教科書

内科診断学改訂第17版

: 武内重五郎
ISBN : 978-4-524-25327-2
発行年月 : 2011年4月
判型 : B5
ページ数 : 562

在庫あり

定価8,964円(本体8,300円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

身体所見の取り方、病歴聴取の方法など、豊富なカラー写真・図解とともに正しい診断に至る過程をわかりやすく解説。今改訂では、「第1章 診断学の歴史」を新設。また特に、胸郭および肺、心臓血管系、腹部、神経系の診察の各章に「病態と臨床像」を設け、病態の解説を加え画像診断の刷新を図った。より使いやすくなった診断学のロングセラー教科書。

第1章 診断学の歴史
 A.医学のはじまり
 B.古代医学のあけぼの
 C.低迷する中世医学の小さな灯火
 D.ルネサンス医学の栄耀
 E.近代臨床医学の開花
 F.聴診器黄金時代と臨床病理学
 G.画像診断の時代

第2章 医の倫理とインフォームド・コンセント
 A.医の倫理
 B.生命倫理学
 C.インフォームド・コンセント
 D.インフォームド・コンセントの実例

第3章 POSによる診療記録
 A.Problem−oriented system(POS)
 B.POSによる診療記録

第4章 病歴のとり方
 A.患者像、社会歴
 B.主訴
 C.現病歴
 D.既往歴
 E.家族歴
 F.システムレビュー
 G.各臓器系に関連した主な愁訴

第5章 現症の診察
 A.現症の診察
 B.現症の記載

第6章 全身的症状
 A.顔貌
 B.精神状態
 C.体格
 D.栄養
 E.姿勢、体位
 F.身体の運動
 G.歩行
 H.言語
 I.体温
 J.皮膚
 K.体毛

第7章 頭部の診察
 A.大きさ、形状
 B.頭髪
 C.位置、運動

第8章 顔面の診察
 A.顔貌
 B.形、大きさ
 C.浮腫
 D.皮膚
 E.異常運動
 F.圧痛

第9章 眼の診察
 A.眉毛
 B.眼瞼
 C.眼球
 D.結膜、強膜
 E.角膜
 F.瞳孔
 G.水晶体
 H.眼球運動
 I.視力
 J.視野
 K.眼底

第10章 耳・鼻の診察
 A.耳
 B.鼻

第11章 口の診察
 A.口臭、呼気臭
 B.口唇
C.舌
 D.歯肉
 E.歯
 F.口腔
 G.扁桃、咽頭

第12章 頚部の診察
 A.皮膚の変化
 B.リンパ節
 C.唾液腺
 D.血管
 E.気管
 F.甲状腺
 G.先天的異常
 H.その他の腫瘍

第13章 乳房の診察
 A.視診
 B.触診
 C.乳腺疾患の身体所見

第14章 胸郭および肺の診察
 A.胸郭の局所解剖および記載法
 B.視診
 C.触診
 D.打診
 E.聴診
 F.肺・気管支と胸部X線写真
 G.肺疾患の臨床像と身体所見

第15章 心臓血管系の診察
I.心臓の診察
 A.心臓の局所解剖
 B.視診
 C.触診
 D.打診
 E.聴診
 F.正常心音
 G.心音の異常
 H.過剰心音
 I.異常心音
 J.奔馬調
 K.心雑音
 L.心雑音の聴診所見
II.血管系の診察
 A.血圧(動脈血圧)
 B.脈拍の触診
 C.毛細管拍動の観察
 D.静脈系の観察
 E.血管の聴診
III.循環不全と身体所見
 A.循環不全
 B.心不全
IV.心臓血管系疾患の臨床像と身体所見
 A.弁膜症
 B.先天性心疾患
 C.冠動脈疾患
 D.心膜疾患
 E.心内膜炎
 F.心筋炎
 G.心筋症
 H.左房粘液腫
 I.肺性心
 J.不整脈
 J−1.頻脈性不整脈
 J−2.徐脈性不整脈
 J−3.心房細動
 J−4.心房粗動
 K.心サルコイドーシス
 L.高血圧症
 M.低血圧症
 N.大動脈疾患
 O.末梢動脈疾患
 P.静脈疾患

第16章 腹部の診察
 A.腹部の局所解剖
 B.視診
 C.触診
 D.打診
 E.聴診
 F.腹部疾患の臨床像と身体所見

第17章 四肢の診察
 A.上肢
 B.下肢

第18章 肛門、直腸、外性器の診察
 A.肛門、直腸
 B.外性器

第19章 神経系の診察
 A.精神状態
 B.髄膜刺激症状
 C.脳神経
 D.運動系
 E.言語および関連機能
 F.知覚系
 G.反射
 H.自律神経系とその機能
 I.神経疾患の臨床像と身体所見

