書籍

IDATENのプロが答えるそこが知りたかった感染症

編集 : IDATEN(日本感染症教育研究会)
ISBN : 978-4-524-25089-9
発行年月 : 2009年11月
判型 : A5
ページ数 : 210

在庫あり

定価3,564円(本体3,300円 + 税)

正誤表

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

「MRSAによる術後縦隔炎のマネジメントは?」「ペニシリンは持続DIVにしてもよい?」など、感染症の日常診療で浮かぶ疑問にIDATEN(日本感染症教育研究会)メンバーが回答! 「第I部」では、一問一答形式で、また、「第II部」では、同じ質問に6名の達人が回答するユニークなQ&A形式。日常診療に即実践できるエキスパートの考え方が、みるみる身につき、さらに感染症専門医の苦悩・魅力を実感できる一冊。

I こんなときどうしたらよいのでしょうか?
A.疾患に対する対応
 Q01 細菌性髄膜炎の原因微生物が髄液への直接浸潤である場合と血流感染から起きる二次的なものである場合の臨床像や予後、対応法に違いはありますか?
 Q02 ベンジルペニシリン感受性の溶連菌菌血症にゲンタマイシンを併用してシナジー効果を狙うことは正しいでしょうか?A、B、C、G群などの血清型で変化は生じるでしょうか?心内膜炎の有無で変わるでしょうか?
 Q03 深部真菌感染症の診断アプローチは?またその治療を開始する基準は?
 Q04 細菌性髄膜炎で発熱が遷延したり、硬膜下膿瘍あるいは脳膿瘍などを合併している場合の治療期間は?抗菌薬を中止するタイミングは?
 Q05 EBウイルス感染症の血液検査の使用法とその評価を教えてください.
 Q06 CMV感染症の血液検査の違いを教えてください.その使用法の違いは?
 Q07 日本脳炎のワクチンが積極勧奨中止となっていますが、これをどう考えますか?
 Q08 梅毒診断のポイントを教えてください.
 Q09 院内で麻疹が発症した際の病棟感染対策法を教えてください.
 Q10 経口不能な偽膜性腸炎ではメトロニダゾールの吸収を考慮すると、経口、腟錠の坐薬使用、注腸などどんな投与法が適しているのでしょうか?
 Q11 CDトキシン陽性かつ便培養MRSA陽性の下痢患者をどう考えますか?また、どうやってマネージメントしたらよいでしょうか?
 Q12 MRSAによる脊椎炎で椎体がぼろぼろです.二期的手術で金属固定をしたいのですが、いつになったら手術できるようになるのでしょうか?
 Q13 日本呼吸器学会の咳のガイドラインでは、湿性の咳ではとりあえずマクロライド、と書いてあるのですが、本当でしょうか?
 Q14 尿路感染にキノロン系薬をよく使いますが、バクタを使えと感染症の先生に勧められたことがあります.副作用が心配ですが、本当にバクタでよいのでしょうか?

B.抗菌薬全般について
 Q15 日本のオピニオンリーダーがしばしばお話しする諸外国での抗菌薬の使用法は、日本の保険適用に比べて本当に臨床的な治療効果がちがうのでしょうか?
 Q16 抗菌薬の諸外国での使用法で日本人での有害事象はないのでしょうか?人種差をどのように考えたらよいでしょうか?
 Q17 ペニシリンの4時間ごとの直接静注(DIV)が病棟運営上無理な場合、持続DIVにしても効果に差はないのでしょうか?
 Q18 時間依存性の抗菌薬では、1日中持続点滴すればよいのでは?分割投与が一般的なのはなぜでしょうか?
 Q19 βラクタマーゼ阻害薬との合剤などでは抗菌薬と阻害薬の臓器移行率が異なれば、せっかく考慮した配合比率が狂ってしまいますが、これは臨床的な問題になりますか?
 Q20 外傷とくに、釘の踏みつけや、動物咬症(イヌ、ネコ、サル、ヘビ)時にはなにをターゲットに抗菌薬を使用すべきなのでしょうか?また、破傷風予防の方法は?
 Q21 ある感染症に対して抗菌薬Xの代替抗菌薬があると考えられる場合、その抗菌薬がXと同等の効果・適応を持つと判断されるための基準は?
 Q22 好中球減少の熱では抗菌薬1剤ですか?2剤ですか?
 Q23 腎不全のときの抗菌薬投与はSanford Guideの表どおりにすればよいのでしょうか?
 Q24 殺菌性、静菌性抗菌薬の定義は?臨床的な意義は?
 Q25 セフトリアキソンは、欧米の教科書でしばしば筋注で使用を推奨されますが、なぜ、痛くて吸収が不安定な筋注が積極的に選択されるのでしょうか?
 Q26 インフルエンザ菌の髄膜炎にメロペネムを使用する際、1日量が同じならば1日3回投与と1日4回投与のどちらがよいのでしょうか?Time above MICとの関係から教えてください.
 Q27 インフルエンザ治療薬「リレンザ」でも異常行動の報告はあるのでしょうか?その臨床的な意義は?
 Q28 タミフルはどのような状況でどの患者に用いるのでしょうか?
 Q29 僻地診療所などでは、第1世代セフェム薬はなにを採用薬としたらよいでしょうか?またその根拠は?
 Q30 抗菌薬の濃度依存性と時間依存性は、どのように使いわけたらよいのでしょう?
 Q31 術前抗菌薬は皮膚についている常在菌をターゲットにすると聞いていますが、術前にバンコマイシンをずっと入れている患者さんだと、皮膚のグラム陽性菌はあまりいないのではないかと思います.こういう人には、なにを術前抗菌薬に使ったらよいのでしょう?
 Q32 サイクリング療法といって、うちのオーベンはメロペンを使って、チエナムを使って、カルベニンを使って、フェニバックスを使って病棟をまわしています.本当にそれでよいのでしょうか?
 Q33 日本感染症学会と化学療法学会のMRSA診療の手引き(2007年)には、抗菌薬を治療上必要最低限にとどめること、と書いてありますが、具体的な期間の記載がありません.どのくらいが必要最低限なのでしょうか?

