書籍

がん外来化学療法マニュアル

編集 : 国立がんセンター中央病院通院治療センター
ISBN : 978-4-524-25057-8
発行年月 : 2009年6月
判型 : B6変
ページ数 : 318

在庫あり

定価3,780円(本体3,500円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

国立がんセンター中央病院のスタッフが、がん化学療法の外来の最前線で培ってきたノウハウをまとめた一冊。国立がんセンターの、がん化学療法の外来で行っている具体的なレジメンはもとより、治療方針の決定、薬剤の調整、有害事象とその対策、患者への対応、オーダリングシステムの活用などの具体例も掲載。がん化学療法に携わるだれもが知っておきたい知識が満載。

I 外来化学療法を始めるにあたっての準備と対策
1.外来化学療法を行う場所・設備
 A.外来化学療法室(通院治療センター)
 B.薬剤調製室
2.外来化学療法に必要な組織
 A.スタッフ(チーム医療の実践)
 B.委員会
  (1)委員会のメンバー
  (2)治療内容(レジメン)の承認と登録
  (3)運用状況の確認、各種問題点の整理
3.外来化学療法部の形態

II 外来化学療法の実際
1.外来での化学療法に適さない患者
2.各科領域における外来化学療法のレジメン
 A.胃がん
   5-FU療法 
   MTX/5-FU療法
   S-1/CDDP療法
   wPTX療法
   CPT-11/MMC療法
 B.大腸がん
   FOLFOX4療法
   mFOLFOX6療法
   FOLFIRI療法
   5-FU(bolus)/l-LV療法
   5-FU/l-LV(simplified de Gramont)療法
   mFOLFOX6+ベバシズマブ療法
   FOLFIRI+ベバシズマブ療法
   CPT-11/セツキシマブ療法
   セツキシマブ単剤療法
 C.膵がん
   GEM単剤療法
 D.乳がん
   AC療法
   wPTX療法
   Tri-weekly PTX療法
   CEF療法
   DOC75療法
   DOC75/トラスツズマブ療法
   トラスツズマブ療法(転移性乳がん)
   トラスツズマブ療法(術後補助療法)
   VNR療法
 E.肺がん
  (1)非小細胞肺がん
   CBDCA/PTX療法
   CBDCA/GEM療法
   DOC療法
   VNR療法
  (2)小細胞肺がん
   CBDCA/VP-16療法
   ノギテカン療法
   AMR療法
   CPT-11療法
 F.造血器がん
  (1)ホジキンリンパ腫
   ABVD療法
  (2)非ホジキンリンパ腫
   CHOP療法
   リツキシマブ療法
  (3)多発性骨髄腫
   MP療法
   ボルテゾミブ療法
  (4)慢性骨髄性白血病(CML)
   イマチニブ療法
 G.婦人科がん
  (1)子宮体がん
   AP療法
  (2)卵巣がん
   CBDCA/PTX(TC)療法
   DC療法
   wCBDCA/PTX(wTC)療法
 H.腎臓がん、泌尿器がん
  (1)腎臓がん
   IFN療法
  (2)前立腺がん
   DOC/PSL療法
3.副作用の種類、予防と対処法
 A.総論
 B.外来でしばしばみられる有害事象とその対応
  (1)骨髄抑制
  (2)感染症
  (3)消化器毒性
  (4)皮膚毒性
  (5)神経毒性
  (6)脱毛
  (7)高血圧
  (8)出血、紫斑
  (9)肝毒性
 C.緊急入院を必要とする有害事象(oncologic emergency)とその判断
  (1)脊髄圧迫、麻痺、膀胱直腸障害
  (2)上大静脈症候群
  (3)コントロール不良の体腔液
   胸水
   がん性腹膜炎
   心嚢水/心タンポナーデ
  (4)薬剤性急性肺障害、間質性肺炎
  (5)電解質異常
   高カルシウム血症
   低ナトリウム血症
  (6)腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome)
  (7)症状を有する脳転移

