書籍

腎臓病診療ゴールデンハンドブック

編集 : 栗山哲
ISBN : 978-4-524-25062-2
発行年月 : 2009年4月
判型 : 新書
ページ数 : 414

在庫あり

定価4,536円(本体4,200円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

腎臓内科医、一般内科医、研修医などを対象に腎臓内科の日常診療で知っておくべき疾患と、その対処法、診断、検査、薬剤の特徴と使い方をコンパクトなハンドブックにまとめた。巻末付録では、最近のEBM、あると便利な患者への説明文書例など、コラムでは知っておきたい腎臓内科の豆知識を掲載。エッセンスが凝縮された、常に白衣のポケットに入れておきたい一冊。

I.救急外来緊急対応パート
 1.尿毒症性心不全、肺水腫
 2.高カリウム血症
 
II.外来パート
 1.身体所見のとり方
 2.一般検査
 3.尿量の異常
  A 乏尿・無尿
  B 多尿
  C 排尿障害
 4.血尿
 5.蛋白尿(アルブミン尿)
 6.高尿酸血症、痛風
 7.糖尿病性腎症前期
 8.慢性腎臓病(CKD)の食事療法
 9.外来での慢性腎臓病(CKD)診療のコツ
 
III.入院パート
 1.水・電解質代謝
  A 血清ナトリウム異常
  B 血清カリウム異常
 2.カルシウム代謝異常
  A 低カルシウム血症
  B 高カルシウム血症
 3.輸液の基本
 4.高血圧
 5.糖尿病性顕性腎症
 6.糸球体疾患総論
 7.急性腎炎症候群
 8.急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
 9.ネフローゼ症候群
 10.慢性腎炎症候群
 11.多発性嚢胞腎
 12.二次性腎疾患
  A 肥満
  B 膠原病・血管炎
  C 悪性腫瘍に伴う腎疾患
  D 感染症
  E 凝固異常症に伴う腎疾患
 13.尿細管・間質疾患
 14.薬剤性腎障害
 15.妊娠と腎
 16.急性腎不全
 17.慢性腎不全
 18.腎移植
 19.腎疾患関連の遺伝子多型・遺伝子治療
 20.腎性貧血の管理
 21.血液浄化法の導入基準、実際、透析処方
 22.透析合併症
  A 透析合併症と管理目標
  B 透析を安全に行うために理解すべき合併症
  C 高血圧
  D 腎性貧血
  E シャント合併症(バスキュラーアクセス合併症)
  F CKD−MBD(骨ミネラル異常症)
  G 透析アミロイドーシス
  H 便秘症
  I 皮膚掻痒症
  J 腹膜透析(PD)関連合併症
 
IV.主要検査手技
 1.尿検査
 2.CcrとeGFR
 3.腎形態学的検査
 4.腎生検
 
V.主要薬剤の特徴と使い方
 1.利尿薬
 2.降圧薬
 3.保存期腎不全から透析導入後に用いる薬剤
  A 吸着薬
  B アシドーシス改善薬
  C ビタミンD製剤
  D カルシウム受容体作動薬
  E 高尿酸血症治療薬
  F 便秘改善薬
  G 貧血改善に用いる薬剤
 4.造影剤腎症の予防
 5.主として糸球体病変に用いる薬剤
  A ステロイド薬
  B 免疫抑制薬
  C 抗血栓薬(抗血小板薬/抗凝固薬など)
 6.糖尿病治療薬
 7.腎機能低下時の薬剤投与量
 
付:巻末資料
 1.eGFR男女・年齢別早見表
 2.腎臓関係の主なEBM
 3.腎臓内科に依頼される体外循環
 4.患者説明文書例
 5.腎機能低下時の薬剤投与量

索引
 事項索引
 薬剤索引

■トピックス■
慢性腎臓病(CKD)とは
カリウムと白血球
脱水・出血、術後にやってはいけないこと
夜間血圧
アンジオテンシノゲン遺伝子(AGT)
睡眠時無呼吸症候群
高血圧治療におけるアルドステロンの意義
悪性高血圧に合併する血管内溶血
慢性的なNSAIDsやビタミンD使用例への注意喚起
抗炎症貼付薬の意外な副作用
高脂血症治療のピットフォール
コレステロール塞栓症と腎障害
ガドリニウム含有造影剤と腎性全身性線維症(NSF)
ACE 阻害薬の投与禁忌例
造影剤腎症予防に関する近年の報告

