書籍

X線像で診る下肢

監修 : 松本秀男
編集 : 大谷俊郎
ISBN : 978-4-524-24005-0
発行年月 : 2011年10月
判型 : A4
ページ数 : 214

在庫あり

定価6,480円(本体6,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

鮮明なX線写真と明解・簡潔な解説で、整形外科診断の基本であるX線読影のポイントが一目で理解できる決定版。下肢のコモンな疾患を統一したフォーマットで解説。若手医師、実地医家の読影力アップはもちろん、柔道整復師、理学療法士にとっても疾患理解に役立つ一冊とした。

第I章 骨盤
 1.骨盤骨折
  A.安定型
  B.不安定型
  C.臼蓋底突出症
  D.恥骨下枝疲労骨折
 2.仙腸関節炎
 3.恥骨骨炎
 4.恥骨骨髄炎

第II章 股関節
 1.小児・先天性疾患
  A.先天性股関節脱臼
  B.臼蓋形成不全
  C.Perthes病
  D.骨頭すべり症
  E.単純性股関節炎
  F.小児大腿骨骨折
  G.小児化膿性股関節炎
  H.大腿骨形成不全
 2.外傷
  A.大腿骨頚部骨折
   (1)骨頭下骨折(内側骨折)
   (2)転子部骨折(外側骨折)
   (3)転子下骨折(不安定型骨折)
  B.大腿骨骨幹部骨折
 3.変形性股関節症とその鑑別疾患
  A.一次性股関節症
  B.二次性股関節症
  C.特発性大腿骨頭壊死症
  D.急速破壊型股関節症
  E.関節リウマチ(RA)
  F.結核性股関節炎
 4.その他
  A.滑膜性骨軟骨腫症
  B.人工骨頭・人工関節の弛み
  C.人工股関節置換術後の大腿部痛

第III章 膝関節
 1.小児・先天性疾患
  A.先天性膝関節脱臼
  B.小児のO脚
  C.膝蓋骨形成不全症
  D.脛骨欠損
 2.外傷
  A.大腿骨顆部骨折
   (1)定型的骨折
   (2)coronal fracture
  B.大腿骨遠位骨端線損傷
  C.人工膝関節全置換術(TKA)後の骨折
  D.膝蓋骨骨折(横骨折)
  E.前十字靱帯(ACL)脛骨付着部剥離骨折
  F.Segond骨折
  G.脛骨粗面剥離骨折
  H.後十字靱帯(PCL)脛骨付着部剥離骨折
  I.外傷性膝関節脱臼
  J.膝蓋骨脱臼
   (1)習慣性膝蓋骨脱臼
   (2)恒久性膝蓋骨脱臼
   (3)反復性膝蓋骨脱臼
  K.骨軟骨骨折
  L.脛骨プラトー骨折
   (1)外側
   (2)内側
 3.変形性膝関節症とその鑑別疾患
  A.変形性膝関節症
   (1)一次性
   (2)二次性
  B.関節リウマチ(RA)
  C.骨壊死
  D.偽痛風(軟骨石灰化症、半月板石灰化症)
  E.ステロイド性関節症
  F.結核性膝関節炎
  G.Charcot関節
  H.化膿性膝関節炎
  I.人工膝関節全置換術(TKA)後のメタローシス
  J.脛骨不全骨折
 4.その他
  A.Osgood-Schlatter病
  B.Sinding-Larsen-Johansson病
  C.大腿骨内側顆離断性骨軟骨炎
  D.有痛性分裂膝蓋骨
  E.骨軟骨腫症
  F.Pellegrini-Stieda病

第IV章 下腿・足関節
 1.先天性・小児疾患
  A.先天性内反足
  B.先天性垂直距骨
  C.足根骨癒合症
  D.外脛骨障害
  E.第4趾短縮症
  F.先天性下腿偽関節症
 2.外傷
  A.下腿骨骨折
  B.足関節部
   (1)足関節果部骨折・脱臼骨折
   (2)脛骨天蓋部骨折
  C.距骨骨折
  D.距骨骨軟骨障害(離断性骨軟骨炎、距骨骨軟骨骨折)
  E.三角骨障害
  F.踵骨骨折
  G.Lisfranc関節脱臼骨折
  H.第5中足骨骨折
  I.足趾骨骨折
  J.種子骨障害
 3.変形性足関節症
 4.その他
  A.脛骨疲労骨折
   (1)跳躍型
   (2)疾走型
  B.Footballer's ankle
  C.踵骨骨端症(Sever病)
  D.後脛骨筋腱機能不全症
  E.第1Kohler病
  F.Freiberg病(第2Kohler病)
  G.外反母趾
  H.強剛母趾
  I.行軍骨折
  J.糖尿病足
  K.ハンマー趾
  L.痛風