III 外来化学療法のマネジメント
1.レジメン管理(申請・審査・登録)
2.オーダリングシステムの整備
3.薬剤の調製(ミキシング)
4.各部門の協力(チーム医療)
 A.各職種の役割と業務
 B.がん専門薬剤師の役割
 C.がん看護専門看護師の役割
 D.がん化学療法看護認定看護師の役割
5.説明と同意(インフォームド・コンセント)
6.リスクマネジメント
 A.患者同定などに関する事項
 B.薬剤に関する事項
 C.投与管理に関する事項
 D.在宅時の緊急対応
7.患者教育と指導、支援システム
 A.自己管理(セルフケア)の重要性、指導
 B.副作用、予防、対策
 C.薬剤説明、指導
 D.在宅での管理のあり方、ポートの指導、緊急時の対応
 E.患者支援(心理社会的サポート、医療連携サポート、緩和チームとの連携)

IV 外来化学療法の今後の方向性

索引

がん外来化学療法は急速に普及している。がん患者の生活の質(quality of life:QOL)を維持しながら生活の中にがん治療を取り込むことは、外来化学療法の重要な目的の1つである。「外来化学療法加算」など、医療経済的・社会的な要因も、外来化学療法普及の流れを後押ししている。現在、「がん対策基本法」が成立し、地域がん拠点病院を中心に外来化学療法の整備が進められつつある。
 米国と比較してわが国における外来化学療法の歴史は浅い。米国では、がん薬物療法のシステムが早くより整備されたこと、保険制度の差により高額医療の問題が生じやすいことなどにより、他国より早く外来化学療法が導入された。施設面、それに携わるマンパワーを比較すれば、現在も米国はわが国よりはるかに充実している。しかし、わが国と米国では、医療制度、生活スタイル、文化、倫理感が異なる。さらに、がんの治療体系そのものもグローバルに日々変化している。すなわち、わが国における「外来化学療法」の固定されたモデルはないといえよう。我われは、刻々と変化するがん薬物療法のエビデンスをしっかりとらえながら、わが国における基本的なスタイル、あるいは、各医療施設の規模や地域医療に適したスタイルを形成していく必要がある。
 「がん病名告知」は、この20年間で急速に普及した。新しい世代では、患者自身が治療選択肢を理解したうえで自己決定することを望むようになってきた。治療から恩恵を得ることと同時に、社会的な活動や日常生活での喜びを維持したいという要望がある。そしてそのことが治療方針に大きな選択の幅を与えるようになってきている。
 外来化学療法の直面する問題は、標準的な治療法と日常生活をいかに両立させるのか、そのことがQOLの維持にどの程度貢献できるのか、限られた外来診療においていかにそれをコントロールするのかなど多岐にわたる。単に「抗がん剤の治療成績」という問題ではなく、患者の日常生活、社会生活、経済面の土台の上に構築されるものである。
「外来化学療法」を理念だけではなく、現実化させた要素にはいくつかのものがあげられる。第一に、新規抗がん剤の開発である。たとえば、大量補液を必要とせず腎毒性が軽減された白金製剤の開発、内服の抗がん剤の開発、消化器毒性、心毒性、肺毒性、皮膚毒性などの副作用が軽減された有効な薬剤の開発などである。第二に、支持療法の開発である。5-HT3受容体拮抗薬を代表とする有効な制吐剤の開発、G-CSFやエリスロポエチン製剤など骨髄毒性に対する支持療法などである。第三に、有害事象に対するマネジメント能力の向上である。たとえば、ポートの普及、発熱性好中球減少に対するガイドライン、抗がん剤血管外漏出からの抗がん剤のリスク分類と対応、悪心・嘔吐からの抗がん剤のリスク分類とマネジメント、タキサン製剤によるアナフィラキシー反応に対する前投薬、抗体療法のinfusion reactionへの対応などである。逆にいえば、これら有害事象に対するマネジメント能力の差は、個々の患者の治療成績や苦痛に大きな違いを与えることになる。
 平成20年度の診療報酬の改定では、外来化学療法加算は400点から500点に引き上げられた。また、包括医療制度の導入も、高額な抗がん剤を外来で用いることを後押しする。このように医療経済の側面からも、外来での化学療法はますます促進される傾向にある。一方、外来で治療することを前提とするあまり、本来の標準的治療法からはずれる治療が横行する危険性をはらんでいる。これに関しては、個々の医師、医療施設が明確な意思を持って阻止しなければならない。たとえば、外来化学療法で行う時のみ、入院治療と比較して低用量であったり、投与法が異なっているような場合や、そのことに関して標準的な治療法と効果が同等であるエビデンスに乏しい場合などである。また、本来、外来化学療法にそぐわない患者を無理に外来で治療を行う場合もある。
 外来化学療法は、EBM(evidence−based medicine)を実践する形で施行されるべきであり、レジメンを審査、承認する委員会の整備はきわめて重要である。
 このように、外来化学療法に携わる医療従事者は、ある側面からいえば、入院化学療法よりさらに専門的で総合的な能力を要求されるといえるであろう。今後、がん薬物療法専門医、がん看護専門看護師、がん化学療法看護認定看護師、がん専門薬剤師、がん薬物療法認定薬剤師など、「がん薬物療法に精通した」専門家が外来化学療法に中心的に関与していくことが望ましい。さらに、きわめて多岐にわたる諸問題に対応するためには、「多職種によるチーム医療の構築」が不可欠である。
 本書が抗がん剤治療を行う医療従事者の日常診療に少しでも役立つこと、その結果、外来でがんと闘っておられる患者さんの治療やQOLの維持に少しでも貢献できることを切に願う。
2009年5月
編者

