書籍

ダーモスコピーのすべて

皮膚科の新しい診断法

編著 : 斎田俊明
ISBN : 978-4-524-24725-7
発行年月 : 2012年2月
判型 : B5
ページ数 : 262

在庫あり

定価8,100円(本体7,500円 + 税)


  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

保険診療にも採用され、簡便な診断法として日常診療に定着しつつあるダーモスコピーの初歩からエキスパートまでを網羅した決定版。総論では基本的な知識や使用法とともに、最新の診断法である「改訂2段階診断法」も詳しく解説した。各論では、鮮明な症例写真をふんだんに用いて、腫瘍性病変はもとより可能な限り多くの疾患を取り上げ、最新の知見を盛り込んで解説した。その他、関連事項の囲み記事の随時掲載、「Kittler法」などの診断法や用語解説などにより、本診断法の「すべて」を万全にフォローした。

総論
 A.ダーモスコピーの原理・機器・使用法
 B.ダーモスコピー診断学総論

各論I.悪性黒色腫
 1.表在拡大型黒色腫
 2.悪性黒子型黒色腫
 3.掌蹠の悪性黒色腫
 4.爪部悪性黒色腫
 5.結節型悪性黒色腫
 6.無(低)色素性悪性黒色腫
 7.悪性黒色腫の皮膚転移巣

各論II.色素細胞母斑類
 1.Clark母斑
 2.Spitz母斑、Reed母斑
 3.Miescher型母斑
 4.Unna型母斑
 5.掌蹠の後天性色素細胞母斑
 6.爪部の色素細胞母斑
 7.先天性色素細胞母斑
 8.青色母斑

各論III.非メラノサイト系病変
 1.基底細胞癌
 2.脂漏性角化症
 3.日光黒子(老人性色素斑)
 4.扁平苔癬様角化症
 5.日光角化症
 6.Bowen病
 7.有棘細胞癌
 8.エクリン汗孔腫
 9.澄明細胞性棘細胞腫
 10.脂腺過形成(老人性脂腺増生症)
 11.皮膚線維腫
 12.毛細血管拡張性肉芽腫
 13.被角血管腫
 14.出血性病変と血管腫、毛細血管拡張症

各論IV.その他の疾患(感染症・炎症性疾患など)
 1.尋常性疣贅
 2.疥癬
 3.シラミ感染症
 4.尋常性乾癬
 5.扁平苔癬
 6.汗孔角化症
 7.急性痘瘡状苔癬状粃糠疹
 8.慢性苔癬状粃糠疹
 9.顔面播種状粟粒性狼瘡
 10.黄色肉芽腫
 11.white fibrous papulosis of the neck
 12.Becker母斑
 13.カフェオレ斑
 14.炎症性線状疣贅状表皮母斑
 15.脂腺母斑(類器官母斑)
 16.血管線維腫
 17.黒色表皮腫
 18.抗癌剤による色素沈着
 19.円形脱毛症
 20.緑色爪
 21.膠原病の爪上皮血管所見

