教科書

看護学テキストNiCE

緩和ケア

大切な生活・尊厳ある生をつなぐ技と心

編集 : 梅田恵/射場典子
ISBN : 978-4-524-25082-0
発行年月 : 2011年8月
判型 : B5
ページ数 : 278

在庫あり

定価2,376円(本体2,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文

「緩和ケア」をめぐっては、その概念の変容に伴い、臨床で提供される治療・ケアの技術の発展がめざましい。本書では緩和ケアを、「診断時からすべての病期にわたって行われるケア」として捉え、基礎教育で学ぶべき内容を精選して解説した。実践をイメージしやすいよう、病期の特徴を踏まえた問題・ケアの特徴に焦点をあてた構成を工夫した。

第I章 緩和ケア概論
 1.病い、苦しみ、生と死
 2.生と死を支えるケア
  A.痛みのとらえ方
  B.ケアの目標となる概念
  C.ケアの土台となる看護師の姿勢
   1 病いを体験している人とともにあること
   2 病いを体験している人が力を発揮できるようにすること
 3.緩和ケアとは
  A.緩和ケアの歴史
  B.緩和ケアの定義
  C.緩和ケアにおけるチームアプローチ
   1 チームアプローチ
   2 チームアプローチにおける看護師の役割、特徴
   3 緩和ケアに携わるメンバーの役割、特徴
   4 チームアプローチにおける障壁
   5 緩和ケアにおけるチームアプローチの推進
 4.緩和ケアをとりまく今日の状況
  A.わが国の緩和ケア政策の変遷
   1 看取りの場の推移
   2 緩和ケア提供のための地域連携
   3 緩和ケアの専門家への教育
   4 緩和ケアの市民への啓発
    キーワード PEACEプロジェクト
    キーワード ELNEC-J
    キーワード オレンジバルーンプロジェクト
  B.がん対策基本法と緩和ケア
    トピックス がん対策推進計画の実例(東京都)
    コラム がん対策に生かされたがん患者の声
 5.さまざまな場における緩和ケア
  A.在宅
   1 在宅という場の特徴
   2 提供システムの特徴
   3 ケアの方略の特徴
   4 今後の課題
    トピックス 介護保険と在宅緩和ケア
  B.一般病棟(緩和ケアチーム)
   1 一般病棟という場の特徴
   2 提供システムの特徴
   3 ケアの方略の特徴
   4 今後の課題
  C.ホスピス・緩和ケア病棟
   1 ホスピス・緩和ケア病棟の場の特徴
   2 提供システムの特徴
   3 ケアの方略の特徴
   4 今後の課題
 6.緩和ケアにおける倫理的課題
  A.倫理的課題を検討していくための基本的な考え方
   1 倫理とは
   2 なぜ看護実践における倫理が問われるのか
  B.看護に必要な倫理原則の理解と活用
   1 生命倫理の4つの原則
   2 専門職綱領の役割
  C.緩和ケアでの倫理的課題
   1 患者のQOL
    コラム 鎮静と安楽死
   2 患者の自己決定
    キーワード アドバンス・ケア・プランニング
   3 インフォームドコンセント
   4 チーム内の関係性
  D.緩和ケアでの倫理的課題への取り組み
   1 倫理的課題への取り組み方の実際
   2 看護師に求められること