参考文献
和文索引
欧文索引

内科診断学は、臨床医学の原点であり、診察の基本である。そして医学を志した学生が学ぶ最初の臨床医学である。昭和41年(1966年)の初版において、武内重五郎先生は、「診断学は病歴の聴取、現症の観察、臨床検査、鑑別診断の過程を経て総合判断し、もっとも妥当と考えられる疾患を選定することである」と述べられている。さらに、診断学の理念を統一的にするため、分担執筆の形式をとらず、一人で著述されている。多くの診断学書が鑑別診断に重点を置いて執筆されているのに対し、本書は、医師の育成に必要不可欠の身体所見を重視した診断学書である。医学の進歩と時代の変遷とともに身体所見のとり方、とりわけ聴・打・触診の重みづけも変化してきたが、指導経験の積み重ねと画像および臨床検査の進歩を巧みに導入して、総合的に診断するという方法が取り入れられ、革新的な診断学となってきた。
 第17版の改訂点は、医学の進歩を踏まえて、以下の4点に要約される。(1)『診断学の歴史』の章を設け、医学のはじまりから、古代・中世・近代の医学教育、打・聴診の発明と診断学、診断機器の開発と診断学への導入などを記述したこと、(2)徴候、現象、病名、症候群などの人名に纏わる挿話を加筆したこと、(3)身体所見の修得のみでは疾患に直接結びつかないので、主要疾患の臨床像と身体所見の項目を加えたこと、(4)新しい知見に基づく定義、病因、病型分類、診断基準に関しては図表を用いて説明したこと、である。これにより学生諸君の診断学への取り組みと理解が一層進展していくものと信ずる。
 今回の改訂に際し、文章の取捨選択と配置などに関して適正な助言を戴き、また第16版までの共同改訂者であった東京大学名誉教授杉本恒明先生に深甚なる謝意を表する。また、平塚共済病院の神経内科中江啓晴先生と脳神経外科小島昭雄先生、群馬県立心臓血管センターの外科中林利博先生、高知大学の内分泌代謝・腎臓内科学教授寺田典生先生からは、CT像、MRI像、内視鏡像などの提供を受けた。ここに記して感謝する。さらに、画像の提供に温かい配慮を戴いた平塚共済病院丹羽明博院長、群馬県立心臓血管センター大島茂院長に感謝する。
 内容的には大幅に手を加え、新しくなった内容を十分に取り入れ、一層実践的となった。読者である学生が、パソコンのみを眺める医師ではなく、本書の理念を掌握して患者の診察に全力を尽くす医師に成長することを切に願望する。
平成23年3月
谷口興一

筆者が学生のころから、東京大学医学部では3年生前半の半年間、毎週半日、小グループごとの内科診断学実習セミナーを行っていた。4内科教室の講師12名の使用したテキストは沖中重雄・高橋忠雄・大島研三の『内科診断学』(医学書院)であった。1959年、9年ぶりに東大にお戻りになった武内重五郎先生はすでにかなり強固なご自身の意見をもっておられ、教室の討論会などでの主導的な発言は教室員に強い印象を与えたものであった。しかし一方、ご自分の不得意な方面ではあえて若い医局員にも辞を低くして教えを請い、心臓の聴診などは実地修練もされていた。そして徐々に、誰しもが武内先生の診断能力に敬服せざるをえないようになっていった。
 その先生が翌々年、金沢大学に赴任されてのち、大学紛争も終焉を迎えた1966年の春、ある日一冊の書を手にして医局にみえられた。それが本書の初版である。以来、診断学実習のテキストはこの書に取って代わられた。
 今回の改訂版は主として谷口興一先生の加筆によるが、初版とは大変な様変わりである。診断学の基本的事項は確実に残されているが、より現代的手法にも重きを置く一方、逆に古来の診断法の拠ってきたる医学史の序章を設け、また徴候、症候群その他のエピソードを加えるなど、文字通り、「古きをたずねて新しきを知る」のよすがとなっている点が目新しい。さらに注目すべきことは、一般の診断学書が単なる知見の集約に傾くのに対して、本書では重要な疾患に対して、身体所見を重視しながらその臨床像を総説的に書き下ろしていることである。これはいくつかの所見からおよその診断方向が決まったのち、それを集約して最終診断にいたる際に役立つであろうし、むしろ分厚い教科書の要約として読者には便利なことであろう。
 最近は臨床検査室診断、ことに画像診断が重要視され、それが純粋に客観的であると信じ、自己が行う臨床診断を閑却する傾向にある。それがよくないとはいわないが、それによって医師自身の診断能力を低下させるのは本末転倒である。筆者自身はまずすべてを自分で診断し、そのうえである目的をもって検査の指示を出す。特殊検査でなければ診断しえない疾患は少なくないが、それでももし検査結果が予期するものと異なれば、なぜそうなったかを検討し、臨床診断の限界を知ることも大切である。逆にときには検査所見のほうが間違っていたり、見落としをしたりすることもあり、せっかく検査しても、その報告者が誤ることもある。
 また一方、検査法の限界を超えているものもあって、身体所見を含めての診断学的手法によってその欠を補わなければならないこともめずらしくはない。そしてその時こそ、普段からの診断法の実地修練がものをいうのである。たとえば不整脈のほとんどすべては、頸静脈の視診、脈診と聴診で診断可能である。心電図はその確認であるが、記録時に不整脈が把握できるとは限らない。多くの先天性・後天性心疾患でも似たようなものであり、ほとんどはベッドサイドでかなり詳細に診断可能である。救急外来での急性心筋梗塞をどのように検査・治療するかには、身体所見を中心にした現症の把握が重要な鍵を握る。
 もちろん、誤診は誰にでもある。すべてに100%ということはありえない。だがその不足を克服すべく、さまざまな面を見通す診断学を学ぶ必然性と重要性がある。それには優れたテキストを熟読玩味しなくてはならないが、本書はその期待に十二分に答えてなお余りあるものである。大学での学生実習はいうに及ばず、実地診療の手助けにもぜひ本書を活用していただきたいと思う。
評者● 坂本二哉
内科110巻2号(2012年8月号)より転載