教科書

組織細胞生物学

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

監訳 : 内山安男
ISBN : 978-4-524-23676-3
発行年月 : 2006年3月
判型 : A4変
ページ数 : 640

在庫なし

定価8,208円(本体7,600円 + 税)

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  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

組織学を基に細胞・分子生物学、病理学、臨床医学とを結びつけた全く新しいテキスト。各器官の組織・細胞の正常機能と異常による疾患のしくみが一目でわかる内容構成。ビジュアルに優れた650以上の図写真と簡潔かつ詳細な解説により、興味をもって充分に理解しながら通読できる。組織学+αとして学びたい学生から基礎医学研究者、臨床医にとって必携の一冊。

HISTOLOGY AND CELL BIOLOGY
An Introduction to Pathology
Abraham L. Kierszenbaum, MD, Phd

第I部 基本組織と統合細胞生物学
1.上皮
 上皮の分類
 上皮の極性
 細胞骨格
 モータータンパク質
 細胞の核
 核小体
 核酸の局在
 細胞周期
 腫瘍制御遺伝子
 細胞分裂
 テロメア、老化、腫瘍の成長
 化学療法と薬剤耐性
 核型

2.上皮腺
 上皮腺の発生
 上皮腺の分類
 細胞質膜:細胞膜
 細胞の内部環境
 受容体依存性エンドサイトーシス:コレステロールの取り込み
 小胞輸送
 目的とする膜への小胞の融合
 ミトコンドリア
 ペロキシソーム

3.細胞のシグナル伝達
 細胞シグナル伝達機構
 細胞シグナル伝達分子の作用機構
 酸化窒素
 細胞シグナル伝達分子は細胞表面の受容体と結合する
 細胞表面受容体による細胞内シグナル伝達の経路
 細胞内細胞シグナル伝達の主要経路
 幹細胞、多能性細胞株
 アポトーシスあるいはプログラム細胞死
 タンパク質分解にかかわる3つの主要な機構
 原型がん遺伝子とがん遺伝子

4.結合組織
 分類
 結合組織を構成する細胞
 細胞外マトリックス(ECM)
 細胞外マトリックスの分解
 脂肪組織
 軟骨
 骨

5.骨形成
 骨形成(骨発生、骨化)
 関節

6.血液と造血
 血液
 血漿
 血液の細胞性要素
 白血球
 血小板
 造血
 赤芽球系細胞
 白血球の発生:顆粒球と無顆粒球
 血小板と巨核球

7.筋組織
 骨格筋
 心筋
 平滑筋

8.神組織経
 神経組織の概要
 神経系の発生
 ニューロン
 グリア:中枢神経内の「結合組織」
 上衣と脈絡叢
 末梢神経系
 感覚性神経節
 自律神経性(交感性と副交感性)の神経節
 神経組織学で用いられる手法

9.感覚器:視覚器と聴覚器
 眼
 耳

第II部 生体防御系
10.免疫-リンパ系
 免疫-リンパ系の構成
 自然免疫と獲得免疫
 獲得免疫の特性
 B細胞の発生と分化
 主要組織適合複合体とヒト白血球抗原
 T細胞受容体複合体
 CD4、CD8補助受容体
 MHC分子と獲得免疫応答
 胸腺内で分化するT細胞は特異的な細胞表面分子を発現する
 T細胞を介する免疫
 補体系
 胸腺
 脾臓

11.外皮系
 皮膚の種類とその概観
 表皮
 真皮
 皮下組織
 皮膚付属器:毛、腺、指の爪

第III部 血液循環系
12.心血管系
 心血管系の一般的特徴
 心臓
 動脈
 毛細血管
 静脈
 リンパ管
 特殊な毛細血管の配列:糸球体と門脈系
 内皮細胞を介しての血流調節
 血管形態形成:血管内皮成長因子とアンギオポエチン

13.呼吸器系
 呼吸器系の概観
 鼻腔と副鼻腔
 鼻咽頭
 嗅上皮
 喉頭
 気管
 気管支樹の肺内区域
 肺の呼吸部
 胸膜

14.泌尿器系
 腎臓
 腎臓の血管構築
 腎臓と腎小葉の違い
 尿細管系はネフロンと集合管からなる
 ネフロン:腎小体は濾過ユニットである
 足細胞
 糸球体傍装置
 近位曲尿細管:再吸収コンポーネント
 ヘンレのループ
 遠位曲尿細管
 集合管
 レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系
 尿の排泄路(尿路)
 対向流増幅機序