C.検査について
 Q34 (1→3)-β-d-グルカンをどのように運用したらよいですか?
 Q35 昔アメリカでトレーニングを受けた先生が、血液培養は2セットだ、というのですが、1セットでやっていて困ったことがありません.本当に2セットなのでしょうか?
 Q36 血液培養のやり方には、なにかガイドラインのような基準となるものがあるのでしょうか?

D.MICについて
 Q37 MICを臨床現場でどのように活用したらよいのでしょうか?専門家の先生によってはあまりみなくてもよい、という人もいます.また、使用する場合、どのようなときに有用なのでしょうか?
 Q38 time above MICを計算したいのですが、どのようにすればよいでしょうか?

E.ワクチンについて
 Q39 インフルエンザワクチンは効かない、と主張する本を読んだのですが、これをどう思いますか?
 Q40 麻疹ワクチンを打つと免疫が弱って麻疹が流行する、という主張がありますが、どう思いますか?

F.術後、透析の患者さん
 Q41 心臓外科手術後のMRSA縦隔炎のマネジメントはどのようにしたらよいでしょうか?
 Q42 整形外科での創洗浄でバンコマイシン、アルベカシンの洗浄が行われることがありますが、このプラクティスは正しいのでしょうか?
 Q43 血液透析患者では、どのような感染に留意したらよいでしょうか?
 Q44 移植患者のワクチン接種について教えてください.
 Q45 皮下植え込み型ポートから感染し、発熱している場合の対応法を教えてください.

G.海外との比較
 Q46 抗菌薬で食事との関係を気にしなければならないものはどのようなものでしょうか?食前、食後などの指示に大きな意味があるのでしょうか?
 Q47 米国や海外帰りの先生方で日本に帰ったときの逆適応で苦労されたことを教えてください.

H.研究
 Q48 日本で行われている抗菌薬の臨床試験をどうお考えですか?諸外国との違いはありますか?
 Q49 血液型で感染のリスクが変わるって本当ですか?
 Q50 感染症・抗菌薬関連で、過去のプラクティスを変えたような画期的な研究をいくつか紹介してください.

I.その他
 Q51 peer-reviewとはなんですか?なぜ重要なのでしょう?


II 感染症の取りくみ方教えてください!
 Q52 きちんとした研修施設へ勉強しにいく時間やチャンスが持てない医師が、グラム染色をはじめとする感染症プラクティスを習得し、ブラッシュアップするためのお勧め学習法を紹介してください.
 Q53 日本の抗菌薬の添付文書がPK-PDに即したものにするには、個人の臨床医はどのようなことができるでしょうか?
 Q54 どうして感染症の専門家になりたいと思われましたか?
 Q55 意見の合わない医者とはどう対応しますか?
 Q56 白衣のポケットにはなにが入っていますか?
 Q57 感染症を勉強するにあたってお薦めの本やいつもチェックされているお薦めの雑誌を教えてください.
 Q58 感染症の医者じゃなかったら、なにをなさっていましたか?
 Q59 お気に入りの細菌はありますか?お気に入りの抗菌薬は?
 Q60 今まで経験した中で、1番の衝撃の感染症の一例を教えてください.
 Q61 感染症にかぎらず、内科一般の最新情報をどのように入手しているのですか?
 Q62 自分を動物に例えると?
 Q63 1番大切にしているものは?
 Q64 感染症を習得したい後進の学生、医師にメッセージを!