“Necessity is the mother of invention”入院化学療法がすべてであった時代は過ぎ去り、最近のがん化学療法は、外来治療室(通院治療センター)で実施されるようになった。安全ながん外来薬物療法のためには相応の集中整備が必要であり、診療報酬加算も後押しして、各地の医療機関に外来化学療法室が設置された。しかし、がん薬物療法の専門家などの人的リソースも少なく、また病院内の縦割りの壁などから、外来化学療法機能を十分に発揮できるような体制となっている医療機関は限られている。
 本書の読者対象としては、がん外来化学療法を目指す医師のみならず、現在その運営に四苦八苦している医師、これから外来化学療法室を立ち上げる医療機関の関係者、在宅医療を担当する地域医療スタッフなどにも非常に有用である。また、がん医療に興味をもつ医学生などにも役立つ。外来化学療法の関連事項だけで300頁の冊子を作成したことに大変感銘を受けた。がん医療のプロ中のプロであるナショナルセンターの腫瘍内科若手医師、看護師、薬剤師、レジデントなど、制作に関わった人々の熱意とパワーに敬意を表したい。“チーム医療”の手本となる外来化学療法体制の成果である。
 内容をみると外来化学療法部門の立ち上げからその運用まで多職種の立場で多角的に盛り込まれている。外来化学療法センターの位置づけ、各臓器がんの頻用レジメン(代表的な引用文献から、個々の症例での減量基準なども参考にできる)、抗癌剤副作用対策、がん緊急病態とその治療、リスクマネジメントと療養支援などにきめ細かいエッセンスがちりばめられている。多職種の読者を意識した工夫が随所に感じられる。
 外来化学療法室の組織運営が円滑か否かは、その医療機関のがん医療に対する姿勢を象徴的に表すものである。本書では、レジメン委員会機能と運用方法、各診療外来オーダー医との関係など、基本的な考え方を解説していて、いわばブームに乗ったような曖昧な動機で外来化学療法に手をつける医療機関には反省材料となる。
 欲をいうと、電子カルテの見本にもう少し踏み込んで解説を加えると、外来化学療法機能を電子カルテに組み込まねばならない病院に参考になる。薬剤用量増減などの操作などオーダーリング操作の効率化のみならず、薬剤情報や看護師用電子カルテ画面構成など、請け負い企業のいいなりになって散々な目に遭っている病院は少なくない。また、本書の内容を抜粋したものは「患者必携」などにも十分応用できるものであろう。
 今後の通院化学療法は、患者の快適な療養生活実現を目指し、在宅医療との地域連携協力を考慮すべきである。通院治療と連動する患者交流の場をつくることも必要となる。また、治験や多施設共同臨床試験などを外来化学療法室で行うことも増えるので、準備・手順についての解説もほしい。近年、適切なバイオマーカーによる分子標的薬の対象症例の選択が可能となり、支持療法・緩和医療に関しても使用できる薬剤や剤型などが多彩になってきた。がん対策基本法の理念である患者の視点を重視したがん治療を実現するには、腫瘍内科を核とした外来化学療法の診療体制とその機能が必須である。がん医療に携わるすべての関係者にとって、新しい発想、新しい器を創造して使いこなす柔軟な考え方が重要である。“Do not put new wine into old bottles”つまり“Do not put new treatment into old styles of hospital”であろう。
評者● 江口研二
臨床雑誌内科104巻6号(2009年12月号)より転載