書籍

新BNPと日常臨床

心機能異常の早期発見のために

編集 : 蔦本尚慶/斎藤能彦
ISBN : 978-4-524-24054-8
発行年月 : 2005年3月
判型 : A5
ページ数 : 200

在庫僅少

定価4,104円(本体3,800円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

循環調節作用ホルモンであるBNPの基礎と臨床を解説して好評を博した『BNPと日常臨床』(1999年刊)の新版。その後、心不全の診断・重症度評価のスタンダードな指標として、また心筋障害を反映する総合的な心機能マーカーとしての位置づけが確立したBNPに関し、心機能異常の早期発見、迅速測定などの新知見を加え、より日常臨床に供する内容に一新。

第1章 BNPの基礎知識
 1.ナトリウム利尿ペプチドの構造
 2.ナトリウム利尿ペプチドの生合成・分泌調節
  a.ANPの生合成・分泌調節
  b.BNPの生合成・分泌調節
  c.ANP・BNP遺伝子の発現調節
  d.血中BNP濃度の意義
  e.血中N端proANP、N端proBNP濃度の意義
 3.ナトリウム利尿ペプチドの受容体および作用発現機構
 4.ナトリウム利尿ペプチドの代謝
 5.遺伝子操作動物を用いたナトリウム利尿ペプチドの生理的・病態生理的意義の検討

第2章 BNPの測定法
 1.測定法の種類
 2.迅速BNP測定系
 3.シオノリアBNPとTriage BNPとの比較
 4.血中BNP濃度の正常値

第3章 BNPによる心臓病スクリーニングと疫学
 1.スクリーニングの重要性
 2.現在のスクリーニング法とBNP
 3.早期CHFのスクリーニング
 4.基準値の問題
 5.顕性CHFのスクリーニング
 6.左室機能障害のスクリーニング
 7.新しい心臓病スクリーニングの提案

第4章 BNPと左室収縮機能、拡張機能
 1.左室収縮機能障害の診断におけるBNPの有用性
 2.左室拡張機能障害の診断におけるBNPの有用性

第5章 BNPと心不全─エビデンスを中心に─
 1.慢性心不全と神経体液性因子
 2.心臓ナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP)の分泌と生理的作用
 3.BNP測定の意義
 4.心不全診断における有用性
 5.心不全重症度の評価法としての血漿BNP濃度の有用性
 6.潜在性(無症候性)心不全患者とBNP
 7.症候性心不全患者とBNP
 8.BNPガイド下心不全診断治療
 9.BNP迅速測定系について
 10.大規模臨床試験におけるBNP
 11.大規模臨床試験におけるN端proBNP濃度
 12.BNP値の読み方:(ピットホール)
 13.血漿BNP濃度はなぜ予後の鋭敏な指標なのか
 14.治療経過とBNP症例提示

第6章 BNPと虚血性心疾患
1.心筋梗塞(急性・慢性)
 1.急性心筋梗塞とANP、BNP
 2.慢性期の心筋梗塞とBNP
 3.心筋梗塞診療におけるBNPの役割
2.狭心症
 1.狭心症における血中BNP濃度測定の意義
 2.急性冠症候群における血中BNP濃度測定の意義

第7章 BNPと心筋症
 1.拡張型心筋症とBNP
 2.肥大型心筋症とBNP
 3.収縮性心外膜炎とBNP
 4.症例提示

第8章 BNPと生活習慣病
 1.高血圧
  a.高血圧症左室肥大とBNP
  b.高血圧治療、予後とBNP
  c.高血圧における血漿BNP濃度解釈の注意点
  d.高血圧領域におけるBNPの今後の応用
 2.糖尿病
  a.高血糖、高インスリン血症とBNP
  b.糖尿病性腎症とBNP
  c.糖尿病性心合併症とBNP
 3.肥 満
  a.肥満に伴う高血圧とBNP
  b.肥満におけるBNPの新しい意義
 4.生活習慣病(潜在性心不全)に対するBNPの臨床応用

第9章 BNPと肺高血圧症・肺血栓塞栓症
 1.肺動脈性肺高血圧症とBNP
  a.重症度とBNP
  b.BNPによる治療効果判定
  c.BNPによる生命予後推定
  d.BNPに基づいた治療指針
 2.急性肺塞栓症とBNP
  a.BNPと重症度
  b.BNPと生命予後
 3.慢性肺血栓塞栓症とBNP
  a.BNPと重症度
  b.内科的治療とBNP
  c.外科的治療とBNP

