書籍

呼吸器感染症のすべて

私の治療のコツ

編集 : 藤田次郎/門田淳一
ISBN : 978-4-524-25347-0
発行年月 : 2009年6月
判型 : B5
ページ数 : 322

在庫あり

定価8,100円(本体7,500円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

気道感染症や肺炎などの頻度が高い疾患から、緊急対応が必要となる重症感染症までを網羅。各感染症において標準治療、重症化した場合の対応、プロフェッショナルの治療のコツを解説することで具体的な治療法の記載に重点を置いた。また、De-escalationやPK-PDなど新たな抗菌薬の使い方についても解説。呼吸器感染症診療に必要なすべてがわかる一冊。

I章 呼吸器感染症診療の基礎知識
A.呼吸器感染症とは−その動向
B.呼吸器感染症の分類と特徴
C.呼吸器感染症の関連ガイドラインの概要
 1.日本のガイドライン
 2.欧米のガイドライン

II章 呼吸器感染症の診断・検査−確定診断までのアプローチ
A.呼吸器感染症の診断ポイント
 1.問診のとり方
 2.身体所見のとり方
B.呼吸器感染症を疑った場合に行う検査−手順とポイント
 1.喀痰検査
 2.血液培養
 3.ウイルス学的検査
 4.胸部X線撮影
 5.CT診断
 6.迅速診断キットの用い方
 7.遺伝子診断
 8.その他の検査(血清学的検査、各種抗体価、抗原、β-D-グルカン)

III章 呼吸器感染症治療の実践−教科書に書いていない治療のコツ
A.呼吸器感染症の治療総論−治療の基本
B.呼吸器感染症の治療−私の治療のコツ
 1.急性上気道感染症(インフルエンザも含む)
 2.急性気管支炎
 3.百日咳
 4.ウイルス肺炎(サイトメガロウイルス肺炎、麻疹肺炎、インフルエンザ肺炎など)
 5.マイコプラズマ肺炎
 6.クラミジア・ニューモニエ肺炎
 7.オウム病
 8.クラミジア・トラコマチス肺炎
 9.Q熱
 10.レジオネラ肺炎
 11.細菌性肺炎
 12.誤嚥性肺炎/びまん性嚥下性細気管支炎
  12-1.誤嚥性肺炎/12-2.びまん性嚥下性細気管支炎
 13.胸膜炎
 14.肺膿瘍
 15.肺放線菌症
 16.肺真菌症(肺アスペルギルス症を除く)
  16-1.肺クリプトコックス症/16-2.肺ムーコル症/16-3.肺トリコスポロン症/16-4.輸入肺真菌症
 17.肺アスペルギルス症
 18.MRSA肺炎
 19.多剤耐性緑膿菌による呼吸器感染症
 20.肺結核症
 21.結核性胸膜炎
 22.非結核性抗酸菌症
 23.寄生虫性肺疾患
 24.ニューモシスチス肺炎
 25.気管支拡張症
 26.びまん性汎細気管支炎/副鼻腔気管支症候群
C.呼吸器感染症の特殊な治療法
 1.吸入療法
 2.酸素療法、呼吸管理

IV章 抗菌薬の使い方のポイント
A.抗菌薬使用の原則(総論)−de-escalating strategyとは
B.PK-PDに基づく抗菌薬の使い方
C.レスピラトリーキノロンの使い分け
D.抗菌薬一覧表
E.抗真菌薬一覧表
F.抗ウイルス薬一覧表