第II章 緩和ケアの実践方法
 1.痛みのマネジメント
  A.痛みの理解
   1 痛みとは
   2 痛みのメカニズム
   3 痛みの分類
   4 痛みの評価
  B.痛みの生活への影響
  C.痛みのアセスメント
   1 情報収集
   2 計画の立案
   3 実践の評価
  D.薬物療法
   1 第1段階(I)で用いる薬剤
   2 第2(II)・第3段階(III)で用いる薬剤(オピオイド)
   3 鎮痛補助薬
   4 鎮痛薬使用法の基本原則
   5 レスキュー・ドーズ
   6 痛みの緩和のための薬物療法における看護師の役割
  E.化学療法
   1 痛みの緩和と化学療法
   2 痛みの緩和目的の化学療法における看護師の役割
  F.手術療法
   1 痛みの緩和と手術療法
   2 痛みの緩和目的の手術療法における看護師の役割
    コラム 骨転移と痛みに関する知識
  G.放射線療法とIVR
   1 放射線療法
   2 IVR
  H.神経ブロック
  I.補完・代替療法
   1 痛みの緩和方法としての補完・代替療法とは
   2 痛みの緩和方法としての補完・代替療法の活用例
   3 患者・家族が補完・代替療法を実施するうえで看護師が留意すること
 2.呼吸困難のマネジメント
  A.メカニズム
  B.アセスメント
  C.症状緩和方法
   1 原因疾患の治療
   2 薬物療法
    コラム コデインの導入
   3 ケア
 3.消化器症状のマネジメント
  A.悪心・嘔吐
  B.腹部膨満感
   1 消化管閉塞
   2 腹水
  C.便秘
    コーヒーブレイク 食物繊維の摂取
 4.倦怠感のマネジメント
  A.メカニズム
  B.アセスメント
  C.症状緩和方法
   1 医学的アプローチ
   2 ケアのポイント
 5.浮腫のマネジメント
  A.メカニズム
  B.アセスメント
  C.症状緩和方法
   1 薬物療法
   2 体位の工夫(安静保持、四肢の挙上)
   3 スキンケア
   4 マッサージ
   5 間欠的空気圧迫ポンプ
   6 圧迫
 6.睡眠障害のマネジメント
  A.メカニズム
  B.アセスメント
  C.症状緩和方法
   1 環境調整
   2 日常生活の援助
   3 精神的ケア
   4 薬物療法
 7.不安・うつ・せん妄のマネジメント
  A.不安
  B.うつ
  C.せん妄
    キーワード サイコオンコロジー
    キーワード 支持的精神療法
 8.化学療法の副作用(有害事象)マネジメント
  A.化学療法とは
  B.主な副作用
   1 悪心・嘔吐
   2 脱毛
   3 倦怠感
   4 末梢神経障害
  C.アセスメント
  D.症状緩和方法
   1 症状出現の予防
   2 症状の早期発見・対処のための患者教育
 9.家族ケア
  A.対象の理解
   1 家族の多様なありよう
   2 家族の関係性を知る
   3 家族を理解する考え方
   4 家族はケアの対象である
   5 家族の苦悩
   6 家族は強みをもっている
    コーヒーブレイク 家族の強みを見出す力
  B.家族ケアの基盤となる概念の理解
   1 家族ケアの延長線上に遺族ケアをとらえる
   2 マッギール看護モデルの活用
  C.家族ケアの実際
 10.意思決定を支えるケア
  A.意思決定とは
  B.悪い知らせ(バッドニュース)を伝える
  C.食べられなくなったとき―輸液について
  D.療養の場の選択・決定―緩和ケアを中心として過ごす
 11.日常生活を支えるケア
  A.日常生活を支えるためのアセスメント項目
  B.清潔ケア
   1 入浴、シャワー浴、全身清拭
   2 部分浴、陰部洗浄
   3 洗髪、整容
  C.口腔ケア
  D.ポジショニング
   1 安楽な姿勢を保つための工夫
   2 生活範囲を維持する工夫
  E.睡眠・休息
  F.気分転換
  G.食事、排泄
 12.スピリチュアルケア
  A.スピリット、スピリチュアリティとは
  B.スピリチュアルペインとアセスメント
   1 スピリチュアルペインとは
   2 スピリチュアルペインのアセスメント
  C.スピリチュアルケア
   1 スピリチュアルケアの指針
   2 スピリチュアルケアの方法

第III章 看取りのケア
 1.死が近づいた患者へのケア
  A.死が近づいたときの身体的変化
  B.死が近づいたときの心の変化
  C.死が近づいたときの症状マネジメント
   1 呼吸困難・死前喘鳴
   2 せん妄
   3 倦怠感
   4 鎮静
  D.死が近づいたときのケア
  E.死亡後のケア
    トピックス エンゼルメイクとエンバーミング
 2.看取りを迎える家族へのケア
  A.家族の特徴
   1 患者の看取りを迎える家族の体験
   2 愛する人を亡くした家族の体験
  B.家族へのケア
   1 看取りが近づいたとき
   2 看取りのとき
   3 死別後のサポート
 3.死の迎え方の多様性
  A.看取りと文化
  B.外国人に対する看取り

第IV章 事例で学ぶ緩和ケアの実際
 1.事例(1)場をつなぐ―肺がん多発骨転移により痛みを抱えて生活する患者への継続看護
  A.アセスメント─肺がん、骨転移による痛み、地域との連携
  B.看護目標
  C.看護の実際
   1 入院中早期より、今後の生活を予測して情報を得る
   2 痛みについての表現方法や薬剤マネジメントについて検討する
   3 退院後の生活を想定したリハビリテーションを行う
   4 家族へのアプローチを行う
   5 社会資源を活用する
   6 地域医療スタッフへの橋渡しを行う
  D.評価
  E.まとめ
 2.事例(2)セルフケアを促す―患者が自分でも症状緩和を図れると感じられるようなかかわり
  A.アセスメント―呼吸困難、セルフケア能力
  B.看護目標
  C.看護の実際
   1 セルフケア能力を高める
   2 環境調整、家族へのねぎらい
  D.評価
  E.まとめ
 3.事例(3)家族のケア―終末期にある患者の妻の予期悲嘆に対する援助
  A.アセスメント―妻の情緒的な緊張状態
  B.看護目標
  C.看護の実際
   1 妻の感情の表出、緊張の緩和を促すケア
   2 看取りの準備に向けた妻へのケア
  D.評価
  E.まとめ
 4.事例(4)スピリチュアルケア―死を正視することを余儀なくされて苦悩する患者へのかかわり
  A.アセスメント―スピリチュアルペイン
  B.看護目標
  C.看護の実際
   1 気持ちの表出を促すかかわり
   2 死や生について、ともに考えるかかわり
   3 家族との関係について、ともに考えるかかわり
  D.評価
  E.まとめ
 5.事例(5)在宅での看取り―痛みの強い終末期がん患者の在宅での看取り
  A.アセスメント―終末期状態、がんの痛み
  B.看護目標
  C.看護の実際
   1 症状緩和―痛みの緩和、副作用対策
   2 家族の在宅介護の支援
   3 終末期における家族ケア
  D.評価
  E.まとめ

