線の診療現場で活躍している先生方に、know−howを含めた実践的診療の記載をお願いした。第一弾としての本巻は、診療現場で遭遇することの最も多い「腰背部の痛み」を取り上げている。このシリーズが、運動器の痛みのプライマリケアの向上に役立ち、結果的に、運動器の痛みの診療に従事している人々に対する国民の信頼が高まることを期待している。
2009年5月
菊地臣一