索引

なにかの専門領域を学ぶとき、オーセンティックな(ある質の保証が担保されている)教科書や論文などの情報を拠りどころにするのは当然である。研修医が患者の治療薬を、国家試験対策用の「マニュアル」を参照して選択するのは、「プロの」医療者を頼りに来院した患者に対する冒涜といってもよい。
 しかし、それと等しく重要なのは「プロだったらこういうときどうする?」といういささか個人的な裏づけである。「教科書にはこう書いてある。でも実際やったことがない。周りはみんなキノロン使っているのに、本当に肺炎球菌の肺炎は、ペニシリンGで治療できるのか?」教科書だけで勉強していると、最後の一歩が踏みこめない。「大丈夫、俺が一緒にみていてやるから、やってごらん」この温かい一言があれば、どんなに心やすく診療できることであろうか。
 不幸にして、日本の臨床感染症教育の歴史は浅い。だから正当な感染症教育不在のまま、根拠の薄弱な「医局の伝統」や「製薬会社のお弁当」が診療を決定してきた。ハンズオンで、現場で「こうするんだよ」と模範を示してくれる指導医も決定的に不足している。なにしろ、日本感染症学会が専門医養成のための研修施設を定めたのは2007年になってからのことなのだ。この文章を書いている2009年8月の段階で、その規定された3年間のトレーニングを卒業した者は「ゼロ」なのである。
 良質の指導医の「俺だったらこうする」という判断は現場ではパワフルなツールである。数年前までは、EBMへのややゆがんだ情念がこのような判断の価値を不当に貶めてしまった部分があるが、(質さえ高ければ、の話だが)「俺の判断」の価値は実に高く、変なドグマに陥らなければEBMとも矛盾しない、検査前確率は例えば、このようなプロの判断のもたらすものであったりする。
 本書は、現場における擬似的なハンズオンをもたらすことを目指した本である。日本には数少ない、しかし自信をもって紹介できる感染症のプロたちが、この局面ではこう判断する、といったプロのコメントを開陳している。各自の言葉は血肉の通った言葉であるので、編者はできるだけこの口調や息づかいまでも伝わるよう配慮した。文体が統一されていないままにしてあるのも、そのためである。やや読みづらい印象を持たれるかもしれないが、肉声の肉の部分はできるだけそぎ落としたくなかったのである。ご寛恕いただけると幸いである。
2009年8月8日照りつける夏の日差しの下で
岩田健太郎

本書は、わが国における臨床感染症診療と教育の普及・確立・発展を目的として幅広く活動している日本感染症教育研究会(Infectious Diseases Association for Teaching and Education in Nippon:IDATEN)から出版された大変ユニークなコンセプトの本である。
 感染症について、教科書等で基本的な知識を学ぶことはできても、臨床は生き物であり、患者背景などのシチュエーションもそれぞれ異なるため、それだけでは実際の現場での対応には限界がある。いったい、感染症の専門家はどんな医者で、どんな思考回路で、どんな判断を下し、どう振る舞っているのだろうか? 本書は、そういった疑問に対して、IDATENメンバーである一流のプロが、Q&Aの形で自らの意見を述べている。
 したがって本書は、感染症のイロハを学ぶための本でもなく、知識をくまなく網羅することを目的とした本でもない。もちろんエビデンスに基づいていないわけではないが、systematic reviewのように中立的にエビデンスを述べている本でもない。要するに、それぞれの執筆者が、プロならではの「匠の技」を自らの言葉で語りかけている本である。そこに感じられるのは、決して教科書からの学習では得られない、深い知識と豊富な経験に裏打ちされた叡智であり、まさに、タイトルにあるとおり「プロが答えるそこが知りたかった感染症」に関する情報が満載である。
 さらには、IDATENメンバーのお勧めの効果的な学習法やこれまでのキャリアパス、白衣のポケットの中身、お気に入りの細菌に至るまで、ともすれば遠い存在に感じられる感染症の専門家の等身大のメッセージがそれぞれの言葉(しかも動物のキャラクターつき)で述べられているセクションもあるので、感染症のプロを志す若い医師にとって大いに親近感がわくものになっている。
 内科の各専門領域の中で、感染症は専門家がもっとも少ない領域の一つであり、感染症に興味があっても、なかなかその道のプロから直接学ぶ機会に恵まれない若いドクターも多い。そんな医師にとって、本書は感染症の奥深さや面白さに触れ、専門家の実際の立ち居振る舞いを垣間見ることができる最適の1冊になるだろう。
評者● 前野哲博
臨床雑誌内科105巻6号(2010年6月増大号)より転載