第IV部 消化器系
15.上部消化管
 消化管の概要
 上部消化管:口、食道、胃
 消化管の一般構造
 消化管の微小血管系
 消化管の神経分布
 食道
 胃

16.下部消化管
 小腸
 十二指腸、空腸および回腸の組織学的な相違
 絨毛とリーベルキューン陰窩
 小腸の保護
 大腸

17.消化腺
 唾液腺の分岐導管系
 唾液は、唾液腺の主な産物である
 耳下腺
 顎下腺
 舌下腺
 膵外分泌部
 肝臓
 胆汁:分泌機構
 ビリルビンの代謝
 胆汁の組成
 胆嚢

第V部 内分泌系
18.神経内分泌系
 視床下部-下垂体系の要点
 下垂体
 神経性下垂体
 松果体

19.内分泌系
 甲状腺
 カルシウム調節
 上皮小体(副甲状腺)
 C細胞(甲状腺傍濾胞細胞)
 副腎
 膵臓内分泌部(膵島)

第VI部 生殖器系
20.精子発生
 精巣
 精上皮
 精子の構造
 ライディッヒ細胞
 男性生殖路のホルモン制御
 精子発生周期

21.精子輸送と成熟
 精巣の発生
 精巣決定因子が精巣の発達をコントロールする
 女性と男性の内性器の発生:ミュラー管抑制因子とテストステロンの役割
 精巣下降
 精子成熟の経路
 付属生殖腺
 男性と女性の尿道
 尿道球腺
 陰茎

22.卵胞の発達と月経周期
 女性生殖器官の発達
 卵巣
 卵巣周期
 排卵のホルモン調節と黄体
 卵管
 子宮
 子宮内膜の血管新生と月経
 子宮頚部
 腟
 恥丘、大陰唇と小陰唇
 尿道と腺(尿道傍腺とバルトリン腺)

23.受精・着床・乳汁分泌
 受精過程
 透明帯
 胎盤形成
 乳汁分泌

私は、1960年代後半から70年代の初めに医学・生命科学を学び、すでに30年以上の月日を経た。この間の医学・生命科学の発展は目覚ましく、細胞膜からいかに遺伝子へのシグナルが伝わり、遺伝子からの発信が細胞の反応系として起きてくるかについて多くが明らかにされてきた。細胞内シグナル伝達系、ゲノム解析といった大きな問題の解析に向けて科学は発展し、21世紀はポストゲノムの時代の幕開けであると言われるまでに発展を遂げた。実際、ヒトを始め重要な動物種の全ゲノム構造が決定され、プロテオミクス、セロームヘとその解析の方向性も示されてきている。この流れに沿って生物学の成書は大きく変革し、細胞生物学として新しい時代にふさわしい教科書が登場してきた。組織学も総論の中にこの流れを取り入れ、細胞の理解を深めるのに用いられてきた。
 私は学生の頃から、生命現象の原理を求めることに興味を持っていた。しかし、卒業して、ある人から疾患が教えてくれることの重要さを習った。正常な生命現象を理解するためには異常をしっかりと観察すること、基礎医学の中で疾患を解明することの重要さを認識し、それが私達の課題でもあることに気づかされた。生命現象を解析する手段はたくさんあるが、どのような方面から解析を始めても行き着く先は一つと考えられる。それらの医学・生命科学の分野の中で、形態学は、最も基本的な学問で、医学・生命科学の分野で初めに習う学問体系でもある。組織学の本は、総論で細胞の成り立ち、上皮、結合組織、筋、神経の各組織について扱い、各論で器官を扱うのが一般的である。組織学の基本は、組織を構成する細胞とその細胞が存在する環境を理解することにある。細胞や環境に異常が起これば組織細胞は病的状態に陥る。この変化がどのように起きてくるかは、病理の範疇に入る。しかし、各器官の細胞とその環境を細胞生物学的な観点から考え、病理学的な変化を視野に入れた組織学の成書はこれまでにない。
 本書では、組識・細胞の構造のみならず、それらの場で遺伝子とその産物がいかなる働きをしているかも扱っている。その背景には、古典的な学問領域の枠を乗り越えて、常にすべての分野を統合して物事を考えていく姿勢の重要さを大事にしていることがある。この姿勢は本書の随所にみられる。例えば、組織細胞の機能発現に直結する遺伝子・分子の異常と疾患については、“臨床的意義”として扱っている。本書も大筋では、古典的な組織学の道筋をたどっている。しかし、従来の組織学と異なり全体を大きく6つのパートに分けている。第I部は、総論に相当する部で、基本的な組織学と統合された細胞生物学を扱っている。第II部からVI部で器官系を扱っているが、古典的な組織学と異なり、機能的に関連した器官を統合して5つの器官系に分類している。この器官系の集合体を理解するための見出しにも特徴がある。さらに、本書の最も大きな特徴は、Visual approachと称して視覚に訴える模式図と写真で、本書の内容をほとんど網羅できるように工夫している点にある。図版だけで本書の本質を非常にうまくまとめている。
おそらくこの図版を作るのに本書の著者であるAbraham L. Kierszenbaum教授は相当の長年月をかけたものと思われる。これによって本書を使う諸氏が、各事項の本質を容易に理解できるものと思われるし、このような整理の仕方が学問の理解に重要なことも身につけることができる。この努力に深く敬意を表するものである。
 翻訳にあたっては、平易な文章になるように心掛けた。用語は解剖学用語集、分子細胞生物学で一般的に使われる用語に準拠した。原文で意味不明な点、新たな理解を必要とする点には訳注を入れた。極力原文に忠実であることを心掛けると共に、ごく最新の事実関係にも訳注を入れることができた。しかし、訳の不備な点もあるものと思われる。読者の方々の忌憚のないご意見が頂ければ幸甚である。
2006年1月
内山安男