索引

近年CTやMRIなどの新しい画像診断法の進歩が強調され、ややもすると単純X線像のもつ意味が過小評価される傾向があるのは気がかりである。当然のことながら両者は二律背反の関係にはなく、相補的関係にある。強調したいことは、他の画像診断法が進歩しても、単純X線像の重要性は増すことはあっても減ることはないという点である。最新の画像診断の解説書が氾濫するなかで、あえて単純X線図譜をまとめた本書の企画の第一の意図はそこにある。
 現実には、運動器の領域に限ってもすでにCTやMRIは必要不可欠の画像検査になっている。一例をあげれば、骨盤骨折や粉砕骨折の複雑な骨折線の走行は、CTや3D-CTなしには診断できない。脊椎・脊髄病変、軟部腫瘍や靱帯・半月板損傷などの軟部組織病変、骨原発腫瘍の評価などではMRIが不可欠である。また、分野は異なるもののCT内視鏡による消化管の診断や、死後画像診断(Autopsy imaging:Ai)などの技術は、検査そのものの概念を変えるほどのインパクトをもってきている。これらは単純X線像が画像診断法としてもつ限界を超えるものである。
 一方で、変形性関節症に代表されるように、慢性の炎症や力学的な刺激などに対する骨の反応の評価では、単純X線像は強力な武器となる。侵襲に対する生物学的な反応自体は過去も現在も変化がないことから、結果として骨に生じた変化を観察することでその原因を考察できる。いわば骨に刻まれた歴史を評価できるのが単純X線像の強みで、化石の骨から恐竜の生態を考察するのと一脈通じるものがあり、単純X線像のもつ情報量の多さに驚かされる。いい換えれば、同じ画像から読み取れる情報量は、その医師の診断能力、あるいは思考の精密さの尺度ともいえる。
 最近の臨床や教育の現場では、初期研修医から専門医まで押しなべて診断のために「とりあえず」の画像検査をオーダーする傾向がある。「画像も撮っていない」のでは症例カンファレンスにも出せないし、上級医に相談もできないからである。しかしながら、同じ画像をオーダーするにしても自分なりの根拠をもつべきである。その考察の過程こそが患者さんに対する真のサービスであり、自分が成長するために必要なトレーニングである。本書の企画の第二の意図は、この「考える習慣」を身につけてもらいたいという点にある。
 第二次世界大戦の混乱期に慶應義塾の塾長をされた小泉信三先生は「練習は不可能を可能にす」という有名な言葉を残されている。練習で不可能が可能になる体験はスポーツのもつ3つの宝の1つであるという意味である(残りの2つは生涯の友とフェアプレーの精神とされている)。これを単純X線像の読影に当てはめれば、考えて読影する習慣(練習)によって、「見えないものが見えるようになる」といえないだろうか。単純X線像の読影に精通することが医師としての総合的な能力の向上に直結することを強調したい。
2011年9月
大谷俊郎

最近は超音波検査が日常診療に取り入れられ、整形外科の外来診療も大きくかわりつつあるが、診断においてはやはり単純X線像がゴールドスタンダードである。何をおいても1枚のX線像で全体像を把握できることが大きく、直感的に病変の同定ならびに評価をすることが可能である。監修者の松本秀男先生も述べられているように、問診・診察・単純X線所見で整形外科疾患の99%が診断可能であるといわれている。MRI・CTなど三次元的な評価法が普及している現状において、原点に戻り単純X線像の教科書的なアトラスを作成された意味は大きい。
 下肢の疾患を網羅している本書は、X線像をふんだんに用い読影のポイント・留意点について詳細に記載している。それぞれの疾患について、「疾患の解説」、「撮影方法と肢位」、「読影のポイント・注意」、「所見」、「診断」、「鑑別診断」、「今後の方針」といった見出しに沿って見開き2頁にまとめられ、コンパクトに必要十分な量の情報が詰め込まれている。たとえば評者の専門の足の外科領域の「距骨骨軟骨障害(離断性骨軟骨炎、距骨骨軟骨骨折)」の項目では、距骨滑車の内側病変は後方に位置することが多いため、病変を明確に描出するには底屈時の足関節正面像が不可欠であるが、的確な症例を呈示してその有用性を明らかにしている。また、膝関節における疾患群の充実度は出色で、すべての疾患が取り上げられているといっても過言ではない。本書を手元においておけば、日常診療においてどのようなX線像を撮影するか迷ったとき、すぐに参照することが可能である。また、疾患の知識を再確認でき、日常診療で疑問が生じたときに繙いて、利用していただければ本書のよさを実感していただけると思う。
 編集者の大谷俊郎先生が巻頭言で述べられている、いかに「他の画像診断法が進歩しても、単純X線像の重要性は増すことがあっても減ることがない」ということは、整形外科医であればみんなが共感できる事柄である。そのことを意図して編集されている本書は、単純X線像のエッセンスが詰まっており、特にこれから整形外科医をめざす若い先生には本書を熟読いただき、診断の基礎を培っていただければと思う。また、専門医の先生方には、多くの画像診断の解説書が氾濫する中で、あえて原点に戻ってX線像の有用性をじっくりと再認識していただければと思う。
評者● 田中康仁
臨床雑誌整形外科63巻6号(2012年6月号)より転載