第V章 多様な対象への緩和ケア
 1.子どもへの緩和ケア
  A.痛みのある子どもと家族へのかかわり
   1 子どもの痛みの特徴
   2 子どもの痛みの表現
   3 子どもの痛みのアセスメント
   4 痛みの緩和への援助
  B.終末期の子どもと家族へのかかわり
 2.高齢者への緩和ケア
  A.わが国の高齢化の現状
  B.高齢者と死
   1 高齢者の死のとらえ方と看護師の向き合い方
   2 高齢者の死亡原因
   3 高齢者が暮らす場所と最期を迎える場所
  C.高齢者の症状の特徴と緩和ケア
 3.認知症を患う人への緩和ケア
  A.認知症とは
  B.認知症患者への緩和ケア
  C.中核症状と周辺症状
  D.症状緩和の要素と看護
 4.難病を患う人への緩和ケア
  A.難病とALS
  B.ALS患者への緩和ケアの始まりとその必要性
  C.ALS患者が経験する困難の特徴
  D.ALS患者への緩和ケアの実践
  E.難病患者への緩和ケアの現状と課題
    トピックス 相模原事件
 5.エイズを患う人への緩和ケア
  A.エイズ患者の特徴
  B.エイズ患者の治療の現状
  C.エイズ患者の緩和ケアの特徴―事例
   1 エイズ診断-治療期(4ヵ月)の治療内容および症状
   2 多重な副作用の出現による苦痛と看護介入

第VI章 緩和ケアの今後の展望
 1.諸外国における緩和ケアの体制
  A.米国における緩和ケアの体制
   1 ホスピス・緩和ケアの定義
   2 ホスピスに関する医療制度
   3 ホスピスケアの実際
  B.英国における緩和ケアの体制
   1 ホスピスの定義
   2 ホスピスケアの実際
  C.オーストラリアにおける緩和ケアの体制
   1 ホスピス・緩和ケアの定義
   2 緩和ケアの実際
 2.わが国における緩和ケアの展望と課題
  A.超高齢化社会・多死の時代と緩和ケア
  B.コミュニティケアとしての緩和ケア
  C.緩和ケアにおける専門家の育成
  D.緩和ケアにおける研究課題
   1 最新の研究の情報をどこで手に入れるか
   2 緩和ケアにおける研究に特有のむずかしさ
   3 倫理的な配慮の必要性

索引

医療の進歩や人口構成の変化、そして社会の営みの変化を受け、看護への期待や役割も変化し続けている。このような背景のなか、人々に寄り添い、人々の大切な生活や尊厳を守る緩和ケアへのニーズや関心は、看護への期待とともに高まってきている。その人らしさや自律性をもった個人として生きる権利を守るために看護師は、人格をゆがめてしまう全人的苦痛を客観的に理解(アセスメント)すること、うまく伝わらない思いに関心を寄せること、効果的な治療やケアを組み合わせること、セルフケアを促すことなど、さまざまな技と心を駆使して人々への貢献をめざしている。より多くの緩和ケアを必要とする人々に、看護の技や心を生かし緩和ケアを届けていくために、対象や提供の場を広くとらえ、技や心を鍛えていくことが重要である。
 本書では、歴史的な流れや現状をふまえながら、病院だけでなく在宅での緩和ケアについても触れている。また、これまでの緩和ケアの実践は、がん患者を対象として発展してきているが、がん患者以外の疾患をもつ人々や、小児や高齢者への緩和ケアについても、それぞれの専門家が、その必要性や実践について執筆している。
 読者の方々には、緩和ケアとして、マニュアルや慣習をただ順守するのではなく、対象者の個性に沿って、また提供する看護師の個性を生かし、創造的に技と心を届けられるよう学習を進めていただくことを願っている。本書では、歴史的な変遷や今日の状況(第I章)、症状のメカニズムや対象の苦痛を理解し緩和するための知識やケアの方法(第II章)などを基盤とし、さらに事例(第IV章)や多様な対象者のニーズ(第V章)を通して発展させていただけるように構成を検討した。緩和ケアの学習を通して、対象とする人々の尊厳を考えることは、まさにケアを提供する看護師も人として、自身の価値や尊厳を考えることにつながる。生と死を考えることは容易なことではない。しかし、少なくとも看護を志す心に、生と死についての関心が芽生えていることに気づいていただければと思う。突然直面し、衝撃的に受け止めなければならない状況よりも、学習を通して少しずつ考える機会をもち、育んでいくことが望ましいだろう。
 医療の発展や人口構成の変化により、緩和ケアへのニーズは変化していく。緩和ケアにおける看護が育んできた心と技が、これからますます活用され、人々のQOLを高める生活に貢献できることを願っている。学生や教員の方々に本書が活用され、さらに看護の心と技として発展し、多くの患者・家族に緩和ケアが届けられることを願ってやまない。
2011年6月
梅田恵
射場典子