書籍

整形外科研修マニュアル

編集 : 戸山芳昭/松本秀男
ISBN : 978-4-524-22121-9
発行年月 : 2004年5月
判型 : A5
ページ数 : 416

在庫僅少

定価6,480円(本体6,000円 + 税)

  • 商品説明
  • 主要目次
  • 序文
  • 書評

整形外科の卒前実習から卒後研修までに必須の基本的知識と技術を、図や写真を多用してわかりやすく解説。実際に研修指導にあたっているメンバーが、日常臨床における診察・処置・検査・診断・治療法の選択に際し、必要最低限の情報を即座に得られるようまとめた実際書。わかりやすさ、読みやすさを工夫して、臨床現場で頼りになる一冊。

総論
1. 整形外科診察法
2. 検査法
3. 処置法
4. 外傷の初期治療

各論
1. 頚椎・頚髄病変
2. 胸椎・胸髄病変
3. 腰椎・馬尾病変
4. 仙骨・尾骨病変
5. 脊柱変形
6. 脊椎・脊髄損傷
7. 肩関節病変
8. 肘関節および前腕部病変
9. 手関節および手の病変
10. 股関節、大腿部の病変
11. 膝関節病変
12. 下腿骨、足関節および足の病変
13. 骨・軟部腫瘍
14. その他の疾患

日本人の日常生活動作における愁訴は運動器疾患が原因であることが多く、事実、平成10年度と13年度の国民生活基礎調査の結果でも、腰痛と肩こりが二大愁訴となっております。さらに、手足など四肢関節の愁訴も上位にランクされております。このような運動器を扱う整形外科は、スポーツ障害や労働災害、交通事故などによる外傷性疾患から、変形性脊椎症や膝関節症など加齢現象が主な原因となっている変性性疾患まで実に多くの疾患を対象にしています。このため、どの病院の整形外科外来をみても、また救急外来をみても、そして開業している整形外科クリニックをみても、患者さんの大変多いことが実際でありましょう。さらに整形外科では、先天性疾患から関節リウマチや感染などの炎症性疾息 骨粗鬆症などの代謝性疾患、骨壊死などの特発性疾患等の多彩な疾患を対象とし、加えて、新生児から高齢者までを対象に各種運動器疾患の診断から治療までを担当し、それも保存的治療から外科的治療、さらには予防までを考えた医療が行われています。
 20世紀最後の10年は“脳の10年”と言われてきましたが、21世紀初頭の10年は“Bone and Joint Decade”、つまり骨・関節の10年、言い換えれば“運動器の10年”として、WHOなどが中心となって世界的運動が展開されております。しかしながら、平成16年度からスタートした新研修医制度では、必修科目に整形外科は取り上げられておりません。患者さんが多く、初期治療を勉強すべき疾患が多いにも拘わらず、整形外科が選択科目になっていることは残念でなりません。そこで、研修医の先生方には整形外科を是非とも選択して頂きたいと思います。
 今回、整形外科を研修する際のお役に立てればと考え、私どもの教室スタッフ一同が総力をあげてこの『整形外科研修マニュアル』を完成させました。本書は、はじめに総論として整形外科的診察法をわかりやすく説明し、次にX線検査や各種造影検査法などの手技や読み方、そして整形外科基本的処置法の手技から初期治療法までを記載しております。
 後半の各論では「頚椎・頚髄疾患」をはじめとした「脊椎・脊髄疾患」、「肩関節疾患」、「肘・前腕部疾患」、「手関節・手疾患」、「骨盤・股関節疾患」、「膝関節疾患」、「下腿・足部疾患」、「骨・軟部腫瘍」、そして最後に「先天性疾患」や「代謝性疾患」、「炎症性疾患」、「感染性疾患」等々、すべての運動器疾患を網羅し、わかりやすく、且つ調べやすいように記載しました。整形外科を研修する際に、また救急部を研修する際に大いに役に立つ研修医マニュアルになっているものと確信しております。
 本書を手元に置いて、臨床研修の現場でちょっと調べたい時、疑問に思った時、わからない時などにどうぞご活用ください。本書が整形外科を研修している先生方の勉強に少しでもお役に立てれば幸いであります。
2004年5月
編集者

2004年より新医師臨床研修制度が開始され、それに伴い研修医を対象とした本が数多く出版されている。本書もその1つで、選択科目として整形外科を選択した研修医に対して整形外科および救急部での研修に役立つよう慶応義塾大学整形外科の先生方が総力をあげて書かれた本である。

 本書の構成をみると、プライマリ・ケアとして、四肢外傷患者が来院したときに何をみて、初期治療として何を行うべきか、次に整形外科の外来、入院いずれにおいても、まず診断に向けどのような診察を行い、どのような検査法があり、それらをどのような目的で行うかを総論として記載し、さらに一段上の整形外科診療に向け各論で診断に重きをおいて、運動器疾患について、わかりやすく、かつ調べやすいように記載されている。逆にいえば疾患については治療に関して多くを記載せず、ローテーション中の研修医がまず的確な診断にたどりつけることを主眼にして簡潔に記載された本である。

 各章をみてみると、検査法や処置法については、整形外科医としての知識についてよく記載されている。たとえば単純X線撮影においては、その読影の前にどのようにオーダーするかが大切であるが、本書にはその基本が記載されており、また荷重位撮影、ストレス撮影は日常診療においてしばしば行う検査であり、研修医には有用と思われる。しかし、撮影法としてswimmers' positionにての撮影や骨盤入口撮影などが記載されているが、これらは項目のみでは理解不能であり、簡単な説明が望まれる。また画像診断においてはその適応とともに欠点を記載したほうがよかったと思われる。一方、処置では皮膚縫合法、創、爪処置、外傷の初期治療については実際的で、研修医に有用と考える。

 若い医師に本書の印象を聞いてみると、以下のような感想を述べている。

 1)ほかの研修医向けの本では、本書のように診察、検査、穿刺や注射などの手技、各疾患について一冊にコンパクトにまとまったものはないように思われる、
 2) 救急に関する初期対応の方法も、整形外科の分野に限らず、一般的な皮膚縫合法まで記載され、初期研修のころには役立つと考える、
 3) 略語集も便利である。

 本書の難をいえば、整形外科の治療では手術的治療よりも薬物療法や理学療法などの保存的治療が多くを占めるが、その記載が不十分であり、治療大系の総論があったほうが整形外科研修の全体を理解するのに役立ったかもしれない。また、診断、処置、検査の中で共通していえることは、整形外科医としての知識についてよく記載されているが、初期研修医レベルで行う検査とそれ以上のレベルの医師が行う検査の記載が同じように記載されており、自分で行えることと、知識として知っておくべきことの区別、また脊髄造影では使用してはいけない造影剤があることや、ギプスについても巻いたあとの注意点など、医療事故に結びつきかねない重大な注意点について、それがわかるような記載が望まれる。

 このような問題点はあるが、この本により1人でも多くの研修医が整形外科に興味をもち、将来運動器疾患の治療に携わる医師が増えることを祈っている。

評者● 浜松医科大学整形外科教授 長野 昭
臨床雑誌整形外科55巻12号(2004年11月号)より転載