書籍

足のクリニック

教科書に書けなかった診療のコツ

こちらの商品は改訂版・新版がございます。

: 井口傑
ISBN : 978-4-524-23546-9
発行年月 : 2004年6月
判型 : A5
ページ数 : 232

在庫なし

定価4,860円(本体4,500円 + 税)

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  • 商品説明
  • 序文
  • 書評

日常遭遇する頻度が高いにもかかわらず、いざとなると知らないことが多い足の痛みや変形について、診療のコツを、ベテラン専門医がやさしい解説でまとめたマニュアル。理学的診断のポイントや疾患の原因・メカニズムを理解することにより、保存療法から靴の選択指導までの知識が広がり、外反母趾をはじめとする広く一般にみられる足のトラブルが救える。

一日の診療が終わって、一杯のビールを傾けながら、多くの知恵を先輩から学びました。根っからの臨床医が、ちょっとでも上手く治したいと、日々工夫を重ねてきました。これらの知恵や工夫を後輩に受け継ごうと、ダボハゼの如く依頼原稿に応じてきました。でも、最近の医学書は「最低限、必要なことだけを、簡潔に、要領よく」がモットーで、感じや手触りは書けません。書きたいことが書けないと悶々と過ごしていましたが、遂に切れました。「分担執筆でなく、一から十まで自分一人で伝えたいことを書く」こんな我が儘を許してくれる出版社を捜した結果がこの本です。ですから、まずは教科書を読んで下さい。その上で、教科書に書けなかった先人の知恵を、この本から読み取って下さい。
 足の治療には「靴」と「足底板」が欠かせません。でも、実際にどうするかはなかなか教科書には書けません。この本では、どう考えて靴を選び、どのように足底板を作るか、医者だけでなく、看護師、装具土、シューフィッター、さらに患者にも役立つように書きました。
 また、足の診断は、足の病気を知ってさえいれば、難しくありません。逆に、知らないとレントゲンを見ても「見れども見えず」で、診断がつきません。後半には、日常診療での理解に役立つよう、浅く広く足部疾患を紹介しました。
「医者は、好きなことをして感謝され、お金までもらえる素晴らしい職業」とは、田舎医者だった父の言葉です。同じ言葉を医者になった子供達に遺せるご時世ではありませんが、「診断はどんなミステリー小説を読むより面白い。治療は一つ一つが手作りの作品」とは言えます。この本が、古い伝統を持つ足医学を通じて、先人の知恵を伝えるのに役立つことを祈ります。
 挿し絵は、少しでも気楽に読めるようにと、漫画の上手な同門の清水健太郎先生に頼みました。本当は共著者なのですが、「自分一人で」と息巻いた手前、こんな体裁になりました。お陰で、酒の肴とまでは行かなくても、読みやすくなったと感謝しています。
2004年5月
井口傑
(一部改変)

筆者の子どものころは、履物はゲタで、家の中では裸足で活動し、体育の時間には裸足で砂地の校庭を走りまわっていた。大人も靴を履いている人はいたが、下駄や草履を履く人が多く、移動は徒歩か自転車で行い、自家用車に乗っている人は少なかった。このようなためか足は丈夫で、当時の一般的な足の疾患としては骨折・捻挫、蜂窩織炎、刺創ぐらいしかなかったように思われる。筆者が整形外科医を志した40年前ごろもまだその名残があり、足の疾患は少なく、主だったものは先天性内反足を代表とする先天性疾患や、ポリオ、脳性麻痺などの麻痺性疾患、骨折・脱臼、感染などであった。近年、靴の装着が一般化し、車社会となり、そのため足が弱くなったせいか、多種の疾患が出現し、足の疾患を勉強しないと、整形外科の外来診療に困るような時代になってきている。

 このような時期に井口傑先生が本書を執筆されたのは誠に時機を得たものである。井口先生は慶應義塾大学整形外科に足の外科グループを創設し、同科の伝統を受け継ぐ幅広い知識と爽やかな弁舌、スマートな行動で、多数の足の専門家を育てるとともに、多数の研究を指導してこられた。また日本靴医学会の常任理事を務められ、事務局をおき、靴医学の発展にも努力されている。

 本書の特徴は序文に書かれているように、「分担執筆でなく、一から十まで自分1人で伝えたいことを書く」という点である。確かに本書を一読すれば、井口先生が考えておられる足の外科学がなんたるかがよく理解できるともに、足の疾患に対して適正な診療を行う自信をもつことができるようになるものと思われる。同大学で多数の足の専門家を育てられたのもむべなるかなと思われる。

 本書は序章を含め7章とコラムからなる。序章と第1章では足と足の疾患についての考え方を述べている。第2章と第3章の2章にわたり足の見方が書かれ、診断の重要性に対する著者の気持ちが表れており、本書のハイライトの1つである。盛りだくさんであるが、診断に必要なことばかりであり、それぞれの項目のタイトルはわかりやすく、これを読まないと足の診察ができない気持ちにさせて一気に2章と3章を読ませる。またコラムがレジメとして理解と記憶のために役立っている。第4章の足の治療では、靴選び、靴の補正、治療靴、フットケア用品、足底板を取り上げている。これらの項目は従来の教科書には記載されていないが、日常診療で欠くことのできない治療であり、本書のハイライトの1つである。お読みいただき、十分に理解していただければ、これらの治療を装具士、理学療法士、シューフィッターに任せきりにして、せっかくつくった治療靴や足底板が患者さんの家の床の間を飾ることはない。またこの章では適正な注射の打ち方も書かれている。これもこれまで教えてくれる教科書がなく、自己流に注射している場合が多いと思われるので、たいへん有用である。第5章の疾患別フローチャートは簡潔で、鑑別診断を行っていくうえで役に立つ。第6章では部位と疾患として、121という多数の疾患について、まずその疾患から生ずる痛みについて記載し、それからその疾患についての説明と治療について、簡明に記載している。治療は保存的治療が主体で、手術的治療についての記載は少ない。これは、「まず教科書を読んでからこの本を読んでほしい」と序文に書かれているように、手術的治療については教科書にゆずり、日常診療での理解に役立つように、浅く、広く多数の疾患を紹介しているためである。

 本書は、整形外科の研修医、専門医のみならず、プライマリ・ケアを行う医師、理学療法士、義肢装具士、シューフィッターの方々にとって実用性の高い価値ある教科書であり、自信をもっておすすめしたい1冊である。
 
評者● 愛媛大学整形外科教授 山本晴康
臨床雑誌整形外科55巻12号(2004年11月号)より転載