組織学の教科書は多くあるが、形態と機能を結びつけた教科書はなかった。本書は形態学的な組織、細胞の特徴を視覚的にわかりやすく例示し、それに細胞生物学的な説明、意味づけを加えて形態と機能が同時に理解できるように工夫されたまったく新しい、待望の教科書である。原著者のKierszenbaum先生はニューヨーク市立医科大学Sophieデービス校の教授で、医学部の学生に組織学を30年以上教えてきたベテラン教授である。氏は飛躍的に進展しつつある基礎科学を限られた期間内に医学生が学ぶためには、関連する基礎科学の概念を統合し、わかりやすく伝える必要があることを痛感し本書を書いたと述べている。監訳者の内山安男先生は解剖学者であるが同時に細胞生物学者でもあり、生化学、分子生物学にも精通しており、本書の監訳者としては適任と思われる。翻訳者の多くはかつて内山先生の研究室にいた方々、あるいは共同研究者で、原著の意図するところを忠実に再現している。

 まず、本を開いて気づくことは650を超えるカラーイラストである。500の模式図と150の顕微鏡写真、電子顕微鏡写真を適切に配置し、それに構造的特徴とその理解を助ける機能を簡潔に説明し、さらに周辺の事項や病理・臨床との関連を概説している。この美しい図と短いが要点をまとめた説明によって特定の器官や細胞のコンセプト、あるいはトピックスの全体像が抵抗なく理解できるように設計されている。補足はボックスを使って提供されており、学習へのモチベーションが高まる工夫もなされている。

 本書は6つのパートから構成されており、各パートの最初に学習目標が設定されている。パートIは4つの基本的な組織(上皮、結合組織、筋組織、神経組織)を取り上げ、組織の成り立ちや構成細胞について解説するとともにすべての組織・細胞に共通する課題も盛り込んでいる。パートI第1章では、上皮組織の分類、上皮組織のもつ極性、上皮細胞間の接着を可能にする接着分子群と接着を安定化するギャップ結合(細胞間連結)複合体について簡潔に概説している。第3章では、組織学の教科書ではあまり例をみない細胞のシグナル伝達が取り上げられている。形態写真よりも模式図を多用して、細胞がホルモンや増殖因子を介していかに相互作用するか、すなわち細胞間のコミュニケーションを視覚的に、先端的な内容をわかりやすく解説している。組織や器官の学習は生理学、生化学、分子生物学と切り離してはできず、統合しながら学ぶ姿勢が大事であるという著者の考え方に沿ってあえて設けた章である。第8章の神経組織では、ニューロン、軸索輸送、中枢神経内の「結合組織」であるグリアなどについてはじめて学ぶ者でも馴染みやすく表現されている。
髄鞘の項では、脱髄疾患が取り上げられるなど、臨床的意義も随所にふれられている。パートII〜VIはオーソドックスに器官システムを体系的に説明している。すなわち生体防御、循環・呼吸・泌尿、栄養消化、内分泌、生殖のシステムの順に、それぞれの器官のもつ構造的、機能的特性が目的を果たすためにどのように統合されているかをコンパクトに概説している。

 本書は視覚的教材をふんだんに使い、ポイントのみの解説で、どんどん知識がふくらんでいくよう工夫されており、学生にやさしい教科書といえる。本書を医学部で組織学、細胞生物学、生化学、生理学などを学ぶ低学年の学生にお勧めしたい。組織学のみならず、これらすべての学問を関連づけながら楽しく学ぶことができる。思わずうなずくこともあるだろう。病理学を学ぶ段階の学生にもお勧めしたい。それまでに学んだ知識を統合、強化し、臨床へのオリエンテーションとしてきわめて有用なテキストブックになるだろう。さらには看護学生や保健学科の学生などコメディカルの学生にもお勧めしたい。高度な部分を含めて、必要な基礎科学的知識を独学でも楽しく学ぶことができるだろう。

評者●木南英紀(順天堂大学生化学第一講座教授)
臨床雑誌内科97巻6号(2006年6月増大号)より転載