巻末付録
 1.ダーモスコピーの診断手順
 2.Kittler法の診断手順
 3.ダーモスコピー用語解説

索引

ダーモスコピーが皮膚病変の画期的診断法として本邦に登場してから10年ほどが経過した。この間、保険診療に採用されたこともあいまって、皮膚科診療に広く取り入れられ、今では皮膚病変の評価に欠かすことのできない検査法となっている。ダーモスコピーの日本語書籍はすでに5冊刊行されているが、その中であえて本書を刊行するのは、最新・最良の知見を網羅的に収載した標準的書籍の必要性を感じたからである。ダーモスコピー診断学の決定版を刊行したいと考えたのである。
 ダーモスコピーの主たる対象疾患は黒褐色の腫瘍性病変であり、とくに悪性黒色腫の診断・鑑別への有用性に主眼が置かれてきた。ダーモスコピーが悪性黒色腫と母斑の鑑別に役立ち、また基底細胞癌や脂漏性角化症などの色素性病変の診断に有用なことに異論の余地はない。さらに最近、ダーモスコピーの血管所見が無(低)色素性病変の診断に有用なことが明らかにされた。2010年、Marghoob&Braunは血管所見を取り入れた改訂2段階診断法を提案した。これによってダーモスコピーの診断学は新たな段階へと進化した。本書の総論では血管所見の新知見をまとめて詳しく紹介するとともに、改訂2段階診断法を取り上げ、実例を示しながら、その診断手順を詳述した。
 各論では腫瘍性病変のみでなく、非腫瘍性疾患や炎症性疾患も含めて、可能な限り多数の疾患を取り上げるようにした。各疾患について最新の知見を盛り込むとともに、未報告の疾患についても自験症例を提示して解説するように心掛けた。なお、総論・各論において随所にCOLUMNやMEMOの欄を設け、関連するトピックスや付随的事項を解説した。ダーモスコピー所見の用語は、新知見の蓄積に伴って急増しているが、その多くが比喩的形容詞を多用しており、複雑で曖昧なところがある。このような混乱の解決を目指してKittlerが提案した用語と新規診断手順を巻末付録として紹介した。また、巻末にはダーモスコピーの用語解説も付したので、各用語の意味の確認に利用してほしい。
2012年早春
斎田俊明

10年ほど前、ダーモスコピーが日本に導入された当時、どちらかというと私は冷ややかな視線でダーモスコピーを見ていた。肉眼で皮膚病変を画像診断するのが皮膚科医の真骨頂と信じていたので、エコーなどの画像診断機器も含めて「肉眼による視診と触診で十分」と考えていたのである。若いころ、教授が一生懸命ルーペで皮膚病変を見ているので、「肉眼で見えるのに…」と浅はかに思っていたが、自分が還暦を迎えて老眼が進むと、肉眼では細部が見えなくなり、自らもルーペを愛用するようになった。それとともに肉眼では見えなかった微小変化も見えるようになり、「あの当時、教授はこれを見ていたのか」と思い当たるようになった。
 ダーモスコピーはもちろん単なる拡大鏡ではなく皮膚表層を透光して観察する非侵襲的検査であるが、当初は学問としての体系化が不十分で、本書編著者の斎田先生に「結局皮膚生検しなくてはいけないなら価値が半減するのでは」と申し上げたことがある。そのとき斎田先生は反駁されなかったが、雌伏10年、今やダーモスコピーは見事な診断ツールとして体系化され、皮膚科診療に必須の診断機器として成熟した。当時からしっかり勉強しておけばよかったと、悔やむことしきりの昨今である。
 ダーモスコピーが日本でもっとも貢献した領域は、「手掌足蹠の色素病変が典型的な良性パターンを示せば生検は不要である」というアルゴリズムを確立したことであろう。このことで多くの患者さんが無用な痛みを伴う切除術から解放された。またメラノサイト系病変のみでなく、脂漏性角化症、基底細胞癌、一部の血管性病変もダーモスコピー所見が鑑別にきわめて有用となりつつある。本書では無色素性病変の血管所見を取り入れた二段階診断法も詳述されており、従来より一歩前へ進んだダーモスコピー診断法を学ぶことができる。
 ダーモスコピーで一つ難があるとすれば、その表現に多様な形容句(dots/globules、streaks、blue−white veilなど)が頻用されていることであろう。舌を噛みそうで何となく馴染めないが、考えてみれば皮膚病理の世界で今でこそ日常的に使用されているさまざまな病理用語(colloid body、pseudohorn cyst、ballooningなど)も、最初は馴染めなかったものが多用されているうちに抵抗なく受容されたのであろうから、これらのダーモスコピー用語もいずれは何の抵抗もなく使用されるようになるのであろう。その意味で巻末のダーモスコピー用語解説もうれしい。
 10年という短期間に、ダーモスコピーを体系化し、卓越した診断技術にまで高めた先駆者たちに敬服するとともに、その同時代をわが国における第一人者として駆け抜けられた斎田先生に敬意を表したい。その10年が斎田先生の定年前後であったことを考え合わせると、その熱意や行動力には畏敬の念さえ禁じえない。宇原先生、古賀先生という信州大学における二人の同志とともに一冊の教科書として結実した本書は、まさにダーモスコピー診断学の決定版として君臨するであろう。
評者● 宮地良樹
臨床雑誌内科109巻6号(2012年6月増大号)より転載