第10章 BNPと腎不全・透析
 1.利尿ペプチドと分泌ソース
 2.腎不全のためのANP、BNPの代謝経路
 3.透析・腎不全とANP、BNP
 4.今後の展望

第11章 BNPのトピックス
1.BNPとペースメーカー
 1.徐脈性不整脈に対するペーシングとBNP
 2.心臓再同期療法とBNP
 3.右室ペーシングの功罪とBNP
2.救急診療におけるBNPの役割
 1.心筋生化学マーカー
 2.急性心不全におけるBNP測定の役割
 3.急性冠症候群におけるBNP測定の意義
 4.急性肺血栓塞栓症におけるBNP測定の意義

心臓は全身に血液を駆出するポンプ臓器である。松尾壽之、寒川賢治両先生による“心臓がANP、BNPなどの循環調節作用をもつホルモン産生臓器でもあること”の発見は、循環器疾患の概念に影響を与えた画期的な出来事であった。
 ANPの発見から20年を過ぎ、日本の研究者を中心に基礎研究から臨床応用までのトランスレーショナル医学が実践されてきた。ANPは、1995年より急性心不全治療薬として臨床応用され、現在もっとも使用される急性心不全静注薬となった。
 BNPは、米国では心不全治療薬としても使用されているが、日本では1996年より心不全診断-生化学的診断-として臨床応用され、日常診療に幅広く用いられるようになっている。“BNPと日常臨床”は、1999年に木之下正彦、小川研一両先生の編集により刊行され好評であった。今回、私どもがその意思を引き継ぎ、心機能異常の早期発見、迅速測定、EBMなどの新しい知見を加えて、それぞれの領域のエキスパートの先生方にご執筆いただいた。
 本書は循環器専門医ならびに日々の臨床に忙しいすべての臨床医、研修医、医学生を対象としてBNPについてまとめたものである。BNPを通して臨床医学の進歩と実践に少しで貢献できれば幸いである。
 ご多忙のなか、ご執筆いだいた諸先生に深甚の謝意を表すものである。
2005年3月
蔦本 尚慶
斎藤 能彦
(一部改変)

松尾壽之、寒川賢治両博士により心臓組織から分泌されるANPが発見(1983年)されてから20年以上が経過した。その後もBNP(1988年)、CNP(1990年)が両博士により発見されている。この3つのペプチドホルモン(ANP、BNP、CNP)はナトリウム利尿ペプチドファミリーと呼ばれ、この10年間でその臨床的意義が明らかになってきた。とくにBNPは、主として心室から分泌される心臓ホルモンであり、心不全の重症度に従いその血中濃度が変化することが、多くの臨床研究により明らかとなった。1994年に血漿BNP濃度の特異度の高い、また非常に鋭敏なラジオイムノアッセイキットが開発され、今や、心不全の重症度を知る唯一のバイオマーカーとして臨床に広く応用されている。

 1999年、それまでの基礎的および臨床的研究をまとめ、日常診療におけるBNP測定の有用性について『BNPと日常臨床―心機能検査を中心に―』と題するテキストが木之下正彦先生(滋賀医科大学教授(当時))と小川研一先生(獨協医科大学助教授(当時))編集で出版された。今回、そのバージョンアップ版として、『新BNPと日常臨床―心機能異常の早期発見のために―』(蔦本尚慶、斎藤能彦編集)が出版された。本書の特徴は心臓病スクリーニングのためのBNP測定の意義や、BNPと心不全との関連が、最新の大規模臨床試験から得られたエビデンスを多く引用して、簡潔にまた端的にまとめられていることである。また、第8章の「BNPと生活習慣病」では、高血圧症、糖尿病、肥満とBNP値との関連が詳細に述べられており、今後、メタボリック症候群患者を診療するうえでのBNP測定の有用性を学ぶことができる。第9章では、旧版にはなかった「BNPと肺高血圧症、肺血栓塞栓症」が示されており、左心負荷だけでなく右心負荷でもBNPは上昇し、その上昇の程度による生命予後の予測や、薬物治療効果の評価も概説されている。

 この分野で世界を代表する2人の研究者により編集された本書は、循環器疾患とBNPとの関連を学ぶために実に役立つテキストであり、私自身、日常診療の中で頻回に利用させていただいている。

評者●松崎益徳(山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学)
臨床雑誌内科97巻6号(2006年6月増大号)より転載