索引

かぜをはじめとして、気道感染症から肺炎に至るまで、呼吸器感染症は最も頻度の高いcommon diseaseとして人類を悩ませている。今回『呼吸器感染症のすべて―私の治療のコツ』と題する本書を刊行することになったが、実は南江堂からは、1991年6月に東京慈恵会医科大学教授の谷本晋一先生のご編集で、『呼吸器感染症 Common disease series 18』という本が出版されている。この本の執筆者たちをみると、いずれも日本の呼吸器内科をリードしてこられた方々であり、編集者でおられた谷本晋一先生の執筆者の選定がいかに適切であったかがわかる。
 1981年に岡山大学を卒業した私は、母校の医局に入局することなく、虎の門病院の内科レジデントになった。2年間の研修期間中に、呼吸器内科をローテーションした際の部長が谷本晋一先生であった。虎の門病院において、谷本晋一先生から呼吸器感染症の真髄を学ばせていただいたという経歴を持つ私が、同じ南江堂から「呼吸器感染症」に関する本を18年ぶりに編集することになった点に不思議な縁を感じる。
 さて南江堂から、この企画の提案を受けた際に、私は迷うことなく、大分大学医学部の門田淳一教授に共同編集をお願いした。門田教授は私と同じ世代であり、かつわが国で最も優れた呼吸器感染症の専門家のおひとりである。門田教授のアイデアをいただきながら、執筆項目、および執筆者が決定するまで、南江堂より依頼を受けてから1週間とかからなかった。門田教授の幅広い人脈のおかげで、ご執筆いただいた先生方はわが国における代表的な呼吸器感染症の専門家たちであり、また項目ごとに最も適切な執筆者を選定することができたと感じている。執筆をご快諾いただいた先生方に、編集者のひとりとして心から感謝したい。
 適切な呼吸器感染症診療を実践するためには、感染症のメカニズム、また検査の種類と意義、各感染症治療の実際、薬剤の種類と特徴などを把握する必要がある。本書では、呼吸器感染症の検査・診断を把握したうえで、重症度に応じた各感染症の標準的治療、およびプロフェッショナルの治療のコツを示し、また感染症治療薬を解説することで、今後の呼吸器感染症診療に寄与するものを目指した。さらに、関連するトピックスをコラムとしてちりばめた。執筆者の熱意により、素晴らしい内容の原稿を揃えることができ、この「呼吸器感染症のすべて」は現時点では、呼吸器感染症に関する著書としては最高のものであると自負している。
 なお表紙カバー写真は、沖縄県にある中城城址を株式会社「楽園」三好和義氏に撮影していただいたものである。この写真の感想として、共同編集者の門田淳一教授は以下のようにコメントしている。
 生命体とくに微生物は太古の昔より、「海」が起源でありますし、「陸の苔」をはじめとする「土壌」は微生物の培地でもあります。「城壁」が高くそびえるがごとく、微生物に挑む人間にとっては、微生物はその克服が困難な壁となってわれわれの前に立ちはだかっています。しかし、われわれ人間は希望を持って今後も努力をし続けるでしょう。その希望が写真の中の「空と雲」となり、この現状すべてがこの1枚の写真の中に凝縮されているように感じます。
 本書が、多くの臨床家の座右の書として活用されることを期待する。
2009年6月
藤田次郎

この度、南江堂から上記単行本が刊行された。
 藤田次郎先生は画像を中心とするその診断能力、幅広い文献渉猟と編集力、および人脈の広さの故に私が日頃から敬愛してやまない琉球大学第一内科の主任教授であり、呼吸器内科、とくに呼吸器感染症がご専門である。編集者のもう一人である門田教授は直接の面識はないが、やはり呼吸器感染症のご専門である。
 感染症そのものは、筆者にとっては専門外であるが、呼吸器病学を専門としている関係上、呼吸器感染症と無縁ではない。感染症は元来、全身臓器が対象となる分野である。したがって感染症専門医は一般にジェネラリストであり、内科全般に精通しているものである。また、病原体には細菌性と非細菌性とがあり、種々の病原微生物を熟知しておく必要がある。
 呼吸臓器はしかし、編者らがいうように内部臓器の中では唯一、たえず呼吸を通じて外界と直接つながっており、頻度からしても身体の中ではもっとも病原微生物に侵されやすい臓器である。
 「呼吸器感染症のすべて」という単行本が生まれるゆえんである。
 この本は大きく4章に分かれ、第一章が総論、第二章が診断法、第三章が呼吸器感染症各論とその治療法、第四章が抗菌薬の使い方のコツとなっており、それぞれの専門家によって書かれている。
 その専門家たちは、数えてみると実に70余名に及ぶ。執筆しておられる各人が専門的な立場から己の豊富な経験や研究を通じ、あるいは文献を渉猟して、読む人にとって日頃の疑問が氷解するような内容で埋められている。読者が日頃、知りたいと思うことが見事に書かれているのである。編者の人脈の広さをうかがわせる。
 こういう単行本を単独で執筆する場合もあるが、それには多くの労力と時間を要し、また、必ずしもすべての内容を1人でカバーできるとは限らない。単行本執筆にはそれぞれ一長一短があるものと思われる。この本は多くの人たちの手によるが、疾患各論はすべてが同一手順で書かれており、見事に統一されている。
 この本の中でもとくに圧巻なのは18項目に及ぶコラムである。そこには日々の診療において生ずる医師たちの大きな疑問、あるいは補うべき知識が網羅されており、示唆に富む内容がふんだんに盛り込まれている。これまでに例のない素晴らしいアイディアであり、編集者たちの知恵の深さが感じられる。
 願わくば第1章の総論の項で感染防御機構についてもう少し詳述し、特異的感染防御機構の中ではafferent と efferent の defence mechanism against infectionについて具体例をあげてわかりやすく記述してほしかったと思う。
 しかし、この書が読者にとっては呼吸器感染症のすべてを理解するうえで大いなる役割を果たしていることに変わりはなく、ぜひご一読を勧めたい単行本であり、ある呼吸器感染症を経験するたびに改めてその項目を紐解いて参考にしたい良書である。
評者● 宮城征四郎
臨床雑誌内科105巻1号(2010年1月号)より転載