本書は、読者として臨床研修医、若手の腎臓内科医、腎臓疾患を診療する機会のある一般医(かかりつけ医)を想定した、腎臓病診療のためのハンドブックである。最新の腎臓病学を踏まえた日常診療におけるコツを簡潔に、わかりやすくお伝えすることを目指して企画された。
 腎臓病診療に限らずよい医療を提供するには、正しい医学情報と実践技術が必須である。正しい知識は情報収集と日々の努力と研鑽で培われ、安全で優れた技術は先輩医師の指導のもとにべッドサイドで養われる。現代はネット社会、情報の洪水である(教科書、学会・研究会、医学雑誌、ネット検索……)。こうしたなかで実地医療に役立つ知識をいかに正しく取捨選択するかは難しい。たとえば、一口に医学的エビデンスと言ってもさまざまなものがある。一般にエビデンスには3つの“EBM”、すなわち(1)eminence−based medicine(高名な医師や教授の経験や先見に基づいた情報)、(2)experience−based medicine(臨床現場での医師自身の経験、症例報告的情報)、(3)evidence−based medicine(教科書的、大規模前向き研究などの情報で狭義のEBM)、がある。EBMと言えば、LancetやN Engl J Medなどmajor journalに掲載される(3)狭義のEBMが主流と思われがちであるが、実地診療の場では上記の3つすべてが重要である。実践の場面では、これらのEBMの情報を収集し、グループディスカッションなどで客観性を保ち、その成果を患者に適応する。
 医学は日進月歩で、「10年前の常識は、現在の非常識」である状況も多々ある。たとえば、1990年代以前にβ遮断薬は心不全には禁忌であり、多くの医家は処方を躊躇した。しかし、現在では本剤は虚血性心疾患や心筋症など多くの心疾患に対する有用性が確認され、心疾患の基礎薬と位置づけられている。同様に、1980年頃降圧薬として開発されたACE阻害薬は、当初急激な血圧低下、腎機能悪化、ネフローゼ症候群などが報告され、腎保護薬としては認識されていなかった。しかし、その後Lewis研究やRENAAL研究などの大規模研究や、膨大な基礎的研究、症例報告の集積から、現在ではARBとともに慢性腎臓病(chronick kidney disease:CKD)治療の第一選択薬と認識されている。
 研修医にとって、腎臓内科における診療は他の診療科につながる幅広い内容を修得するのに極めて有用である。筆者が勤務する東京都済生会中央病院では毎年、全国各地から優秀な医師が初期研修に応募してくる。彼らの多くは、糖尿病性腎症、高血圧、慢性腎炎などCKDの診断・治療や透析療法に興味を持ち、短期間ではあるがその診療に携わる。特に透析療法は、患者生命を20年以上にわたり保障する、現時点で唯一の実用的な「人工臓器」であるだけでなく、さまざまな病態を学ぶうえで多くの情報を提供してくれる。慢性腎不全患者では、腎臓病由来の病態に限らず、循環器系、消化器系、呼吸器系、神経系、血液系、糖尿病代謝系、など多臓器の合併症を勉強できるからである。研修医にとってCKDを学ぶことは、多くの臓器にわたる病態生理学を学ぶうえでも有用である。
 本書が、多くの医師にとって座右の書となり、腎臓病学の研讃に役立つことを期待する。
2009年3月
栗山 哲

幅広く腎臓病診療のコツを学びたい方に必携の1冊
 腎臓病診療に関する書物は数多いが、腎臓病のみならず透析療法、高血圧と幅広い領域に精通している栗山先生の編集になる『腎臓病診療ゴールデンハンドブック』はひと味違う。済生会中央病院の腎臓内科、糖尿病・内分泌内科の先生方と東京慈恵会医科大学の腎臓・高血圧内科の先生方によるこの本は、外来パート、入院パートという切り口で、現場に即した形で書かれているので一般医や研修医にも大変理解しやすい。主要検査手技、主要薬剤の特徴と使い方が書かれていて、腎臓病診療から離れていた腎臓専門医などにも忘れていた知識を呼び起こしてくれるので役立つに違いない。もちろん、日常臨床で忙しい研修医、腎臓専門医にもとっておきの1冊だろう。ことに研修医にとっては、患者さん、家族の方々、スタッフへの説明、カンファランスなどにこのポケットサイズは威力を発揮するに違いない。ちょっと調べたいことがすぐに探せるのもメリットである。指導医にとっさに質問されても、もう安心である。
 内容に関しては、救急外来緊急対応パートでは尿毒症性心不全、肺水腫と高カリウム血症を取り上げているが、これらはいずれもCKD(慢性腎臓病)5期のみならずAKI(急性腎障害)で緊急透析が必要な病態であり、臨床的にきわめて重要な事項である。
 外来パートは腎臓病でしばしばみられる乏尿、多尿、排尿障害、血尿、蛋白尿、に加えて高尿酸血症、痛風、糖尿病性腎症前期などの診療ポイントやCKDの食事療法などがコンパクトにまとめられていて、一般医や腎臓専門医を目指すものにとって外来診療の助けになる。
 入院パートでは通常入院精査加療の必要な一次性や二次性糸球体疾患、腎性高血圧、水電解質異常、間質性腎炎、薬剤性腎障害、慢性腎不全、急性腎不全、透析導入、透析合併症、腎移植などが記載され余すところがない。
 腎臓病の数少ない検査手技に関しては腎生検を中心にコンパクトにまとめられている。また、腎臓病にしばしば使用される薬剤に関しても必要にして最低限知っておくべき事項が最新の情報を盛り込んでよくまとめられているし、腎機能低下時の薬剤投与量に関しても巻末に掲載され日常臨床で役に立つこと請け合いである。造影剤腎症の予防に関しても最近のエビデンスをもとに実にコンパクトにまとめられている。巻末にはeGFRの早見表、腎臓関係のEBMとして大規模臨床研究の代表的なものが、目的、対象、結果、結論にまとめられ研修医や腎臓専門医にも重宝であろう。また、腎臓内科に依頼される体外循環にも言及しているので、病棟や透析の責任者にとっても役に立つ知識である。患者説明文書例ということで、腎生検、バスキュラーアクセス作成、経皮的シャント拡張術(PTA)、腹膜透析用のカテーテル挿入時の患者や家族への説明文書例などが記載されていて、病棟医、透析医にはきわめて有用な文書類である。
 以上のことから本書は教授回診や指導医チェックの際に威力を発揮する優れものといえる。
評者● 草野英二
臨床雑誌内科104巻6号(2009年12月号)より転載